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計画倒産は詐欺罪になる?経営者が知るべき違法性の境界線と回避策

弁護士 川﨑公司

この記事の執筆者 弁護士 川﨑公司

東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!

計画倒産は詐欺罪になる?経営者が知るべき違法性の境界線と回避策

この記事でわかること

  • 計画倒産は詐欺になるのか
  • 計画倒産が詐欺になる要件とは

計画倒産が詐欺にあたるかどうかは、具体的にどのような行為をしたかによって異なります。
倒産を予定しながら、返済の意思や見込みがないのに借入れや仕入れを行えば、刑法246条[注1]の詐欺罪に問われる可能性があります。
また、破産手続きの前後に財産を隠したり不当に処分したりすると、破産法265条[注2]の詐欺破産罪にあたる恐れもあります。
一方、倒産に向けた準備を進める行為自体は違法ではありません。
適法な準備と違法な計画倒産の境界は判断が難しいため、弁護士に相談しながら進める方が望ましいです。
本記事では、計画倒産が詐欺になるのかについて解説します。

計画倒産とは?

倒産は法律用語ではなく、経営が行き詰まり、債務を弁済できない状態を指します。
本記事でいう「計画倒産」とは、資産を個人に移して隠したり、支払いを踏み倒したりするなど、違法性を伴う倒産です。
違法な計画倒産は、経営者だけが得をし、取引先や従業員などを騙す行為であり、犯罪となる恐れがあります。
一方、関係者への迷惑を抑えるため計画的に倒産準備を進める行為(計画的倒産)自体は適法です。

計画的倒産との違い

計画的倒産とは、事業継続が難しいと判断した段階で準備を始め、破産手続きによって資産を適正に清算する方法であり、それ自体は犯罪ではありません。
違法な計画倒産との違いは、財産隠匿や返済見込みのない借入れや一部の債権者だけへの偏頗弁済の有無にあります。
こうした行為があると、破産管財人による否認権行使(破産法160条・162条[注2])の対象となり、刑事責任を問われる恐れもあります。
これらの行為がなければ、計画的倒産として適法に進められます。
適法・違法の違いは個別事情によって判断が難しいため、弁護士に相談しながら進めるという方法もあります。

計画倒産は詐欺になる?

倒産が避けられない場合、通常は取引先や従業員などへの影響を抑えるため、適法な範囲で計画的に準備を進めます。
一方、違法な計画倒産と判断されると、詐欺罪や詐欺破産罪に該当する恐れがあります。
ここでは罪に問われる場合の詳細を解説します。

詐欺罪

刑法第246条[注1]の詐欺罪は、刑法上人を欺いて財物を交付させた場合や人を欺く方法によって不法の利益を得た場合に成立します。
つまり、詐欺罪は、金銭や物品などをだまし取った場合、他人をだまして法律に反する利益を得た場合などに該当する犯罪です。
詐欺罪で有罪判決を受ければ、10年以下の拘禁刑に処されます。
罰金刑はないため、執行猶予がつかなければ刑務所に収監されます。

詐欺破産罪

破産法第265条[注2]に抵触する場合は、詐欺破産罪が成立します。
破産手続きでは、破産者の財産を確保し、債権者へ公平に配当する必要があるため、これを妨げる行為が処罰の対象です。
債権者を害する目的で、破産手続開始の前後を問わず財産を隠したり壊したりする行為などが該当します。
ただし、処罰されるのは破産手続開始の決定が確定したときに限られます(同条1項柱書[注2])。
有罪判決を受けると、10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金に処され、両方が科される場合もあります。
また、法人の代表者や従業員などが違反した場合は、破産法277条[注2]により法人にも1,000万円以下の罰金が科される恐れがあります。

計画倒産が詐欺罪と判断されるケースとは?

多くの経営者は、再建の方法を検討し、倒産を回避する努力を重ねたうえで、やむを得ず倒産を選びます。
そのため、犯罪性が問われるケースは多くありません。
一方、粉飾決算で財務状況を偽ったり、返済の意思や見込みがないのに融資を受けたりすると、詐欺罪となる恐れがあります。
ここでは借入れや仕入れを行ったケースにわけて解説します。

倒産予定があるにもかかわらず借り入れたケース

代表者が倒産は避けられないと認識しながら、返済の資力や意思がないのに資力があるように装って借入れを行うと、詐欺罪となる恐れがあります。
詐欺罪の成立には、欺く行為、相手の誤信、金銭の交付およびこれらの因果関係に加え、借入時点で返済できないと認識していた事実が必要です。

倒産予定があるにもかかわらず大量に仕入れたケース

代表者が、会社に資力が乏しく倒産が避けられない状態にあると認識していたとします。
代金を支払う意思も能力もない事実を隠して取引先から商品を購入し、転売した売上金を持って逃亡し、会社が倒産した場合はどうでしょう。
この場合、支払意思や能力がない事実を隠して取引を申し込んだ点が欺罔行為にあたり、詐欺罪が成立する可能性があります。

計画倒産が詐欺破産罪と判断されるケースとは?

