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最終更新日:2026/5/26

法人化(法人成り)の費用とは?設立費と維持費について税理士が詳しく解説

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

法人化(法人成り)の費用とは?設立費と維持費について税理士が詳しく解説

「法人化するといくらかかるのか」は、個人事業主の方が法人成りを検討するうえで特に気になるポイントです。
実際に法人化の費用を調べると、多くの記事では登録免許税や定款認証手数料といった法定費用を中心に解説しています。
しかし実際には、設立費用や初期費用は法人化にかかる費用のほんの一部にすぎません。

法人化では、法定費用に加えて、さまざまな初期費用や年間維持費が発生します。
特に維持費に関しては法定費用よりも大きな金額になることが多く、把握しないまま法人化に踏み切ると、「想定よりお金がかかる」と後悔する原因になりかねません。

この記事では、法人化にかかる費用を「設立時の初期費用」と「法人化後の年間維持費」に分けて、全体像を一覧表で整理したうえで、各費用の内訳を詳しく解説します。
費用の会計処理(創立費・開業費)や、法人化の費用を節約する方法についても取り上げていますので、これから法人化を検討している方はぜひ最後までお読みください。

個人事業と法人の違い、会社設立の流れ、必要書類、費用など会社設立の全体像をわかりやすく解説!

目次

法人化にかかる費用の全体像|初期費用と年間維持費の一覧

法人化を検討するとき、多くの方が気になるのは「設立にいくらかかるのか」という点ではないでしょうか。

まずは以下の2つの表で、法人化にかかる費用の全体像を確認しましょう。
各費用の詳しい内容は、このあとのセクションで順に解説します。

設立時にかかる初期費用の一覧

費用項目 株式会社 合同会社 備考
定款認証手数料 1万5,000円~5万円 不要 資本金額により変動
定款の収入印紙代 4万円 4万円 電子定款なら不要
定款の謄本手数料 約2,000円 不要 合同会社は定款認証が不要のため謄本も不要
登録免許税 15万円~ 6万円~ 資本金✕0.7%がそれぞれの額を上回る場合はその額
法人印の作成費 約1万~3万円 約1万~3万円 3本セットの場合
印鑑証明書・登記事項証明書 数千円 数千円 3~4通ずつ取得が目安
専門家への依頼費用 0~10万円程度 0~10万円程度 司法書士・税理士など
初期費用の合計目安(電子定款の場合) 約25万~40万円程度 約10万~25万円程度 資本金は別途必要

法人化後に毎年かかる維持費の一覧

費用項目 備考
法人税・法人事業税など 所得(利益)に応じて変動。赤字なら課税なし
法人住民税(均等割) 赤字でも年間約7万円が発生
社会保険料(会社負担分) 役員報酬・従業員給与の額に応じて変動
消費税 基準期間の課税売上高1,000万円超の場合や課税事業者の選択(インボイスも含む)の場合に発生
税理士顧問料+決算料 事業規模・依頼範囲で変動
決算公告費用 官報掲載の場合、年間約8万円~。合同会社であれば不要
役員変更登記(重任) 1回につき1万円。任期を10年にすれば10年に1度。合同会社であれば不要
会計ソフト(法人プラン) 年間約3万~5万円

年間維持費の総額は事業の規模や役員報酬の設定によって大きく異なるため、一概にいくらとは言えません。
法人化を検討する際は、設立費用だけでなく、設立後に毎年発生するこれらの維持費も資金計画に織り込んでおきましょう。

法人化の設立費用(法定費用)とは

法人化にあたって必ず発生するのが、法務局や公証役場に支払う「法定費用」です。
法定費用とは法律で定められた手数料や税金のことで、専門家に依頼するかどうかにかかわらず、設立手続きを行う人全員に共通してかかります。

法定費用の金額は、株式会社と合同会社のどちらを設立するかによって大きく異なります。
以下の表で両者の違いを確認しましょう。

法定費用の種類 株式会社 合同会社
定款の収入印紙代 4万円 4万円
定款認証の手数料 1万5,000~5万円 0円
登録免許税 (最低)15万円 (最低)6万円
その他(印鑑代など) 約1万円 約1万円
合計 約23万円 約11万円

