東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
法人破産を進めるためには費用が必要です。
費用がなくて法人破産できず困ることにならないように、法人破産を検討する段階で法人破産の費用を準備する必要があります。
法人破産の費用を準備するためにも、具体的にどのような費用が必要になるのか基礎知識としておさえておくことも重要です。
この記事では、法人破産の手続きで必要になる費用や弁護士費用、法人破産の申立て費用が準備できないときの対処法などを、わかりやすく説明します。
Contents
法人破産で必要になる費用には2種類あります。
ひとつは法人破産の手続きを進めるために裁判所に納める「法人破産の手続き費用」、もうひとつは法人破産を弁護士に依頼するときに必要な「弁護士費用」です。
法人破産で必要になる費用はこの2つの合計額です。
裁判所に納める法人破産の手続き費用はさらに2種類にわかれます。
2種類の費用を足した額と印紙・切手代が裁判所に納める費用の合計です。
予納金(官報公告費) | 14,000円 |
---|---|
予納金(管財人報酬) | 200,000円 |
印紙・切手代 | 5,000円 |
合計 | 約220,000円 |
表の金額はあくまで法人破産にかかる費用の一例です。
法人破産の手続きの種類や法人規模によって費用が変わってくるため注意してください。
また、この表の法人破産の費用は東京地方裁判所での法人破産を想定しています。
裁判所によっても費用が変わってくる可能性があるため、詳細な費用について知りたい場合は裁判所や担当弁護士に確認を取ることをおすすめします。
裁判所に納めるそれぞれの費用について説明します。
法人破産で裁判所に支払う予納金とは「法人破産を進めるうえでの必要費用」です。
法人破産を進めるときに必要になる破産管財人の報酬や官報公告などの費用をまとめたものが予納金になります。
法人破産を進める法人は手続きの途中で「官報公告費用が必要になった」などと言われても、手続き費用の捻出が難しいかもしれません。
また、法人破産を進める中で管財人が財産調査や換価などを行っても、いざ報酬の支払いという段になって「払えません」となる可能性があるはずです。
これでは管財人はボランティアになってしまいます。
そのため、法人破産の申立てをしたときにあらかじめ必要になる費用を予納金として裁判所に払い込む仕組みになっているのです。
予納金は基本的に大部分が管財人の報酬になっています。
法人破産の予納金は最低でも20万円ほどが相場です。
法人規模や法人破産の状況によってはもっと高額になる可能性があります。
法人破産の印紙・切手代とは、法人破産の手数料や手続きで使う切手代のことです。
法人破産の手続きの中では関係者に対し郵送を使うことがありますので、あらかじめ郵送に必要な郵券などを納めるという仕組みになっているのです。
切手代(郵券代)は裁判所や法人破産ケースによって変わってきます。
表の金額はあくまで目安です。
実際に法人破産するときは、弁護士に確認を取るとよりケースに合った費用相場がわかります。
法人破産と同時に法人の経営者が自己破産する場合は、基本的にあらためて予納金(管財人の報酬)を払う必要はありません。
経営者個人の自己破産も法人の予納金20万円で一緒にできます。
また、住宅ローンなどの関係で、経営者の配偶者が経営者や法人と同時に自己破産する場合(個人の自己破産2人、法人破産1)もあらためて20万円の予納金を支払う必要はありません。
基本的に管財人の報酬である予納金20万円で一緒にできます。
なお、これはあくまで東京地方裁判所で中小企業が少額管財事件で法人破産するケースで、担当の弁護士や法人破産を管轄する裁判所によって費用などが変わってくる可能性があります。
なお、法人破産と経営者の個人的な自己破産を一緒に進める場合は費用について確認を要します。
法人破産の弁護士費用には2種類あり、その合算額が法人破産の弁護士費用です。
弁護士費用についても、まずは表で確認してみましょう。
着手金・報酬 | 500,000円 |
---|---|
実費 | 10,000円 |
合計 | 510,000円 |
これは東京地方裁判所で負債が3,000万円以内、債権者1~4人(社)、少額管財事件の法人破産ケースを想定した弁護士費用です。
弁護士費用の着手金・報酬、実費についてそれぞれ説明します。
弁護士費用の着手金・報酬とは、法人破産を担当する弁護士への報酬です。
着手金とは法人破産を受任したときに支払う弁護士費用で、報酬とは法人破産が完了してから支払う弁護士報酬のことです。
なお、表に記載した金額はあくまで一例になります。
法人の規模や債権者の数、負債額などによって弁護士の着手金・報酬などが変わってきますので注意してください。
法人破産を相談する弁護士に法人破産の状況や規模などを伝えて見積もりを作成してもらうことで、法人破産ケースにあった着手金や報酬を把握可能です。
弁護士に費用や報酬体系についても確認しておくことをおすすめします。
一括での費用支払いが厳しい場合には、弁護士事務所によっては弁護士に支払う報酬の分割払いに応じてくれることもあります。
弁護士報酬の実費とは法人破産の手続きを進めるうえで必要になる経費のことです。
弁護士報酬に含まれる実費は裁判所の手続きに必要な費用とは異なるもので、弁護士が裁判所に向かうときの交通費や宿泊費などです。
実費の内訳が気になる場合は、具体的にどのような経費が実費として請求されるのか弁護士に確認しておくことをおすすめします。
中小企業などの法人破産ケースは少額管財事件として扱われるケースが多くなっています。
