東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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会社の倒産は社員にとって予想外の事態です。
倒産すると突発的に収入が途絶えるので、社員の生活に大きな影響を及ぼします。
会社の倒産により社員の生活が困難にならないよう、次の仕事が見つかるまでの繋ぎに給付されるお金が「失業保険(失業手当)」です。
会社の倒産など会社都合で退職した場合は、ハローワークで申し込みを行い、7日間の待期期間を経て失業手当が給付されます。
この記事では、会社倒産による失業で知っておきたい失業保険の基礎知識や注意点を解説します。
Contents
失業保険(失業手当)とは、退職に際して給付を受けられるお金のことです。
失業したときに次の仕事に就くまで、あるいは一定期間受け取ることができる資金がこの「失業保険(失業手当)」になります。
失業後に生活を支える給付金で、当面の生活費援助のようなものです。
会社に勤めている人は給与から毎月いろいろなお金が天引きされています。
年金や健康保険料などの他に、この雇用保険も天引きの対象です。
雇用保険は在職中に給与天引きのかたちで支払いを続け、失職したときに失業保険(失業手当)というかたちで恩恵を受けられる給付になります。
失業保険は退職さえすれば誰でも必ずもらえるというわけではありません。
失業保険の受給資格を満たしていないと給付対象にならないのです。
たとえば、失業後に即座に新しい仕事が見つかった人や、就職する意思のない人は失業保険の給付対象外になります。
このように、失業保険は退職すれば誰でももらえるというわけではないのです。
失業保険の詳しい受給条件については「会社が倒産した場合の失業保険はいくら?」で解説します。
失業手当は失業(退職)するときに受け取れます。
しかし、失業にはそれぞれ異なった事情があります。
自分から仕事を辞める人もいれば、会社側の事情でいきなり職を失う人もいるはずです。
失業の理由自体が違うわけですから、すべての失業者をひとまとめにして給付日数や金額を決めると、不平等が生まれる可能性があります。
たとえば、会社の都合でいきなり職を失った人の場合、職を失うこと自体が予想外ですから、退職後の生活に必要な生活費を確保していない可能性があります。
離職への準備もできていなかったはずです。
対して自己都合による退職は、退職前に生活費の確保や次の就職の準備などもできていた可能性があります。
前者と後者では前者の方がより生活への援助を必要とするケースが多いのではないでしょうか。
このような理由から、失業保険には退職理由による3つの分類が設けられています。
3つの分類にはどのような退職ケースが該当するのか詳しく見てみましょう。
会社都合退職者とは「会社側の事情により会社を辞めることになった人」です。
会社の倒産により失業した人は、まさにこの会社都合退職者に該当します。
会社都合退職者の最大の特徴は、社員自身は働き続けるつもりだったが、会社の事情により働けなくなったという点です。
会社の倒産以外では、会社側による退職の推奨による退職、有期契約の打ち切りによる退職や労働条件相違による離職などが会社都合退職者に該当します。
すでにお話ししたように、会社都合による退職は、社員にとって不意打ちに等しいことです。
退職する社員が備えをしていない可能性が高いので、失業保険をすぐに受け取ることができるよう受給開始時期が配慮されています。
自己都合退職者とは「社員側の事情により会社を辞めた人」のことです。
自己都合退職者は2つのパターンに分かれます。
ひとつは「正当な理由のある自己都合退職」です。
病気や配偶者の転勤、介護などを理由に退職するケースになります。
「家庭生活でどうしても退職が必要で、退職せざるを得ない」など仕事を続けたかったが、事情により続けることが難しかったため退職したケースと言い換えてもいいでしょう。
もうひとつは「正当な理由のない自己都合退職」です。