定款認証の手数料は、資本金の額によって3万~5万円の幅が設けられています。
更に、資本金が100万円未満かつ以下の3つの条件をすべて満たす場合は、認証手数料が1万5,000円に引き下げられます。

認証手数料が引き下げられる条件

  1. 発起人の全員が自然人(個人)であり、かつ3人以下であること
  2. 発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける旨の記載があること
  3. 定款に取締役会を置く旨の記載がないこと

登録免許税は、法務局に設立登記を申請する際に納付する国税です。
税額は「資本金の額✕0.7%」で計算しますが、株式会社と合同会社で異なる最低額が定められており、それを下回る場合は最低額が適用されます。

参考:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

株式会社の場合、資本金が約2,143万円を超えると「資本金✕0.7%」の額が最低額の15万円を上回り、その分だけ登録免許税も高くなります。
合同会社の場合は、資本金が約857万円を超えると、同様に最低額の6万円を上回り、登録免許税が高くなります。
ただし、個人事業主からの法人化では資本金をこれほど高額に設定するケースは少ないため、多くの場合は最低額での納付となります。

なお、定款の収入印紙代や登録免許税は、電子定款の作成や制度の活用によって節約することも可能です。
詳しくは「法人化にかかる費用を節約する方法」にて解説します。

定款認証や登録免許税について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご確認ください。

法定費用以外にかかる初期費用

法人化にあたっては、法務局や公証役場に支払う法定費用のほかにも、さまざまな初期費用が発生します。
法定費用だけを見て「これだけ用意すれば大丈夫」と考えていると、設立直後に資金が足りなくなることもあるため、こうした初期費用についてもあらかじめ把握しておきましょう。

資本金

資本金は法定費用とは異なり、法務局や公証役場に「支払う」お金ではありません。
会社の事業資金として出資するお金であり、設立後は運転資金として自由に使うことができます。

法律上、資本金は1円以上あれば会社を設立できます。
しかし極端に資本金の額が少ないと、以下のような場面で不利に働くため、注意が必要です。

  • 法人口座の開設審査:金融機関は資本金の額を審査項目のひとつとしています。資本金が極端に少ないと、ペーパーカンパニーではないかと疑われ、口座開設を断られやすくなります。
  • 創業融資の審査:日本政策金融公庫などの創業融資では、自己資金の額が審査の判断材料になります。資本金が少なすぎると、事業を継続する体力がないと判断されるリスクが高いです。
  • 取引先からの信用:資本金の額は登記事項証明書に記載されるため、取引先が確認できる情報です。新規取引の際に資本金が少ないと、信用面で不安を持たれることがあります。

資本金の額をいくらにすべきかは、業種や資金計画によって最適な金額が異なります。

一般的には、設立費用と事業が軌道に乗るまでの運転資金3~6カ月分を目安にするのがひとつの考え方です。
たとえば、毎月の固定費(家賃、人件費、社会保険料など)が50万円であれば、150万~300万円と設立費用を足した額を資本金として設定するイメージです。

ただし、資本金または出資金額が1,000万円以上で会社を設立すると、原則として設立1期目から消費税の免税を受けられません。
また、法人住民税の均等割は、資本金などの額が1,000万円を超えると税額区分が上がる自治体が多いため、特段の事情がない限り、個人事業主からの法人化では資本金を1,000万円未満に設定する傾向があります。

法人印の作成費用

法人化の際には、法務局への届出や銀行口座の開設、契約書への押印などに使用する法人印を作成するのが一般的です。
通常は以下の3種類をセットで作成します。

印鑑の種類 主な用途
代表者印 登記申請や重要な契約書など
銀行印 法人口座の開設や金融機関との取引など
角印(社印) 請求書や見積書など日常的な書類

法人印は、ネット通販であれば3本セットでも数千円前後から購入可能です。
素材にこだわる場合は数万円になることもありますが、実務上は安価なもので問題ありません。

なお、以前は会社設立の際に必ず代表者印の印鑑届出書を法務局に提出する必要がありました。
しかし2021年の法改正により、オンラインで登記申請をする場合は提出が任意になりました。
これにより、現在はオンラインであれば、法人印を作成しなくても会社設立は可能です。

