東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
運転免許証を取得するためには、路上で運転練習をする必要があります。
その際に必要になるのが仮運転免許です。
路上での運転練習には様々な危険が伴うため、一定の条件をクリアしていなければなりません。
また、運転練習中に事故を起こしてしまった場合、誰がどのような責任を負うか、保険は適用されるかなどもあらかじめ知っておく必要があります。
今回は、仮運転免許で路上練習するための条件や、仮免許練習中に事故を起こした場合の責任や事故後の対応、仮免許練習中に注意すべきことなどを解説します。
仮運転免許とは、運転練習や運転免許試験などのために路上で自動車を運転する際に必要な運転免許です(道路交通法第87条)。
まず、仮運転免許の概要をご説明します。
仮運転免許は、取得したい免許の種類に合わせて、下記のいずれかを取得する必要があります。
このうち、大型仮免許を取得した場合は、大型自動車の他、中型・準中型・普通自動車の運転練習が可能です。
同様に、中型仮免許取得者は中型・準中型・普通自動車、準中型仮免許取得者は準中型・普通自動車の運転練習が認められます。
仮運転免許を取得する方法は、2つあります。
1つは、都道府県公安委員会から指定を受けた指定自動車教習所に入所し、修了(技能)検定合格後3カ月以内に、仮免学科試験に合格するという方法です。
2つ目は、指定自動車教習所で教習を受けずに、いわゆる「一発試験」によって仮免許を取得する方法です。
この場合、都道府県の運転免許センターや運転免許試験場で仮免試験を受験して、合格すれば仮運転免許を取得できます。
仮運転免許の有効期間は、その免許試験に合格した日から起算して6カ月です。
そのため、仮運転免許を取得してから6カ月以内に、教習所での教習を修了して、卒業検定(本試験)に合格しなければなりません。
もし期間内に教習を修了できなかったり、卒業検定に合格しなかったりした場合は、もう一度修了検定を受け、仮免学科試験を受験して仮運転免許を取り直す必要があります。
仮運転免許取得者が路上練習するためには、以下の3つの条件をすべて満たさなければなりません。
仮運転免許を取得した人が自動車を運転する際は、運転席の横に「有資格者」を乗せ、その指導を受けながら運転する必要があります。
「有資格者」は、以下のいずれかに該当する人です。
この条件を満たさなかった場合、つまり有資格者が同乗していない場合で路上運転した場合には、以下の違反点数と罰則が科せられます。
仮運転免許取得者が路上で運転する際には、必ず仮運転免許証を携帯しなければなりません。
仮運転免許証を携帯せずに路上運転した場合には、有資格者が同乗していない場合と同じく、以下の違反点数と罰則が科せられます。
また、車両の前後には、仮免許練習標識を付けなければなりません。
標識は、以下の基準を満たすものを作成・掲示してください。
警視庁のサイトで「仮免許練習標識」のPDFをダウンロードできるので、A3サイズの上質紙に印刷するのがおすすめです。
標識を付けずに路上運転した場合、以下の違反点数と罰則が科されます。
仮運転免許取得者が、路上練習中に事故を起こしてしまった場合、誰がどのような責任を負うでしょうか。
また、事故後にはどのように対応すべきでしょうか。
路上練習中の事故の責任は、教習所内の場合と教習所外の場合とで異なります。
教習所内の路上練習で事故を起こした場合、基本的には事故の責任は運転者本人にあります。
もっとも、教習所は専用の自動車保険に加入しているので、実際には教習所の保険での補償が受けられるでしょう。
また、同乗の教官が居眠り・わき見などしていて補助ブレーキを踏むのが遅れた場合、教官や、教官を雇用する教習所にも責任が発生する可能性があります。
教習所以外の場所で路上練習したい場合、家族が所有する車を借りて、運転歴の要件を満たす家族に同乗してもらうなどの方法で練習が可能です。
ただし、家族の車で路上練習していて事故を起こした場合、家族が加入している任意保険の適用を受けられない可能性があります。
家族の車を借りて路上練習する場合は、必ず任意保険の適用範囲を確認してから練習を始めてください。
仮免許練習中の事故の場合も、本免許と同様の対応をとらなければなりません。
交通事故が起きた場合、運転者はまず負傷者を救護して、周囲の安全を確保する必要があります。
救護・安全確保を行ったら、必ず警察に連絡しましょう。
自身がけがをした場合は、できるだけ早く病院に行って治療を受けましょう。
事故から時間がたつと、相手側の保険会社に事故と負傷の因果関係を否定され、治療費や慰謝料を払ってもらえない可能性があります。
怪我が完治した段階、または症状が固定した段階で、相手方と示談交渉して損害賠償や慰謝料を請求します。
通常、事故の相手方は任意保険に加入しているため、示談交渉は相手方の保険会社と行います。
保険会社が提示する示談金は最低限の自賠責基準と同等か、それに近い額である可能性が高いです。
相手方の提示に納得がいかない場合は、妥当な金額について弁護士に相談してみましょう。
事故を起こした場合、違反行為の態様や被害状況によっては、仮免許が取り消される可能性があります。
また、事故の状況に応じて違反点数が科されるのも、本免許の場合と同じです。
仮免許練習は、前述した3つの条件をすべて満たした上で行ってください。
他にも注意すべきこととして、以下が挙げられます。
路上運転は、運転免許取得のための練習や試験以外の目的で行ってはいけません。
たとえばドライブ目的で路上運転すると、仮運転免許証の利用条件に違反するため、無免許運転扱いとなり、仮免許を取り消される可能性があります。
路上練習をする場合、取得を希望する免許に対応する車(道路交通法第87条2項)を運転しなくてはなりません。
たとえば、大型試験を受験する方は、法令上は大型車以外の車種での練習も認められていますが、大型車での練習をしなければ受験できません。
仮運転免許で路上練習するには、一定の条件を満たしている必要があります。
これに違反すると刑事処分が科され、また免許停止・取消処分を受ける可能性があるので、十分注意してください。
仮運転免許での路上練習中に事故を起こしてしまった場合、仮免許中であることは過失割合に影響しません。
しかし、相手方が不当な過失割合を主張してきた場合や、示談金額に納得がいかない場合は、交通事故を専門とする弁護士への相談をおすすめします。