東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
見通しのよい直線道路や交通量の少ない道路でつい車の速度を上げてしまい、スピード違反で検挙されるケースは少なくありません。
また、他の車のスピードに釣られてしまうケースも多く、運悪く自分だけが警察の取り締まりに引っかかることもあるでしょう。
スピード違反は一発免停や免許取り消しになることもあるので、マイカー通勤している方や職業ドライバーの方は十分に注意しなければなりません。
今回は、車の速度が何キロからスピード違反になるのか、違反点数や反則金がどうなるのかわかりやすく解説します。
スピード違反の取り締まり方法も解説しますので、車をよく運転する方はぜひ参考にしてください。
目次
各道路にはスピードの限界になる最高速度や法定速度が定められており、以下のような違いになっています。
最高速度 | 各道路の標識・表示で指定された車両の限界速度 |
---|---|
法定速度 | 一般道は時速60キロ、高速走路は時速100キロ(一部110キロの高速道路もあり) |
法定速度は政令によって定められており、標識や表示がない道路では、法定速度が出してもよいスピードの限界になります。
警察の取り締まりに関係なく、原則として1キロでもオーバーするとスピード違反になるので注意してください。
スピード違反の点数と反則金は一般道路と高速道路で異なっており、違反点数に応じて青キップや赤キップと呼ばれる交通反則告知書、または告知票が発行されます。
青キップは行政処分のみとなりますが、赤キップが切られると刑事罰の対象になるので、以下の違いを参考にしてください。
一般道路のスピード違反は、以下のような違反点数と反則金になっています。
超過速度 | 違反点数 | 反則金と行政処分 |
---|---|---|
15キロ未満 | 1点 | 9,000円 |
15~20キロ未満 | 1点 | 1万2,000円 |
20~25キロ未満 | 2点 | 1万5,000円 |
25~30キロ未満 | 3点 | 1万8,000円 |
30~50キロ未満 | 6点 | 6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金 |
50キロ以上 | 12点 |
時速30キロ未満までのスピード違反は反則金を納めることで刑事責任を免れますが、30キロを超えると行政処分と刑事処分の対象になるので注意が必要です。
高速道路では、以下のようにスピード違反の点数や反則金が定められています。
超過速度 | 違反点数 | 反則金と行政処分 |
---|---|---|
15キロ未満 | 1点 | 9,000円 |
15~20キロ未満 | 1点 | 1万2,000円 |
20~25キロ未満 | 2点 | 1万5,000円 |
25~30キロ未満 | 3点 | 1万8,000円 |
30~35キロ未満 | 3点 | 2万5,000円 |
35~40キロ未満 | 3点 | 3万5,000円 |
40~50キロ未満 | 6点 | 6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金 |
50キロ以上 | 12点 |
超過速度の条件は高めに設定されていますが、違反点数が6点や12点になると刑事処分の対象となり、事故を起こした場合は死亡リスクも高くなります。
スピード違反などの違反点数は加算方式になっていますが、無事故・無違反の期間が1年を過ぎるとリセットされます。
ただし、スピード違反の状況によっては過去の違反点数に関わらず、以下のように一発免停や免許取消しになるケースがあるので注意しなければなりません。
過去の前歴に関係なく、1回の違反で6点以上の違反点数になったときは一発免停になります。
6点以上が加算されるケースは一般道路で時速30キロ、高速道路の場合は時速40キロを超えたときです。
免許停止期間は6点で30日間、12点は60日間になるので、通勤に車が欠かせない方や、職業ドライバーの方にとっては致命的なペナルティになるでしょう。
自賠責保険の未加入や無車検の運行、ながらスマホなども6点の違反となり、酒気帯び運転の場合は違反点数が13点になるので注意が必要です。
なお、交通違反や交通事故による処分歴を前歴といい、スピード違反などの常習性を考慮する際の参考要素になります。
一般道路・高速道路ともに50キロを超えるスピード違反は一発免停ですが、以下の前歴がある場合は一発で免許取消しになります。
過去3年以内に免許停止や免許取消しの処分がなくても、15点以上の違反点数になったときは免許取消し処分になります。
したがって、時速50キロ超のスピード違反で12点の違反点数だった場合でも、累積違反点数が3点あると合計15点になるため、免許取消しは免れません。
スピード違反の取り締まりには3つの方法があり、以下のように有人式と無人式に分かれています。
測量器を使った定置式速度取り締まりをネズミ捕り(通称)といい、一定区間を通過したときの速度によってスピード違反を取り締まっています。
