この記事でわかること
- 相続税の計算方法
- 相続税の申告方法
- 相続人が子供のみの場合の相続税
- 相続人が配偶者と子供の場合の相続税
- お得な控除制度
被相続人が亡くなると、その人の保有する財産・債務が他者に引き継がれる遺産相続が始まります。法定相続人となれるのは原則として親族であり、被相続人の配偶者は必ず法定相続人となるほか、被相続人の子供は第1順位の法定相続人となります。
相続する遺産総額が一定額を超えると相続税申告が必要となり、それを怠ればペナルティが課されることもあるので注意が必要です。また、たとえ子供が未成年者であっても、相続税の申告が必要です。
この記事では、相続が発生した時に、遺産相続した子供にかかる相続税について、基本からわかりやすく解説します。
子供のみが相続する際にかかる税金の計算方法や、活用できる制度もあわせて紹介するため、相続が開始されたときに備えてぜひ役立ててください。
目次
相続税の基本について
まずは、相続発生時にかかる相続税の基本的な概要を紹介します。相続が発生して被相続人から遺産を取得しても、必ずしも相続税が課税されるわけではありません。
また、相続税は引き継いだ遺産の取得金額に応じて、税率が高くなります。そのような相続税の概要について紹介します。
遺産を取得しても必ず課税されるわけではない
相続が開始されるとまずは被相続人のプラスの遺産総額から、負債(借金等)や葬儀費用等が差し引かれます。
その後に残った「正味の遺産額」から基礎控除額が差し引かれ、課税遺産総額を決めます。
課税遺産総額を民法に定める法定相続分で按分し、その金額へ税率を乗じるのです。
そのため相続税が課される相続人は、遺産総額が一定の額以上の人となります。
基礎控除内に収まれば申告や納税はいらない
相続を受けた財産の合計額が基礎控除額よりも少ない場合、相続税の申告も納税も不要です。
ただし、それぞれの相続財産の評価額は相続税法に則って正確に計算しなければなりません。
その計算を誤って、本当は基礎控除を超えていたことが判明した場合は、ペナルティとして本来納めるべき税額に追徴課税が課されることとなります。
土地・建物などの不動産や有価証券などを遺産相続する場合は、被相続人が亡くなった時の正しい相続税評価額を計算しましょう。
相続税率(2015年1月1日以後の場合)
前述したように、遺産を取得した場合でも、負債や葬儀費用等を差し引いたうえではじめて課税されます。
法定相続分に応じた取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | 0円 |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超~ | 55% | 7,200万円 |
表をみれば、遺産相続で多額の法定相続分に応じた取得金額が多くなるほど、税率も高くなることがわかります。
いくらまで無税?相続税における基礎控除の計算方法
相続税の申告・納税は、正味の遺産額を計算して判断する必要があります。
相続税には基礎控除があるため、相続が発生しても必ずしも相続税が発生するとは限りません。
ここでは、基礎控除を解説し実際に相続税を計算します。
相続税の基礎控除の計算式
基礎控除の計算式は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」となります。
法定相続人とは、法律で定められた相続人のことで、相続税の基礎控除額の算出に不可欠です。
例えば、被相続人の配偶者や子供、両親・祖父母、兄弟姉妹といった親族が法定相続人に該当する可能性があります。
つまり、法定相続人の数が多いほど、基礎控除額は大きくなります。
例えば、被相続人に、配偶者(妻)と4人の子がいたとすれば、基礎控除額は次の通りです。
3,000万円+(600万円×5人)=6,000万円
基礎控除額以下なら、相続税は課税されず申告も不要です。
実際の計算例
相続人が多いと基礎控除が有利になるものの、その分相続税の算定に時間がかかるケースもあります。
ここでは具体例を用いて、どのくらいの相続税がかかるかシミュレーションしてみます。
(例)妻・子4人の場合
- 遺産総額:1億円
- 相続時精算課税に係る贈与財産価額:なし
- 債務:なし
- 葬式費用:1,000万円
- 相続開始前3年以内の贈与財産価額:なし
