

東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。

目次
脇見運転は、スマートフォンやカーナビを見る、助手席の人に目を向けるなど、運転中に前方以外へ注意を向けることで起こります。わずかな時間でも前方の確認が不十分になれば、重大な事故につながるおそれがあります。
ここでは、脇見運転の意味や具体的なケース、前方不注意・漫然運転・安全不確認との違いについて解説します。
脇見運転とは、運転中に前方以外へ注意を向け、前方への注意が散漫な状態で運転することをいいます。「数秒程度なら問題ない」と考えてしまうかもしれませんが、わずかな時間でも走行中の車はかなりの距離を進んでしまうことを頭に入れておかなければなりません。
スマートフォンなどの画面を見ることで危険を感じるまでの時間は運転環境によって異なるものの、2秒以上画面を見ると危険を感じるという研究結果があります。時速40kmで走行している場合、車は1秒間に約11m、2秒間で約22m(時速60kmなら、1秒間に約17m、2秒間では約33m)進みます。つまり、あなたが「ほんの一瞬だけ」と思って前方から目を離しても、その間に車は数十m進んでしまうことになるのです。
出典:やめよう!運転中の「ながらスマホ」違反すると一発免停も!|政府広報オンライン
速度が高くなるほど、脇見をしている間に進む距離も長くなるため、危険を発見して回避することが難しくなります。実際、令和7年の交通死亡事故をみると、第1当事者の法令違反として「脇見運転」が252件あり、全体の10.1%を占めています。「安全不確認」も244件(9.8%)あり、前方や周囲への注意を欠くことが、重大な事故につながっていることが分かります。
出典:令和8年版交通安全白書 全文(PDF版)|内閣府
このように、脇見運転は「少しだけなら大丈夫」と軽く考えられるものではありません。あなたが運転するときは、スマートフォンやカーナビなどに注意を向けず、常に前方や周囲の状況を確認することが重要です。
脇見運転は、スマートフォンを見る場合に限られません。運転中に前方から視線を外したり、運転以外のことに注意を向けたりして、前方の安全確認が不十分になれば、脇見運転に該当する可能性があります。
具体的には、次のようなケースが挙げられます。
脇見運転に当たるかどうかは、視線を外していた時間だけでなく、何に注意を向けていたのか、前方を確認できていたのかなど、事故当時の状況を踏まえて判断されます。
「少しだけ」「一瞬だけ」と思っていても、前方の安全確認が不十分になれば、脇見運転に該当する可能性があるため注意が必要です。
脇見運転、漫然運転、安全不確認はいずれも運転中の注意が不十分な状態を指しますが、注意が不十分になった原因や状況が異なります。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 脇見運転 | スマートフォンや景色などに目を向け、前方から視線を外して運転すること |
| 漫然運転 | 考え事や疲労などによって注意力が低下したまま運転すること |
| 安全不確認 | 交差点や車線変更時などに、周囲の安全を十分に確認せず運転すること |
たとえば、スマートフォンを見ながら運転して事故を起こした場合は「脇見運転」、考え事をして前方の車に気付くのが遅れた場合は「漫然運転」と評価される可能性があります。一方、右左折や車線変更の際に周囲を十分に確認していなかった場合は、「安全不確認」が問題となります。
もっとも、実際の事故では、これらの原因が明確に1つだけとは限りません。事故状況によっては、脇見運転と安全不確認など、複数の要因が重なっていると評価されることもあります。
脇見運転が事故の原因となった場合、加害者側の過失が大きくなる可能性があります。ただし、過失割合は脇見運転の有無だけで決まるわけではなく、追突事故や交差点事故、歩行者との事故など、事故の態様に応じて判断されます。
交通事故の過失割合は、事故当事者それぞれにどの程度の責任があるかを割合で示したものです。まず事故の態様ごとに基本となる過失割合を設定し、実際の事故状況に応じて修正します。
脇見運転については、その程度によって「著しい過失」や「重過失」に当たると評価され、加害者側の過失割合が加算されることがあります。たとえば、前方をほとんど見ないまま運転していたなど、事故につながる危険性が高い脇見であれば、過失が重く評価される可能性があります。
一方、あなたにも前方確認を怠っていたなどの過失がある場合は、その分だけ損害賠償額が減額されることがあります。たとえば、事故による損害が100万円で、加害者の過失が80%、被害者の過失が20%と判断された場合、被害者が受け取れる賠償金は原則として80万円となります(過失相殺)。
脇見運転をしていたからといって、必ず加害者の過失が100%になるわけではありません。実際の過失割合は、事故の態様や双方の運転状況などを踏まえて個別に判断されます。
脇見運転をした場合、状況に応じて行政上の処分だけでなく、事故を起こした場合には刑事責任や民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。特に人身事故につながった場合は、免許の点数だけでなく、刑事処分まで見据えて対応する必要があります。
脇見運転をすると、道路交通法70条の安全運転義務違反として、基礎点数2点が加算される可能性があります。さらに、脇見運転によって交通事故を起こして人を死傷させた場合は、被害者のけがの程度などに応じて付加点数が2点〜20点の範囲で加算されることがあります。
