東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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法人の事業の継続が困難になり、債務の整理を行っても立て直せる見込みがない場合、破産手続きを行うこととなります。
破産手続きには、その手続きの違いなどからいくつかの種類があります。
その中でも、法人が簡単に破産できる少額管財により手続きが進められる場合があります。
どのような場合に少額管財となるのでしょうか。
また、どのような手続きによりその処理が進められるのでしょうか。
その内容について確認していきましょう。
Contents
債務の返済に行き詰まった個人や法人が、自ら破産手続きを裁判所に申し立てることを自己破産といいます。
自己破産の手続きには、大きく分けて管財事件と同時廃止事件の2つがあります。
ただ、法人が破産する場合の手続きは、ほとんどの場合、管財事件として取り扱われることとなります。
法人の破産手続きは管財事件となるため、裁判所により破産管財人が選任され、破産者の財産を換価処分することとなります。
破産管財人がその業務を行うためにかかる費用は、破産者が負担しなければなりません。
そのため、裁判所に破産の申立てを行う際には、予納金としてその金額を納める必要があります。
この予納金の額は、負債の規模により変わりますが、かなり高額になります。
負債額 | 引継予納金の額 |
---|---|
5,000万円未満 | 700,000円 |
5.000万円以上1億円未満 | 800,000円 |
1億円以上5億円未満 | 1,500,000円 |
5億円以上10億円未満 | 2,500,000円 |
10億円以上50億円未満 | 4,000,000円 |
50億円以上100億円未満 | 5,000,000円 |
100億円以上 | 7,000,000円 |
そのため、破産者にとっては大きな負担になるだけでなく、予納金を負担できずに破産手続きが始められない可能性もあるのです。
規模の小さな法人でも、大企業と同じように管財事件として手続きをすることは、金銭面の負担も大きくなるため、支障があります。
そこで、一定規模以下の破産については、管財事件の中でも特に予納金の負担を少なくして手続きができる制度が設けられています。
この制度を、少額管財と呼びます。
財産がほとんどない場合には、法人の破産でも同時廃止事件になることはあります。
しかし、同時廃止事件にするために法人や経営陣が財産を使い込むといった不正が起こる可能性もあります。
少額管財制度が設けられたことで、破産する法人が手続き前に不正に財産を消費してしまうことを防ぐことができるのです。
それでは、どのような場合に少額管財として破産手続きを進めることができるのでしょうか。
少額管財となるためには、いくつかの要件を満たしていなければならないため、その内容を確認しておきましょう。
少額管財の制度は、すべての裁判所で採用されているわけではありません。
少額管財を採用してない裁判所では、たとえ小規模な事業者の破産であっても、すべて通常の管財事件となるのです。
たとえば、東京地方裁判所は少額管財を積極的に認めてくれる裁判所として知られています。
それでは、他の地域に所在する会社がすべて東京地方裁判所に破産手続きの申立てができるのかというと、そうではありません。
債権者の多くが東京にいる場合には認められる可能性がありますが、それも絶対ではありません。
まずは最寄りの裁判所が少額管財の制度を採用しているかどうか、事前に確認しておきましょう。
少額管財事件となった場合、裁判所に納める予納金の額は大幅に減らすことができます。
予納金の額が少なくなるのは、手続きを進める際の障害が少なく、迅速に処理できることができると見込まれているためです。
そのため、少額管財を利用できる人には一定の制限が設けられています。
具体的には、弁護士が申立人代理人となっている場合の自己破産申立てに限り、少額管財が利用できることとされています。
これは、弁護士が申立人の代理人として、申立て前に十分な調査が行っていると期待できるためです。
また、手続きを開始した後も、代理人となっている弁護士が破産管財人に協力して手続きが早く終わると見込まれるためです。
破産申立てを行った後にしなければならない手続きが多くある場合には、破産管財人の業務が増え、費用がかかります。