- 他の特例:配偶者の税額の軽減適用
(1)まず遺産総額1億円、差し引ける葬式費用1,000万円があるので、こちらを計算します。
1億円-1,000万円=9,000万円
(2)次に基礎控除を計算します。
3,000万円+(600万円×5人)=6,000万円
(3)正味の遺産額9,000万円から基礎控除6,000万円を差し引きます。
9,000万円-6,000万円=3,000万円
(4)法定相続分で分ければ次のようになります。
妻:3,000万円×1/2=1,500万円
子1人につき:3,000万円×1/8=375万円
(5)相続税を計算してみます。
妻:1,500万円×15%-50万円=175万円
子1人につき:375万円×10%=37.5万円
(6)その後、税額を合計すると
妻175万円+(子37.5万円×4人)=325万円
(7)相続税の総額は325万円となり、実際の相続割合で分けます。
妻:325×1/2=162.5万円
子1人につき:40万6,250円
(8)配偶者の税額の軽減適用があるので、実際に納める税金は次の通りです。
配偶者:相続税0円・子1人につき:相続税40万6,250円
相続税早見表「相続人が子供のみ」のケース
被相続人に子供がいれば、その子供が第1順位となり法定相続人となります。
もし子供が相続開始前に亡くなっていると、次順位の人が自動的に法定相続人になるというわけではありません。
子供に孫がいれば、その孫が代襲相続することになり第1順位の法定相続人となります。
なお、その孫も亡くなっていればひ孫が代襲相続します。
子供が遺産全額を取得できることも
前述した通り、被相続人の子供は第1順位となります。
子供が複数人いる場合は遺産分割をしなければいけません。
相続人1人が得られる遺産は減るものの、基礎控除額は増え、人数で按分することで税率が低くなることもあり、相続税の負担は減ります。
早見表(子供のみ)で相続税をチェック
こちらでは、子供が1人~3人までの場合にかかる相続税をシミュレーションしてみましょう(単位:万円・千の位で四捨五入)。
正味の遺産額/人数 | 1人 | 2人 | 3人 |
---|---|---|---|
4,000万円 | 40万円 | 0円 | 0円 |
5,000万円 | 160万円 | 80万円 (1人40万円) |
21万円 (1人7万円) |
6,000万円 | 310万円 | 180万円 (1人90万円) |
120万円 (1人30万円) |
7,000万円 | 480万円 | 320万円 (1人160万円) |
219万円 (1人73万円) |
8,000万円 | 680万円 | 470万円 (1人235万円) |
330万円 (1人110万円) |
9,000万円 | 920万円 | 620万円 (1人310万円) |
480万円 (1人160万円) |
1億円 | 1,220万円 | 770万円 (1人385万円) |
630万円 (1人210万円) |
1億1,000万円 | 1,520万円 | 960万円 (1人480万円) |
780万円 (1人260万円) |
1億2,000万円 | 1,820万円 | 1,160万円 (1人580万円) |
930万円 (1人310万円) |
1億3,000万円 | 2,120万円 | 1,360万円 (1人680万円) |
1,080万円 (1人360万円) |
1億4,000万円 | 2,460万円 | 1,560万円 (1人780万円) |
1,239万円 (1人413万円) |
1億5,000万円 | 2,860万円 | 1,840万円 (1人920万円) |
1,440万円 (1人480万円) |
1億6,000万円 | 3,260万円 | 2,140万円 (1人1,070万円) |
1,641万円 (1人547万円) |
1億7,000万円 | 3,660万円 | 2,440万円 (1人1,220万円) |
1,839万円 (1人613万円) |
1億8,000万円 | 4,060万円 | 2,740万円 (1人1,370万円) |
2,040万円 (1人680万円) |
1億9,000万円 | 4,460万円 | 3,040万円 (1人1,520万円) |
2,241万円 (1人747万円) |
2億円 | 4,860万円 | 3,340万円 (1人1,670万円) |
2,460万円 (1人820万円) |