「仕事を続けることもできたが、他にやりたいことがあった」など、資格取得や転職、起業や独立などを理由に退職する場合です。
このような退職ケースは基本的に正当な理由のない自己都合退職に振り分けられます。
「会社都合退職者や自己都合退職者以外の退職者」が「その他の退職者」のカテゴリーに振り分けられます。
代表的なその他の退職者は定年退職者や有期契約満了による退職者などが該当します。
定年退職者や有期契約満了は、年齢や社会的ルールによる退職になるので、自己都合や会社都合とは違った分類となっているのです。
会社倒産を含む会社都合退職は、社員にとって予想外の出来事であり、退職の準備をしていない場合がほとんどです。
会社都合退職の場合、突然収入が途絶えてしまうので、待期期間や受給期間が考慮されています。
失業保険の受給では自己都合退職より会社都合退職の方が受給する側に有利だといわれることがあります。
しかし、会社都合退職はメリット(有利な面)だけではなく、デメリットも存在します。
会社の倒産により失業手当を受給するときは、会社都合退職のメリットとデメリットも知って手続きしましょう。
会社都合退職には3つのメリットがあります。
会社都合による退職の場合、失業保険をすぐに受け取ることができます。
なぜなら、自己都合退職者より生活の備えをしていない可能性が高いため、急いで生活のサポートをする必要があるからです。
そのため、自己都合退職者の場合、失業保険の受給まで約3カ月待たなければならないところ、会社都合退職者は離職票提出後7日間で失業保険を受け取ることができます。
自己都合退職者と比較して短期間で受給が認められているのが会社都合退職のメリットです。
失業保険は退職理由によって受給期間が異なっています。
たとえば34歳の自己都合退職者が雇用期間5年以上で退職したとします。
このときに受給できる失業保険の期間は90日です。
対して会社都合による退職者が失業保険を受け取ることのできる期間は180日と長くなっています。
突然、会社を辞めなければならなくなった会社都合退職者の方が、受給期間の面でもメリットがあることがわかるでしょう。
会社都合による退職の中でも「解雇」に該当する場合は、会社から解雇予告手当を受け取ることができます。
社員を解雇する場合、会社側は社員に対して「30日前に告げなければいけない」というルールがあります。
解雇を30日前に予告できない場合は労働基準法第20条に従い、会社側は社員に対して最大30日分の給料(解雇予告手当)を払わなければなりません。
会社が20日後に退職して欲しいと社員に告げた場合、解雇通告手当は10日分になります。
会社が30日前に解雇予告している場合は、解雇予告手当の支給はありません。
会社都合退職には2つのデメリットがあります。
会社都合による退職は、予期せぬ退職なので、自己都合退職と異なり退職後の生活の準備期間がないというデメリットがあります。
たとえば会社側から「明日で退職」と告げられた場合、社員は会社から解雇予告手当を受け取れますが、1カ月分の給与でできることには限りがあるはずです。
住宅ローンを組んでいる人は返済に困るでしょうし、子供の養育や老親の介護などをしている人は、教育費や介護費用などに困るのではないでしょうか。
自己都合退職の場合は自分の都合に合わせて準備できますから、離職後の生活を視野に預金したり、ローンの繰り上げ返済をしたりできるかもしれません。
このことから、会社都合の退職は、退職後の生活の準備をしておくことが難しいというデメリットがあります。
会社都合による退職は、再就職の際に不利に働く可能性があります。
会社の都合なのになぜ再就職の際に不利になるのかと疑問に思うかもしれません。
実は、これには深い理由があります。
新しい会社に履歴書などを差し入れた際に「会社都合退職」と書いてあると「別の事情があったのではないか」と勘繰られるからです。
会社都合退職という言葉からは、いろいろな事情を推測できます。
書面からは「倒産による退職だった」とはわかりません。
会社都合退職は「この人が何か問題を起こして懲戒解雇されたのではないか」と、再就職を希望している会社の採用担当が考える可能性があるのです。
