東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
交通事故の治療において診断書は、障害認定や賠償金などの請求に使用するため取っておきたいものです。
しかし医師によっては、なかなか診断書を書いてくれないことがあります。
医師が診断書を書いてくれない理由は、以下のように正当である場合とそうでない場合の2通りが考えられます。
今回は交通事故の診断書を書いてもらえない理由と、書いてもらうためのポイントを解説します。
医師が診断書を書いてくれない理由には、いくつか考えられます。
不当な理由であれば、早めに対応することが重要です。
どのような理由が考えられるか、順番に解説していきます。
診断書は治療を行った医師が作成するものですが、作成の依頼をしなければ書いてもらえません。
医師法には「診断書の交付の求があった場合には、拒んではならない」とだけ定められています。
つまり請求がなければ、診断書を作成する義務はないということです。
治療を受けているからと言って、自動的に書いてもらえるものではありません。
診断書が必要であれば、作成を依頼しましょう。
交通事故の治療において、治療を続けてもこれ以上の回復が見込めないと診断される段階があります。
この状態を症状固定といいます。
通常のケガと異なり交通事故によるケガは、むち打ちによる痛みや骨折による骨のゆがみなど、治療を続けても完治が難しく、後遺症が残る場合が多いです。
ある程度治療を行い、これ以上の回復は見込めないと判断されると症状固定と診断されます。
診断書は、症状固定の診断が出てから書くことができるものです。
まだ治療の途中である場合は、治療が終了する、あるいは症状固定の診断が出るまで治療を継続しましょう。
治療には、定期的な通院が必要です。
しかし継続して通っていないと、医師が十分に治療経過を観察できていない場合があります。
転院した場合も、転院先の医師が今までの治療経過を把握できていないときは、診断書を書いてもらえないことがあります。
診断書は交通事故でけがをした時点からの治療過程を記録し、今後の見通しを記載するものです。
診断書だけ書いてほしいと言っても、経過がわからなければ医師も書く根拠がありません。
このように、医師に治療経過がわかるようにしましょう。
診断書は出さないと言われたケースでは、不当な理由であることが考えられます。
中には「交通事故の問題に巻き込まれたくない」と考える医師がいることも否定できません。
診断書を書いたからと言って、事故処理に協力をする必要はなく、手を煩わせることはありません。
警察や裁判所から協力を要請されることもないでしょう。
しかし、医師の中には誤解をしている人もいるようです。
もし自分で説明することが難しい場合は、交通事故の処理に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
医師から見て、「診断書が必要なほどの症状ではない」と思っている可能性も否定できません。
特に精神的な面や目に見えない症状は、患者本人と医師の間で認識の差が大きい場合もあります。
後述する後遺障害は、局所的なしびれや傷痕でも認められることがあります。
どのような症状で困っているのか、診断書がなぜ必要なのかをわかりやすく説明しましょう。
診断書を書いてもらえないと、どのようなことになるのでしょうか。
交通事故の診断書は、医療保険などの請求以外に、慰謝料や賠償金の請求という重要な役割があります。
ここでは、診断書が必要な手続きについて解説します。
後遺障害とは、交通事故によるケガがもとで、精神的・肉体的に何らかの症状が残り、労働能力の低下あるいは喪失が認められる状態のことです。
あわせてその症状が、自賠責保険の等級に該当する程度である必要があります。
1級~14級までの等級があり、介護を要するものとそれ以外に分けられます。
後遺障害の認定申請は書面主義と言って、書類の記載内容のみで審査が行われるものです。
そのため申請には、診断書の提出が必須です。
診断書を書いてもらえないと、後遺障害の認定申請ができないということになります。
後遺障害が残った場合、加害者との交渉で後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を求めることができます。
後遺障害慰謝料は、後遺障害が残ったことによる精神的苦痛に対する補償です。