仮に正味の遺産額が2億円ともなれば、子1人が相続する場合に相続税が5,000万円近くかかります。
3人が相続する場合でも2,500万円近くになり、遺産額が高額になるほど、税負担も高くなります。
相続税早見表「相続人が配偶者と子供」のケース
相続開始時に被相続人の配偶者がいる場合、配偶者は常に法定相続人となります。
なお、配偶者と子供が相続人となるケースの場合、配偶者の法定相続分は1/2となります。
人数が増えると法定相続分は減る
被相続人の子供の人数が多ければ多いほど、一人あたりの法定相続分は少なくなります。
配偶者と子供がいる場合の法定相続分は、配偶者が1/2、子供が1/2です。
この割合は変わらないため、子2人なら1/4・1/4、子3人なら1/6・1/6・1/6と、子の数が多くなるほど子供一人あたりの法定相続分は少なくなります。
相続税の負担総額は減りますが、分割割合に不満が出ないよう、税金以外の部分もご注意ください。
早見表(配偶者と子供)で相続税をチェック
こちらでは、配偶者および子供が1人~3人までの相続税をシミュレーションしてみましょう(単位:万円・千の位で四捨五入)。
なお、配偶者は「配偶者の税額軽減」という制度を利用し、相続税を0円と仮定します。
正味の遺産額/人数 | 1人 | 2人 | 3人 |
---|---|---|---|
4,000万円 | 0円 | 0円 | 0円 |
5,000万円 | 40万円 | 10万円 (1人5万円) |
0円 |
6,000万円 | 90万円 | 60万円 (1人30万円) |
30万円 (1人10万円) |
7,000万円 | 160万円 | 112万円 (1人56万円) |
81万円 (1人27万円) |
8,000万円 | 235万円 | 176万円 (1人88万円) |
138万円 (1人46万円) |
9,000万円 | 310万円 | 240万円 (1人120万円) |
201万円 (1人67万円) |
1億円 | 385万円 | 316万円 (1人158万円) |
261万円 (1人87万円) |
1億1,000万円 | 480万円 | 392万円 (1人196万円) |
324万円 (1人108万円) |
1億2,000万円 | 580万円 | 480万円 (1人240万円) |
402万円 |
1億3,000万円 | 680万円 | 568万円 (1人284万円) |
489万円 (1人163万円) |
1億4,000万円 | 780万円 | 656万円 (1人328万円) |
576万円 (1人192万円) |
1億5,000万円 | 920万円 | 748万円 (1人374万円) |
666万円 (1人222万円) |
1億6,000万円 | 1,070万円 | 860万円 (1人430万円) |
768万円 (1人256万円) |
1億7,000万円 | 1,220万円 | 976万円 (1人488万円) |
879万円 (1人293万円) |
1億8,000万円 | 1,370万円 | 1,100万円 (1人550万円) |
993万円 (1人331万円) |
1億9,000万円 | 1,520万円 | 1,226万円 (1人613万円) |
1,104万円 (1人368万円) |
2億円 | 1,670万円 | 1,350万円 (1人675万円) |
1,218万円 (1人406万円) |
配偶者の存在を考慮しても、正味の遺産額が1億6,000円を超えれば、税負担も1,000万円台になっています。
しかし、配偶者はどれだけ大きな遺産を相続しようとも、配偶者の税額の軽減制度が適用されれば非課税となります。
正確な遺産総額の把握・スムーズな遺産分割を行えば、配偶者は相続税負担の可能性が低くなる仕組みと言えるでしょう。
子供が利用できるいろいろな控除制度
今回の記事内で度々登場した「配偶者の税額軽減」制度について、気になった人もいるのではないでしょうか。
こちらの制度では、配偶者が取得した正味の遺産額が1億6,000万円または、その法定相続分相当額のどちらか大きい金額が控除対象となります。
一方で、被相続人の子供が利用できる控除や特例もいくつかあり、活用すれば相続税の負担軽減に繋がるのです。
ここからは、そのような被相続人の子供が利用可能な控除制度を、条件とともに解説します。
未成年者控除とは?
