東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
ゴールド免許(優良運転者免許)は、5つある免許区分の中で最も優遇を受けられる免許です。
たとえば免許更新時の講習時間が最も短く、更新手数料も安い他、自動車保険の保険料が割引されるメリットもあります。
では、ゴールド免許保有者が一時停止違反をしてしまった場合、ゴールド免許はく奪になるでしょうか。
今回は、ゴールド免許を持つドライバーが一時停止違反した場合について、科される罰則や、その後の無事故・無違反による点数のリセット、さらに点数リセットの効果がゴールド免許更新に反映されるか否かなどを解説します。
目次
ゴールド免許を保有するドライバーが一時停止違反をした場合、ゴールド免許はどうなるのでしょうか。
一時停止違反の場合、1回違反したらすぐにゴールド免許をはく奪されるわけではありません。
ゴールド免許の有効期間は5年間であるため、ゴールド免許を所有した直後に一時停止違反をした場合でも、残りの期間はゴールド免許を保有できます。
ゴールド免許がはく奪される条件は、次の3つのうちの1つ以上に該当した場合です。
免許更新時の直近の誕生日の41日前から遡って5年間の間に、何らかの交通違反をした事実があれば、更新の際にゴールド免許がはく奪されます。
この場合、免許更新時にブルー免許(一般運転者免許)が交付されます。
5年以内に、人身事故を起こした場合、安全運転義務違反の2点に加えて、相手の負傷の程度や自身の責任の程度によって付加点数が科せられます。
そのため、人身事故を起こした時点で、次回の更新時にゴールド免許を失うことになります。
物損事故の場合は、違反点数や反則金が科されないので、ゴールド免許を失う心配はありません。
ただし、事故直後の危険防止措置義務や、警察への報告義務を怠った場合は違反点数が加算されます。また、当て逃げをしてしまった場合は、違反点数7点及び、1年以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます(道路交通法第117条)。
これらの場合、更新時にゴールド免許もはく奪されてしまいます。
交通違反の中で、取締件数が最も多いのは一時停止です。
内閣府「令和5年度交通事故の状況及び交通安全施策の現況」第2章第5節第1-43図「交通違反取締(告知・送致)件数」によれば、2023年中に起きた440万1,454件の交通違反のうち、一時停止違反は146万6,131件で、全体の3分の1を占めています。
一時停止違反行為を行うと、以下の罰則が科せられます。
指定場所一時不停止等違反と、踏切停止等違反の違反点数は、以下の表の通りです。
大型車 | 普通車 | 二輪車 | 小型特殊車 | 原付 | |
---|---|---|---|---|---|
指定場所一時不停止等違反 | 9,000円 | 7,000円 | 6,000円 | 5,000円 | 5,000円 |
踏切不停止等違反 | 12,000円 | 9,000円 | 7,000円 | 6,000円 | 6,000円 |
一時停止違反をすると、違反現場で警察官から交通反則通知書と反則金仮納付書が交付されます。
反則金を期日以内に納付すると、「反則行為に関する処理手続の特例」が適用され、刑事事件で起訴される(刑事裁判にかけられる)ことはなくなります。
上記の反則金を納めなかった場合、3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。
免許取消・免許停止などの行政処分が科される基準となる違反点数は、過去3年以内の違反行為の点数を合計して計算します。
ただし、一定期間無事故・無違反の場合、違反点数3点以下の軽微な違反行為を行っても、それ以後の無事故・無違反の期間によって、その軽微な違反点数が累積されなくなる特例があります。
特例が適用されるのは、1年間無事故・無違反の場合と、2年間無事故・無違反の場合です。
このうち、ゴールド免許との関係で注意したいのは、2年間無事故・無違反であった場合です。
2年間無事故・無違反だった運転者が、違反点数3点以下の軽微な違反行為を行ってから3カ月以上無事故・無違反だった場合、点数がリセットされます(3カ月特例)。
ただし、3カ月特例で点数がリセットされても、「違反をした」という事実は残ります。
これにより、免許更新の時にはゴールド免許がはく奪されます。
免許証の色は、あくまで過去5年間の違反歴・事故歴で決められるためです。
3カ月特例で違反点数の累積がなくなっても、「違反歴」があることに変わりはないため、ゴールド免許は継続できなくなります。
一時停止違反により、更新時にゴールド免許をはく奪されると、再度ゴールド免許に戻るまでは無事故・無違反を5年継続しなければなりません。
一時停止違反で取締りを受けた人が、処分に納得がいかない場合は、交通反則通知書に署名しないという選択ができます。
しかし、署名しなかった場合、道路交通法違反で刑事裁判にかけられる可能性があります。
一時停止違反をしていないという確信があれば、弁護士に依頼して取調べなどの手続きに同行してもらい、ドライブレコーダーなどの証拠を提示しましょう。
一時停止義務違反での取締りが不当だと思ったら、弁護士への相談をおすすめします。