東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
一時停止違反に納得がいかない場合、現場で抗議しても違反の取り消しは難しく、誤った対応をすると後々不利益を被る可能性があります。
この記事では、そうした状況に対処するための正しい手続きや対策を解説します。
青切符へのサインを拒否する方法や、裁判で違反の有無を争う手順、さらに弁護士に相談するメリットについても触れており、不当な処分に異議を申し立てる際に役立つ情報を提供します。
納得のいく解決を目指しましょう。
目次
一時停止違反は、道路交通法により以下のように定められています。
道路交通法 第四十三条(指定場所における一時停止)
車両等は、交通整理が行なわれていない交差点又はその手前の直近において、道路標識等により一時停止すべきことが指定されているときは、道路標識等による停止線の直前(道路標識等による停止線が設けられていない場合にあっては、交差点の直前)で一時停止しなければならない。
この場合において、当該車両等は、第三十六条第二項の規定に該当する場合のほか、交差道路を通行する車両等の進行妨害をしてはならない。
引用:道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)
つまり、道路標識等により一時停止すべきことが指定されている場合は、運転者に一時停止の義務が生じます。
一時停止違反に納得がいかず、その場で対応を拒んだとしても、一時停止違反を現場で取り消してもらうのは不可能に近いです。
中には罰金を無視するドライバーもいますが、支払わなかったからといって処分が自動的に消えることはありません。
いずれにせよ、正式な手続きを取らなければ、結果的にさらに不利益な状況に陥る可能性が高くなります。
正しい手順に沿って処分の取消しに向けて行動することが大切です。
ここでは、一時停止違反の処分に納得できず、青切符へのサインを拒否した場合にどうなるのかについて解説します。
反則金を支払うことに納得できない場合、反則金の支払いを拒否し、刑事手続きを通じて反則行為の有無を法廷で争う選択肢があります。
この場合、まず検察庁から出頭命令が届き、検察官による取り調べが行われます。
この取り調べで、自身の主張や反論を述べる機会が与えられます。
その後、検察官が起訴を決定した場合、刑事裁判に進展します。
裁判では再び自分の意見を主張することができますが、最終的に裁判官が「反則行為があった」と判断した場合には、刑事罰が科される可能性があります。
現場で一時停止違反を認めると、「青切符」(交通違反切符)にサインを求められます。
これにサインすることで、一時停止違反を自分で認めたとみなされます。
ただし、サインを拒否しても特に罰則はありませんが、注意が必要です。
サインをしない場合、軽微な違反に適用される「交通反則通告制度」を利用できなくなります。
この制度を使えば反則金を支払うことで裁判を回避できますが、サインを拒否するとその手続きができなくなり、最終的に裁判で争うことになる可能性があります。
つまり、青切符にサインしないということは、裁判で違反の有無を争う道を選ぶということに繋がります。
そして、もし裁判で違反が認められると、次のような刑事罰が科されるリスクがあります。
青切符にサインするかしないかは、こうしたリスクを十分に理解した上で決めることが重要です。
一時停止違反で取り締まりを受けると、まず反則金の仮納付書が交付されます。
この書類に記載された反則金(通常は7000円)を、受け取った翌日から7日以内に銀行などで支払うことで、刑事罰を回避することができます。
しかし、この仮納付書の期限内に支払いをしなかった場合、交通反則通知センターに出頭する必要があります。
そこで「桃色紙」と呼ばれる交通反則通告書を受け取り、再度反則金を支払う機会が与えられます。
さらに、仮納付書の期限を過ぎて出頭しない場合、違反日から約2カ月後に配達証明付きの書留郵便で交通反則通告書(桃色紙)が自宅に送られます。
この通告書には支払い期限があり、受け取った日から10日以内に反則金を納付する必要があります。
もしこの段階でも支払わなければ、刑事手続きに移行し、裁判で争うことになり、さらに大きな罰則や刑事罰を受けるリスクが高まります。
一時停止違反を認めた場合、具体的にどのような罰則があるのでしょうか。
一時停止違反を認めると、たとえ実際に一時停止をしたかどうかに関わらず、反則金として7,000円(踏切での一時不停止の場合は9,000円)を支払う必要があり、さらに違反点数が2点加算されます。
ここでは、罰則について詳しく見ていきましょう。
一時停止違反をすると、車種ごとに以下のような反則金が課されます。
踏切での一時停止違反の反則金
一時停止違反によって加算される違反点数は、車種に関係なく一律で2点です。
この点数は、運転者の過去の違反歴や車両の種類にかかわらず適用されます。
