記事の要約
- 正味の遺産額が500万円なら、相続税はかからない。ただし、「正味の遺産額が本当に500万円であるか」に注意が必要
- たとえ手元で把握している預貯金が500万円でも、死亡保険金や名義預金、生前贈与財産などを見逃すと思わぬ相続税が発生する恐れがある
- 相続税がかからない場合でも、相続手続き自体は別途必要
正味の遺産額が500万円であれば、相続税は原則としてかかりません。
相続税には「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」で計算する「基礎控除」があり、正味の遺産額が500万円であれば、その範囲に十分収まるためです。
ただし、ここで気をつけたいのは「手元の500万円」という数字だけを見て判断してしまうことです。
相続税がかかるかどうかは、すべての財産から債務などを差し引いた「正味の遺産額」が基礎控除を超えているのかで判断します。
そのため、500万円という数字が「被相続人の遺産すべての合計なのか」、「単に手元で見つかった一部の預貯金にすぎないのか」によって、結論が大きく変わってしまうのです。
この記事では、「遺産500万円に相続税はかかるのか」という疑問に対し、正しく判断するための考え方や、見落としやすい財産等を解説します。
目次
正味の遺産額が「500万円」なら相続税はかからない
相続が発生したからといって、相続税が必ず課税されるわけではありません。
相続税がかかるのは、被相続人が残した財産の「正味の遺産額」が、「基礎控除額」を超えている場合に限られます。

正味の遺産額は、預貯金・不動産などの「プラスの財産」から、借入金などの「マイナスの財産」と「葬式費用」を差し引いた金額です。
「正味の遺産額」を正しく計算するには、以下のような財産を漏れなく把握したうえで、それぞれの「相続税評価額」を正確に算出しなければなりません。
| 種類 | 財産の例 | |
|---|---|---|
| プラスの財産 | 本来の相続財産 | 預貯金、不動産、株式、自動車、貴金属、宝石 など |
| みなし相続財産 | 生命保険金、死亡退職金 など | |
| 生前贈与財産 | 亡くなる前7年以内の暦年贈与※、相続時精算課税の適用を受けた贈与 | |
| マイナスの財産 | 借入金、未払いの税金、未払いの医療費 など | |
| 葬式費用 | 通夜・告別式・火葬にかかった費用 など | |
- ※
- 2024年1月1日以降の贈与から、課税対象の遺産に持ち戻される期間が、従来の「3年」から「7年」へと段階的に延長されている
相続税評価額とは
相続税評価額とは、相続税を計算する際の基準となる財産の価額です。
原則として「被相続人が亡くなった時点での財産の価値(時価)」で評価し、たとえば現預金なら「相続開始時点の預金残高」がそのまま評価額となります。
しかし、土地、建物、有価証券などは価値が変動することから、国税庁が定める「財産評価基本通達」等のルールに従って算出しなければなりません。
財産ごとに計算ルールや補正が複雑なため、実際にこうした財産を評価する際は、専門家へのご相談をおすすめします。
こうして計算した正味の遺産額が「500万円」であれば、基礎控除額である「3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)」以下となるため、相続税はかかりません。
把握漏れしやすい財産に注意が必要
前出のとおり、正味の遺産額が「500万円」であれば、相続税はかかりません。
ただし、この判断が正しく成り立つのは、「正味の遺産額が正確に500万円であること」が前提です。
仮に「手元で把握している預貯金が500万円だから大丈夫」と考えていても、見落としている財産があれば、意図しない形で相続税がかかってしまうかもしれません。
ここからは、そのような「把握漏れしやすい代表的な財産」について、以下の順で詳しく解説していきます。
- 死亡保険金のような「みなし相続財産」を受け取った
- 子や孫の名義で貯めた「名義預金」がある
- 過去に「生前贈与」を受けた
死亡保険金のような「みなし相続財産」を受け取った
相続税の計算時に見落としがちな財産の一つが「みなし相続財産」です。
みなし相続財産とは
みなし相続財産は、被相続人が亡くなったことをきっかけに取得した財産のうち、民法上は相続財産ではないものの、相続税法では「相続等で取得した」とみなされて相続税の課税対象とする財産です。
みなし相続財産は遺産分割の対象に含まれない一方、相続税の計算時には相続財産としてみなされることから、被相続人の財産調査をする際に見落としやすい点に注意が必要です。
「みなし相続財産」の代表例が「死亡保険金」です。
「被相続人が保険料を負担し、かつ被保険者であった」死亡保険金を受け取った場合、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。
ただし、受取人が法定相続人であれば、死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」で計算する非課税枠が設けられています。
この場合、受取額から非課税枠を控除した残額に対してのみ、相続税が課税されます。
たとえば、受取人が配偶者と子2人の合計3人のケースでは、死亡保険金の非課税枠は1,500万円です。
死亡保険金の受取額が1,500万円までであれば、相続税はかかりません。
子や孫の名義で貯めた「名義預金」がある