ただし、法人口座の開設や融資の申し込み、不動産の契約など、実印や印鑑証明書の提出を求められる場面は依然として多いため、設立時に作成しておくことをおすすめします。

印鑑証明書・登記事項証明書の取得費用

設立登記が完了したあと、法人口座の開設や取引先との契約、融資の申し込みなどの場面で、印鑑証明書や登記事項証明書(登記簿謄本)の提出を求められます。

これらは法務局で発行を受けるもので、原則として1通あたり以下の手数料がかかります。

書類 窓口請求 オンライン請求・郵送受取り オンライン請求・窓口受取り
印鑑証明書 500円 450円 420円
登記事項証明書 600円 520円 490円

1通あたりの金額は少額ですが、法人口座の開設、融資の申し込み、取引先への提出など、複数の場面で必要になるため、3~4通ずつまとめて取得しておきましょう。

専門家への依頼費用

法人化の手続きは自身で行うことも可能ですが、定款の作成や登記申請は専門的な知識を必要とするため、司法書士や税理士などの専門家に依頼するケースが多いです。
専門家に依頼する場合、法定費用とは別に報酬が発生します。

依頼先 主な依頼内容 報酬の目安
司法書士 定款作成、登記申請の代行 7万~10万円程度
行政書士 定款作成、許認可の申請代行 2万~3万円程度(定款作成のみの場合)
税理士 法人化のシミュレーション、届出書類の作成、節税アドバイスなど 0~5万円程度

司法書士は登記手続きの専門家であり、法務局への設立登記申請を代行できるのは司法書士のみです。
行政書士には定款の作成や認証、許認可に関連する申請について依頼できますが、登記申請の代行はできません。
税理士には会社設立時の節税に関するアドバイスや、設立後の税務署などへの届出などを依頼できます。

近年は、弊ベンチャーサポート税理士法人も含め、法人化後の顧問契約とセットであれば設立サポート費用を無料で対応する税理士事務所が数多くあります。

「とにかく手続きを早く済ませたい」という場合は司法書士への一括依頼が効率的ですが、「法人化後の税金対策まで見据えたい」という場合は、設立前の段階から税理士に相談するのがおすすめです。

より具体的な士業ごとの違いを知りたい場合は、以下の記事をご確認ください。

法人化の前後で発生する手続き関連費用

法人化に伴う費用は、設立手続きそのものにかかる法定費用だけではありません。
個人事業主から法人へ移行する過程では、廃業手続きや資産の引き継ぎ、各種契約の名義変更など、さまざまな手続きが必要になり、それぞれに費用が発生します。

このセクションで解説する費用は、実際に法人化した方が「想定していなかった」と感じることの多い項目です。
事前に把握しておくことで、法人化後の資金繰りに余裕を持たせることができます。

個人事業の廃業に伴う費用

個人事業主が法人化する場合、原則として個人事業の廃業手続きが必要です。
廃業手続きそのものは税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出するだけで完了し、手数料はかかりません。

参考:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

ただし、個人事業を年の途中で廃業した場合でも、原則としてその年の確定申告は必要です。
法人化の初年度は、主に廃業までの事業所得と、法人から受け取った役員報酬などの給与所得を申告します。

また、個人事業税が課される事業を営んでいた場合、廃業年度の事業税を精算する必要があります。
なお、廃業年度の個人事業税の見込額は、その年の確定申告で必要経費に算入することが認められています。

参考:〔租税公課〕|国税庁

資産・負債の引き継ぎにかかる費用

個人事業主と法人は法律上、別の人格です。
そのため、個人事業で使用していた車両や設備、事務所などの資産を法人化したあとも使用するには、適切な手続きを経て引き継ぐ必要があります。

資産を引き継ぐ方法は主に「売買(譲渡)」と「賃貸」の2つです。

引継ぎ方法 概要 発生しうる費用
売買(譲渡) 個人から法人へ資産を売却する 譲渡所得税(個人側)、名義変更の登録費用
賃貸 個人が所有したまま法人に貸し付ける 賃貸借契約書の作成費用(実務上は軽微)

特に注意が必要なのは、不動産などの名義変更を伴う資産です。

不動産を法人に譲渡する場合、売買による所有権移転登記にかかる登録免許税が発生します。
登録免許税の税率は、原則として建物と土地ともに2%です。
ただし、土地の売買による所有権移転登記については軽減措置があり、2029年3月31日までは1.5%とされています。