表で説明した弁護士費用の予納金なども、中小企業の少額管財事件による法人破産を想定して例示しています。
あくまで少額管財事件で済んだケースの費用例だということです。
法人の規模が大きくなると、少額管財事件による法人破産が難しくなります。
なぜなら法人規模が大きくなるとそれだけ負債も大きく、債権者の数も多くなる傾向にあるからです。
このような法人破産のケースでは少額管財事件は使えず、特定管財事件として法人破産を進めることになります。
特定管財事件で法人破産を進める場合は、少額管財事件で手続きを進めたときと費用相場が違ってきます。
次に、特定管財事件の弁護士費用を中心に手続き費用について説明します。
特定管財事件と少額管財事件はともに管財事件ですが、同じ管財事件でも特定管財事件は複雑な法人破産ケースや大規模な会社の法人破産ケースなどに使われます。
少額管財事件では処理の難しい法人破産案件の手続きを行うのが特定管財事件だと考えればわかりやすいのではないでしょうか。
なお、法的には特定管財事件という名前はありませんが、少額管財事件と区別するため特定管財事件と呼んでいます。
特定管財事件で行う法人破産は法人規模が大きなものや複雑な案件が基本になっているため、費用も少額管財事件よりも高額になる傾向にあります。
特定管財事件の予納金の相場は、最低でも70万円ほどになります。
さらに負債額が増えると予納金も増え、最終的に負債額が500億円を超えると予納金は700万円ほどが相場になるのです。
特定管財事件で法人破産を進める場合は最低でも70万円、多ければ数百万円の予納金を覚悟しておく必要があります。
同じ特定管財事件でも負債額によって予納金の額が変わってきますので、弁護士などに確認を取ることをおすすめします。
特定管財事件は負債も多く法人規模も大きい、そして案件自体が複雑な法人破産ケースが多くなっています。
そのため法人破産を担当する弁護士の業務量も増えますので、予納金だけでなく弁護士費用も少額管財事件より高額になるのが基本です。
特定管財事件の弁護士費用の目安は50万円~650万円ほどです。
負債額や法人破産の案件の複雑さによって弁護士費用も変わってきます。
法人破産の規模によっては相場より高額になる可能性もあるため、あらかじめ担当弁護士から見積もりを取得したり、弁護士費用について説明を受けたりしておくことが重要です。
法人破産の申立て費用を準備できないと法人破産を進めることができません。
着手金など法人破産に必要な費用をどうしても準備できない場合はどのように対処したらよいのでしょう。
弁護士の着手金など法人破産の必要費用を準備できないときの対処法は4つあります。
法人破産の計画をあらかじめ立てておいて、法人破産の手続き開始にあわせて弁護士の着手金や裁判所に払い込む費用などを積立ておく方法です。
いきなり法人破産をする場合は法人破産費用の支払いが難しいかもしれません。
しかし、あらかじめ必要な額を準備しておけばその費用を使って法人破産手続きを進められるのではないでしょうか。
法人破産を検討している場合は早い段階で弁護士に相談し、弁護士のアドバイスを受けながら法人破産費用の準備を進めてはいかがでしょう。
法人破産費用を積立などで準備する場合は、売掛金を法人破産費用に充てるなど、他の法人破産の費用の準備方法と併用することも可能です。
法人破産の費用捻出のために法人が所有している財産を換金する方法です。
法人の自動車や動産など、換金しやすい財産からお金に換えて法人破産の費用を準備することが考えられるはずです。
不動産の処分なども検討する必要があります。
ただし、この方法にはリスクがあるため注意が必要です。
法人破産の前に財産を処分してしまうと、法人破産の手続きの中で破産管財人による否認権の行使などが行われる可能性があります。
法人破産のために法人財産の換金や処分を行うときは、法人破産の手続きに影響しないよう慎重に判断する必要があるのです。
法人破産の費用を捻出したい旨を弁護士に相談し、アドバイスを受けながら進めるとよいでしょう。
取引先から売掛金の入金がある場合は、入金予定の売掛金を法人破産の費用に充てる方法があります。
ただし、入金のタイミングなどが重要になるため注意してください。
売掛金と一言にいっても、いろいろな契約内容の売掛金があるはずです。
法人破産のタイミングに合わせた売掛金はどれか、どの売掛金の額が適切かなど、入金される売掛金の取捨選択を行う必要があります。
また、取引先の入金を信頼できるかどうかも重要です。
入金が遅れがちな取引先の売掛金を費用に充てようと考えても、予定より入金が遅れてしまえば、法人破産の手続きに影響が出てしまう可能性もあります。
弁護士事務所の中には、着手金などの法人破産の弁護士費用の分割払いに対応しているケースがあります。
弁護士費用については分割払いを利用して月々少しずつ払い、そのうえで裁判所に支払う分はしっかり納め法人破産を進めるという方法もあるのです。
分割払いに対応しているかどうかは事務所によってさまざまです。
法人破産を相談する際は分割払いに対応しているかどうかなども確認しておくことが重要になります。
分割払いできればその分だけ費用準備にも柔軟性が出ますので、依頼する弁護士事務所を選ぶときの判断材料のひとつにしてはいかがでしょう。
法人破産には費用がかかります。
費用の相場はあるものの、法人破産の費用については最終的にケースバイケースになります。
着手金などの費用についてはあくまで参考程度にとらえ、実際の費用感の把握には弁護士への相談や見積もりの取得を活用することをおすすめします。
法人破産の費用準備で困っている場合も弁護士に相談し、法人にあった費用の準備方法をアドバイスしてもらうとスムーズです。