そのため、少額管財を利用するためには、破産を申立てる人が自分でできることをしておくことが前提となっています。
具体的には、まず売掛金の集金など会社の債権や財産を現金化することがあげられます。
特に、債権の回収は予納金の原資となる現金を確保するうえでも重要なことです。
不動産がある場合には、その売却に時間がかかるため、できるだけ早い段階で売却を検討すべきと言えます。
また、会社の債務を正確に把握する必要があります。
同時に、破産申し立てを行う際に当事者となる債権者の名簿を作成しておくことも重要なポイントです。
さらに、会社が保有する事業所を撤去することも行っておく必要があります。
こちらも財産の売却と同様、時間がかかるうえ、原状復帰に費用がかかる場合もあるため、事前によく検討しておく必要があります。
法人の破産手続きについては、同時廃止事件となることはほとんどなく、管財事件として取り扱われます。
管財事件には少額管財のほか、特定管財と呼ばれる従来からの管財事件もあります。
管財事件の中で少額管財となった場合、具体的にどのような特徴があるのでしょうか。
少額管財となった場合、一番の特徴は予納金が特定管財と比べて少額で済むことです。
このことが、少額管財にする最も大きなメリットといってもよいのです。
それでは、実際にどれくらい予納金が安く済むのでしょうか。
法人について少額管財が認められた場合、予納金の額は20万円となります。
また、法人と同時にその代表者が個人の自己破産を行う場合、その内容によっては個人も予納金を納めなければなりません。
これに対して、法人が特定管財の申立てをした場合は、債権者の数や負債の額によってその金額は変動します。
たとえば、破産する法人の負債の額が5,000万円未満の場合、法人が破産する際に必要な予納金は70万円となります。
この時、場合によっては個人についても自己破産する際に予納金が必要となり、その額は50万円となります。
そのため、合計で120万円の予納金が必要となる可能性があります。
少額管財であれば20万円のところ、特定管財になると70万円の予納金が必要とされます。
このように金額に大きな差があるため、少額管財で手続きしたいと考えることでしょう。
特定管財となるか少額管財となるかについて、破産申立てを行った人自らが判断するわけではありません。
あくまでも破産管財業務の複雑さや難しさなどから、その事件を担当する裁判官などが判断しているのです。
もともとは、特定管財が管財事件の原則的な処理方法でした。
しかし、予納金が非常に高いことから、破産しようとしている人や法人が支払うのは困難であるという問題が起こっています。
そこで、特定管財の枠組みを残しつつ、手続きが簡潔に進められそうなケースについては、少額管財として予納金を低くしたのです。
その後、少額管財の利用が増えてくると、しだいにこちらが原則的な方法であり、特定管財は例外的な扱いになっています。
特定管財になる事件の例としてまずあげられるのが、債権者の数が膨大な場合です。
債権者の数が多いほど、債権者に対する書類の送付先が多くなり、破産管財人の業務は複雑になります。
また、最終配当の支払先の件数も多くなります。
そのため、債権者の数が多いと少額管財とはならないのです。
具体的には、債権者の数が300人を超えた場合には特定管財になると言われています。
また、民事再生や特別清算などがうまくいかなかった場合には、裁判所が破産手続き開始を決定することがあります。
この場合、少額管財とはならず、すべて特定管財として取り扱われることとなります。
破産手続きを申立てるのは、その代理人となっている弁護士のほか、破産しようとする本人でも可能です。
そのため、中には弁護士に破産申し立ての代理人を依頼せず、すべて自分で手続きしようとする人もいます。
しかし、本人が破産の申立てを行う場合、負担の多くは破産管財人に重くのしかかることとなります。
もし手続きに問題があれば、破産者に対する指導を行う必要があるためです。
そのため、代理人がいない場合には、迅速で簡易な処理が前提となる少額管財になることはありません。
弁護士が代理人となっていないため、弁護士に対する報酬が必要ないと思っていても、その分予納金を多く支払う必要があるのです。
少額管財となるためには、弁護士の協力が不可欠なのです。
少額管財として破産手続きが進められる場合、その期間や費用は大幅に短く、そして少なくなります。
ここでは、実際に少額管財事件と特定管財事件とを比較し、その期間や費用の違いについて確認していきます。
特定管財事件の手続きにかかる期間はおおむね以下のようになります。