参考:土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ|税務署(PDF)

税理士 森健太郎
税理士 森健太郎からひと言
なお、自動車は以前、購入・譲り受け時に取得価額に対して「環境性能割」という税金を収める必要がありましたが、2026年3月31日に廃止され、現在は課税されません。
ただしその他の費用として、移転登録(名義変更)の申請時に運輸支局で納める印紙代に500円、管轄変更でナンバープレートが変わる場合には、別途約1,500〜2,000円程度がかかります。

参考:令和8年度税制改正の大綱(4/9)|財務省

また、個人事業で借入金がある場合、法人に引き継ぐには金融機関との協議が必要です。
法人が個人の債務を引き受ける「債務引受」の手続きを行うことになりますが、金融機関が応じない場合もあるため、事前に相談しておくことが重要です。

資産・負債の引き継ぎ方法は、税務上の取り扱いに大きく影響します。
どの方法が最も有利かは個別の状況によって異なるため、法人化前に税理士へ相談することをおすすめします。

許認可の再取得にかかる費用

業種によっては、事業を営むために行政の許認可が必要です。
個人事業主として取得していた許認可は、法人化しても自動的に法人に引き継がれないケースが多いため、注意が必要です。

許認可の取り扱いは業種によって異なります。
主な業種の対応を以下にまとめます。

業種 法人化した際の対応 費用の目安
建設業 新規取得または譲渡認可(2020年10月の法改正で承継制度が新設) 新規申請の場合:知事許可で申請手数料9万円+行政書士報酬15万~30万円程度
飲食店営業 新規取得または地位承継届(食品衛生法の改正により承継可能な場合あり) 新規申請の場合:申請手数料1万6,000~1万8,000円程度
古物商 新規取得が必要(個人から法人への承継不可) 申請手数料1万9,000円+行政書士報酬3万~5万円程度
宅地建物取引業 新規取得が必要(個人から法人への承継不可) 都道府県知事免許の場合:申請手数料約3万3,000円(自治体や申請方法により異なる場合あり)+行政書士報酬

建設業については、2020年10月の建設業法改正により、個人の許可を法人へ承継する「譲渡認可」の制度が新設されました。
この制度を利用すれば、無許可期間が生じることなく、個人から法人へ許可を引き継ぐことができます。

譲渡認可の場合は申請手数料が不要ですが、事前に許可行政庁との打ち合わせが必要であり、手続きが複雑になる場合もあります。

飲食店営業については、2023年12月の制度改正により、事業譲渡による営業者の地位承継が届出のみで可能になりました。
これは食品衛生法に基づく営業全般に適用される改正で、法人成りに伴う事業譲渡も対象です。

届出で承継する場合は、新規の許可申請や申請手数料の支払いが不要となり、費用面・手続き面ともに負担が大幅に軽減されます。
ただし、届出の際には社長個人から法人への事業譲渡契約書の写しなどの添付が必要であり、事前に管轄の保健所へ相談することも求められています。

参考:事業譲渡に関する手続が整備されます|厚生労働省(PDF)

古物商許可については、個人から法人への承継や名義変更は認められていません。
法人として古物営業を行うには、法人設立後に新たに法人名義で許可を取得する必要があります。

個人の許可のまま法人として営業を行うと無許可営業となり、3年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となるため、法人化前に必ず手続きのスケジュールを確認しておきましょう。
なお、法人で申請する場合は役員全員分の住民票や身分証明書が必要になるため、個人での申請よりも書類の準備に手間がかかる傾向があります。

参考:古物商許可申請|警視庁

いずれの業種においても、許認可に関する手続きは法人化のスケジュールに直接影響するため、早めに管轄の行政機関や行政書士に確認しておくことが重要です。

名刺・封筒・ホームページなどの作り直し費用

個人事業主から法人に移行すると、屋号から法人名(商号)に変わるため、これまで使用していた名刺や封筒、パンフレット、ホームページなどを法人名義に作り替えないといけないケースもあります。
取引先への案内状の送付なども含めると、意外と手間と費用がかかる項目です。

