東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
事業を経営していれば、月々の資金繰りが必ずしも円滑に回るとは限りません。
資金繰りがショートすれば、銀行への支払いや仕入れ代金の支払い、給与の支払いにも窮してしまうことになりかねません。
事業を継続できない状態になってしまえば倒産に至り、本来なら利害関係者に極力迷惑をかけないよう、資産や負債の整理を行う必要が生じます。
しかし、計画倒産のような倒産の仕方をすれば債権者などの信頼や期待を裏切るだけでなく、犯罪と判断される懸念もあります。
以下では、計画倒産とは何か、計画倒産が詐欺罪に該当する可能性があること、犯罪と判断されるケースについて紹介します。
他方、計画的倒産は犯罪ではないことや計画的倒産と認められるケースについても、併せて紹介します。
Contents
倒産は法律用語ではなく、厳密な定義もないものの、一般的には経営が行き詰まって債務が弁済できなくなった状態を指します。
こうなれば債権者への弁済のために任意の話し合いや裁判所による法的な手続きによって、資産や負債を整理することになります。
一方、計画倒産とは、会社を計画的に倒産させることを意味するものの、取引先や従業員などに迷惑をかけ、犯罪となり得るような倒産の仕方を指します。
たとえば、整理前に資産を個人に移動して隠ぺいしたり、不動産を売却処分してしまうなど、債務や支払いなどを踏み倒して倒産する行為を指します。
経営者だけが得をし、取引先や金融機関、従業員などを騙す結果となるなど、犯罪に問われる恐れが高い倒産の方法です。
倒産しそうな場合、取引先や金融機関、従業員など関係者に極力迷惑を及ぼさないよう、計画的に倒産の準備を進めることが通常です。
ただし、この計画的な準備も、計画倒産と判断された場合は詐欺罪や詐欺破産罪に該当することになります。
刑法に抵触すれば詐欺罪、破産法に抵触すれば詐欺破産罪に問われ、どちらも刑罰の対象です。
刑法第246条に抵触する場合は、詐欺罪に該当します。
詐欺は一般的によく使われる用語ですが、刑法上は、人を欺いて財物を交付させた場合や人を欺く方法によって不法の利益を得た場合などが該当します。
つまり、詐欺罪は、金銭や物品などをだまし取った場合、他人をだまして法律に反する利益を得た場合などに該当する犯罪です。
この犯罪で有罪判決を受ければ、10年以下の懲役刑です。
罰金刑はないため、執行猶予がつかない場合は刑務所に収監される重罪です。
破産法第265条に抵触する場合は、詐欺破産罪に該当します。
詐欺破産罪は、倒産する本人の立場からみると、債権者による財産の回収を妨害するために、倒産時の財産を隠したり壊したりする行為などが該当します。
基本的に、裁判所による法的な破産手続きに対する違法行為に対し、定められている犯罪です。
破産手続きでは、倒産者の財産を少しでも多く、債権者に公平かつ平等に配分する必要があるため、これに反する行為が処罰の対象となっています。
この犯罪で有罪判決を受ければ、1月以上10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金刑、場合によっては両方の刑に処されます。
また、罪を犯した者が法人の代表者や代理人、従業員などの場合は、法人にも1,000万円の罰金が科されることがあります。
経営者が倒産を判断する際は、再建手段や実現の可能性、失敗した場合のリスク、成功した場合のリターンなどを総合的に検討することでしょう。
したがって、通常では最後まで回避する努力を続けたものの、やむを得ず倒産するケースが多く、犯罪性が問われることは少ないと考えられます。
しかし、粉飾決算など資産や負債の偽装、また、事業が継続できる可能性が無いにもかかわらず融資を受けるために虚偽を述べるなどの行為があるのも事実です。
以下では、詐欺罪と判断されるケース、詐欺破産罪と判断されるケースについて確認しましょう。
刑法246条の詐欺罪と判断される可能性が高い、2つのケースを確認しましょう。
特徴は、倒産状態にあることを認識しているのに、返済や支払の意思や資力がないにもかかわらず、資力があり返済や支払いを行うような嘘をついて行う、借入れや取引です。
まず前提として、代表者は、会社が資力に乏しく、倒産が避けられない状態にあることを認識しています。