ここまでの期間をトータルすると、特定管財事件の場合、順調に進んでも7~8か月程度かかることになります。
また、債権者が多く確定に時間がかかる場合や財産の売却が順調に進まない場合には、1年程度の期間が必要となります。
一方、少額管財の場合もおおまかな流れは変わりません。
ただし、(3)の財産の売却や債権者への分配に関するプロセスが大幅に簡略化されます。
その結果、破産申立てから免責が確定するまで約3~4か月程度で済むと言われます。
破産申立てを行う前には、弁護士に相談し事前に準備が必要となります。
少額管財の場合、この事前準備が大きなポイントとなりますが、その期間を合わせても6~8か月程度となります。
その結果、少額管財事件の場合、特定管財事件よりは短い期間ですべての手続きを行うことができるのです。
破産手続きに係る費用については、裁判所によっても若干の金額の違いがあります。
ここでは、東京地方裁判所における費用を参考に見ていきます。
特定管財事件の場合、裁判所に納める手数料や予納金などの金額は次のとおりです。
したがって、特定管財事件の場合、最低でも70万円以上の費用が必要となるのです。
なお、郵券については、債権者の数が多い場合などは加算され、これ以上に必要とされることもあります。
また、引継予納金は負債総額によってその額が決められており、負債の額が大きい場合には予納金も多額になります。
70万円は、負債総額が5,000万円未満の場合に適用されますが、負債総額が5,000万円以上1億円未満の場合は100万円となります。
さらに、負債総額が1億円以上5億円未満の場合には200万円となり、実際には70万円では済まないケースも多いのです。
一方、少額管財事件の場合に裁判所に納める金額は以下のようになります。
少額管財の場合、引継予納金の額は20万円となり、特定管財事件の場合に比べて大幅に安くなります。
ただ、少額管財事件となるためには、代理人となる弁護士に依頼しなければならないことに注意が必要です。
比較的小規模な破産事件の場合には、弁護士費用が50万円程度からとなっているケースが多くなっています。
そのため、負債総額が5,000万円未満の場合、弁護士に依頼して少額管財事件となってもトータルの費用が安くなるわけではありません。
ただ、弁護士に依頼する方が手続きはスムーズに進みますし、早く破産手続きが完了するというメリットはあります。
また、特定管財事件となる場合でも、基本的には弁護士に手続きを依頼するものと考えておきましょう。
自分で破産手続きを進めても思いどおりにいかず、裁判所や破産管財人の手を煩わせる結果となりかねません。
また、免責をできるだけ早く確定させて再スタートを切る方が、メリットが大きいのです。
破産することを考える場合には、まずは弁護士に相談するようにしましょう。
それでは、実際に法人が少額管財事件として破産手続きを行う際の流れを確認しておきましょう。
法人が破産するか、あるいは他の選択肢があるのかを自分で判断することは難しいと思います。
そこで、まずは弁護士に現在の状況を説明のうえ、債務整理の方法がないか、あるいは破産すべきかを相談することとなります。
破産手続きをすべきという判断になった場合は、弁護士と委任契約を締結します。
弁護士が申立て代理人となることは、少額管財事件になるための要件であるため、弁護士との契約は必須です。
法人の破産申立ての場合、個人の自己破産と比較して緊急性が高いことが考えられます。
そのため、弁護士から債権者に受任通知が必ず発送されるとは限りません。
それ以上に重要となる可能性があるのが、従業員の解雇や退職手続き、事務所や店舗などの明渡し、売掛金の回収などです。
必ずこれらを行ってから破産の申立てを行うというわけではなく、個別の事情も踏まえて、よりよい方法を選択することとなります。
裁判所に提出する破産手続開始申立書を作成します。
申立書を提出する際には、あわせて登記簿謄本や報告書、財産目録などの書類が必要です。
弁護士の指導のもと、これらの書類を準備することとなります。
法人が自己破産の申立てをする際には、取締役会の承認決議が必要です。
また、取締役会が設置されていない法人の場合は、個別に取締役の同意を得る必要があります。
取締役会議事録や同意書は、破産手続開始申立書に添付することとなるため、忘れずに作成しておきます。
管轄の裁判所に破産手続開始申立書を提出します。
すると、その当日あるいは3日以内に、裁判官と申立代理人となっている弁護士との間で協議を行います。