税務調査で指摘されやすく、相続税の計算でも見落としがちなのが「名義預金(めいぎよきん)」です。
名義預金とは
名義預金とは、口座の名義が子や孫、配偶者などの親族であっても、実質的には被相続人がお金を出し、管理を行っていた預金口座のことです。
名義が家族のものであっても、実質的な所有者が被相続人と判断される場合、税務上は「被相続人自身の財産」として相続税の課税対象に加算されてしまいます。
たとえば、親が子に無断で開設と積立を行っていた口座について、子自身が通帳や印鑑を持っておらず、自由に使えない状態であれば「名義預金」とみなされる可能性が極めて高くなります。
仮に被相続人名義の預貯金が500万円程度であったとしても、家族名義の口座に「名義預金」が存在していた場合、それらがすべて相続財産として扱われます。
その結果、意図せず基礎控除額を超えてしまうケースもあるため、名義人の財産だと安易に判断せず、慎重に確認することが大切です。
過去に生前贈与を受けた
被相続人が亡くなる前に行われた贈与の一部は、相続時に相続財産へ加算され、相続税の課税対象に含まれます。
この仕組みを「生前贈与加算(持ち戻し)」といい、相続時に見落としやすい財産の一つです。
「生前贈与加算」の対象となる贈与には、以下の2つが挙げられます。
- 暦年課税による贈与
- 年110万円の基礎控除を超える贈与について、毎年申告・納付を行う一般的な贈与方式です。
被相続人が亡くなる前7年以内に、「相続や遺贈によって財産を取得した人」が受けた贈与は、相続財産に加算されます。
なお、2024年1月1日以降の贈与から、持ち戻し期間が従来の「3年」から「7年」へと段階的に延長されるほか、延長された過去4~7年分の贈与については、合計100万円まで持ち戻しから除外できます。 - 相続時精算課税制度による贈与
- 累計2,500万円まで「贈与税」を非課税とし、贈与者が亡くなったときに「相続税」として一括精算する方式です。
年110万円の基礎控除を差し引いた残額が、相続時にすべて相続財産へと加算されます。
贈与自体は過去の出来事であるため、「すでに自分名義になっている財産だから、今回の相続とは無関係」と誤解しがちです。
相続発生時に失念しやすいため、注意しましょう。
相続税がかからない場合でも必要な相続手続きがある
正味の遺産額が基礎控除額以下で「相続税がかからない場合」でも、被相続人の財産の名義や権利を引き継ぐためには、以下のような相続手続きを行わなければなりません。
- 遺産分割協議と遺産分割協議書の作成
- 遺言書がない場合、法定相続人全員で遺産の分け方を話し合います。
この遺産分割協議で「誰がどの財産を引き継ぐか」を決め、合意内容に基づいた遺産分割協議書を作成します。 - 不動産の相続登記(名義変更)
- 不動産を相続した相続人は、法務局での相続登記(名義変更)が必要です。
令和6年(2024年)4月1日より相続登記が義務化され、「不動産の取得(相続)を知った日から3年以内」に申請を行わなければなりません。 - 預貯金(銀行口座)の名義変更・解約
- 口座名義人が亡くなったことを金融機関が把握すると、該当口座は凍結されます。
遺産分割協議書などの必要書類を提出し、各金融機関の窓口で名義変更や解約(払い戻し・分配)の手続きを行います。 - 有価証券(株式や投資信託など)の名義変更
- 有価証券が相続財産に含まれている場合、被相続人が口座を開設していた各証券会社(または金融機関)で名義変更を行う必要があります。
もし複数の証券会社で株式等を保有していた場合は、それぞれの会社ごとに所定の手続きを行います。
また、「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減(相続税の配偶者控除)」といった制度を利用した結果、最終的な相続税額が0円になるケースがあります。
この場合、相続税の申告手続きが必要となる点に注意しましょう。
「税金が0円だから申告しなくていい」と勘違いして放置してしまうと、制度の適用自体が認められなくなります。
「相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内」に、必ず管轄の税務署へ申告書を提出しましょう。
相続税や相続に関する疑問は専門家へご相談を
この記事では、「遺産が500万円の場合に相続税がかかるのかどうか」について、正しい判定方法や注意点とともに解説しました。
正味の遺産額が500万円であれば相続税はかかりません。
ただし、大切なのは単に「手元の500万円」という数字を見るのではなく、「遺産の総額(正味の遺産額)」で判断することです。
記事で取り上げた「死亡保険金」や「名義預金」のような財産を含めて計算し直した結果、実際の正味の遺産額が膨らみ、思わぬ形で相続税が発生してしまうケースもあります。
亡くなった方の財産をすべて漏れなく洗い出し、正確な遺産額を確認することが正しい判定の第一歩です。
なお、財産の洗い出しや相続税評価は、ご自身だけで進めると見落としが発生しやすい非常に繊細な作業です。
「この財産も総額に含めるべきなのか」「我が家の場合は本当にかからないのか」と疑問や不安が生じた場合、早い段階で相続に詳しい専門家に確認しておくと安心です。
VSG相続税理士法人では、相続人の皆さまのお悩みについて、平日夜21時まで・土日祝も無料相談を受け付けております。手続きや申告の要否でお困りの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

