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最終更新日:2026/6/9

法人化できない人とは?欠格事由・よくある誤解・すべきでない人などを解説

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

法人化できない人とは?欠格事由・よくある誤解・すべきでない人などを解説

法人化を検討するなかで「自分は法人化できる条件を満たしているのか」「今のタイミングで法人化すべきなのか」といった疑問を抱える方は少なくありません。

会社法では「取締役になれない人(欠格事由)」が明確に定められており、これに該当する人は取締役に就任することができません。
しかし、欠格事由に該当しない場合でも、事業の所得水準や維持コストの負担を考えると、法人化しないほうがよいケースもあります。

一方で、自己破産の経験がある方や未成年の方のように、一般的には「取締役になれない」と思われがちでも、現在の会社法では問題なく法人化できるケースも存在します。

本記事では、法律上法人化できない人の条件を正確に整理したうえで、誤解されやすいが実は法人化が可能なケース、そして法律上は可能でも今は法人化すべきでない人の判断基準まで、順を追って解説します。
ご自身の状況に照らし合わせながら、法人化すべきかどうかを見極める参考にしてください。

個人事業と法人の違い、会社設立の流れ、必要書類、費用など会社設立の全体像をわかりやすく解説!

法人化できない人の条件とは

法人化(会社設立)をするには、設立する会社の取締役を選任する必要があります。
個人事業主が法人成りする場合、自分自身が取締役に就任するのが一般的です。

しかし、会社法第331条では「取締役になることができない人」の条件(欠格事由)が定められており、これに該当する人は取締役になれません。

取締役の欠格事由に該当する人

会社法第331条第1項に定められている取締役の欠格事由は、以下のとおりです。

欠格事由 具体的な対象
法人(第1号) 法人(株式会社、合同会社、社団法人など)
会社法等に関連する法律に違反した人(第3号) 会社法、金融商品取引法、民事再生法、会社更生法、破産法などに定められた罪を犯し、刑に処せられた場合、その執行を終えた日(または執行を受けることがなくなった日)から2年を経過していない人
上記以外の罪で拘禁刑以上の刑に処せられた人(第4号) 上記の法律以外の罪(刑法上の犯罪など)により拘禁刑以上の刑に処せられ、その刑の執行を終えていない人

参考:会社法第三百三十一条|e-Gov法令検索

なお、条文上は第2号も存在しますが、これはかつて「成年被後見人若しくは被保佐人」を欠格事由として定めていた規定です。
2021年3月1日施行の改正会社法(令和元年法律第70号)により、成年後見制度の利用促進の観点から第2号の内容は削除されました。

注意すべき点として、第3号(会社法等に関連する法律違反)は、第4号(それ以外の犯罪)と比べて要件が厳しく設定されています。

通常の犯罪であれば、拘禁刑以上の実刑でなければ欠格事由にならず、執行猶予中であったとしても取締役に就任できます。
一方、会社法等に関連する法律違反の場合は、罰金刑や執行猶予期間であっても欠格事由に該当し、さらに刑の執行を終えてから2年間は取締役になることができません。

これは、会社の経営を担う取締役には、会社法をはじめとする企業活動に関する法令を遵守する高い信頼性が求められるためです。

欠格事由に該当する場合の対処法

自身が取締役の欠格事由に該当する場合でも、法人化そのものを完全に断念する必要はありません。

第3号に該当する場合(会社法等に関連する法律違反)は、刑の執行を終えてから2年が経過すれば欠格事由は解消されます。
第4号に該当する場合(それ以外の犯罪で拘禁刑以上の刑)は、刑の執行を終えた時点で欠格事由がなくなります。

法人化を急がない状況であれば、欠格事由の解消を待ってから自身が取締役に就任するのが確実な方法です。
その間は個人事業主として事業を継続し、法人化に向けた準備を進めておくとよいでしょう。

また、取締役の欠格事由はあくまで「取締役になれない」という制限であり、「会社を設立できない」という意味ではありません。
会社法上、発起人(会社の設立を企画する人)には欠格事由の定めがないため、自身は発起人や株主として会社設立に関わり、取締役は欠格事由に該当しない別の人を選任するという方法もあります。

法人化できないと思われやすい人

自己破産した人や未成年者、外国籍の人、成年被後見人・被保佐人などは「法人化できないのではないか」と不安に感じやすいケースです。

ここでは、法人化できないと誤解されやすいものの、条件を満たせば法人化が可能なケースについて解説します。

自己破産した人

「自己破産した人は会社を設立できない」というのは、よくある誤解のひとつです。

かつての商法では、破産して復権を得ていない人は取締役の欠格事由に該当していました。
しかし、2006年5月に施行された現行の会社法では、自己破産は取締役の欠格事由から削除されています。
そのため、自己破産をした方であっても、法律上は取締役に就任し、会社を設立することが可能です。