後遺障害逸失利益とは、本来取得できるはずの利益が、後遺障害の影響により減少することに対する補償です。
後遺障害認定申請により等級が正しく認められなければ、後遺障害に関する賠償を受けることができません。
慰謝料や賠償金は高額になるケースが多く、被害者にとって今後の生活においても重要なものです。
診断書は必ず書いてもらうようにしましょう。
通常であれば、診断書は依頼すれば書いてもらえます。
しかし前述したように、様々な理由で書いてもらえないケースがあるのも事実です。
ここでは診断書の考え方と書いてもらう方法、書き方の注意点を解説します。
そもそも医師は医師法により、正当な理由なく診断書の作成を拒んではいけないと決められています。
正当な理由とは、治療経過を十分に見れていない場合や治療途中である場合です。
それ以外の関わりたくない、よくわからないという理由で拒むことはできません。
不当な理由で拒まれている場合は、はっきりと診断書の必要性と作成義務について伝えましょう。
ただし、医師との関係が悪くなると、今後の治療が続けにくくなります。
伝え方には一定の配慮をするように心がけましょう。
本来であれば、よくわからないという理由で診断書の作成を拒むことはできません。
しかし中には診断書を書いた経験が少なく、書き方がわからないというケースも存在します。
そんな時はひな形やサンプルを提示すると、スムーズに進むことがあります。
後遺障害認定のためにどんな内容が必要か、ある程度型が決まっていれば書いてもらいやすいでしょう。
依頼する際は「こちらのひな形で作成をお願いします」とシンプルに伝えるのがよいでしょう。
後遺障害認定は書面主義であるため、等級の認定には診断書の書き方が重要になります。
診断書を書く際のポイントは、以下のとおりです。
これらの内容がわかるように記載してある必要があります。
診断書を作成してもらったら、しっかりと内容を確認しましょう。
どうしても診断書を作成してもらえないときは、転院も視野に入れましょう。
正当な理由なく診断書を出さない医師に対しては、患者側も寄り添ってくれていると感じられないかもしれません。
後遺障害があってつらいということを、しっかり受けとめてくれる医師を探しましょう。
ただし、転院する場合は早めに対応することが大切です。
後遺障害の認定には、事故後の最初の治療から、時系列に沿って治療過程を説明する必要があります。
最初に診断した医師の意見が尊重されるため、治療が進んでから転院すると、後遺障害認定に影響出る可能性があります。
また、転院先の医師から「治療の経過がわからず診断書が書けない」と言われる可能性も考えられます。
転院する際はこれまでの過程を説明し、診断書を書いてもらえるか確認してから早めに対応しましょう。
ここでは、これらの疑問を解説します。
診断書は、治療を行った医師が作成する公的書類です。
整骨院や接骨院は健康保険で施術を受けられる施設ですが、医療機関ではありません。
施術を行うのは柔道整復師で、治療や診断を行うものではないため診断書を書くことはできない職種です。
病院で診断書を書いてもらえないために、整骨院・接骨院で依頼することはできません。
診断書は症状固定の診断が出たら、できるだけ早く書いてもらうようにしましょう。
後遺障害に関する賠償金の請求期限は、症状固定から5年です。
後遺障害の認定は通常、申請から60日ほどで結果が出ます。
しかし重い後遺症などの場合は認定に時間がかかり、結果が出るまでに相当の期間を要することもあります。
また、加害者との示談交渉にも時間がかかり、揉めるとさらに年単位で長期化する恐れもあります。
後遺障害の認定申請は、早めに出しておくに越したことはありません。
診断書は、症状固定後の早い段階で書いてもらうようにしましょう。
交通事故の診断書は、後遺障害の認定に必要なものです。
後遺障害の認定は慰謝料や賠償金の請求に関わり、今後の生活にも大きく影響します。
症状固定の診断が出れば、早めに診断書を書いてもらいましょう。
もし診断書を書いてもらえないときは、なぜ書いてもらえないのか、理由をはっきりさせることが大切です。
医師に診断書の作成を自分ではスムーズにできないと不安に思った場合は、交通事故に詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。