この面接で、少額管財事件となるか特定管財事件となるかが決められるのです。
即日面接により方針が決められると、その日のうちに破産管財人候補者が選ばれます。
その後、破産管財人候補者・申立人・申立代理人の三者での打合せを行う必要があるため、その日程を調整します。
打合せでは、破産手続開始申立書に記載されていない内容や、今後の手続きの方針などについて話し合いが行われます。
基本的には、破産手続開始の申立てから1週間程度で破産手続の開始が決定されます。
ここで、破産管財人候補者が正式に破産管財人に就任します。
申立人はすみやかに、破産管財人が開設した管財人名義の預金口座に引継予納金を振り込みます。
破産管財人は、財産の保全、賃貸借物件の明け渡し、従業員の解雇、債権の回収といった管財業務に取りかかります。
これらの手続きは破産管財人が行うこととなりますが、破産会社の取締役などは、その業務に協力しなければなりません。
破産手続きの進捗具合や今後の方針を債権者に報告するために、債権者集会が開催されます。
債権者集会に出席する債権者はそれほど多くありませんが、法人に対する債権を保有する取引先などが出席する場合はあります。
1回の開催で手続きが完了するケースもありますが、中には2回目、3回目と回を重ねることもあります。
管財業務がすべて終了し、残った金銭については債権者に債権金額に応じて配当されます。
配当手続きが完了すれば、裁判所により破産者である法人の破産手続き終結の登記が行われます。
法人破産の場合は、弁護士に依頼することが一般的です。
そこで下記では、弁護士に依頼するメリットについて紹介します。
法人破産が少額管財として扱われれば、予納金が20万円しかかかりません。
通常の管財事件の場合は、最低でも予納金は70万円かかるため、差額で50万円の節約に繋がります。
破産費用を抑えるためには少額管財の申立が有効ですが、弁護士からの申立がないと少額管財は認められません。
弁護士に依頼するだけで、予納金を最低でも50万円節約できると考えれば、メリットは大きいでしょう。
法人破産の手続きは複雑で、知識のない状態だと進めるのが難しいです。
「破産費用を抑えるために、自分だけで手続きを進めたい」と思うかもしれませんが、それは現実的ではありません。
自分で手続きを進めても、書類の作成に不備があったり、記入漏れがあったりすれば、裁判所は申立受理してくれないでしょう。
破産手続きはただでさえ時間がかかるのに、自分で手続きを進めて、余計に時間をかけるのは無駄です。
最初から弁護士に依頼することで、スムーズな破産手続きができます。
法人破産の申立をするときに、準備する書類は数多くあります。
自分で記入するもの・コピーを取ってくるものなど、多岐にわたるため弁護士に任せた方がいいでしょう。
弁護士なら必要な書類を把握しているため、書類作成・手続きを任せられます。
法人破産の手続きを弁護士に依頼した場合、債権者に対して受任通知が送られます。
受任通知が送られると、債権者は弁護士宛にしか問い合わせができなくなります。
依頼主としては、自分で債権者の対応をしなくてもいいため、かなり楽になるでしょう。
破産手続きが始まったら、取引先から破産について聞かれたり、従業員から反発を受けるかもしれません。
特に従業員はすべて解雇することになるため、批判されることもあるでしょう。
法人破産を決定して進めていくことは、経営者にとって精神的なストレスが大きい手続きになります。
今まで一緒に仕事をしていた人が自分に対して、厳しい意見を言ってくる可能性もあります。
そこで弁護士がいれば、間に入ってくれたり、どういう風に対応すればいいかアドバイスをくれます。
自分の味方がひとりでもいることで、精神的なストレスも軽くなるでしょう。
法人の破産手続きには高い費用がかかるため、長年放置されているというケースもあると思います。
しかし、会社を残しておくと費用や税金が発生し、預貯金などの管理を行わなければならなくなります。
そのため、消滅させた方がよい法人については破産手続きを行うべきなのです。
また、経営状態が苦しい法人については、破産手続きを行うことで、その債務を帳消しにすることができます。
破産手続きの中でも少額管財に該当する場合には、少ない費用で手続きを完了することができるメリットがあります。
少額管財に該当するためには、弁護士に代理人になってもらうことが必要です。
まずは、今の会社の状態について、弁護士に相談のうえ破産手続きの進め方を確認するようにしましょう。