東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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Contents
官報とは、明治16年(1883年)に始まった国の発行する機関誌です。
現在は独立行政法人国立印刷局により、休日を除く毎日発行されています。
官報には、法律・政令・条約などの交付を国民に広く知らせる役割があります。
官報の中でも、国や省庁、地方公共団体などからの告知に関するものを「公告」と呼びます。
会社の決算公告も、官報に掲載する形で行っている会社があります。
この他にも、官報公告が義務付けられているものがあり、多くの人に知らせる目的で利用されています。
官報公告が義務付けられているケースは、法律で定められています。
具体的にどのような場合に官報公告が必要なのか、その一例をご紹介します。
(1)個人に関する官報公告
(2)会社に関する官報公告
自己破産や個人再生した個人、あるいは合併や解散した会社の債権者に知らせるため、官報公告が義務付けられています。
自己破産すると、必ず官報にその事実を掲載しなければなりません。
自己破産したことは重大な個人情報であるため、官報公告により公表することは問題があるようにも思われます。
しかし、自己破産したことを官報公告することには、明確な理由があるのです。
その理由とは、債権者に自己破産の手続きの開始を知らせることです。
自己破産の手続きを行うと、破産者はすべての財産を処分し、債権者の債権残高に応じて配当を行います。
ところが、債権者が配当を受けるためには、破産手続きに入ったことを知っていなければなりません。
債権者に対しては破産者から個別に通知されますが、中には破産者が債権者であることを認識していない可能性もあります。
そこで、破産者が自己破産の手続きを開始したことを広く知らせ、債権者に名乗り出るよう促すのです。
自己破産したことを世間一般に広く知らせる方法として、官報公告が利用されています。
自己破産すると、官報にその事実が掲載されます。
具体的には、官報に以下のような項目がそれぞれ掲載されます。
(1)破産手続き開始決定後
(2)免責許可決定後
免責許可決定が出るまでは、自己破産手続き開始から少なくとも2か月程度かかります。
そのため、順調にいけば2か月程度の間に2回、官報に掲載されるのです。
これらの項目の中で、特に個人情報に該当するのは住所と氏名です。
自己破産した際に住所や氏名が公表されるのは、大きな抵抗を感じるかもしれませんが、個人を特定するためには必要不可欠です。
官報自体は書面で作成されるため、その書面自体は永遠に消すことはできません。
また有料の官報情報検索サービスも、過去のすべての官報をみることができます。
一方、多くの人が利用できる無料のインターネット版官報は、掲載日から30日間だけ公表されます。
自己破産の手続きは、返済できなくなった債務の返済を免責してもらい、それまでの借金をゼロとする手続きです。
破産者にとってはゼロからのスタートを切るきっかけとなるものとなりますが、債権者には大きな損失となります。
そのため、様々な手続きを極めて慎重に進めていく必要があります。
どのような流れで手続きが行われるのか確認していきます。
債務の返済に行き詰まった人は、弁護士や司法書士といった法律の専門家に、現在の債務の状況について相談しましょう。
自己破産の手続きを行うかどうかを判断し、その費用も確認した上で、最終的に自己破産の手続きを依頼します。
着手金として20万円程度必要となりますが、一度に払えない場合には分割払いができる事務所もあります。
弁護士に自己破産の手続きを依頼すると、その弁護士から債権者に対して受任通知を発送します。
破産手続きをしようとする人から、その手続きを行うことについて受任したため、これから自己破産を行うと伝えるものです。
受任通知を受領した債権者は、その後に債権の取り立てができなくなります。
破産者に直接連絡することもできなくなり、これ以後はすべて弁護士を通さなければならないのです。
自己破産の申立てを行う際には、数多くの書類を作成し提出しなければなりません。
裁判所に提出する書類の作成には時間がかかりますし、過去にさかのぼって多くの資料を準備しなければなりません。
書類自体は弁護士に作成してもらえますが、必要資料を提出するなど、自身でしなければならないことは沢山あります。
この書類を作成するだけで数か月かかることも珍しくないため、根気強く資料の準備を行っていきましょう。
自己破産に関する申立書類が裁判所に受理されると、まずは裁判所で裁判官と弁護士、そして本人の三者で面接が行われます。
資産の状況、借金の金額、自己破産に至った経緯などを説明しなければなりません。
提出された書類や面接で問題がなければ、破産手続き開始決定が裁判所から出されます。
また、同時廃止・管財事件・少額管財のいずれに該当するのかが決定されます。
同時廃止となれば、破産者の免責が同時に決定されるため、より早く自己破産が決定されます。
管財事件や少額管財となった場合、破産者が保有する財産を換価し、債権者が受け取れるようにしなければなりません。
そのため、破産管財人により財産の売却が進められ、最終的に債権者に平等に配当されます。
自己破産手続開始決定後、3か月ほどで債権者集会が開催されます。
債権者集会では、出席した債権者に対して配当の見込などが報告されますが、ほとんどの債権者は出席しないまま終わります。
自己破産の手続きを順に進め、最終的に裁判所から免責決定が出されます。
免責許可決定が出れば破産手続きは終了し、すべての債務について返済義務は消滅します。
この時、免責が決定する前に、裁判官との面接にあたる免責審尋が行われます。
免責審尋の2週間ほど後に、裁判所から免責許可決定が出され、すべての手続きは終了します。
自己破産の手続きを行う上では、弁護士に依頼する費用と裁判所で必要な法定費用の2種類の費用が発生します。
このうち弁護士に依頼する費用は、着手金として20万円~30万円程度、その後免責決定後に追加の費用が発生する場合があります。
一方、法定費用は同時廃止事件になるとトータルでも数万円程度で済みます。
これが管財事件になると50万円以上、少額管財事件でも20万円程度となり、事件の種類によって大きく変わります。
官報公告という言葉を聞いたことがない方も多くいるのではないでしょうか。
官報は国が発行する機関誌であり、多くの人の目に触れるようにインターネットでも公開されています。
自己破産した人の情報も、債権者が自己破産の手続きから漏れるのを防ぐため、氏名や住所まで掲載されています。
官報公告の手続きを避けることはできないため、その趣旨を理解した上で自己破産の手続きをスムーズに進めていきましょう。