東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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みなさんは合名会社ご存知ですか?
合名会社は、無限責任社員のみで構成されている会社です。
会社には、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4つの形態があります。
設立コストや資本金などにおいて、4つの形態にはそれぞれ特徴があります。
会社が破産する場合も、会社の形態によって、それぞれにメリット・デメリットがあります。
この記事では、主に合名会社と、その倒産について解説していきます。
合名会社とはどんな会社なのかを理解してください。
また、倒産する時にはどのようなデメリットがあるかを、知っておくために役立ててください。
Contents
合名会社の特徴の1つは、人が主体の法人であることです。
また、合名会社は、無限責任社員のみで構成されます。
小回りの利く柔軟な経営ができる会社形態なので、以下のようなケースに適しています。
会社の設立や運営が容易にできるなどのメリットがあります。
また、無限責任社員として会社の連帯保証人になることなどのデメリットもあります。
株式会社は株主が出資をして、経営者が会社経営を行いますが、合名会社は株式を発行しません。
合名会社では、社員全員が出資者となります。
出資者である社員全員が経営者となるため、社員の技術や手腕などが、合名会社の経営を左右することになります。
合名会社は無限責任社員のみで構成されますが、無限責任社員は、合名会社の債務の連帯保証人にもなります。
ですから、会社の経営が苦しくなると、無限責任社員は自らの財産を失うケースもあります。
合名会社では、無限責任社員全員が業務執行権と代表権を持っています。
いわば、個人事業主が集まっている会社です。
合名会社のメリットは、以下のようなものがあります。
合名会社のデメリットは、経営がうまくいかなかった場合の、無限責任社員の負うリスクが高いことです。
合名会社は、無限責任社員で構成されます。
無限責任社員とは、会社の債務に対して連帯責任を負う社員です。
つまり、無限責任とは、会社の債務に対して直接連帯責任を負うことをさします。
そのため、もし会社の負債が返済できなくなった場合は、私財もすべてなげうってでも、返済にあてなければなりません。
会社が倒産するような場合は、無限責任社員も自己破産に追い込まれることがあり得ます。
合名会社と株式会社では、選択できる倒産方法に、主に2点の違いがあります。
まず、合名会社と株式会社がそれぞれ破産手続きを開始する場合の、破産手続き開始原因が異なります。
また、株式会社の取締役と合名会社の無限責任社員では、会社の債務との関係について、異なる部分があります。
破産手続きは、債務者に破産手続き開始原因がなければ開始できません。
法人や会社の場合、破産手続き開始原因となるのは「債務超過」と「支払不能」があります。
合名会社と株式会社がそれぞれ破産手続きを開始する場合、この破産手続き開始原因が異なるので注意してください。
債務超過とは、その債務について、債務者が、その財産をもってしても完済することができない状態をいいます。
つまり、客観的に見て、債務額の合計が資産額の合計を超過している状態にあることです。
債務超過を破産手続き開始原因として破産手続開始申立をする場合、債務の総額と資産の総額を客観的に示すことのできる資料を提出することになります。
この場合の債務には、すでに弁済期が到来している債務だけでなく、買掛金などの、まだ弁済期が到来していない債務も含めることができます。
この点は、次に述べる、支払不能を破産手続き開始原因とする場合と大きく異なるものです。
支払不能も、債務者が、その債務について、その財産をもってしても完済することができない状態をいうことは、債務超過と同じです。
しかし、対象となる債務は、すでに弁済期が到来している債務に限られる点が、債務超過と大きく異なります。
債務超過のように、これから弁済期が到来する債務は含まれません。
したがって、弁済期が未到来の債務が弁済期を迎えて支払不能に陥るまで、破産手続開始申立ができないことになります。
また、支払不能であるかどうかは、財産だけでなく、信用や労力もあわせて判断されます。
財産だけで見ると支払能力を欠いているように見えても、収益力等があって、支払いが可能だと判断できる場合は、支払不能ではないことになります。
債務超過を破産手続き開始原因とした方が、よりはやい時点で破産手続開始申立をできることがわかります。
株式会社が選択できる破産手続き開始原因は、債務超過も支払不能も可能です。
どちらの破産手続き開始原因でも、破産手続開始申立をすることができます。
合名会社が選択できる破産手続き開始原因は、支払不能に限られています。
