おひとりさまが亡くなったときの相続人は誰？おひとりさまができる相続対策も解説

ライフスタイルが多様化する中で、配偶者も子どももいないという人は決して珍しくありません。

そのような人が亡くなると誰が相続人になるのか、あるいはどのように相続が行われるのか、不安に感じる方もいるでしょう。

そこで、いわゆる「おひとりさま」が亡くなった場合の相続について解説します。

また、おひとりさまでもできる相続対策についても、ご紹介していきます。

おひとりさまが亡くなったときに考えられる相続人

生涯にわたって結婚したことがなく子どももいないという人は、おひとりさまに該当します。

また、結婚していたが子どもはおらず、配偶者に先立たれた人も、ここでいうおひとりさまとなります。

おひとりさまは身近なところに相続人がいないため、誰も相続人がいないと思うかもしれません。

ところが、実際にはおひとりさまにも相続人がいるケースはかなりあります。

ここでは、おひとりさまの相続人となる可能性のある人について、解説していきます。

親などの直系尊属

相続人となる人は、民法により定められています。

配偶者がいる場合は配偶者が必ず法定相続人となるほか、子どもが相続人となるケースが一番多いのです。

ところが、子どもがいない場合には被相続人の親などの直系尊属が法定相続人となります。

父親と母親のいずれかが存命、あるいは2人とも健在であれば、その人が法定相続人となります。

両親が2人ともすでに他界している場合でも、祖父母が健在であればその祖父母が法定相続人となります。

兄弟姉妹

親などの直系尊属が全員他界している場合は、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となります。

兄弟姉妹が何人もいる場合には、そのすべての人が法定相続人となります。

また、兄弟姉妹の中に亡くなっている人がいる場合は、その子ども（被相続人の甥や姪）が法定相続人となります。

遺言書に記載された人

亡くなった人が遺言書を作成していることがあります。

この場合、遺言書に財産を残したいとして記載された人は、法定相続人でなくても相続分を有していることになります。

遺言書があれば、法定相続人でなくても財産を引き継いでもらうことができます。

逆にいえば、法定相続人以外の人に財産を残したいと考えている場合には遺言書を残す必要があるのです。

特別縁故者

被相続人と同一の生計にあった人や、被相続人の療養監護を行った人は、家庭裁判所に特別縁故者と認められることがあります。

特別縁故者と認められれば、その人は相続財産の分配を受けることができます。

特別縁故者と認められるのは、内縁関係にあったなど法的には相続権がないが、事実上の配偶者や子どもにあたる人です。

あるいは、きわめて献身的に介護・監護を行った看護師などが特別縁故者と認められた事例もあります。

特別縁故者と認められるためには、家庭裁判所に請求をしなければなりません。

この請求ができるのは、相続人の不在が確定してから3か月と定められています。

被相続人が亡くなってからおよそ1年に限られることから、忘れないように手続きする必要があります。

おひとりさまに相続人がいない場合はどうなる？

ここまで、おひとりさまでも相続人となる人がいるケースを紹介してきました。

親はすでに他界しており兄弟姉妹もおらず、遺言書も作成していないというケースも少なくないでしょう。

加えて、特別縁故者に該当する人もいない場合、被相続人の財産は完全に行き場を失ってしまいます。

このような場合、被相続人が残した財産はすべて国庫に帰属することとなります。

つまり、すべて国のものとなるのです。

おひとりさまだからといって、ただちに国に財産が納付されるわけではありません。

しかし、遺言書を作成していない場合には、相続人となる人があらわれない可能性があります。

せっかく築いた財産を国に納付するのではなく、寄付や相続先を検討している場合には、遺言書が一番有効な方法です。

おひとりさまの相続時に起きやすいトラブル

おひとりさまが亡くなって相続が発生した場合には、おひとりさまでない場合とは異なるトラブルが起こる可能性があります。

ここでは、おひとりさまの相続において起こりやすいトラブルについて解説します。

相続人どうしで連絡をとることができない

おひとりさまが亡くなった場合でも、実際には相続人となる人がいることがあります。

このような場合、相続人となる人が遺産分割を行ったり相続税を支払ったりすることとなります。

相続人が相続に関する手続きを行う場合は、何をするにしても相続人全員で行う必要があります。

そのため、相続人全員がそろった状態でなければ、様々な手続きを行うことはできません。

ところが、おひとりさまの相続の場合、相続人どうしで連絡をとることができない場合があります。

中でも、親などの直系尊属がすでに亡くなっており、兄弟姉妹が法定相続人となる場合は要注意です。

兄弟姉妹が何人かいて、その中に亡くなった人がいると、その子どもである甥や姪が代襲相続することとなります。

しかし、兄弟姉妹や甥・姪であっても長年連絡をとっていない、あるいは一度も会ったことがないということも考えられます。

そもそも、連絡先を知らないということもあるかもしれません。

このような相続の場合、全体を取りまとめる人がいないために、スムーズに進まないことが多いのです。

