東京弁護士会所属。
破産をお考えの方にとって、弁護士は、適切な手続きをするための強い味方になります。
特に、周りに相談できず悩まれていたり、負債がかさんでしまいそうで破産を考えていたりする方は、ぜひ検討してみてください。
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収支の赤字や債務超過など、会社の経営が上手くいっていない場合には、問題点を洗い出して改善する事業再生の必要性が高くなっています。
その反面、会社の経営を改善するために事業再生が必要なことは理解していても、どのように事業の再生を図っていけばよいかわからないという場合も少なくありません。
そこで今回は、事業再生に有効な経営改善のノウハウをご紹介します。
事業再生とは、債務のトータルが資産のトータルを上回っている債務超過などで経営が困難になっている企業について、問題点を排除して事業を再生する行為のことです。
会社再生と呼ばれることもあります。
事業再生の方法はさまざまで、下記の4種類あります。
以下、事業再生の手法を個別にみていきます。
事業再生では、経営改善計画を立てることが重要になります。
経営改善計画では、下記のような項目について考えます。
この経営改善計画は、経営者自身が今後の経営について考えるのに活用したり、金融機関に提出して事業再生の手続きを進めるのに使います。
ただし経営者が自分だけで経営改善計画を作るのは難しいので、専門家のアドバイスをもらいながら作成する方がいいでしょう。
専門家に依頼して、現状調査をしてもらい、そのうえで経営改善計画を立ててもらいます。
借入額が多いほど、事業再生の難易度が高くなるため、専門家にしっかりとした経営改善計画を出してもらうのがいいでしょう。
金融機関としては、借金の返済について金額を減らしたり、返済期間を長めに変更したりデメリットの大きい対応をしなければいけません。
そのため金融機関を説得するのは難しく、経営者自身が作った経営改善計画では話を聞いてくれない可能性もあります。
専門家の調査による信頼性の高い経営改善計画が欠かせません。
事業再生を検討しており「経営改善計画書を作成したい」という状況の人もいるでしょう。
経営改善計画書を作成するときに、記入するポイントを紹介します。
「経営改善計画書の作成で悩んでいる」という人は、ぜひ参考にしてみてください。
会社の歴史・株主の状況・役員の情報・ビジネスモデルなどを、記載します。
ビジネスモデルは、取引先とどのようにビジネスをしているのかを説明します。
そこまで難しいことではなく、読んだ人が自社のビジネス状況を把握できれば大丈夫です。
自社の売上・経営状態が悪くなっている原因を考えて、記載します。
例えば、自社の目標売上に達していない場合は「どうして売上が達成できてないのか?」と考えます。
問題に対しての原因を完全に把握するのは、かなり難しいでしょう。
大切なのは、絶対的な原因を追求することではなく、仮説として原因を複数出すことです。
ビジネスの結果に対して「明確が原因が一個だけある」というシンプルな状況は考えにくいでしょう。
複数の原因・環境の変化など、様々な要因が絡み合って結果に反映されています。
悪くなっている原因を綺麗に洗い出すというよりは、考えられる原因を仮説でいいから複数出す方が現実的でしょう。
売上・経営状態が悪くなった原因が仮説でもいいので複数でれば、その原因に対して有効な改善案を考えましょう。
例えば売上が下がった原因が、インターネットでの認知不足であれば、広告運用会社に依頼をすれば改善に繋がるかもしれません。
また「インターネットでの認知不足」をもっと細かく分解して「SNSでの認知不足」と仮説ができれば、SNSのコンサルティング会社に運用を依頼するのも有効な手段でしょう。
改善案はできるだけ具体的を高めて考えましょう。
仮説で出した原因に対して、有効な改善案を考えて、その改善案の中から一番効果の高いものを実施します。
経営改善計画書には、会社の現状・問題・問題の原因・原因を改善するための具体的な方法を順番に記載しましょう。
