東京弁護士会所属。
破産をお考えの方にとって、弁護士は、適切な手続きをするための強い味方になります。
特に、周りに相談できず悩まれていたり、負債がかさんでしまいそうで破産を考えていたりする方は、ぜひ検討してみてください。
債務の返済に苦しむ企業を救済するために、債務整理の方法が定められています。
法律にしたがって、債権金額を一部切り捨てるといった形の債務整理が行われるのが通常です。
しかし、法的な債務整理は様々な影響が大きくなるため、私的整理ガイドラインが定められ利用されています。
ここでは、私的整理ガイドラインの内容や利用条件、手続きの流れなどを解説していきます。
Contents
企業が抱えている債務の整理を行い、経営が破たんしないようにすることがあります。
多くの場合は法律に則って、借入金などの一部を債権放棄してもらうこととなります。
このとき、経営再建を目指して再建計画が作成され、その計画にもとづいて企業が運営されることとなるのです。
しかし、法的手続きは時間も費用もかかり、債権者などの関係者の合意が得にくい場合もあります。
そこで、平成13年に新たに採択されたのが「私的整理ガイドライン」です。
私的整理ガイドラインは、経済団体、銀行協会などを委員とする私的整理に関するガイドライン研究会から公表されました。
法的拘束力はないものの、債権者と債務者の合意にもとづいて債権放棄などを行う手続きが定められており、法的倒産手続きを経ることなく債務整理を行うことができるものです。
私的整理ガイドラインにはどのような特徴があるのでしょうか。
その特徴を知った上で法的整理との違いを理解し、実際に利用するかどうかの検討を行うようにしましょう。
私的整理ガイドラインの適用を受けるためには、経営者の経営責任と株主の責任を明確にしなければなりません。
このうち経営者は債権放棄を受ける際に、取締役などの地位を失うこととされています。
代わりに新たな経営者が取締役などに就任し、会社の再建を担うこととなるのです。
また、債権放棄を受けた会社は、その後再建計画を進める中で減資や増資が行われることとなります。
減資により、それまでの株主の所有していた株式の価値がゼロとなることがあります。
また、増資により新たな株主が増えた結果、従来の株主の保有する株式の価値が大幅に減少することになります。
私的整理を行うと、債権者である金融機関は債権の償却損失を計上することとなります。
この償却損失は、法的整理を行った場合と違い、債権者の損金になるとは限りません。
案件ごとに個別に損金となるかどうかの判断をしなければならず、場合によっては損金にならない場合もあります。
また、債権者自身は損金になると判断した場合でも、税務当局によりその損金が否認されることもあります。
一方、私的整理ガイドラインに沿って債務整理を行った場合、合理的に債権放棄が行われたと判断されます。
このため債権者側で損金に計上することができ、無税での償却をすることができるのです。
法的再生を行う場合、法律にもとづいて実行力のある再生計画が実行されます。
私的整理ガイドラインにもとづいて債務整理を行う場合も、同じように強力な再生計画が実施されます。
これは、私的整理ガイドラインが実行されると、再建計画成立後3年以内に一定の成果をあげることが求められているためです。
場合によっては、法的再生を行った場合より実行力のある再生計画となることもあるのです。
私的整理ガイドラインにもとづいて債務整理の手続きが進められる中で、債権者の同意が得られない場合もあります。
債権者の同意が得られない場合には、私的整理によることができなくなります。
このような場合には、法的整理に移行する必要が生じることになります。
私的整理ガイドラインに沿って債務整理を行うことができる会社には、どのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、その利用条件について確認していきます。
実際に私的整理ガイドラインに規定されている条件は、以下の4つの項目です。
(1) 過剰債務を原因として経営困難な状況に陥っており、自力での再建が困難である
会社が経営に行き詰まっている理由が、過剰な債務にあることを意味します。
支援を受けて債務超過が解消すれば、会社の再建が可能であるため、債権者の協力を求めるということになるのです。
(2)事業価値があり、重要な事業部門で営業利益を計上しているなど、債権者の支援により再建の可能性がある
本業としては利益を計上しているものの、多額の債務から発生する費用で赤字になり、資金繰りが苦しい状況を表します。
支援を受けて債務を圧縮すれば、本業の利益で再建できるという道筋が描けるのです。
しかし、債権者のうち一人でも反対者がいる場合は利用できないことには注意が必要です。
(3) 法的整理を申し立てるとその会社の信用力が低下し、事業価値が著しく毀損されるなど、事業再建に支障が生じるおそれがある
会社更生法や民事再生法などの法的整理では、社会的影響が大きく、その後の再建が難しくなることも少なくありません。
そこで、個別の債権者との話し合いで成立する私的整理を選択する方がいいケースがあるのです。
(4)私的整理を行うことで、法的整理による場合より債権者の回収金額が大きくなるなど、経済的合理性がある
法的整理を行うと、債権者の保有する債権はすべて切り捨ての対象となり、債権者にとっての損失が大きくなります。
金融機関などと私的整理で合意すれば、債権放棄の金額を最小限に抑えられ、債権者にとっても負担が少なくなるのです。
なお、私的整理ガイドラインに沿って債務整理を行う場合は、債務者の負担が相当大きなものとなります。
そのため、実際にはメガバンクがメインバンクとなっている会社でなければ難しいという現実があります。
それでは、実際にどのような流れで私的整理ガイドラインに沿った債務整理を行うのでしょうか。
その流れを確認していきましょう。
メインバンクとなっている債権者に対して、私的整理ガイドラインにもとづく私的整理を申し出ます。
この時、会社は債権者に対して、過去と現在の資産負債の状況、損益の状況、経営困難となった原因、再建計画案などを説明します。
債権者は債務者からの申し出と説明の内容を精査し、債務返済の一時停止の通知を発するかどうかの検討を行います。
債権放棄の対象となる債権者全員の同意を得られる見込みがあるかどうか、再建計画の実行可能性があるかがポイントとなります。
会社がどのような筋道で会社再建までの道のりを描いているのか、その具体的なプランが事業計画です。
債権放棄や出資など債権者の協力が必要なものについては、特に慎重にその内容が話し合われることとなります。
一時停止の通知を発した日から2週間以内に、第1回目の債権者会議を開催しなければなりません。
この会議は、債務者である会社と、メインバンクなどの主要債権者が連名で召集して行うものです。
会議での決定事項は、対象となる債権者の全員の同意により決定します。
策定された事業計画にもとづいて、債権放棄が実施されたり、増減資が行われたりします。
事業計画は一時的に行えば終了するわけではなく、何年にもわたって継続しなければなりません。
企業が借金の返済に苦しみ債務整理を行いたいと考える場合、まずは民事再生や会社更生法にもとづく手続きを想像するでしょう。
ただ、法的整理を行うとそのことはすぐに取引先に知られ、事業の再建どころではなくなってしまう場合もあります。
そこで、私的整理ガイドラインにしたがって、債務整理を行うことを検討してみましょう。
私的整理ガイドラインにもとづいて債務整理を行えば、債権者にも債務者にもメリットがあります。
ただ、中小の銀行や信用金庫が債権者の場合、利用が難しい場合もあるため、早めに債権者に確認することをおすすめします。