そのため、遺産分割協議が成立しない、あるいは遺産を売却したくても売却できないというトラブルが起こりやすいのです。

相続財産を把握できない

相続人が確定し、お互いに連絡がとれたとしても、決して安心はできません。

相続の手続きを進めようとした時に、相続財産を把握できないという問題が発生する可能性があるからです。

おひとりさまでなくても、亡くなった人の財産を調べるのは簡単なことではありません。

ただ、おひとりさまの場合は、生前に身近にいた人が少なく、相続人となった人との関係も非常に希薄なことが多いのです。

そのため、相続人がすべての相続財産を把握できないことが考えられるのです。

おひとりさまができる相続対策

おひとりさまの相続には、ほかの相続とは異なるトラブルがつきものであることがわかりました。

そこで、子どもがいない人や配偶者に先立たれた方は、このようなトラブルを避けるために何ができるのでしょうか。

おひとりさまならではの相続対策について考えてみましょう。

遺言書を作成する

前述したように、おひとりさまの相続に際に発生する問題を解決する最善の方法は、遺言書を作成することです。

遺言書を作成すれば、実際に財産の相続人を確定することができます。

また、遺言書を作成すれば、財産目録を作成するので保有している財産を書面に残すことができます。

さらに、財産を国に納付することも防ぐことができます。

こうすれば、相続人や相続財産に関する大きな問題を一気に解決することができる可能性があるのです。

また、遺言書を作成すれば、法定相続人以外の人に財産をスムーズに渡すことができるようになります。

おひとりさまの場合、法定相続人がいても普段ほとんど交流のないケースもあります。

このような場合は、法定相続人に財産を渡すより、普段からお世話になっている人やより身近な人に渡したいと考えるのが普通です。

しかし遺言書がない場合、法定相続人以外の人に財産を渡すのは非常に難しいのです。

遺言書なしに法定相続人以外の人が財産を受け取るためには、特別縁故者となる必要があります。

特別縁故者として認められれば、財産を受け取ることができますが、自然に特別縁故者になるわけではありません。

財産を受け取る人が家庭裁判所に申請を行う必要があるうえ、必ずしも認められるとは限らないのです。

遺言書を作成するにあたって注意しなければならないことがあります。

まず、遺言書を作成してもその遺言書が発見されない可能性があることです。

おひとりさまが遺言書を作成した場合、その遺言書の存在に気づかれないことも十分に考えられるのです。

作成した遺言書を弁護士などに管理してもらう、あるいは公正証書遺言として作成するなどの工夫が必要です。

また、自筆証書遺言を作成した場合は、遺言書が有効に成立するための条件をクリアしなければなりません。

せっかく作成した遺言書が、形式的に無効とならないようにしなければならないようにしましょう。

なお、自筆証書遺言はすべて自筆する必要がありましたが、平成30年7月以降は、財産目録をパソコンやコピーで作成できます。

次に、法定相続人となる人には遺留分があるということです。

遺留分とは、法定相続人として最低限相続することができる財産の割合のことです。

親などの直系尊属が相続人となる場合は、全体の6分の1が遺留分となります。

一方、兄弟姉妹が相続人となる場合は、遺留分はありません。

遺言書を作成するにあたっては、遺留分を侵害しないような内容となるよう、遺留分の有無を事前によく確認しておきましょう。

遺留分が発生する場合は、遺言書があってもその遺言書のとおりに財産を引き継ぐことができない場合があるので、注意しましょう。

任意後見契約を結ぶ

おひとりさまの場合、子どもなどがいないため、基本的に身の回りのことはすべて自分で行う必要があります。

しかし、自身の判断能力が低下してくると、自身のことを自分で行うことが難しくなってきます。

そのため、財産の管理だけでなく介護や役所での手続きなども、自分で判断できなくなってしまう可能性があります。

そのために、判断能力が衰える前に、任意後見人を選任しておくといいのです。

任意後見制度では、親しい人や親族など、自分のことを安心して任せられる人を自分で選任することができます。

もちろん、弁護士などの専門家を自分で探して選任することも可能です。

弁護士が任意後見人となることで、法的に問題のない任意後見契約を締結することができます。

また、親族間のトラブルを防ぐことができる可能性が高まります。

任意後見制度を利用すれば、生前のトラブルを防ぐことができるだけではありません。

亡くなった後にトラブルにならないような遺言書の作成方法や、財産の整理に関するアドバイスをしてもらうこともできます。

亡くなった後の不安を解消するためには、任意後見制度は有効な手段となるのです。

まとめ

一般的に相続対策として紹介されるものは、配偶者や子どもが揉めないようにするものばかりです。

しかし、おひとりさまのように身近なところに相続人がいない人も少なくありません。

このような場合に起こるトラブルは、一般的な相続対策では解消することができないものばかりです。

おひとりさま特有の問題を理解し、それに対する解決策を実行するようにしましょう。

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