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内容証明郵便は、相手に対して正式な請求や通知を行うための有効な手段です。しかし、文面の書き方や送付方法を誤ると、かえってトラブルが長引いたり、法的な効果が弱まったりするおそれがあります。
ここでは、交通事故で内容証明郵便を送る際に押さえておくべき基本ルールと注意点を解説します。
まず大切なのは、「なぜ内容証明を送るのか」を明確にすることです。たとえば、「修理費の支払いを求める」「慰謝料の請求を正式に通知する」「今後の交渉に誠実に応じてほしい」など、目的によって文面の書き方は変わります。
目的があいまいだと、相手に伝わらず、示談交渉の進展にもつながりません。
怒りや不満が残っていても、内容証明には冷静で客観的な表現を使うことが重要です。「誠意がない」「反省していない」など感情的な言葉は避け、事実と請求内容だけを淡々と記載しましょう。感情的な文面は、相手からの反発やトラブル拡大につながるおそれがあります。
事故の日時、場所、状況、損害の内容など、事実関係はできるだけ具体的に記載します。「〇月〇日〇時頃、〇〇交差点で追突された」といった形で、誤解が生じないよう正確に書くことが大切です。また、修理見積書や診断書、交通事故証明書などの証拠がある場合は、「別紙添付」と明記すると効果的です。
「民法709条に基づき損害賠償を請求します」など、法的根拠を一文加えることで、請求の正当性を示せます。また、金額や支払い期限を明確に示し、「〇月〇日までに支払うよう求めます」と具体的に記すことが重要です。抽象的な表現では、後に争いが生じた際に主張の根拠として弱くなります。
内容証明の目的は、相手に行動を促すことです。そのため、「本書面到達後10日以内にご連絡ください」など、返答期限を設けておくと効果的です。期限を設けることで、相手が対応を後回しにするのを防ぎ、交渉を前進させるきっかけになります。
内容証明郵便は、作成した文書を3通(相手用・郵便局保管用・差出人控え)用意して郵便局に提出します。
郵便局で審査・押印のうえ「書留」で送付され、控えとして1通が差出人に返されます。
また、「書留郵便物受領証」(郵便局の受付証)も発行されるため、この2点を必ず保管しておきましょう。これらが、将来的に「いつ・どんな内容を送ったか」を証明する重要な証拠となります。
文面の誤りや表現の不備があると、意図しない誤解を招いたり、請求の法的効力が弱くなったりするおそれがあります。不安がある場合は、交通事故や損害賠償に詳しい弁護士に確認してもらうのが確実です。弁護士に依頼すれば、法律的に正確な文面を整えてもらえるだけでなく、今後の交渉もスムーズに進められます。
内容証明郵便を送る際は、まず同じ内容の文書を3通(相手用・郵便局保管用・控え用)用意します。そのうえで「内容証明取扱局」の窓口に持参し、書留扱いで差し出します。手続きが完了すると、受付証と控えに押印された書面が返却されますので、大切に保管しておきましょう。
封筒には相手と差出人の住所・氏名を正確に記入します。法人や保険会社宛ての場合は、正式名称や部署名も明記してください。料金は、郵便基本料+書留料+内容証明加算(1枚480円、2枚目以降290円) が必要です。
また、日本郵便の「e内容証明」を使えば、オンライン上で24時間手続きが可能です。制度や料金の最新情報は、日本郵便公式サイトで確認しておくと安心です。
内容証明郵便を送っても、相手が返答をしない場合があります。無視されたまま放置すると、時効や証拠の問題で請求が難しくなることもあるため、早めの次の対応が重要です。
ここでは、返答がないときに取るべき主な方法を紹介します。
まず検討したいのが、交通事故紛争処理センターなどの「ADR(裁判外紛争解決機関)」を利用する方法です。無料または低費用で、専門の弁護士や相談員が間に入り、話し合いを進めてくれます。
裁判のような形式ではなく、和解を目指す手続きなので、スムーズに解決できるケースも多いです。
相手が誠実に対応しない場合は、弁護士に依頼して正式な請求書面(催告書)を作成してもらうのが効果的です。弁護士名で通知が届くことで、相手が軽視できない状況になります。
また、弁護士が介入すると、法的な根拠に基づいた請求が行えるため、今後の示談交渉を有利に進めやすくなります。弁護士費用特約があれば、自己負担なしで依頼できる場合もあります。
少額の損害賠償を求める場合は、簡易裁判所の「少額訴訟」制度を利用する方法もあります。60万円以下の請求であれば、原則1回の審理で判決を得ることができます。
また、話し合いによる解決を希望するなら、民事調停を申し立てるのも有効です。どちらも本人で申立可能ですが、不安がある場合は弁護士にサポートを依頼すると安心です。
加害者が任意保険に加入していなかったり、事故後に逃走して行方不明になったりした場合でも、政府保障事業を活用すれば補償を受けられる可能性があります。
この制度は、被害者が泣き寝入りしないように設けられたもので、加害者から損害賠償を受けられないときに、国が代わりに補償金を支払う仕組みです。補償の対象は、死亡事故・後遺障害・傷害などで発生した治療費や慰謝料などが中心です。
申請は、損害保険会社(組合)の窓口を通じて行います。ただし、事故の状況や加害者の特定状況など、一定の条件を満たす必要があるため、申請前に公式サイトで制度内容を確認しておくことが大切です。
相手が内容証明の受け取りを拒否した場合でも、必ずしも効力が失われるわけではありません。
郵便局が配達を試みた記録や不在通知などをもとに、裁判所が「通知の意思表示が到達した」と判断することがあります。
特に、相手が正当な理由なく受け取りを妨げたと認められる場合は、民法97条2項の規定によって「到達したものとみなす」扱いを受ける可能性があります。
いったん郵便局で受け付けられた内容証明は、撤回や修正はできません。文面に誤りがあった場合は、新たに正しい内容で再度作成し、あらためて差し出す必要があります。送る前に内容を慎重に確認し、誤字脱字や日付の不整合がないか見直しておくことが大切です。
はい、手書きでも問題ありません。ただし、読みづらい文字や訂正の多い文書は受け付けられないことがあるため、丁寧に記載する必要があります。パソコンで作成すれば、修正や再印刷も容易で、控えの管理もしやすいでしょう。
弁護士に内容証明の作成のみを依頼することも可能です。費用の目安は1通あたり1万〜3万円前後で、内容の複雑さによって異なります。ただし、事務所によっては「文書作成のみ」の依頼を受け付けていない場合もあるため、事前に確認が必要です。
内容証明郵便は、交通事故の相手に正式な請求や意思を伝える有効な手段です。ただし、文面の書き方や表現を誤ると、意図が正しく伝わらなかったり、法的効力が弱くなったりするおそれがあります。
特に、損害賠償の金額や責任の範囲をめぐるトラブルでは、法律的な観点からの精密な表現が求められます。不安がある場合は、交通事故に詳しい弁護士に内容を確認してもらうことが最も確実です。
相談先に迷ったら、交通事故で豊富な実績を持つ「VSG弁護士法人」までぜひお気軽にご相談ください。

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