スピード違反があったときはその場で違反キップを切られますが、待機している警察官や測量器はわかりにくくなっているため、ネズミ捕りの回避は難しいでしょう。
ネズミ捕りは車が加速しやすい場所で行われているケースが多いので、信号がない直線道路や長いカーブから直線道路につながるような場所は要注意です。
パトカーや白バイは以下のような方法でスピード違反を取り締まっています。
追尾方式 | 主に白バイが用いる速度測定 |
---|---|
レーダー測定 | パトカーに搭載されたレーダーによる速度測定 |
センサー測定方式 | 地上に配置したセンサーなどによる速度測定 |
追尾方式は対象車両を等間隔でパトカーや白バイが追いかけ、スピード違反になった時点でメーターをロックする方法です。
オービスは一般道路や高速道路に設置されており、運転者の顔とナンバープレートを自動撮影します。
警察が公表しているわけではありませんが、車両が以下の速度を超えたときに撮影されるようです。
一般道路 | 時速30キロ以上の速度超過 |
---|---|
高速道路 | 時速40キロ以上の速度超過 |
どちらも行政処分とともに刑事責任も問われるスピード違反になるため、オービスが作動したときは一発免停になる可能性が高いでしょう。
なお、オービスの装置は目視できるので、「設置場所を覚えておけば大丈夫」と思われているケースもありますが、移動式のオービスもあるので注意してください。
スピード違反で青キップや赤キップを切られた場合、必ず指定期間内に罰金を払わなければなりません。
罰金を払わなかったときは、以下のように刑事裁判になるケースがあるので注意が必要です。
交通反則の告知が赤キップだったときは刑事処分の対象になるため、警察による捜査や取り調べの後、略式裁判への同意を求められます。
同意した場合、検察官が裁判所に対して略式起訴を行い、書面のみで審理される略式裁判が開かれます。
また、略式裁判に同意しなかった場合は検察庁から呼び出しがあり、略式裁判に同意するか確認されますが、拒否したときは起訴または不起訴を検察官が判断します。
起訴された場合は正式裁判となり、有罪判決が下されると罰金刑に処されます。
スピード違反の反則金は告知日の翌日から7日以内が納付期限になっているので、必ず期限内に納付してください。
なお、納付期限を経過しても10日以内であれば交通反則通告センターで納付できます。
交通反則の告知が青キップの場合でも、罰金の支払いを放置すると赤キップと同じ扱いになるため、簡易裁判所で刑事裁判を受けなければなりません。
違反の内容が悪質な場合は逮捕されるケースもあり、起訴されると高確率で有罪判決になるため、罰金刑に処されるでしょう。
罰金を払わずに放置すると、財産を差し押さえられる可能性があります。
差し押さえた財産が罰金に満たない場合は労役場へ入ることになり、1日5,000円程度の強制労働によって罰金の不足分を支払います。
仮に不足分が10万円分だった場合は20日間の強制労働となり、労役場にいる間は外部との連絡もできません。
労役場留置が長期化すると職場を解雇される可能性があり、自営業の場合は収入が途絶えるため、スピード違反の罰金はお金を借りてでも払っておくべきでしょう。
スピード違反について、よくある質問をまとめました。
車を運転する機会の多い方は参考にしてください。
警察署によっては、公開交通取締りの予定を公開しているケースがあります。
路線や実施場所、重点的に取り締まる違反行為など、かなり詳しい情報が公式ホームページに掲載されていることがあるので、確認してみましょう。
ちなみに、警視庁の公式ホームページでは重点取締場所の地図なども公開されています。
参考:公開交通取締り(警視庁)
あります。
数字の下にアンダーラインがある道路標識は最低速度をあらわしています。
たとえば、「30」の下にアンダーラインがある場合は時速30キロが最低速度になるため、30キロ以上で走行しなければなりません。
同乗者にはスピード違反の罰則がありません。
ただし、以下のようなケースでは同乗者も道路交通法違反になる可能性があります。
同乗者も「自分の違反ではないから大丈夫」というわけにはいかないので、注意しましょう。
緊急避難とみなされた場合は、起訴されないケースもあります。
たとえば、危篤状態の家族を病院に送り届けるためのスピード違反であれば、やむを得ない事情とみなされる可能性があるでしょう。
あくまでも状況に応じたケースバイケースの判断になるため、わからないときは弁護士に相談してください。
スピード違反は行政処分の対象となり、場合によっては刑事処分も科されます。
一般的な処分は反則金や罰金ですが、悪質な場合は懲役刑になるため、公務員や会社員は失職・解雇となり、自営業者は廃業を余儀なくされるかもしれません。
仕事で車を使う方は死活問題になってしまうので、必ず最高速度や法定速度の範囲内で走行しましょう。
なお、違反者がスピード違反を十分に反省しており、常習性もないと判断された場合は検察官も起訴しない可能性があります。
弁護活動によって不起訴を獲得できるケースもあるので、刑事処分の対象になったときは弁護士に相談してみましょう。