債務超過を破産手続き開始原因とする破産手続開始申立はできません。
株式会社の取締役と、合名会社の無限責任社員では、会社の債務との関係について、負う責任が異なります。
株式会社における取締役は、会社の債務について連帯保証人になっている場合、会社の債務を弁済しなければなりません。
会社が破産した場合は、連帯保証人になっている債務についての責任を負うことになります。
多額の債務の連帯保証人になっていた場合は、取締役も会社と同様に自己破産手続申立を行うことになるでしょう。
しかし、会社の債務の連帯保証人になっていなければ、取締役には影響ありません。
合名会社の無限責任社員は、もともと会社の連帯保証人となっています。
ですから、会社の債務を会社が弁済できない場合は、無限責任社員が自己の財産から弁済しなければなりません。
合名会社は債務超過では破産手続き開始原因とはならず、支払不能の状態にならなければ破産手続開始申立ができません。
ですから、会社が破産する場合は、無限責任社員も破産しなければならないと考えてください。
合名会社が破産手続開始申立をするのは、会社が支払不能の状態になったときです。
合名会社が支払不能になるということは、連帯保証人の資産を使ってもなお、弁済期の到来している債務を支払えないことを意味します。
したがって、合名会社が破産手続開始申立をするときに、同時に無限責任社員も自己破産申立をすることになります。
合名会社の破産は法人の破産ですから、同時廃止ではなく、管財事件となります。
無限責任社員は合名会社の連帯保証人ですから、会社の破産と密接な関係があるので、無限責任社員の自己破産もやはり管財事件となります。
合名会社の破産と無限責任社員の破産は、その密接な関係性から、同一の破産管財人にゆだねられると考えてください。
管財事件とは、裁判所から選任された破産管財人が、破産者の財産を調査し、管理・換価処分をして、得た金銭を債権者に弁済または配当する手続きです。
合名会社を含む会社の破産の場合、その会社は消滅することになります。
ですから、会社の財産や資産を残しておくわけにはいきません。
これらは、破産手続きにおいてすべて処分されます。
管財事件においては、破産手続開始申立の後、破産手続き開始と同時に、裁判所が破産管財人を選任します。
破産管財人は、裁判所の職員ではなく、同じ管轄内に所在する法律事務所の弁護士が選任されます。
申立人は、裁判所が決めた金額を予納金として、別途納める必要があります。
これは、破産管財人が管財業務を行うための費用や、管財人報酬として渡すためのもので、金額は事案の複雑さなどによって異なります。
破産手続き開始以降は、破産者は自己の財産についての管理や処分を行うことはできなくなります。
破産者に代わって、破産管財人が管理処分権を、裁判所から与えられます。
破産管財人は、破産者の財産を調査し、管理を行うとともに、順次換価処分をしていきます。
破産者が取り交わしている契約(リース・電話など)の解約手続きも行います。
一方で、債権者に対しては、裁判所から破産手続き開始の通知がされます。
裁判所から通知を受けた債権者は、破産管財人に宛てて、債権の届出をします。
破産管財人は、債権者からの届出にもとづいて、債権の内容や金額を調査します。
破産者のすべての財産を換価処分した後に、裁判所の決定にもとづいて、破産管財人は、債権者への弁済または配当を行います。
無限責任社員は合名会社の連帯保証人ですから、合名会社と同一の破産管財人によって管財手続きが進められます。
しかし、無限責任社員は個人ですので、会社のように消滅するわけではありません。
個人の自己破産は、手元に残してよい財産が定められています。
管財手続きが終われば、債務が残っても免責されます。
残された財産で以後の生活をしていくことになります。
破産手続開始申立前に、自分名義の財産を家族名義に変えるなどの行為はしないでください。
なぜなら、申立前にした名義変更などは、管財人の調査によって判明してしまうからです。
場合によっては、免責されずに債務が残ってしまうこともあり得ます。
破産によって財産を失ってしまうのはつらいことですが、裁判所には正直に申立を行いましょう。
合名会社の歴史はとても長く、会社という組織の原型ともいえるものです。
現在でも、ごく親しい人たちと少人数で事業運営をしていくうえでは、メリットもあるといえます。
しかし、事業拡大などを視野におく運営をするには、大きなリスクを伴います。
株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4形態の特徴をしっかりと見極めてください。
合名会社において、経営が悪化した場合には、早めに弁護士などの専門家に相談することも、ひとつの方法といえるでしょう。
実際には支払不能に至るまで破産手続開始申立ができないとしても、債務超過の段階から相談することを考えてみてください。