初めて一時停止違反をした場合、過去3年以内に他の違反がなければ、免許停止や取消しの処分を受けることはありません。
つまり、一度の違反では直ちに大きな処罰が科されるわけではなく、通常は反則金と違反点数の加算で済みます。
しかし、同じような違反を複数回繰り返した場合や、他の交通違反が重なった場合、累積違反点数が一定の基準に達することで免許停止処分が科される可能性があります。
特に、3年間の累積点数が増えていくと、最終的に免許取消しに至ることもあります。
免許取消しになると、再取得には時間と費用がかかるため、日頃から安全運転を心がけることが重要です。
(参照元:警視庁)
一時停止違反をしたとしても、すぐにゴールド免許が取り消されるわけではありません。
ゴールド免許の有効期間は5年であり、違反後も有効期間が終了するまではゴールド免許を維持することが可能です。
ただし、次回の更新時に他の違反と合わせて累積点数が影響するため、違反を重ねるとブルー免許に変更されることがあります。
したがって、ゴールド免許を維持するためにも、1回の違反でも注意が必要です。
一時停止違反を防ぐためには、正しい場所とタイミングで確実に停止することが重要です。
以下の3つのポイントを理解しておきましょう。
一時停止が義務付けられる場所は、標識がある場所だけではありません。
次のような場合にも一時停止が求められます。
次の状況では、必ず一時停止しなければなりません。
停止する際は、標識や停止線に従って正しい場所で止まることが重要です。
停止線がある場合は、その直前で完全に停止しなくてはなりません。
停止線がない場合は、交差点の手前など、指定された場所の直前で止まります。
停止線を超えて停止した場合や、タイヤや車体が少しでも飛び出している場合は「停止位置違反」とみなされます。
法律で明確に「何秒以上停止すべき」とは定められていませんが、教習所では目安として3秒止まるよう教えられています。
ただし、これはあくまで目安であり、重要なのはタイヤが完全に止まっていることです。
速度を落とすだけでは一時停止とは認められません。
前述したように、タイヤが完全に止まっていなければ「一時停止」とは言えないので、もし疑問がある場合は、その時点のドライブレコーダーの映像を確認するのが確実です。
一時停止違反にどうしても納得できず、「実際には違反していない」と確信している場合は、適切な対応を取ることで処分の取り消しを目指すことが可能です。
以下のポイントに従って慎重に対応しましょう。
一時停止違反を指摘され、「青切符」にサインを求められた場合は、まず冷静に状況を把握し、サインをするかどうか慎重に判断することが重要です。
青切符にサインをするという行為は、違反をその場で認めたことを意味し、後日その違反について異議を申し立てたり争ったりすることが非常に難しくなります。
サインをした時点で違反が確定し、反則金の支払い義務が生じるため、自分が本当に違反をしたのかをよく考えましょう。
一方で、サインを拒否したとしても、その場で罰則が即座に科されるわけではありません。
青切符へのサインをしないことで、自分が違反を認めていないことを示し、後から証拠を集め、裁判で争うことが可能になります。
たとえば、ドライブレコーダーの映像や目撃者の証言などを基に違反が事実でなかったことを証明できる場合、サインをしない選択が有効です。
ただし、サインを拒否することで裁判手続きを経て違反を争う可能性が出てくるため、どちらの選択が自分にとって適切かを考え、慎重に対応することが求められます。
警察官が作成する供述調書にサインを求められる場合があります。
この供述調書は、警察官がその場で聞き取った内容や違反の事実に基づいて作成され、後の刑事手続きで証拠として使われることがあるため、非常に重要な文書です。
調書に記載される内容は、あなたが警察官に対して行った発言や、違反の経緯に関する記録であるため、その内容が正確かどうかを十分に確認することが必要です。
もし、事実と異なる内容や、自分にとって不利益な記述が含まれている場合は、安易にサインをしてはいけません。
サインをする前に、必ず調書のすべての内容を確認し、自分の言い分が正確に反映されているかを確認することが重要です。
もし不明な点があれば、警察官に質問し、納得のいく説明を受けるようにしましょう。
間違いや不正確な情報が記載されている場合には、その場で訂正を求める権利があります。
調書にサインをした後は、その内容を覆すことが非常に困難になるため、注意深く対応することが求められます。
法律上、供述調書にサインをしない権利は保証されています。
サインをしない場合でも、それが不利益に働くことはありません。
サインを拒否しても、違反に対する異議を後で正式に主張することが可能です。
調書の内容に納得できない場合は、無理にサインをせず、自分の権利を守るために慎重に対応することが大切です。
