東京弁護士会所属。
破産をお考えの方にとって、弁護士は、適切な手続きをするための強い味方になります。
特に、周りに相談できず悩まれていたり、負債がかさんでしまいそうで破産を考えていたりする方は、ぜひ検討してみてください。
債務整理は法的に認められた、借金問題を解決するための手段です。
しかし「借金で困っていることを人に知られるのは恥ずかしい」と思い、誰にも相談できず困っている女性は少なくありません。
今回は債務整理の男女比率や女性が借金をする理由とともに、女性が債務整理をする場合のポイントを解説します。
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借金や債務整理というと、男性が多いイメージがあるのではないでしょうか。
しかし実際は、女性の債務整理利用率も決して低くありません。
ここでは裁判所のデータを使い、債務整理の手続き別の男女比や女性の借金の理由など、債務整理の現状を見ていきましょう。
債務整理は大きく分けて任意整理、個人再生、自己破産の3つの手続きがあります。
個人再生は年間約1万件、自己破産は年間約7万件利用されているというデータがあります。
任意整理は裁判所を通さず、当事者間の話し合いによって行われる手続きのため、正式なデータがありません。
そのため正確な数値は不明ですが、年間およそ150~200万件程度利用されているとみられています。
債務整理全体では年間で200万件以上、利用されているという現状があります。
その中で、男女比はどのようになっているのでしょうか。
裁判所のデータを参照できる個人再生と自己破産について、利用者の男女比率を解説していきましょう。
2020年に行われた債務整理に関する調査によると、2020年に個人再生を申し立てた男女の割合は以下の通りでした。
2002年の調査開始以来、男性が8割を占める状態が続いており、2020年の調査ではその割合が過去最高となりました。
個人再生は手続きの性質上、継続的な収入と完済の見込みがあることが要件とされているため、男性の利用割合が多いと推測されます。
自己破産と比べても、個人再生の申請者は収入が多い傾向にあり、平均月収は26万1323円でした。
申請者の8割が正社員として働いているという結果が出ています。
2020年に申請された自己破産の男女比は、以下の通りです。
2011年の調査以降、男性の割合が多い傾向が続いていますが、個人再生ほど男女差は見られません。
破産申請者の平均月収は14万2021円であり、月収15万円未満の申請者の65%が女性という結果になっています。
自己破産の正社員の割合は32%と大幅に減少し、パート・アルバイトや無職、生活保護受給者の割合が増加します。
自己破産は最終的に借金の支払いが免除される制度であるため、継続収入がなくても申請できます。
そのため男性よりも比較的、収入の低い傾向にある女性も利用しやすいという結果が浮き彫りになりました。
そもそも債務整理は、借金返済に行き詰った時に選択するものです。
女性が返済に困るほど借金をする理由には、どのようなものがあるのでしょうか。
詳しく見ていきましょう。
女性が多くの負債を抱える場合、ホストクラブなどにのめりこみ、借金を重ねるケースが少なくありません。
中には寂しさや孤独感から依存しているケースもあり、一度はまると自分の意思で抜け出すことが難しい場合もあります。
ホストクラブなどでは、一晩で数百万円を使ってしまう場合もあるようです。
借金は雪だるま式に増えていき、返済不能に陥ることになります。
令和5年度の女性の平均年収は315万円でした。
参照:「民間給与実態統計調査」(国税庁)
男性の平均568万円と比較して、4割以上少ないという結果です。
物価高の影響もあり、生活がひっ迫したためにやむを得ず借金をすることも少なくありません。
中には生活が苦しい上に奨学金の返済のため、新たに借金をするというケースもあります。
元々の収入の低さが、借金の原因となっている可能性があります。
美容やおしゃれにお金をかけたい女性は多いでしょう。
買い物によって心が満たされると、日頃のストレスを発散できたと感じるケースも少なくありません。
ストレスのはけ口や物欲を満たすために買い物をしていると、買い物依存症につながることもあります。
買い物依存症は意志の弱さのせいではなく、脳の仕組みの変化による精神的な病気です。
「やってはいけないとわかっているけど止められない」という状態になり、借金を重ねてしまうことがあります。
夫の収入が少ない場合や、シングルマザーであることなどが原因で家計のやりくりが厳しく、借金を繰り返している場合もあります。
女性の収入が低い傾向にあることに加え、子どもが小さく正社員で働くことが難しいことや、そもそも仕事が見つからないなど、女性の就業環境は厳しいと言えます。
パートやアルバイトを掛け持ちしても足りないときは、借り入れでしのぐという人も少なくありません。
少額を借り入れて返済を繰り返していると、返済できるうちはよくても、どこかで返済が滞ったとたんに債務超過に陥る可能性があります。
前述したように、債務整理には3種類の手続き方法があります。
それぞれ特徴があり、どの方法を選択するかは個人の状況によって異なります。
ここでは債務整理の方法と、向いている人の特徴をそれぞれ解説します。
任意整理は債権者と直接交渉し、将来の利息をカットして3~5年(36~60分割)で返済する方法です。