経営改善計画書を読んだ人が、1回で内容を理解でき、さらに説得力を感じてもらうのが目的になります。
事業再生の手続きをするうえで、経営改善計画書も大切ですが、ゴールではありません。
「完璧な経営改善計画書を作ろう!」と思って、時間をかけるのは危険です。
経営改善計画書に対して不安がある場合は、最初から専門家である弁護士に依頼するのがおすすめです。
なぜなら代わりに資料作成をしてくれるため、自分の手間を最小限にできるからです。
事業再生の実績を持った弁護士であれば、事業再生で見られるポイントも抑えてくれるでしょう。
実抜計画(じつばつけいかく)とは、実現の可能性が高く、かつ抜本的な経営改善計画を意味します。
実現の実と抜本の抜をとって、実抜計画と呼ばれます。
金融庁が定義する実抜計画の要件としては、実現可能性が高いといえるための要件と、抜本的といえるための要件に分かれます。
実現可能性が高いといえるための要件の概要をまとめると、以下の3点になります。
・計画の実現に必要となる関係者の同意を得ていること
・計画において債権放棄などの支援額が確定しており、当該計画を超えるような追加的な支援が必要といえる状況ではないこと
・計画における売上高、費用、利益の予測等に関する想定が十分に厳しいものであること
抜本的といえるための要件の概要は、概ね3年後に債務者(会社)の区分が正常先になること(中小企業の場合は概ね5年後)です。
融資のリスケジュールとは、資金繰りが苦しいことなどを理由に融資を受けた銀行に申し入れを行い、当面の返済内容を変更してもらうことです。
略してリスケと呼ばれることが多くなっています。
リスケジュールの方法としては、資金繰りが悪いので現在は返済できないものの、時間的な猶予があれば経営を立て直すことができる見込みが十分にあるため、当面の返済を猶予してほしいと申し出ることです。
リスケジュールのメリットとは、高確率で金融機関が条件変更してくれることです。
実際にリスケジュールの申し込みをして、金融機関が対応してくれて事例はたくさんあります。
リスケジュールに応じてもらうことで、毎月の返済額を減らせるため、会社の経営状態・資金状況が改善しやすくなります。
リスケジュールを認めることによる銀行側のメリットとしては、会社自体が倒産してしまえば融資した金額が貸倒れになってしまうところ、それを防止できる可能性があります。
リスケジュールは、借金や借入そのものがなくなるわけではありません。
返済の期限を伸ばしたり、毎月の返済額を減らすことも目的になります。
そのためリスケジュールが成功した場合でも、経営状態の改善・財産や負債の整理を行う必要があります。
あくまで「リスケジュールは時間稼ぎ」と覚えておきましょう。
一方、リスケジュールは銀行にとっては計上しなければならない貸倒引当金の金額が増える、担当する銀行員個人にとっては負担が重くなりやすい、などのデメリットもあるため、容易に認められるものではありません。
リスケジュールを成功させるためには、先にご紹介した実抜計画など具体的なものを提出することが重要になってきます。
金融機関にリスケジュールを申し込むためには、下記のポイントを把握する必要があります。
まずは会社の資金で「いますぐ準備できる現金の合計」を把握してください。
そして、その現金の中で「どれぐらい返済に使えるのか?」を明確にしましょう。
その金額を元に、資金繰り表・事業計画書を作成して、金融機関に交渉します。
リスケジュールを申し込むときに、返済が滞っていると対応してくれないかもしれません。
一度返済が滞ってしまうと「リスケジュールしても、結局返済されないのでは?」と思われるからです。
そのため、借入の返済が滞る可能性がある段階で、リスケジュールの相談をしてください。
SWOT分析とは会社の経営状態を改善するための考え方の指針となるものです。
経営改善を達成するために重要となる4種類の項目である、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)を抽出して分析します。
それぞれの言葉の英単語の頭文字をとって、SWOT分析と呼ばれます。
