東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
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法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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会社の経営が不安定な状態にある場合、その会社は債務超過に陥っている可能性があります。
債務超過となっている会社は、すぐに倒産するというわけではありませんが、資金ショートの危機にあるといえます。
そこで、債務超過とはどのような状態であるのか、そして債務超過となっているかどうかをどのように確認するのか、知っておきましょう。
また、債務超過となった場合に、どのように債務超過を解消するのか、その方法についても確認しておきましょう。
Contents
債務超過とは、会社が保有する負債の額が資産の額を上回っている状態をいいます。
資産の額には、現金や預金のほか、将来現金を回収することができる売掛金や、売却すれば現金になる土地などがあります。
一方、未払金や借入金など負債の額に計上されている金額は、いずれ現預金で支払う必要のあるものばかりです。
そのため債務超過となっている場合は、会社の資産をすべて使っても負債を支払うことができないのです。
実際には、負債を一度に支払うわけではないため、債務超過になっているからといって、すぐに支払不能となるわけではありません。
ただ、今のままでは負債が完済できないため、極めて注意が必要な状態といえるのです。
債務超過となっている会社は、倒産の危険性が高くなっているといえます。
ただし、実際には債務超過になっている場合でも、そのことに気づいていない場合があるかもしれません。
そこで、債務超過になっているかどうかを確認する方法を知っておきましょう。
普段の状況で、最も簡単に債務超過かどうかを確認するには、決算書を見てみましょう。
貸借対照表の「資産の部」の合計額と「負債の部」の合計額を比較し、どちらが大きいかを確認するのです。
そして、資産の部の合計額より負債の部の合計額の方が大きい時は、債務超過ということになります。
普通に経営していて債務超過とは思っていなくても、2~3年赤字が続いた場合などは、債務超過となっている可能性があります。
もし決算書上は債務超過でなくても、赤字が続いている時は、実態にあわせてさらに細かくその内容を確認する必要があります。
資産の部に計上されている科目のうち、以下のものについてはその内容を吟味して、より実態に近い金額とします。
また、負債の部のうち退職給付引当金に引当不足の金額があれば、その不足額を負債の額に加算します。
このようにして求めた資産の部の合計額と、負債の部の合計額を比較し、債務超過になっていないかどうかを確認しましょう。
債務超過になっているかどうかを確認して、実際に債務超過の状態にある場合、それを解消する必要があります。
債務超過を解消するためには、何らかの手を打つ必要があるため、以下にあげる方法を確認しておきましょう。
債務超過の状態にある会社は、経営が苦しく赤字になっていたという会社がほとんどです。
そこで、赤字体質を脱却し、黒字体質の会社になるような経営改善を行う必要があります。
利益を生み出すことができるようになれば、長い時間をかけて債務超過の状態を解消することができます。
実際に経営を行って利益が出るようにするためには、2つの観点で考える必要があります。
1つは売上高をあげて収入を増やすこと、そしてもう1つはコストを削減して支出を減らすことです。
このうち売上高を増やすには、新たな事業に乗り出したり、新商品を開発したりということが考えられます。
しかし、これらを行うためには先行投資が必要であり、債務超過の会社では簡単なことではありません。
まずは地道に、売上の単価を見直したり、新規の顧客を獲得したりすることから始める必要があるでしょう。
一方、コストの削減については、やり方次第では短時間に非常に大きな効果を得られます。
ただ、その方法については、会社の実状にあわせて考える必要があります。
コストといっても、その中身は様々で、削減すべきものは会社によって異なるためです。
たとえば、仕入の代金が高すぎるのであれば、仕入先を変更したり、仕入数量を見直したりすることで、単価を下げる努力をします。
また、売れ筋ではない商品については、仕入を取りやめる、あるいは他の商品に変更することを検討する必要があります。
人件費については、まず役員報酬について見直しを行い、経営者自身が先陣を切って、会社の経営改善に乗り出す必要があります。