基本的に元金を減らすことはできませんが、過払い金がある場合は同時に請求することも可能です。
整理対象の債務を選択できることも特徴です。
連帯保証人が付いている債務は、債務整理をすることで保証人に請求される可能性があります。
保証人付き債務を除いて任意整理をすれば、保証人に迷惑をかける心配もありません。
任意整理は、月々の返済額を見直して完済を目指す方法です。
そのため、安定した定期収入がある人が向いていると言えます。
基本的に減額できるのは将来の利息分のみであるため、借金の総額がそれほど多くない場合に効果的です。
個人再生は、裁判所を通して借金を5分の1~最大で10分の1にまで減額して、原則3年間で返済する方法です。
財産を処分する必要がないため、今の生活を維持しながら返済していくことができます。
ギャンブルや浪費による借金も整理することができるため、自己破産が難しい場合も有効です。
個人再生は原則3年間の返済計画に則って、借金を完済する必要があります。
そのため、安定した一定の収入がある人が向いていると言えます。
また、負債総額が5000万円を超える場合は利用できないため、借金が5000万円以下の人が対象になります。
自己破産は財産の大部分を処分して債権者の返済に回し、最終的に借金の返済免除(免責)を目指す手続きです。
免責されれば返済の必要はなくなるため、将来の収入見込みがない場合でも利用できます。
自己破産以外の方法は、収入があることが前提でしたが、自己破産は収入がない、あるいは少ない人が向いていると言えます。
また、基本的に財産のほとんどを失うことになるため、財産の処分に抵抗がない場合や、処分するほどの財産がない場合にも有効です。
ギャンブルや浪費による借金は原則、免責が認められません。
そのため自己破産は、事業の失敗や保証人引受による借金がある人に向いているでしょう。
女性が債務整理をするには、気になることとしては、以下のものが挙げられるでしょう。
ここでは、夫や家族など周囲への影響など、女性が債務整理をする場合に気になるポイントについて解説します。
まずは気になるであろうポイントをそれぞれ詳しく見ていきましょう。
債務整理をすると、連帯保証人がついている借金は、保証人に請求が行く可能性があります。
債権者側からすれば、債務整理によって回収できる額が減ることを防ぐため、保証人へ請求することは当然と言えます。
債務者本人は借金の減額や免除が可能ですが、保証人は一括返済が原則です。
返済できなければ、保証人も一緒に債務整理をすることになりかねません。
特に奨学金を整理するときは、親が保証人の場合が多いため注意が必要です。
任意整理や個人再生は、基本的に財産が没収されることはありません。
しかしカードクレジットカードで購入し支払い途中のものがある場合、回収される可能性があります。
これは代金を完済するまでは、クレジットカード会社に所有権が留保されているためです。
車や貴金属などをクレジットカードで購入している場合は、注意しましょう。
債務整理をすると「周りの人に影響が出るかもしれない」と、二の足を踏んでいる人もいるのではないでしょうか。
しかし債務整理は、あくまでも借金をしている本人の問題です。
親、夫、子どもなど親族の財産に影響はなく、勤務先や学校関係に知られることもありません。
ただし親や夫が保証人になっている場合は、保証人に請求される可能性があるため、注意しましょう。
借金問題の相談はハードルが高く、なかなか債務整理に踏み出せない人も少なくないでしょう。
ここでは、女性が債務整理を検討する場合に、おすすめの相談窓口について解説します。
法テラスは国が運営する公的機関です。
全国各地に窓口があり、随時、無料相談を行っています。
弁護士や司法書士に依頼する場合は、法テラスが報酬の立て替えや分割払いにも対応しています。
自己破産を申請した人の4割が、法テラスを利用しているというデータもあります。
資金不足で債務整理が難しいと思っている人も、まずは相談してみることをおすすめします。
弁護士会や司法書士会が主催する無料相談会を利用するのもおすすめです。
定期的に各地で開催されており、公共施設や駅周辺などアクセスのいい場所で行われることが多いです。
プライバシーを守りながら、債務整理だけでなく、様々な悩みごとに親身になって話を聞いてくれます。
事務所にわざわざ相談に行くのは心理的にハードルが高いと感じる場合は、外出のついでに覗いてみてもいいかもしれません。
借金をしていることや、ちゃんと返済できていないことが恥ずかしい、と感じている人は少なくありません。
女性の中には男性には相談しにくいという思いから、結局どこに相談すればいいかわからないという人もいるでしょう。
そんなときは、女性弁護士のいる弁護士事務所に相談しましょう。
インターネットで「女性 弁護士 地域」と検索すると、情報は沢山出てきます。
また、法テラスなどの無料相談で紹介してもらうことも可能です。
借金問題で困っている女性は少なくありません。
しかし周囲の影響を考えて二の足を踏んでいることや、そもそも借金問題を抱えていることを恥ずかしく思い、誰にも相談できない人が多くいます。
そのようなときは公的機関や無料相談をうまく利用しましょう。
女性同士なら話しやすい、という場合は、女性弁護士のいる弁護士事務所を検索してみるのもいいでしょう。
借金問題で困ったときは当事務所にご相談ください。