東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
自動車教習所で仮免(仮運転免許証)を取得すると、公道を使った路上教習が始まります。
教習車には教官が同乗しており、助手席にはブレーキもありますが、右左折などのタイミングは基本的に自分で判断しなければなりません。
教習車で事故を起こしてしまった場合、誰がどのような責任を負うのか、正しい理解が必要です。
仮免許中は教習車以外で運転するケースもあるため、事故を起こしたときの初期対応も知っておくとよいでしょう。
今回は、教習車の事故で運転者本人が負う責任や、教習車以外で事故を起こしたときの注意点などをわかりやすく解説します。
目次
教習車で事故を起こした場合、仮免許中であっても運転者本人が責任を負わなければなりません。
仮免許を取得すると、一定条件のもとに路上運転できるようになりますが、事故を起こしたときの責任は一般的なドライバーと同様です。
具体的な責任の範囲は以下のようになっており、悪質な事故の場合は刑事責任を問われる可能性もあるでしょう。
なお、自動車教習所は教習生にも保険をかけている場合が多いため、民事的な責任は保険によって補償されます。
教習車で人身事故を起こし、被害者を死傷させた場合は刑事責任を問われる可能性があります。
路上教習中に危険な運転があった場合、通常は教官がブレーキを踏むため、人身事故になるケースは少ないでしょう。
しかし、ウインカーを出さない急な割り込みや赤信号無視など、悪質な運転とみなされた場合は、仮免許でも刑事責任を負わなければならないケースがあります。
人身事故で刑事裁判にかけられた場合、罰金刑や懲役刑になる可能性もあるため、路上教習には細心の注意を払ってください。
教習車の路上教習で人身事故や物損事故を起こすと、仮免許でも行政責任を負います。
各都道府県の公安委員会から行政罰が下された場合、仮免許の取消し処分になる可能性もあるでしょう。
仮免許は再取得できますが、取消処分違反者講習を受講しなければなりません。
仮免許の路上教習で事故を起こした場合、運転者は被害者に対する民事責任(損害賠償責任)を負います。
自動車教習所は総合補償保険に加入しているケースが多く、治療費や慰謝料などの賠償金は保険でカバーされるため、自己負担はほぼないでしょう。
なお、被害者が入院したときはお見舞いに行くなど、社会的責任も果たすことをおすすめします。
仮免許中の事故は運転者の行政責任などを問われますが、以下のように教官や教習所が責任を負うケースもあります。
事故が発生したときは責任の所在が曖昧にならないよう、事故原因を正確に把握しておきましょう。
教官が仮免許中の運転者に対し、適切な指導や監督義務を怠ったときは、教官も被害者への賠償責任を負わなければなりません。
自動車教習所の教官には安全運転を指導し、交通事故を起こさないように監督する義務が課されています。
しかし、教官が居眠りをしていた、またはスマートフォンを操作していたために補助ブレーキのタイミングが遅れたなどの過失がなければ責任を追及することは難しいでしょう。
仮に路上教習中の事故で教習生が亡くなったとしても、教官が100%の責任を負うケースはごくわずかです。
教官に居眠りなどの過失があったときは、教習所も使用者責任を問われます。
教習所が教官に対して適切な指導を行っておらず、結果的に仮免許中の事故につながった場合、教習所も賠償責任を負わなければならないでしょう。
仮免許の取得後は教習車以外でも運転できるため、子どもが親に同伴してもらい、公道を運転するケースがあります。
家族の車で仮免許中の運転者が事故を起こした場合、免許取消しや違反点数は以下のように扱われます。
仮免許中の違反は本免許と同じ扱いになるため、違反点数に応じた反則金を払わなければなりません。
たとえば、20キロ未満のスピード違反や車間距離不保持は1点の違反点数となり、夜間に無灯火で走行した場合は、さらに1点が加算されます。
累積した違反点数が6~14点の場合は免許停止処分、15点以上は免許取消しになるため、取消処分違反者講習を受講する必要があります。
仮免許中に以下のような違反があると、免許停止や免許取消しになります。
仮免許で公道を運転する場合、第一種免許の取得から3年経過している人、または21歳以上の第二種免許取得者が同乗している必要があります。
公道で運転練習したいときは、運転歴の長い親などに同乗してもらいましょう。
仮免許は本免許取得の一歩手前になるため、「路上でもう少し練習したい」と考える方もおられます。
指導資格のある同乗者がいれば公道の運転は可能ですが、以下の注意点を理解しておかなければなりません。
教習車以外の運転は事故の発生率が高くなるため、保険の適用範囲や事故後の対応も知っておくとよいでしょう。
仮免許中は練習以外の運転が認められておらず、「ドライブの爽快感を味わいたい」などの運転目的は無免許運転とみなされます。
練習以外の運転は仮免許運転違反となり、違反点数12点の行政処分を受けるため、仮免許を取り消される恐れがあるでしょう。
また、仮免許では自動車専用道路や高速自動車国道、常に渋滞している道路は運転できません。
路上で練習したいときは、指導資格のある家族などに相談し、安全なコースを考えてもらいましょう。
家族の車を使って路上で運転練習するときは、家族が加入している任意保険の補償範囲を確認してください。
任意保険の補償範囲が契約者本人とその配偶者などに限定されていた場合、仮免許の運転者が事故を起こすと、賠償金を自己負担しなくてはなりません。
また、自賠責保険の補償額には限度があるため、家族が任意保険に加入しているかどうかも確認する必要があります。
被害者に重度の後遺障害が残ったときや、死亡事故になった場合、自賠責保険だけでは十分な補償ができません。
仮免許中に公道で運転練習する必要があれば、家族の任意保険契約が「対人賠償あり」や「運転者限定なし」なっているか確認しておきましょう。
仮免許で事故を起こした場合、その後の事故対応は本免許と同じです。
交通事故の状況にもよりますが、基本的には以下の対応が求められます。
事故の相手方や、事故に巻き込まれた歩行者などが負傷したときは、救護を優先しなければなりません。
交通事故は警察への通報が義務付けられているため、車両の破損のみでも必ず110番通報してください。
事故から数日後に後遺障害が判明するケースもあるため、痛みやしびれがなくても病院の診察を受けておきましょう。
事故の初期対応が終わったら、相手方の保険会社と示談交渉し、過失割合や賠償金の額などを決定します。
教習車で事故を起こした場合、原則として運転者が責任を負います。
仮免許を取得すると公道を運転できますが、自分が通う教習所の保険や、家族の車で練習する場合には保険の契約内容について確認してからにしましょう。
教習中の事故であっても、悪質な運転は刑事責任や行政責任、民事責任を問われる可能性があります。
訴訟や損害賠償請求などに対応すると、運転免許取得の見通しが立たないばかりか、就職に悪影響を及ぼすケースも考えられるでしょう。
仮免許中に事故が発生し、示談交渉などの対応に困ったときは、弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所の無料相談を活用してください。