法人化を機にホームページをリニューアルする場合は、制作費として数十万円以上かかることもあります。
法人化に伴う最低限の修正にとどめるか、リニューアルまで行うかは、予算に応じて判断しましょう。

会計ソフト・業務ツールの法人プラン切替え費用

個人事業主向けの会計ソフトを利用している場合、法人化後は法人向けプランへの切替えが必要になります。
法人の会計処理は個人事業と比べて複雑であり、法人税の申告書作成に対応したプランでなければ対応できないためです。

会計ソフト以外にも、請求書発行ツールや勤怠管理ツール、電子契約サービスなどは、法人化に伴ってプランの切替えや新規導入が必要になります。
個々の費用は小さくても、合計すると年間で約10万円以上の追加コストになることがあるため、事前に洗い出しておきましょう。

法人化後に毎年かかる維持費(ランニングコスト)

法人化にかかる費用を考えるうえで、設立時の初期費用以上に重要なのが、法人化後に毎年発生する維持費(ランニングコスト)です。
個人事業主のときにはかからなかった固定費が法人には多くあり、これを見誤ると「法人化しなければよかった」と後悔する原因になりかねません。

ここでは、法人を維持するために発生する主な費用を解説します。

各種税金

法人にかかる主な税金は、法人税、法人事業税、法人住民税、消費税の4つです(法人住民税は「法人税割」と「均等割」の2つで構成されています)。

このうち法人税・法人事業税・法人住民税の法人税割は、所得(利益)に応じて課税されるため、赤字であれば税額はゼロになります。
しかし法人住民税の均等割は、会社が存在しているだけで課税される税金であり、事業の赤字・黒字にかかわらず毎年納付する義務があります。

均等割の金額は自治体によって若干異なりますが、標準的な税額としては資本金1,000万円未満かつ従業者数が50人以下であれば約7万円になります。

参考:法人住民税|総務省

個人事業主の場合、赤字かつほかに収入もないのであれば所得税も住民税もかかりません。
法人化すると、たとえ利益が出ていない年でも最低約7万円の税金が発生する点は、個人事業主との大きな違いです。

法人にかかる税金の種類と概要については、以下の表にまとめます。

税金の種類 課税の対象 赤字の場合
法人税 法人の所得(利益) 課税なし
法人事業税 法人の所得(資本金1億円以下の普通法人の場合) 課税なし
法人住民税(法人税割) 法人税額をもとに計算 課税なし
法人住民税(均等割) 資本金の額・従業員数に応じて定額 課税あり(最低約7万円)
消費税 原則課税売上に対して課税売上税額を算出し仕入税額控除を行う
(原則として基準期間の課税売上高1,000万円超の場合)
売上がある限り原則課税

社会保険料

法人化後の維持費のなかで、多くの方が「想定以上だった」と感じるのが社会保険料です。

法人は、社長1人だけの会社であっても、健康保険と厚生年金保険への加入が原則として義務づけられています。
個人事業主が加入する国民健康保険・国民年金とは異なり、法人の社会保険料は会社と個人(役員・従業員)で折半して負担する、労使折半というしくみになっています。
つまり、役員報酬や給与から天引きされる本人負担分に加え、同額を会社が負担して納付しなければなりません。

なお、健康保険料率は都道府県ごとに異なり、更に毎年改正が行われます。
ここでは例として「2026年度に東京都で協会けんぽに加入した場合の保険料率」を表にまとめました。

保険の種類 保険料率 備考
健康保険 9.85% 都道府県ごとに異なる。労使折半
介護保険(40歳以上65歳未満) 1.62% 全国一律。労使折半
厚生年金保険 18.3% 全国一律。労使折半
子ども・子育て支援金 0.23% 2026年4月分から適用。労使折半

参考:令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表|協会けんぽ(PDF)

参考:厚生年金保険料額表|日本年金機構

【具体例】役員報酬月額30万円(40歳以上)の場合の社会保険料とは

では、具体的にどのくらいの金額になるのか、役員報酬月額30万円のケースで計算してみましょう。

協会けんぽの2026年度保険料額表(東京都)に基づくと、標準報酬月額30万円の場合の保険料は以下のとおりです。

保険の種類 月額保険料(全額) 会社負担額(折半額)
健康保険料+介護保険料 3万4,410円 1万7,205円
厚生年金保険料 5万4,900円 2万7,450円
子ども・子育て支援金 690円 345円
月額合計 9万円 4万5,000円