「特に気にしない」という会社もあるので、必ずしも不利になるとは限りませんが、デメリットになる可能性もあることを覚えておきましょう。
会社が倒産して会社都合による失業保険を受給するときの「受給条件」と「受給開始時期」について説明します。
会社倒産による失業は会社都合となり、目安として給料の5~8割程度の失業保険がもらえます。
もらえる日数は待機期間直後から最低90日、最長330日となりますが、具体的な金額は雇用保険の加入期間と年齢、退職前半年間の給料が考慮されます。
失業手当と呼ばれる「基本手当」は、賞与等を除く退職前半年間の給料÷180日が1日の支給額(基本手当日額)となり、受給日数を掛けて総額を計算します。
また、基本手当の受給中に再就職が決まったときは、以下の条件で「就職促進給付」も給付されます。
他にも、雇用保険を3年以上支払っている人が厚生労働大臣指定の講座を修了するなど、一定要件を満たしたときには「教育訓練給付金」がもらえます。
再就職後に6ヶ月以上雇用があり、前職の日額賃金を下回る場合は、「就業促進定着手当」を受給できるかもしれないので、ハローワークで詳細を聞いてみましょう。
失業保険には退職理由によって受給の条件が定められています。
会社が倒産して会社都合による退職の場合は「社員に離職日以前の1年間のうち半年以上の被保険者期間がある」ことが受給条件です。
自己都合退職の場合は「社員2年間のうち1年以上の被保険者期間があること」が条件になっているので、会社都合退職の方が受給のハードルが低く設定されていることになります。
会社が倒産して会社都合で退職しても、退職即日に失業保険がもらえるわけではありません。
失業保険の受給開始時期まで待つ必要があります。
会社都合による退職者の受給開始時期は、ハローワークに離職票を提出して7日後です。
自己都合退職による受給開始期間は7日+3カ月になっているので、受給開始時期も会社都合による退職の方が自己都合退職より早めに設定されていることがわかります。
失業手当を受給するためには、倒産によって職を失った社員が自分で手続きしなければいけません。
手続き先はハローワークです。
失業手当の受給までの流れは、以下のようになっています。
失業保険を受給するためには、受給の手続きに必要な書類を準備しなければいけません。
受給手続きのためには退職した会社から渡される書類と自分で準備する書類の2種類があります。
会社から渡される書類
離職票は会社の退職理由について書かれた書類です。
この2つを会社から渡されなかった場合は会社にコンタクトを取って受け取るか、ハローワーク側に受け取れない事情を話した上で相談してください。
自分で準備する書類
この他に、印鑑や写真なども必要になります。
必要書類については、事前にハローワークに確認を取っておくこととよいでしょう。
必要書類を準備したら、次はハローワークへ手続きに向かいます。
ハローワークではまず求職の申し込みをする必要があります。
「失業保険の受給手続きに来た」と話せば窓口で案内を受けられるはずです。
ハローワークには持参した必要書類を提出してください。
提出された必要書類をもとに、ハローワーク側で退職理由や受給条件の確認などを行います。
受給条件を満たしていると確認された場合、初回説明会の日時を伝えられ、この日は一旦終了です。
失業保険を受給するためには、雇用保険受給者の初回説明会に参加する必要があります。
窓口で失業保険の手続きをしただけでは受給できないため、注意してください。
初回説明会とは、失業保険の受給について説明を受ける集まりです。
失業保険の受給を証明する書類を受け取ることができるので、もらい忘れのないようにしましょう。
初回説明会では認定日についても話があります。
次の認定日にまた足を運ぶことになるのです。
失業保険は文字通り、失業中しか受け取ることはできません。
「失業中なのか」を確認するために、4週間(約1カ月)に1回のペースで認定日が設けられます。
認定日には受給者が足を運び、「雇用保険受給資格者証」や「失業認定申告書」を提出の上で失業認定を受ける必要があります。
この他に、受給中は求職活動が必要になります。