一時停止違反が事実でないと主張する場合、客観的な証拠を提出することが非常に有効です。
最も効果的なのはドライブレコーダーの映像です。
もし映像がない場合でも、近隣の防犯カメラの映像を確認するなど、できる限りの証拠を集めましょう。
ドライバー自身や目撃者の証言を文書にまとめ、後日警察や検察庁に提出することも有効な手段です。証拠がなくても、正確に状況を伝えることが大切です。
一時停止違反が原因で運転免許を取り消される、あるいは停止されるなどして、行政処分に納得できない場合は、いくつかの方法で異議を申し立てることができます。
ここでは、具体的な対処法をわかりやすく説明します。
公安委員会が運転免許の取り消しや停止処分を下す際には、処分対象者に「意見の聴取」や「聴聞」の機会が提供されます。
これは、処分を下す前に違反者が意見を述べることができ、また証拠を提出できる場です。
たとえば、違反の事実に心当たりがない場合や、処分が過剰だと感じる場合には、この機会を利用して自分の立場をしっかりと説明することが重要です。
弁護士を代理人として立てて、代わりに意見を述べてもらうことも可能です。
この手続きに参加することで、処分を軽減できる可能性があります。
もし聴聞や意見の聴取で主張が認められず、処分が決定した場合には、「不服申し立て」を行うことができます。
不服申し立ては、行政不服審査法に基づく手続きで、処分に対して異議を申し立て、再検討を求めるものです。
免許取消や停止処分の場合、不服申し立ては「審査請求」と呼ばれます。
この審査請求は、処分を知った日から3カ月以内に行う必要があります。
審査請求を行っても処分が一時停止されることはありませんが、処分が不当である場合には取り消される可能性があります。
不服申し立てのプロセスは、まず公安委員会に「審査請求書」を提出することから始まります。
審査請求書には、自分の氏名や住所、処分の内容、処分を知った日、取り消しを求める理由などを記載します。
審査請求書が受理されると、審理員が処分の妥当性を調査し、証拠や意見を元に判断を下します。
この過程では、処分に関する弁明書が提出され、それに対して反論書を提出することができます。
最終的に審査庁が判断を下し、次のような結論が出されます。
不服申し立ての結果によって処分が取り消されることや、軽減されることもありますが、逆に棄却される可能性もあります。
もし不服申し立ての結果に納得できない場合は、さらに上位の裁判所に提訴することも検討できます。
一時停止違反を指摘されても、納得できない場合や証拠が不足している場合、自力で警察に対抗するのは難しいことがあります。
そんな時こそ、弁護士に相談することが有効です。
ここでは、弁護士に相談するメリットと、どのようにサポートを受けられるかを説明します。
一時停止違反に対して、弁護士は法律のプロとして専門的な視点からアドバイスをしてくれます。
警察の手続きに誤りがないか、証拠の取り扱いや説明の仕方に注意すべき点があるかなど、自分では気づきにくいポイントを指摘してくれるため、スムーズに事態を進めることができます。
たとえ一度の相談であっても、問題の核心を把握でき、今後の対策が明確になるでしょう。
警察や関係者とのやり取りは、個人で対応すると、どうしても感情的になりやすいものです。
特に交通違反や一時停止違反のような場面では、自分が違反をしていないと感じている場合、警察官とのやり取りがヒートアップし、冷静な判断が難しくなることがあります。
このような場合、弁護士が関与することで状況は大きく変わります。
個人で交渉を行うと、感情的になって警察官や他の関係者の心証を悪くする可能性もありますが、弁護士が介入することでその事態を防ぐ効果が期待できます。
弁護士は法律の専門知識を持っており、冷静かつ法的な根拠に基づいた交渉を行うことができるため、交渉がスムーズに進展する可能性が高まります。
また、ドライバーに対しても弁護士が適切な法律の解釈を提供することで、感情的な対立を避け、より合理的な解決策を見出すことができます。
一時停止違反が交通事故に関係している場合、違反の有無は事故の責任割合や賠償額に大きく影響します。
弁護士に相談することで、事故の相手方や保険会社との交渉も有利に進めることができ、最終的に適正な賠償額を得られる可能性が高くなります。
事故の状況を早期に把握し、適切な対応を取るためにも、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。
一時停止違反に納得できない場合、まずは冷静に対応することが重要です。
青切符にサインする前に、違反を認めるかどうかを慎重に判断しましょう。
サインを拒否した場合は、反則金を支払う手続きができなくなり、裁判で争うことになります。
裁判を選ぶ際には、ドライブレコーダーなどの証拠を集めることが有効です。
処分に不服がある場合は、意見の聴取や不服申し立てを行い、弁護士に相談することでさらにスムーズに進めることができます。