上記のとおり、役員報酬月額30万円の場合、月々の保険料は約9万円、年額にして約108万円になります。

税理士 森健太郎
税理士 森健太郎からひと言
なお、「子ども・子育て支援金」と非常によく似た「子ども・子育て拠出金」というものもあります。
これは事業者のみが負担する保険料で、厚生年金保険の標準報酬月額および標準賞与額に、0.36%を乗じた額を納めなくてはいけません。
標準報酬月額30万円の場合、0.36%を乗じた1,080円を、会社側は毎月別枠で収めることになります。

個人事業主の場合は国民健康保険と国民年金に加入しますが、国民年金の保険料は2026年度で月額1万7,920円(年額約21万円)と定額です。
国民健康保険料は自治体や所得によって異なりますが、同程度の所得であれば法人の社会保険料のほうが高くなるケースが多いです。

ただし、厚生年金に加入することで将来受け取れる年金額が増える点は、コストとしてだけでなく将来の保障として捉えることもできます。
また、社会保険料の会社負担分は全額が法人の経費になるため、法人税の軽減にもつながります。

社会保険料は法人化後の大きな固定費のひとつになるため、法人化前に役員報酬の金額設定と合わせて、年間の負担額をシミュレーションしておくことが重要です。

税理士顧問料と決算申告費用

法人の税務申告は、個人事業主の確定申告と比べて格段に複雑です。
法人税、法人事業税、法人住民税、消費税と申告すべき税目が多く、申告書の様式も専門的であるため、多くの法人が税理士に決算申告を依頼します。

税理士に支払う費用は、大きく「月額顧問料」と「決算などのスポット料」に分かれます。

顧問契約とは、毎月一定の顧問料を支払うことで、継続的なサポートを受ける契約形式です。
月額顧問料は、法人の年間売上高や依頼する業務の範囲によって変動します。
訪問来社頻度や記帳代行の有無、給与計算の委託などによっても金額は変わります。

決算申告料は、事業年度の終了時に決算書や各種申告書の作成・提出を依頼するための費用です。
月額顧問料とは別に発生するのが一般的で、相場は月額顧問料の3~6カ月分ほどとされています。

個人事業主のときは自分で確定申告を行っていた方にとって、税理士への依頼料は法人化後に大きな負担と感じやすい固定費のひとつです。
ただし、税理士による適切な節税対策を受けることで、顧問料以上の節税に繋がる場合も多数あります。
コストとしてだけでなく、事業を安定して運営するための投資として捉えることも重要です。

決算公告費用(株式会社のみ)

株式会社は、会社法の規定により、事業年度の終了後に決算内容を公告する義務があります。
これを決算公告といい、合同会社にはこの義務はありません。

(計算書類の公告)

第四百四十条 株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。

引用:会社法 第四百四十条|e-Gov 法令検索

決算公告の方法は主に3つあり、それぞれ費用が異なります。

広告方法 費用の目安 特徴
官報 約8万円 最も一般的な方法。掲載スペースにより費用が変動
日刊新聞紙 数十万円 費用が高額なため中小企業ではあまり利用されない
電子公告 実質無料~数万円 HP維持費のみ。ただし貸借対照表の全文を5年間継続して掲載する義務あり

電子公告を選択すれば掲載費用そのものは抑えられますが、貸借対照表の全文(大会社は損益計算書も含む)を自社のホームページに5年間継続して掲載しなければなりません。
また、電子公告を行うためには定款にその旨を定め、公告用のURLを法務局に登記する必要があります。

参考:会社法第九百四十条第1項第2号|e-Gov法令検索

参考:電子公告制度について|法務省

なお、実態としては決算公告を行っていない中小企業も少なくありませんが、会社法上は義務とされており、公告を怠った場合は100万円以下の過料の対象となる可能性があります。

役員変更登記費用(株式会社のみ)

株式会社の取締役の任期は、会社法により原則として2年と定められています。
ただし、株式の譲渡制限を設けている非公開会社であれば、定款に定めることで取締役・監査役ともに任期を最長10年まで延長することができます。

(取締役の任期)