参照:交通違反の点数一覧表|警視庁、交通事故の付加点数|警視庁
安全運転義務違反の反則金は、車両の種類によって異なります。たとえば、普通車の場合は9,000円です。
参照:反則行為の種別及び反則金一覧表|警視庁
また、運転中にスマートフォンを保持して通話したり、画面を注視したりした場合は、「携帯電話使用等」の違反に問われる可能性があります。この場合の違反点数は、携帯電話使用等(保持)が3点、携帯電話の使用によって交通の危険を生じさせた場合が6点です。特に、交通の危険を生じさせた場合は6点となるため、前歴がない場合でも免許停止処分の対象となります。
なお、運転中の「ながらスマホ」には、具体的に次のような罰則が定められています。
| 違反の内容 | 罰則 | 反則金 | 違反点数 |
|---|---|---|---|
| 携帯電話等を保持して通話・画像注視した場合(保持) | 6カ月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金 | 普通車:18,000円 | 3点 |
| 携帯電話等の使用により交通の危険を生じさせた場合(交通の危険) | 1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 | 非反則行為のため反則金なし | 6点 (免許停止処分の対象) |
出典:やめよう!運転中の「ながらスマホ」違反すると一発免停も!|政府広報オンライン
なお、「携帯電話等」にはスマートフォンだけでなく、カーナビなどの画像を注視する行為も含まれます。カーナビを確認する場合も、画面を長時間注視することは避け、必要な操作は安全な場所に停車してから行うようにしましょう。
脇見運転によって人身事故を起こした場合、過失運転致死傷罪が成立する可能性があります。一方、脇見の態様が極めて悪質・危険な場合には、より重い危険運転致死傷罪の成立が問題となるケースもあります。
それぞれの犯罪と罰則は、以下のとおりです。
| 犯罪 | 成立するケース | 法定刑 |
|---|---|---|
| 過失運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法5条) | 運転上必要な注意を怠り、人を死傷させた場合。脇見運転による人身事故では、原則としてこちらが問題となります | 7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 危険運転致死傷罪(同法2条)※ | アルコール・薬物、制御困難な高速度、信号無視、妨害運転など、法律が定める特定の危険な運転行為によって人を死傷させた場合 | 負傷 15年以下の拘禁刑 死亡 |
※自動車運転死傷処罰法3条に該当する場合を除く。
脇見運転による人身事故の場合、原則として過失運転致死傷罪が適用されます。危険運転致死傷罪は法律で定められた特定の危険な運転行為が要件となるため、単なる脇見運転では通常該当しないケースが多いです。
もっとも、ながらスマホによって前方をほとんど確認しないまま走行するなど、極めて悪質・危険な運転態様の場合には、例外的に危険運転致死傷罪の適用が問題となることがあります。
被害者への謝罪や損害賠償、示談の成立などは、刑事処分を判断する際の事情として考慮される場合があります。人身事故を起こして警察や検察から事情を聞かれている場合は、早い段階で弁護士に相談することが大切です。
脇見運転によって事故を起こし、相手にけがをさせたり、車両などを損壊したりした場合、加害者は相手に生じた損害を賠償する責任を負います。
人身事故では、事故の内容やけがの程度に応じて、次のような損害を請求されることがあります。
特に、死亡事故や重度の後遺障害が残る事故では、治療費や慰謝料、逸失利益などが高額となり、損害額が1億円を超えるケースもあります。
任意保険に加入している場合は、保険会社が加害者に代わって被害者との示談交渉を行うことが一般的です。ただし、保険会社に任せておけば、必ず適切な賠償額になるとは限りません。高額な賠償請求を受けている場合や、過失割合・賠償額について争いがある場合は、早い段階で弁護士に相談することが重要です。
交通事故では、加害者が自身の脇見運転を認めるとは限りません。「急に飛び出してきた」「前方はしっかり見ていた」などと主張されることもあります。しかし、相手が脇見運転を否定しているからといって、諦める必要はありません。
脇見運転を立証し、適切な過失割合を判断するには、当事者の主張だけでなく、映像や目撃証言、事故現場の状況など、客観的な証拠を積み重ねることが重要です。
脇見運転の立証では、ドライブレコーダーや防犯カメラなどの映像が重要な証拠になります。
自分の車にドライブレコーダーを搭載していれば、事故直前の相手車両の動きを確認できます。たとえば、相手がほとんど減速せずに追突してきた場合などは、前方を十分に確認していなかったことを推認する材料になります。
また、相手車両のドライブレコーダーや車内カメラに、運転中のスマートフォン操作などが記録されている可能性もあります。相手が映像の開示を拒んでいる場合には、弁護士を通じて開示を求めることも検討します。
事故現場周辺の防犯カメラや店舗の監視カメラも確認しましょう。コンビニやガソリンスタンドなどのカメラに、事故直前の相手車両の挙動が記録されていることがあります。
防犯カメラの映像は一定期間で上書きされることがあるため、事故後はできるだけ早く映像の保存を依頼することが重要です。警察に映像の存在を伝えたり、設置者に保存をお願いしたりするなど、早めに行動を起こしてください。