ただし、法律上は可能であっても、実務面ではいくつかの制約がある点に注意が必要です。

実務上の制約 内容
信用情報への登録 自己破産の情報は信用情報機関に5~7年程度登録され、この期間中はクレジットカードの審査などが通りにくくなる
資金調達 信用情報に事故情報が残っている間は、融資や借入れが難しくなる
破産手続き中の制約 破産手続が完了する前(免責許可が下りるまで)は、裁判所の許可なく居住地の変更ができないなど、さまざまな制約がある

なお、既に取締役に就任している人が自己破産した場合は、民法第653条の規定により委任契約が終了するため、一度退任する必要があります。
ただし、欠格事由には該当しないため、改めて株主総会で選任されれば再び取締役に就任することは可能です。

参考:民法第六百五十三条|e-Gov法令検索

未成年者(15歳以上)

会社法には取締役の年齢制限に関する規定がないため、未成年者であっても取締役に就任し、法人化することは法律上可能です。
ただし、取締役の就任は会社との委任契約にあたるため、未成年者が契約を行うには親権者(法定代理人)の同意が必要です。

参考:民法第五条第1項|e-Gov法令検索

税理士 森健太郎
税理士 森健太郎からひと言
なお、ここでいう法定代理人の同意は、民法第6条の未成年者に対する営業許可と同視され、取締役としての個別の行為については、法定代理人の同意を要しないと解されています。

そのため、通常の設立書類に加えて、以下の書類が必要となります。

必要書類 内容
親権者の同意書 取締役の就任について、親権者が同意していることを証する書面
親権者の戸籍謄本 親権者と本人の関係を確認するための書類
本人の印鑑証明書 会社設立の登記手続きに必要な書類

印鑑登録が可能になるのは15歳以上であるため、実務上は15歳以上でなければ法人設立に必要な印鑑証明書を取得できず、事実上、法人化はできないことになります。

外国籍の人

外国籍の人であっても、日本で法人を設立すること自体は可能です。
会社法上、取締役の国籍に関する制限はありません。

ただし、外国籍の人が自身で設立した会社の経営を行うためには、在留資格として「経営・管理」(経営管理ビザ)の取得が必要となる場合があります。

経営管理ビザの取得要件は、2025年10月16日施行の省令改正により大幅に厳格化されました。
出入国在留管理庁が公表している改正後の主な要件は以下のとおりです。

要件 改正後の内容
資本金等 3,000万円以上
常勤職員の雇用 1名以上の常勤職員の雇用が必須(対象は日本人、永住者等に限定)
日本語能力 申請者または常勤職員が、日本語教育の参照枠におけるB2相当以上(JLPT N2以上など)の日本語能力を有すること
学歴・経験 関連分野の修士・博士等の学位、または経営・管理の実務経験3年以上
事業計画書 中小企業診断士・公認会計士・税理士による確認が必要
事業所 事業の実態に見合った独立した事業所の確保が必要 。自宅兼事務所は原則不可

なお、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者といった在留資格を所持する場合は、経営管理ビザがなくても日本で事業の経営に従事できます。

外国人の日本国内での会社設立については、以下の記事でより詳しく解説しています。

成年被後見人・被保佐人

成年被後見人・被保佐人とは、認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分になった人を法的に保護するための制度(成年後見制度)の対象者です。

区分 定義
成年被後見人 精神上の障害により、判断能力を欠く状況が常態にあるとして、家庭裁判所から後見開始の審判を受けた人。日常的な買い物など一部を除き、法律行為には成年後見人の代理が必要
被保佐人 精神上の障害により、判断能力が著しく不十分であるとして、家庭裁判所から保佐開始の審判を受けた人。不動産の売買や借入など重要な法律行為には、保佐人の同意が必要

かつてこれらの方は、会社法第331条第1項第2号により取締役の欠格事由に該当し、法人化の際に取締役に就任することができませんでした。
しかし、成年後見制度の利用者であることを理由に一律に社会参加の機会を制限することは適切でないという考えから、2021年3月1日施行の改正会社法(令和元年法律第70号)により、この欠格事由は削除されました。

現在は、成年被後見人・被保佐人であっても以下の所定の手続きを経ることで、取締役に就任し法人化することが可能です。

  • 成年被後見人の場合:成年後見人が、成年被後見人本人の同意(後見監督人がいる場合はその同意も必要)を得たうえで、本人に代わって就任の承諾をする
  • 被保佐人の場合:保佐人の同意を得て、本人が就任の承諾をする

法人化はできるが、今はしないほうがいい人

法律上の欠格事由に該当して法人化できないという人は、実際にはごく少数です。
むしろ多くの人が直面するのは、「法律上はできるが、今の自分の状況で法人化すべきかどうか」という判断の問題です。

法人化にはさまざまなメリットがありますが、事業の状況やタイミングによっては、かえって負担が増えてしまうケースもあります。
ここでは、法人化を検討する前に確認しておきたい「今は法人化しないほうがいい人」の特徴を解説します。

事業所得が約500万円以下で節税メリットが出にくい人

法人化を検討する最も一般的な理由のひとつが、節税です。
しかし、事業所得の水準によっては、法人化しても節税メリットが得られないどころか、かえって税負担が増える可能性があります。