破産法265条[注2]の詐欺破産罪と判断される可能性が高いケースに該当するのは、前提として、債権者を害する目的で行われた行為です。
そのうえで、破産手続開始の前後を問わず、次のような行為が詐欺破産罪に該当する恐れがあります。

  • 現金や有価証券、貴金属などの財産の隠匿や損壊
  • 財産の譲渡や債務負担の仮装
  • 財産の現状を改変し、価値を減損
  • 債権者の不利益になる財産処分
  • 債権者に不利益な債務負担

法律に則った計画的な倒産までの流れとは?

法律に則った計画的な倒産は、弁護士への相談、財産隠匿や一部の債権者への偏頗弁済を避けた倒産・再生計画の策定を経て、弁護士が法的手続きを進めていきます。
ここでは各段階を詳しく解説します。

弁護士に倒産について相談する

倒産を検討し始めたら、まず弁護士に資金繰りの状況や債務の内容を伝え、倒産と再建のどちらを選べばよいかを相談します。
相談のタイミングは、資金や帳簿などの資料が残っている、できるだけ早い段階がよいでしょう。
資金が尽きてからでは、手続き費用を確保できず、選べる手段が限られる恐れがあります。
早期に相談すれば、偏頗弁済など後で問題となる行為を避けながら、破産だけでなく再建を含めた複数の手続きを比較して進められます。

クリーンな倒産・再生計画を練る

倒産に向けた計画では、会社の財産を適正に換価し、債権者へ公平に配当できる状態を整えます。
特定の債権者だけに優先して返済する偏頗弁済は破産法162条[注2]による否認の対象となる可能性があります。
また、財産を隠す行為は同法265条[注2]の詐欺破産罪にあたる恐れがあるでしょう。
これらを避けるのがクリーンな計画の要です。
計画を練る期間は、会社の規模や資産・債務の状況によって異なるため、資金が残っているうちに弁護士と相談しながら設定しましょう。

弁護士が法律に則った手続きを進める

弁護士には、債権者への受任通知の送付、破産申立書類の作成、裁判所とのやり取り、破産管財人への対応などを依頼できます。
受任後は債権者からの問い合わせ窓口も弁護士が担うため、代表者は事業の整理に集中しやすくなります。
申立てから手続完了までの期間は、実務上の運用として半年から1年程度が目安です。
ただし、会社の規模や財産の状況、管轄する裁判所によって変動するため、依頼する時に弁護士へ見通しを確認しておきましょう。

会社の倒産を防ぐにはどうすればいい?

会社の倒産を防ぐには、資金繰りや財務状況を早期に把握したうえで、事業の再編成や助成金などの公的支援の活用を検討し、早い段階で弁護士などに相談しましょう。
ここではそれぞれの方法を詳しく確認します。

財務諸表を細かく確認する

財務諸表には、会社の資産・負債・純資産を示す貸借対照表、一定期間の収益と費用をまとめた損益計算書、現金の出入りを示すキャッシュフロー計算書があります。
資金繰りの観点では、以下の点を確認します。

  • 負債が資産を上回る債務超過に陥っていないか
  • 手元の現金で支払いを続けられるか
  • 借入金の返済負担が営業による収入に見合っているか

会計上は黒字でも資金が尽きる場合があるため、判断が必要なときには税理士などとの連携も必要です。

事業の再編成を考える

事業を再編成するメリットは、収益の見込める事業に経営資源を集中させ、資金繰りを立て直せる点です。
具体的には、赤字が続く不採算部門の縮小・撤退や、一部の事業を他社へ譲渡して得た資金を借入金の返済に充てる方法が挙げられます。
それでも債務の負担が重い場合は、債権者と個別に返済条件を話し合う私的整理や、裁判所の関与のもとで事業を続けながら債務を圧縮する民事再生など再建型の手続きも選択肢となります。

補助金を活用する

中小企業が利用できる主な補助金は次のとおりです。

制度主な対象補助上限額・補助率
小規模事業者持続化補助金販路開拓などの取り組み50万円・費用の2/3
事業再構築補助金新分野展開・事業転換従業員数などにより異なる・費用の2/3
ものづくり補助金新製品開発などの設備投資750万~1,250万円・費用の1/2(中小企業)

制度や要件は年度により変わるため、厚生労働省・中小企業庁・自治体などの最新の公的情報を確認してください。

弁護士に相談する

弁護士に相談すれば、再建と清算のどちらが適切かを法的な観点から比較でき、違法な計画倒産と疑われる行為も避けやすくなります。
VSG弁護士法人では、価格競争の激化で資金繰りが悪化し、代表者も連帯保証人として同時に破産した事案で、破産管財人と交渉して売掛金を円満に回収し、代表者の負担軽減につなげた例があります。
法人と代表者個人の債務を一体で整理する方法も含めてご提案が可能です。
早めにご相談ください。

[注1]刑法/e-Gov
刑法第246条
[注2]破産法/e-Gov
破産法

まとめ|計画倒産で罪に問われないために弁護士へ相談を

倒産に向けて計画的に準備を進める行為自体は適法です。
ただし、返済の意思や見込みがない借入れや仕入れ、財産隠匿などを伴えば、詐欺罪や詐欺破産罪に問われる恐れがあります。
適法な準備と違法な計画倒産の境界は個別の事情で判断が分かれるため、倒産を回避する再建策の検討も含め、早い段階で弁護士に相談すると安全です。
VSG弁護士法人では、法人破産や事業再生を扱うチームが状況に応じた手続きをご提案できる場合があります。
お気軽にご相談ください。

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