第三百三十二条 取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。

引用:会社法第三百三十二条第1項|e-Gov法令検索

任期が満了すると、たとえ同じ人物が引き続き役員を務める場合でも、法務局に「重任登記」の手続きが必要です。
重任登記を怠った場合、代表取締役に対して裁判所から100万円以下の過料が科される可能性があります。

重任登記にかかる費用は以下のとおりです。

費用項目 金額
登録免許税 1万円(資本金1億円以下の場合)
司法書士報酬(依頼する場合) 約1万~3万円程度

参考:No.7191 登録免許税の税額表|国税庁

法人化にかかった費用の会計処理

法人化にかかった費用は、適切に会計処理を行えば、法人の経費(損金)として計上できます。
ただし、すべてが同じ扱いになるわけではなく、設立登記が完了するまでにかかった費用は「創立費」、設立登記の完了後から営業開始までにかかった費用は「開業費」に区分する必要があります。

いずれも税務上は「繰延資産」として資産計上し、任意のタイミングで経費化(償却)することができます。

「創立費」として計上できるもの

創立費とは、会社の設立登記が完了するまでに、会社を設立するために支出した費用です。
具体的には以下のような費用が該当します。

創立費の例

  • 定款の認証手数料
  • 定款の収入印紙代
  • 登録免許税
  • 定款の謄本手数料
  • 司法書士や行政書士への報酬(設立手続きの代行費用)
  • 発起人の報酬
  • 設立事務所の賃借料(設立準備期間中のもの)
  • 設立前の打ち合わせにかかった交通費・通信費

注意点として、設立登記の完了前であっても、10万円以上の物品を購入した場合は「固定資産」として経費計上する必要があり、創立費には含められません。

また、会社の設立登記前に支出した費用は、その時点ではまだ法人が存在していないため、発起人(多くの場合は社長本人)が個人で立て替えて支払うことになります。
設立後に法人口座から立て替え分を精算し、そのタイミングで創立費として計上するのが一般的な実務の流れです。

「開業費」として計上できるもの

開業費とは、設立登記の完了後から実際に営業を開始するまでの間に、開業準備のために特別に支出した費用です。
具体的には以下のような費用が該当します。

開業費の例

  • 名刺やパンフレット、チラシの作成費用
  • 開業の広告宣伝費
  • 市場調査費
  • 打ち合わせの飲食代(交際費・接待費)
  • 開業準備のための旅費交通費
  • 開業前の研修費用

税務上の開業費は「開業準備のために特別に支出する費用」に限定されています。
事務所の賃借料や光熱費など、開業後も継続して発生する費用は開業費に含まれません。

法人化にかかる費用を節約する方法

ここまで解説してきたとおり、法人化にはさまざまな費用がかかります。
しかし、制度や会社形態の選択を工夫することで、初期費用を大幅に抑えることも可能です。

その1:合同会社を選択して初期費用を削減する

法人化の費用を抑える最もシンプルな方法は、株式会社ではなく合同会社を選択することです。
法定費用だけで比較しても、定款認証手数料が不要になり、登録免許税の最低額が15万円から6万円に引き下げられるなど、大きな差があります。

加えて、本記事で解説した維持費についても、合同会社には決算公告義務がなく、役員の任期の定めもないため、決算公告費用(年間約6万円~)と役員変更登記費用(1万円+司法書士報酬)が不要になります。
ただし、合同会社は株式会社と比較すると認知度が低いといったデメリットもあるため、注意が必要です。

合同会社と株式会社の違いについては、以下の記事をご確認ください。

その2:電子定款を利用して収入印紙代4万円を節約する

定款を紙で作成すると、印紙税法の規定により4万円分の収入印紙を貼付する必要があります。
しかし、定款をPDFなどの電子データで作成・提出する「電子定款」であれば、この収入印紙代が不要になります。

電子定款を自分で作成するには、以下の準備が必要です。

  • マイナンバーカード
  • ICカードリーダー(マイナンバーカード対応のもの)
  • PDFに電子署名を付与するためのソフトウェア(Adobe Acrobatなどの有料ソフトと法務省提供のPDF署名プラグインとの組み合わせ)

