東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
交通事故に遭い、強い恐怖の念に晒されると、その場面を何度も思い出して恐怖を感じてしまうようになることがあります。
このような症状を「フラッシュバック」と言います。
つらい記憶を何度も想起するのは心身ともに大きな負担となり、一刻も早く症状を改善させたいものです。
この記事では、フラッシュバック症状に悩んでいる方に向けて、その治療法や、後遺障害認定と慰謝料についてご紹介します。
参考になれば幸いです。
目次
交通事故後のフラッシュバックは、PTSDの症状の一種とされています。
PTSDとは、心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder)の略で、強い恐怖心を抱いた記憶が心の傷となり、その後も引き金となることがあると当時と同じ強さで恐怖を感じ続けてしまう病気です。
頻繁にその記憶を思い起こすため日常生活に支障をきたすこともあり、当事者にとってはとてもつらい日常が続きます。
発症のきっかけは、交通事故以外にも大きな震災による被災経験や、暴力行為などの生命の危機を感じる経験なども多いとされています。
PTSDは誰でもなり得る病気で、実際に事故に遭った人のみならず、それを近くで見ていた目撃者等も、大きなショック体験により発症する可能性があるといわれています。
交通事故後のPTSDは、具体的にどんな症状が現れるのでしょうか。
ここではフラッシュバックを含め、代表的な症状を4つご紹介します。
日常の些細なことがきっかけで、事故当時の体験をまるでもう一度体験しているかのように鮮明に思い起こしてしまいます。
思い出そうとしていなくても、事故現場の悪夢を見たり、その時の記憶が何度もフラッシュバックしたりしてしまうため、強い苦痛を感じます。
意図しないフラッシュバックを避けたい気持ちが強くなると、無意識に事故に関わる記憶について回避しようとするようになります。
たとえば車に乗ることを嫌がる、事故の事後手続きを避けるなど、事故に極力触れないようにしたがるなどの反応が見られます。
また、恐怖心を抑えるために感情自体が鈍くなってしまい、嬉しい・楽しいといった前向きな気持ちも感じづらくなることがあります。
負の感情にとらわれる時間が次第に長くなり、自身や周囲の人に対して否定的な感情を持ちやすくなります。
その結果無気力になったり、孤独感が強くなったりします。
事故に遭ったことのストレスから自律神経が乱れ、動悸や不眠などの症状が現れます。
仕事などに集中できなくなり、日常生活に支障をきたす場合があります。
交通事故のフラッシュバック症状は、誰にでも起こる可能性があります。
このとてもつらい症状は誰に相談し、治療を受けるべきなのでしょうか。
ここでは、受診したい医療機関や、具体的な治療法についてご紹介します。
PTSDは神経症のため、精神科や心療内科など、メンタルヘルスの専門医に相談することが重要です。
中にはPTSDを含むトラウマ治療を専門にしている医師もおり、まずは近くのクリニックなどを受診して紹介を受けることも有効でしょう。
また、慰謝料請求の前提となる後遺障害認定には、医師の診断が必要となります。
医師に正しく心身の被害状況を把握してもらい、投薬だけでなくカウンセリングや認知行動療法が必要であるという診断が認定に有効となるでしょう。
まずは精神科や心療内科を受診することをおすすめします。
フラッシュバック症状を含むPTSDの主な治療方法は、精神療法と対症療法が一般的だと言われています。
精神療法とは、心の傷の修復をするために、様々な手法を用いて過去のつらい記憶と向き合うことで、PTSDそのものを改善させる治療です。
精神療法と並行し、服薬などを行い、今ある特定の症状を和らげる対症療法も同時に行います。
これらの治療を継続的に行い、少しずつ寛解を目指すのがPTSD治療の一般的な流れと言えるでしょう。
PTSDは、通常は適切な治療により、数カ月程度で改善することが多い病気です。
しかし、長い間症状がよくならずに、後遺障害として認定される場合もあります。
ここでは、PTSDやフラッシュバックが後遺障害認定されるためのポイントや、認定される場合の等級などについて解説します。
PTSDが後遺障害認定されるには、事故との因果関係を証明できるかどうかが重要であり、これが後遺障害認定を難しくさせるポイントでもあります。
PTSDは怪我などと違い見た目に現れず、発症当時本人でさえも気が付いていないという場合があります。
また、事故から大分時間がたった頃に突如として発症する可能性もあり、原因が数年前の事故にあると証明するのに困難を極めることがあります。
また、怪我と違い、目で見てわかる症状ではないため、症状固定の判断が難しいこともまた、PTSD特有の問題と言えるでしょう。
後遺障害認定について上記の事情などで困っている方は、一人で悩まず、医師や弁護士などの専門家に早めに相談してみることをおすすめします。
後遺障害等級は1級から14級までに分類され、1級が最も重く、14級が最も軽い後遺障害となります。
認定された等級に応じて、慰謝料額の基準がそれぞれ定められています。
慰謝料の基準は主に3つあり、自賠責保険の基準・任意保険の基準・裁判所の基準に大別されます。
下記は、PTSDが認定される可能性のある後遺障害等級と、それに応じた後遺障害慰謝料額の一覧です。
(任意保険基準は任意保険会社につきばらつきがあるため、割愛)
等級 | 認定基準 | 慰謝料額 自賠責保険基準 | 慰謝料額 裁判所基準 |
---|---|---|---|
9級 | 通常の労務に服することはできるが、就労可能な職種が相当な程度に制限されるもの | 249万円 | 690万円 |
12級 | 通常の労務に服することはできるが、多少の障害を残すもの | 94万円 | 290万円 |
14級 | 通常の労務に服することはできるが、軽微な障害を残すもの | 32万円 | 110万円 |
たとえば、仕事に就くことは出来ても、これまで担ってきた複雑な処理が必要とされる職務の遂行が難しくなる等の制限が生まれる場合などは、9級10号に認定される場合があります。
また、後遺障害慰謝料の他にも、以下の賠償を加害者へ求めることが可能です。
フラッシュバック症状は、悩まされている当事者にとっては非常に苦しく、一刻も早く改善したいものです。
PTSDの多くは、早期発見・早期治療で慢性化を防ぐことができ、数カ月程度で回復すると言われています。
早期に適切な治療を受けると同時に、受けた精神的苦痛については加害者に請求をしてきちんと賠償してもらいましょう。
PTSDの後遺障害認定につき不安や懸念点のある方は、ぜひ早めに医師や弁護士などの専門家に相談してみてください。