求職活動は前回認定日から次回認定日までの間に、基本的に2回必要です。
ハローワークの窓口での相談や求人への応募などが主な求職活動になります。
ハローワークで必要な手続きをして失業の認定を受けると、基本的に5営業日以内に失業保険が口座に振り込まれます。
振り込まれる基本的な額は「基本手当日額×1カ月分」です。
期間中にアルバイトやパート、家業などを行うと、その日については失業にならないため、該当の日は支給対象外になります。
ただし、支給対象外の日があっても、その日は翌月以降に繰り越し可能です。
失業保険の給付についてわからないことがあれば、初回説明会などのときに確認しておきましょう。
ここからは、失業保険をもらうために知っておきたいことを紹介します。
それぞれ詳しくみていきましょう。
失業保険を不正受給すると、受け取った給付金に加えて、2倍の罰金が科せられます。
たとえば30万円の失業保険を不正受給していた場合、合計90万円の罰金支払いが必要です。
就職しているのに「まだ職を探している途中です」と嘘をついたり、自営業者として仕事をするのに隠していたり、知人の仕事を手伝ったり・内職したりすると不正受給になります。
「ハローワークにバレなければいいだけ」と思うかもしれませんが、不正受給は密告でバレることが多いです。
周りの人・知人経由で、ハローワークに報告される事例もあります。
嘘をついて不正に受給すると、多額に罰金支払いがあるため、正直に報告して正しく受給しましょう。
失業保険の給付期間中に再就職した場合、再就職手当が給付される可能性があります。
再就職手当をもらうには、下記の給付条件をクリアしなければいけません。
再就職手当の給付金額は、支払いの残り日数・基本手当の金額によって決定します。
失業期間中に就職することがあれば、ハローワークに行って再就職手当の相談をしてみましょう。
失業保険を受給している人を対象とした職業訓練施設があります。
職業訓練は3ヶ月〜2年程度の期間で、受講すれば失業保険の給付期間が延長されます。
例えば失業保険が3ヶ月で給付終了する場合でも、職業訓練に1年間通えば、1年分の失業保険が給付されます。
職業訓練には、パソコンスキル・電気工事士などさまざまなコースがあるため、再就職にも役立ちます。
失業保険期間中にスキルを身に付けて、再就職を有利に進めたい方は、職業訓練に通うのもおすすめです。
会社が倒産して失業しそうなときは、退職後の失業保険の受給を見据えてやっておきたいことが2つあります。
すでにお話ししたように、退職理由が自己都合と会社都合では失業保険の受給に差が出てしまいます。
会社都合による離職の方が失業保険を早く受給できるなど、受給においてはメリットがあるのです。
離職票を受け取ったら必ず退職の理由を確認しておきましょう。
もうひとつしておきたいことは、離職票の受け取り日を会社に確認することです。
離職票は失業保険の受給に必要な重要書類になります。
離職票が手元に届かないと失業保険の手続きができないため、収入において不安定な状況になってしまうのです。
失業保険を早めに受給するためにも、会社に「離職票はいつ受け取ることができるのか」としっかり確認しておくことが重要です。
可能なら、受け取ることのできる時期ではなく、具体的な日付を教えてもらうようにしましょう。
会社側が離職票を渡さない場合や予定日よりかなり遅れている場合は、ハローワークに相談することをおすすめします。
ハローワークの方で会社に対して離職票の督促をしてくれるのです。
失業保険とは、会社倒産などにより職を失った人を支援するための給付金です。
退職の理由により受給期間や受給開始に差があり、会社倒産などで失業した人の場合は自己都合による退職と比較して早期に受給できるなど、社員の生活への配慮がなされています。
失業保険を受給するためには、必要書類を準備した上でハローワークに足を運び、所定の手続きをする必要があります。
また、失業保険の受給には受給条件が定められているため、手続き前に確認しておきましょう。
失業保険についてわらかないことや困ったことがあれば、最寄りのハローワークの窓口などに相談することをおすすめします。