そのうえで、返済する資力や意思がないにもかかわらず、資力があるように装い、返済を約束して借り入れを行います。
さらに、その代表者が借入金を持ったまま逃亡し、会社が倒産するケースです。
代表者はこのケースでも会社に資力が乏しく、倒産が避けられない状態にあることを認識しています。
そのうえで、代金を支払う資力や意思がないにもかかわらず、そのような事実を隠して、取引先から商品を購入します。
購入した商品は第三者に転売され、代表者は売上の現金を持ったまま逃亡し、会社が倒産するケースです。
次は、裁判所による法的な整理である破産手続きの開始前後において、破産法265条の詐欺破産財と判断される可能性が高いケースを確認しましょう。
いずれも、破産が確定した際の財産隠しや財産譲渡、債務の負担につながり、債権者の不利益になる行為である点が特徴です。
まず、債権者の権利や利益を妨害する目的の行為であることが前提となります。
そのうえで行う、次のような行為が詐欺破産罪に該当するケースです。
ただし、「詐欺」の名称がついていても、詐欺罪のように虚偽を述べるとの要件はありません。
犯罪に問われることになる計画倒産と似た言葉に、計画的倒産があります。
先に少し触れましたが、会社が倒産しそうになれば、取引先など利害関係者に迷惑がかからないよう、計画的に倒産準備を進めることが重要です。
このように、及ぼす影響を最小限に留めるような倒産の方法を、計画的倒産と表現します。
つまり計画的倒産は、経営者の健全な判断として重要なことと言えるでしょう。
偽装や虚偽のような手段を用いず、計画的に準備を進め、最終的に破産や民事再生、特別清算などによって倒産することは犯罪でも違法でもありません。
なお、偽装や虚偽のような行為だけでなく、特定の借入先への返済や特定の買掛先への支払いのような偏頗弁済も適切な行為ではありません。
このような行為については、破産手続き開始の申立後に、破産管財人によって詐害行為取消請求権が行使される可能性が高くなります。
裁判所の判断によって、この権利の行使が認められる場合、倒産者が弁済しなければならなくなります。
一般的には、偽装や虚偽、偏頗弁済の判断は、倒産をいつ決めたかによって判断が分かれると考えられています。
つまり、倒産を決める前の支払いや返済なら咎められることはなく、倒産を決めた後の支払いや返済では犯罪になる可能性があるということです。
しかし、経営者が倒産を決めた時期について判断することは、現実的には簡単ではありません。
なぜなら、最終的にいつ資金不足に陥ったのかを確定するのがとても難しい問題だからです。
債務や賃金など、債務を弁済できない状況になるのは資金が不足するときですが、日常的に資金繰りと支払いを繰り返している場合を考えてみましょう。
経営者なら、資金不足になりそうな場合には、資金調達や支払先との交渉などによって、倒産を回避する努力を重ねるはずです。
倒産しない努力を続けたものの融資や交渉が不調に終わり、結果的に倒産せざるを得ないというのが実態なのです。
最終的に、計画的倒産が計画倒産と判断され、犯罪や不適切な行為に該当するかどうかは、破産管財人や裁判所の判断に委ねられます。
このように、計画的な倒産と認められるケースについては素人では判断が難しいため、専門家への相談や依頼をおすすめします。
計画的な倒産は、偽装や虚偽など不適切な行為がなければ、違法でも犯罪でもありません。
むしろ、倒産を判断せざるを得ない状況では、取引先や融資先、従業員などに迷惑をかけないよう、計画的に準備を進めることが重要です。
しかし、倒産によって利害関係者に不利益をもたらさないようにするためには、経営者だけで勝手に倒産の期日を決めることができません。
また、倒産すれば経営者も失業し、破産手続きにも費用がかかることなどがギリギリまで倒産を決めることができない理由と言われています。
さらには、「計画倒産は犯罪」のイメージからくる誤解によって、計画的な倒産も違法であると思い悩んでいる方も多いようです。
早めに倒産に精通した専門家に相談すれば、倒産までの適切なプロセスについてサポートを受けることができ、損失を最小限に抑えることも可能です。
資金繰りがうまくいかなくなってきた頃からでも、早めに専門家に相談することをおすすめします。