東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
車を運転しているとよく目にする「止まれ」と書かれた赤色の標識。
ドライバーにとっては馴染み深い道路標識ですが、この標識が意味する「一時停止」について、正確な知識を持って運転している人は案外多くないのではないでしょうか。
「一時停止の一時って、一体何秒?」
「停止しなければいけないのは分かっているけど、停止位置はどこだっけ…」
「もし一時停止違反をしてしまった場合、どんな罰則があるのだろう」
この記事では、このような疑問を持っているドライバーの皆さんに向けて、一時停止の正しい知識を解説します。
目次
一時停止とはいうものの、どのくらいの時間停止すれば一時停止したことになるのでしょうか?
実は、道路交通法において「何秒」という停止時間の厳密な規定はされていません。
自動車教習所では「3秒間止まれ」と指導することが多いようですが、これは俗説であり、「3秒」という時間に明確な法的根拠がある訳ではありません。
とはいえ、一瞬でもブレーキを踏めば一時停止をしたことになるかというと、そうではありません。
具体的に、一時停止の停止時間について言及した判例を参考に、一時停止で止まるべき時間の指標を確認しましょう。
判例は、一時停止について「一時停止とは、常に瞬間的にせよ、物理的に停止しさえすれば足りるというわけのものではなく、左右の安全を確認するに必要かつ十分な時間停止することである」(引用:大阪高判昭三八・一○・二九大阪高検速報昭三九年一号’二、東京高判昭三九・五・二七東京高検速報二八○号)と定義しています。
また別の判例では、停車する秒数について「一時停止しても、1秒間くらい停車したのでは停車したことにならない。」(宮崎簡判昭四一・二・二判タニ○七号一九六頁、西淀川簡判昭三八・六・三一下刑集五巻五Ⅱ六号五七八頁)と、1秒間くらい停車した程度では左右の安全を確認するに必要かつ十分な時間に満たないことを明示しています。
つまり、具体的な秒数こそ明文化されていませんが、左右の安全確認をしっかり行うことができるほどの時間、車を完全に停止させることが「一時停止」におけるドライバーの義務となります。
停止時間と異なり、停止位置については道路交通法において明確な規定がなされています。
では、停止位置を規定する法律の内容をおさらいするとともに、停止する際の指標となる「停止線」の設置基準について確認をします。
一時停止位置については、道路交通法に以下の通り定められています。
(指定場所における一時停止)
第四十三条車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあつては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
つまり、交通整理が行われていない道路では、道路標識等により一時停止が指定されているときに一時停止しなければならず、その停止位置は停止線があれば停止線の直前・停止線がなければ交差点の直前と法律で明確に規定がなされているということです。
実際に運転をしていると「停止線が手前にありすぎて、ここで安全確認をして果たして意味があるのか…」と思うような道路に出会うことがあります。
しかし、このような道路の停止線も、下記のような国土交通省の定める一定のルールに基づいて引かれています。
…
②横断歩道がある場合は、その手前2mの位置を標準とする。
③交差道路側の走行車両を十分な見通し距離をもって視認できる位置に設置する。
④交差道路側の右左折車の走行に支障を与えない位置に設置する。
…
停止線が引かれている場所には危険が潜んでいる可能性が高いため、安易に自己判断しないことが大切です。
ルールに従って一時停止をして安全確認を怠らないようにしましょう。
「もし一時停止違反をしてしまった場合はどんな罰則が科されるのだろう…?」と心配している方もいるのではないでしょうか。
警視庁ホームページでは、「反則行為の種別と反則金の一覧表」並びに「交通違反の点数一覧表」が公開されています。
普通車の場合、指定場所一時不停止等違反に該当すると7000円の反則金が科されます。
もし一時不停止をしてしまった場所が踏切である場合には踏切不停止等違反に該当し、更に高額の9000円の反則金が科されることとなります。
普通車の場合、警察から違反現場で交通反則告知書(通称「青切符」)が交付され、違反点数が2点加算されます。
違反点数は累積方式のため、重なると免許停止になるのではと不安に思う方がおられるかもしれませんが、違反点数はある一定の条件を満たすとリセットされるしくみになっています。
具体的には、以下のいずれかの条件を満たした場合、違反点数をリセットすることができ、表面上は0点となります。
しかし、リセットの対象となるのは点数のみで違反歴は累積していきます。
また自身と周囲の安全のため、交通違反をしないに越したことはありません。
交通安全のため、交通ルールを守って運転することはドライバーそれぞれに課される大切な義務です。
特に一時停止指定場所は思わぬ危険が潜んでいる場合があるため、必ずルールに則って停止をし、より一層安全に注意を払いましょう。