個人事業主の所得税は、所得が増えるほど税率が上がる累進課税です。
一方、法人税は所得にかかわらず税率がほぼ一定であるため、所得が高くなるほど法人のほうが有利になります。
裏を返せば、所得が低い段階では個人事業主のままのほうが税率面で有利であり、法人化の節税メリットはほとんど生まれません。

加えて、法人化すると赤字であっても納付が必要な法人住民税の均等割(年間約7万円)、社会保険料の会社負担分、会計・税務処理の複雑化に伴う税理士顧問料などのコストが発生します。
所得が低い段階で法人化すると、「法人化で浮くはずだった税金」よりも「法人化で新たに発生する固定費」のほうが大きくなり、結果として損をしてしまうこともあります。

ベンチャーサポート税理士法人では、年間の事業所得が500万円を超えた辺りから法人化によるコスト削減のメリットが出やすいと考えていますが、これも1つの目安です。
実際には扶養家族の有無や各種控除の状況、営んでいる業種などによって法人化のタイミングは大きく変化します。
「自分の場合はどうなるのか」を正確に判断するには、税理士に依頼してシミュレーションを行うのが最も確実です。

より具体的な法人化のタイミングなどについては、以下の記事で解説しています。

事務負担の増加に対応する体制がない人

法人化すると、個人事業主の時と比べて会計・税務に関する事務作業が大幅に増加します。

個人事業主の確定申告(青色申告)でも複式簿記による記帳は必要とされるケースもありますが、法人の場合はそれに加えて、より厳密な会計処理や多くの届出書類の作成・提出が求められます。

具体的には、以下のような業務が発生します。

発生する業務

  • 法人税・消費税・地方税の申告
  • 役員報酬の源泉徴収と年末調整
  • 社会保険の加入手続きと保険料の納付
  • 各種届出・登記変更

これらの業務を正確に行うには専門的な知識が必要であり、すべてを自身で対応しようとすると、本業に割く時間が大幅に削られてしまいます。

法人化に踏み切るのであれば、事前に「事務処理をどう回すか」という体制づくりを済ませておくことが重要です。
税理士への依頼費用を含めた年間コストを試算し、それを賄えるだけの利益が出ているかどうかを確認したうえで判断するようにしましょう。

会社設立における税理士の役割については、以下の記事で詳しく解説しています。

信用力や事業拡大の必要性が低い人

法人化の大きなメリットのひとつに、社会的信用力の向上があります。
法人は商業登記によって会社名や所在地、役員、資本金などの情報が公示されるため、取引先や金融機関からの信頼を得やすくなります。

しかし、このメリットが実際にどれだけ意味を持つかは、事業の内容や取引先の構成によって大きく異なります。
個人向けのサービスや小規模な事業を営んでいたり、金融機関からの融資を当面は予定していない場合などは、法人格による信用力がなくても事業運営上の支障が生じにくいと考えられます。

反対に、「法人としか取引しない」という方針の企業と新たに取引を始めたい場合や、金融機関から事業資金の融資を受けたい場合などには、法人化による信用力の向上が大きな武器になります。

法人化を急ぐと後悔しやすいケース

ここまで「法人化しないほうがいい人」の特徴を解説してきましたが、実際にはこうした点を十分に検討しないまま法人化に踏み切り、後悔するケースも見られます。

よくあるケースとしては、以下のようなものが挙げられます。

よくあるケース

  • 節税効果を過大に見積もっていた
  • 維持コストと事務負担を想定していなかった
  • 売上の変動に役員報酬の仕組みが合わなかった

これらの後悔に共通するのは、法人化の「メリット」だけに注目し、「自分の状況に当てはめたときにどうなるか」を具体的に検証しなかった点です。

法人化のメリットや後悔しないためのポイント、失敗を避けるための事前準備については、以下の記事で詳しく解説しているので、あわせてご確認ください。

この記事のまとめ:法人化について悩みがあれば税理士に相談しよう

法律上、法人化できない人は会社法に定められた欠格事由に該当するごく限られたケースのみです。
自己破産した方や未成年者、外国籍の方、成年被後見人・被保佐人の方など、「法人化できない」と思われがちな方でも、所定の条件を満たせば法人を設立することは可能です。

一方で、法律上は可能であっても、事業所得の水準や事務対応の体制、事業拡大の必要性などを踏まえると、今のタイミングでは法人化しないほうがよいケースも少なくありません。
法人化は「できるかどうか」だけでなく、「今すべきかどうか」まで含めて判断することが大切です。

この判断を正確に行うには、自身の事業の数字に基づいた税額シミュレーションが欠かせません。
個人事業主のままの場合と法人化した場合で、税金・社会保険料・維持コストを含めたトータルの負担がどう変わるかは、事業の内容や家族構成、将来の計画によって一人ひとり異なります。

法人化について少しでも悩みや疑問があれば、まずは税理士に相談してみてください。

ベンチャーサポート税理士法人では、法人化の検討段階からご相談いただける無料相談を実施しています。

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