その後、必要に応じて、従業員の賞与を見直すこととなります。
また、残業代が多く発生する会社については、業務の進め方から改善しなければならないかもしれません。
そのほかの経費についても、徹底的に洗い出す必要があります。
特に接待交際費や消耗品費については、知らないうちに無駄遣いをしている可能性があるため、見直しを行いましょう。
また、今の経営規模で事務所や店舗の家賃は適正なのか、よく検討してみましょう。
このような努力で利益が出るようになったとしても、すぐに債務超過が解消できるわけではありません。
大事なのは、この努力を継続することなのです。
増資とは、資本金を増額することです。
資本金を増額する際には、出資者から何らかの財産を会社に受け入れる一方、その出資者に会社の株式を発行します。
こうすることで、会社の資産は増える一方で、負債は1円も増えないため、債務超過を圧縮・解消できるのです。
出資する財産は現金が多いのですが、それ以外に土地などを出資する場合もあります。
増資する際には注意点が2つあります。
1つは、増資を行うと資本金の額が増えるため、税金の負担が増える可能性があることです。
たとえば、法人税について中小法人とされているのは、資本金1億円以下の会社です。
資本金の額が1億円を超えてしまうと、中小法人に認められる様々な特例が適用できなくなります。
その結果、税金の負担が増えてしまう可能性があります。
もう1つは、新たな出資を行った人が大株主になると、思い通りの経営ができなくなる可能性があることです。
たとえば、会社の役員は株主総会で決定します。
新たな出資者が過半数の株式を保有していれば、今の役員を解任し、新たな役員を連れてくることも可能なのです。
増資ばかりに目を奪われて、肝心の会社の経営に影響が出ることのないようにしなければなりません。
会社に対して債権を保有する債権者に、その債権を放棄するようにお願いします。
債権者との間で債務免除についての合意が成立すれば、免除された金額について「債務免除益」という利益が計上されます。
その結果、会社の負債の金額が減少し、債務超過の状態を解消できるのです。
なお、債務免除を受ける際には、民事再生手続や特定調停手続等の再建型手続を利用することができます。
これらの手続きはいずれも裁判所で行われるものですが、法的な取扱いが明確であり、税務上も問題がない方法です。
債権者と直接個別に交渉し、債務免除を受けるという方法もありますが、この場合、債権者に税務上の問題が生じる懸念があります。
そのため、書面でのやり取りを行うことはもちろん、その方法や金額、リスクについても慎重に考える必要があります。
会社が有する債務は、いずれ返済期限がくれば、債権者に対して返済しなければならないものです。
これに対して、会社が有する資本金は、出資者が出資を取りやめる時、あるいは会社が解散する時まで返金する必要はありません。
そこで、会社に対する借入金などの債務を株式に転換し、出資金とすることで、その返済義務を実質的になくす方法がDESです。
債権者の同意がなければできませんから、まずは債権者に同意を得る必要があります。
また、資本金の額が増える点は増資と変わりがないため、税金の増加や株主構成の変化には注意が必要です。
債務超過を解消するために増資を行うことは、上場企業でも実際に行われています。
ここでは、2017年に行われた東芝の増資について、簡単にご紹介します。
この当時、東芝は不正会計やアメリカの子会社の巨額損失発覚により、巨額な損失を計上し、債務超過に陥っていました。
しかし、2期連続で債務超過となれば上場廃止となってしまいます。
上場廃止を何としても回避したい東芝は、様々な手を尽くしたのです。
まずは分社化した会社の株式を売却します。
ついで、損失を抱えていた子会社の債権について代位弁済を行う一方、子会社に対する求償権をほぼ無償で譲渡します。
そして最後に、株式の第三者割当増資を行って、6,000億円もの増資を行ったのです。
こうすることで、東芝は上場廃止を回避することができました。
ただし、既存の株式については価値が下がり、大きな反発も予想されていました。
それでも、上場廃止になるよりはよいという判断のもと、巨額な増資が実行され、債務超過は解消されたのです。
債務超過というと、かなり経営の危機にあるというイメージを持つかもしれません。
しかし、実際には巨額の損失が生じ債務超過になるよりも、毎年の赤字が積み重なって債務超過になることが多いのです。
そのため、債務超過に陥っていることを認識していない経営者もいるかもしれません。
自身の会社の決算書をよく吟味して、債務超過の状態にないか確認しておきましょう。
また、債務超過となっている場合には、早急にその対策を始めましょう。