定款のPDF化自体はWordなどの書き出し機能でも可能ですが、電子定款として提出するにはPDFに電子署名を付与する必要があり、そのためのソフトウェアや設定が求められます。
ソフトの種類やバージョンによって対応状況が異なるため、自分で1から環境を整えるにはある程度の手間がかかります。

電子定款については、以下の記事でも解説しています。

その3:特定創業支援等事業の認定を受けて登録免許税を半額にする

市区町村が実施する「特定創業支援等事業」の支援を受けることで、法人設立時の登録免許税を半額にできます。

特定創業支援等事業とは、産業競争力強化法に基づき、市区町村が地域の創業支援機関(商工会議所、金融機関、NPO法人など)と連携して実施する創業支援制度です。
経営・財務・人材育成・販路開拓の4分野に関する知識を習得するためのセミナーや個別相談を、原則として1カ月以上かつ4回以上受けることで、市区町村から「支援を受けたことの証明書」を発行してもらえます。

設立登記の申請時に、法務局に証明書の原本を提出することで、株式会社と合同会社のどちらも支払う登録免許税が半額まで軽減されます。
さらに信用保証協会の創業関連保障や、日本政策金融公庫の創業融資などで優遇措置を得られるといった効果もあるため、積極的に活用することをおすすめします。

参考:特定創業支援等事業を受けるメリット|中小企業庁(PDF)

ただし、利用する際にはセミナーの受講から証明書の発行まで、およそ1カ月以上の期間が必要です。
設立を急いでいる場合は、スケジュールに余裕を持って準備を始めましょう。

その4:税理士の顧問契約とセットで設立手数料を抑える

法人化後に税理士との顧問契約を予定している場合、設立手続きのサポート費用を無料または割引で対応してもらえるケースがあります。

税理士事務所の中には、法人化後の顧問契約を前提として、設立時の届出書類の作成や税務関連のアドバイスを無料で行うプランを用意しているところがあります。
また、提携する司法書士と連携して、登記手続きまで含めた設立サポートをワンストップで提供している事務所もあります。

この方法を活用すれば、設立手続きの専門家報酬を抑えられるだけでなく、電子定款への対応も含めて手配してもらえるため、収入印紙代4万円の節約にもつながります。

ただし、顧問契約の具体的な内容や金額、また最低契約期間が設定されていないかと言った点は、事前に必ず確認しておきましょう。

その5:創業時に使える補助金・助成金を活用する

補助金と助成金はどちらも国や自治体から支給される返済不要の資金ですが、性質が異なります。

項目 補助金 助成金
主な管轄 経済産業省・中小企業庁など 厚生労働省など
審査 申請者の中から審査で採択(競争あり) 要件を満たせば原則として支給される
採択率 公募ごとに異なる(数十%程度のものが多い) 要件を満たせばほぼ100%
対象経費の例 販路開拓費、設備投資費、広告宣伝費など 雇用・人材育成に関する経費が中心

補助金・助成金は、先に自己資金で経費を支払い、事業完了後に申請・審査を経てから支給される後払い(精算払い)が原則です。
法人化の初期費用を補助金で賄おうと考えている場合、支給までのタイムラグがあることを資金計画に織り込んでおく必要があります。

また多くの補助金は、申請時点で事業を開始していることが要件に含まれています。
法人設立前の段階では申請できない制度がほとんどであるため、法人設立後に申請するスケジュールで計画しましょう。

この記事のまとめ:法人化について悩みがあれば税理士に相談しよう

法人化にかかる費用は、設立時の法定費用だけではありません。
本記事で解説したとおり、法人印の作成や専門家への依頼費用、許認可の再取得、名刺やホームページの作り直しといった初期費用に加え、法人住民税の均等割、社会保険料、税理士顧問料といった年間維持費が毎年発生します。

法人化を検討する段階で大切なのは、「設立にいくらかかるか」だけでなく、「法人化したあとに毎年いくらかかるのか」まで含めた全体像を把握しておくことです。
そのうえで、ご自身の事業の売上や利益の見通しと照らし合わせ、法人化のタイミングが適切かどうかを判断しましょう。

費用面の判断に不安がある場合は、法人化の前に税理士へ相談することをおすすめします。

ベンチャーサポート税理士法人では、法人化の検討段階からご相談いただける無料相談を実施しています。

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