事故を目撃した第三者の証言も、脇見運転を立証するうえで重要な証拠になります。
「スマホをいじりながら走っていた」「下を向いていたように見えた」といった決定的な目撃証言はもちろん、「まったく減速する気配がなかった」という走行状況の証言も、脇見運転を推認させる重要な要素になります。
ただし、目撃者の記憶は時間の経過とともに曖昧になることがあります。事故直後に目撃者がいることを確認できた場合は、警察にその存在を伝え、可能であれば連絡先を確認しておくことが重要です。
映像や目撃証言など、脇見運転を直接示す証拠がない場合でも、事故の態様や現場に残された客観的な資料を総合的に検討することで、脇見運転を推認できる場合があります。
相手が任意の開示に応じない場合、各種制度(文書送付嘱託、弁護士会照会など)を活用することで、携帯電話会社などから事故当時の通話・データ通信の履歴を取得し、脇見運転を客観的に裏付ける手がかりを得られることがあります。ただし、通話・通信履歴はプライバシー性が高く、保存期間にも限りがあるため、実際に開示を受けるには一定のハードルがあることに注意が必要です。
相手が脇見運転を否定している場合、自分の主張だけで過失割合を変更することは容易ではありません。弁護士であれば、刑事記録や実況見分調書などを確認し、事故状況を客観的に分析したうえで、証拠に基づいて相手方や保険会社と交渉できます。
脇見運転による事故では、加害者・被害者のどちらの立場でも、早い段階で弁護士に相談することで、その後の対応を適切に進めやすくなります。
ここでは、それぞれの立場における弁護士に相談するメリットを紹介します。
脇見運転で人身事故を起こしてしまった場合、被害者との示談を進めるとともに、警察・検察による刑事手続きにも適切に対応することが重要です。弁護士に依頼すれば、事故後の対応を一つひとつ確認しながら、刑事処分の軽減に向けた弁護活動を受けられます。
たとえば、次のような対応を任せられます。
自分だけで対応すると、事故後の対応が刑事処分にどのように影響するのか分からないまま、被害者への謝罪や示談交渉を進めてしまうおそれがあります。今後の人生への影響を最小限にするためにも、早い段階で弁護士に相談することが大切です。
あなたが脇見運転事故の被害者で、相手が「前を見ていた」「脇見運転はしていない」と主張している場合、脇見運転を裏付ける証拠を集め、適切な過失割合を主張することが重要です。また、保険会社から提示された示談金が適正とは限らないため、損害賠償額についても慎重に確認する必要があります。
弁護士に依頼すれば、事故状況や証拠を確認したうえで、次のようなサポートを受けられます。
自分だけで対応すると、脇見運転の証拠が十分に集まらないまま、相手の保険会社から「脇見運転の証拠がない」などと主張され、その主張を押し通されてしまうおそれがあります。
相手が脇見運転を否定している場合や、提示された過失割合・示談金額に納得できない場合は、自分だけで対応せず、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
「何秒以上よそ見をすると脇見運転になる」という明確な基準はありません。短時間であっても、前方への注意を欠いたことで事故につながれば、安全運転義務違反に問われる可能性があります。
スマートフォンの画面を見ながら運転することは、典型的な脇見運転に当たります。また、運転中にスマートフォンを保持して通話したり、画面を注視したりする行為は、道路交通法上の「携帯電話使用等」の違反に該当する可能性があります。
スマートフォンの使用中に事故を起こして人を死傷させた場合には、行政処分や刑事責任が重くなる可能性もあるため、くれぐれも安全運転を心がけてください。
カーナビやテレビ画面を長時間注視したり、助手席との会話に集中して前方の確認を怠ったりすれば、脇見運転に該当する可能性があります。
カーナビの操作や同乗者との会話そのものが直ちに違反となるわけではありませんが、運転中は前方や周囲の安全確認を優先する必要があります。
脇見運転をしていたというだけで、慰謝料が当然に増額されるわけではありません。ただし、脇見運転の態様が著しく悪質である場合などには、過失割合や慰謝料の算定に影響する可能性があります。
たとえば、脇見運転によって前方をほとんど確認しないまま事故を起こした場合などは、著しい過失や重過失として過失割合が加算されることがあります。また、事故態様や被害の程度によっては、慰謝料の増額を主張できる場合もあります。
そのため、相手が脇見運転をしていた場合は、事故状況や証拠を確認したうえで、慰謝料だけでなく過失割合や損害賠償額全体について検討することが重要です。
脇見運転とは、運転中に前方以外へ注意を向け、前方への注意が散漫な状態で運転することをいいます。「一瞬だけ」「少しだけ」と思っていても、脇見をしている間に事故につながる可能性があります。
あなたが被害者で、相手の脇見運転によって過失割合や損害賠償額について争いになっている場合は、自分だけで対応すると相手や保険会社の主張を押し通されてしまうおそれがあります。弁護士であれば、証拠の収集・分析から過失割合の交渉、弁護士基準による損害賠償請求まで、一連の対応をサポートできます。
脇見運転をめぐる事故で相手の主張に納得できない場合や、提示された過失割合・示談金額が適正なのか分からない場合は、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
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