4つの項目のうち、強みと弱みは会社の内部に関するもので、機会と脅威は会社の外部に関するものです。
強みと機会はプラス項目であり、弱みと脅威はマイナス項目になります。
SWOT分析の具体例としては、一般に脅威(Threat)があるとして敬遠される分野について自社に強み(Strength)があれば、それを生かすことで差別化を図り、業績アップにつなげることができるなどです。
事業自体にテコ入れするだけではどうしても事業再編が進まないという場合などは、経営を改善するためにいわゆるリストラである整理解雇を検討することもあります。
整理解雇が認められるためには原則として4つの要件を満たす必要があります。
要件の概要をまとめると、人員整理の必要性があること、解雇を回避するための相当の経営努力をしたこと、人選基準が合理的かつ公平であること、説明や協議など解雇のための手続きが妥当であること、の4点です。
整理解雇を成功させるためには、整理解雇に伴うデメリットも理解しておく必要があります。
デメリットとしては、退職金を支払うことで財務が圧迫する、整理解雇によって従業員が反発して業務に支障が生じる、などです。
多くの人員が納得できるような形で整理解雇を行うためには、人員を整理する前に業務自体をもっと改善できないかを綿密に検討するなどの努力を重ねることが大切です。
また、退職を依頼するだけでなく、整理解雇後も会社に残って業務改善のために協力してもらえるよう要請する、ちょうど肩たたきの逆になる手法も重要です。
上記では事業再生の経営改善計画について紹介しましたが、そもそも事業再生には3つの方法があります。
それぞれの特徴も違うため、どの方法が適しているのかは会社によって異なります。
下記では、それぞれの方法について詳しく紹介します。
会社更生とは、会社更生法という法律に基づいて進める手続きです。
特徴としては、株式会社しか利用できないことです。
なぜなら他の方法に比べて費用が高く、期間もかかるからです。
裁判所から管財人が選ばれて、手続きを進めます。
さらに会社更生を利用すると、経営陣の退任しなければいけません。
民事再生は、民事再生法に基づいて進める手続きです。
会社更生とは違い、個人・法人問わずに利用できるのが特徴でしょう。
また会社更生のように経営陣が退任する必要もないです。
民事再生は、会社更生よりも間口の広い手続きとなっています。
私的整理は裁判所を介入させずに進める事業再生の手続きです。
私的整理の場合は、他の手続きと違い金融機関とのみ交渉できたりします。
他の手続きでは、すべての債権者が対象になるため、事業再生の事実が広がってしまいます。
そこで私的整理を選べば、金融機関にしか知られず、金融機関は守秘義務があるため噂も広がりません。
事業再生を検討するなら、まずは私的整理から選びましょう。
事業再生の方法について説明してきました。
会社の状況によって適切な手段は異なりますが、一番確実なのは弁護士への相談です。
法律・交渉のプロである弁護士に依頼することで、最適な手段を選択でき、従業員・金融機関との交渉も任せられます。
例えばリスケジュールを申し込むときにも、「お願いすれば、なんとかなるだろう」という姿勢では、金融機関が応じてくれません。
弁護士に相談して、交渉のポイントを教えてもらうことで、適切な事業再生スケジュールや提案ができます。
さらに「事業再生すべきだけど、なにをすればいいのか・・・」と悩んでいると、どんどん会社の状況が悪くなっていきます。
悩んでいると、どの分借金が膨らんでいったり、会社の経営状況も悪化するでしょう。
なるべく早い段階で弁護士に相談して、適切な手段を選ぶことが重要です。
多くの弁護士事務所では初回の相談を無料で行っているため、気軽に相談してみるのがおすすめです。
債務超過など事業の危機に陥った会社を立て直すための手法として、実抜計画、融資のリスケジュール、SWOT分析、整理解雇などをご紹介しました。
いずれの方法であっても、会社の内部と外部について綿密に分析して実現可能な計画を立てることが重要なポイントになります。