被相続人の子供が未成年かつ相続人になる場合、経済的な自立をするまで養育費・教育費等の負担がかかると想定されます。
そのような状況を踏まえ、「未成年者控除」とは未成年の相続人にかかる相続税の負担を軽減する控除制度です。相続税申告時に、こちらの控除申告も併せて行います。
未成年者控除の条件
次の条件すべてに該当する人が控除対象となります。
(1)遺産を取得したとき、日本国内に住所のある未成年者
仮に、そのとき日本国内に住所がない未成年者でも、以下のいずれかに当てはまればOKです。
- [1]日本国籍があって相続開始前の10年以内に国内に住所があった
- [2]日本国籍はあるが相続開始前の10年以内に国内に住所を有していなかった
- [3]日本国籍がない人
ただし、[2]の場合は被相続人が一時居住被相続人、非居住被相続人の時は対象外です。
また、[3]の場合は被相続人が一時居住被相続人、非居住被相続人、非居住外国人の時は対象外です。
(2)遺産を取得したとき、20歳未満であること
(3)遺産を取得した未成年者が法定相続人であること
なお、(3)の補足として、相続の放棄があった場合、その放棄がなかったものとしたとき相続人といえるなら対象となります。
未成年者控除額を計算してみる
未成年の相続人がいるとき、成人へ達するまでの年数につき10万円が控除されます。
具体例をあげて計算してみましょう。
(例)未成年者:相続開始時6歳3カ月
未成年者が成人するまで13年9カ月なので、1年未満の端数が切り上げとなり14年で計算します。
14年×10万円=140万円
以上のように140万円の未成年者控除が適用されます。
もしも、未成年の相続人に課される相続税よりも、この控除額が大きい場合は、その引ききれない部分の金額を、扶養義務者(配偶者、直系血族・兄弟姉妹、3親等内の親族で一定の者)の相続税から差し引きます。
障害者控除とは?
相続人である子供が障害者の場合もあるかもしれません。
遺産を取得した障害を持つ相続人に相続税が課せられてしまうと、日常生活への負担は大きくなるでしょう。
そういった人の負担軽減のため、利用できるのが障害者控除です。
相続税申告時に障害者である証明が可能な書類を添付し、手続きを行います。
障害者控除の条件
次の条件すべてに該当する障害者が控除対象です。
(1)遺産を取得したとき、日本国内に住所のある障害者
障害者であっても、被相続人が一時居住被相続人、非居住被相続人、非居住外国人の時は対象外です。
(2)遺産を取得したとき、障害者であること
(3)遺産を取得した障害者が法定相続人
相続の放棄があった場合、その放棄がなかったものとしたとき相続人といえるならば対象となります。
障害者控除額を計算してみる
相続人となる障害者が85歳未満の場合、相続税額から一定の金額が差し引かれます。
また控除額は、「一般障害者」か「特別障害者」かによって異なります。
1.一般障害者の場合
主に「身体障害者手帳上の障害等級」3級~6級、「精神障害者保健福祉手帳上の障害等級」二級または三級の方々が該当します。
控除額は満85歳までに、その年数につき10万円が控除されます。
具体例をあげて計算してみましょう。
(例)障害者:相続開始時32歳4カ月
満85歳まで52年8カ月なので、1年未満の端数が切り上げとなり53年で計算します。
53年×10万円=530万円
以上のように530万円の障害者控除が適用されます。
2.特別障害者の場合
主に「身体障害者手帳上の障害等級」1級または2級、「精神障害者保健福祉手帳上の障害等級」一級が該当します。
控除額は満85歳までに、その年数につき20万円が控除されます。
具体例をあげて計算してみましょう。
(例)障害者:相続開始時52歳5カ月
満85歳まで32年7カ月なので、1年未満の端数が切り上げとなり33年で計算します。
33年×20万円=660万円
上述のように660万円の障害者控除が適用されます。
1、2いずれの場合も、障害を持つ相続人に課される相続税より、控除額が大きい場合は、その引ききれない部分の金額を、扶養義務者(配偶者、直系血族・兄弟姉妹、3親等内の親族で一定の者)の相続税から差し引くことになります。
相次相続控除とは?
被相続人である父親が亡くなり、その子供が相続税を支払った後、まもなく被相続人の配偶者である母親も亡くなってしまったという場合に利用できる制度です。
短期間に何度も相続税を課されることは、相続人にとっては大きな負担です。
そこで相続が10年以内に2回以上発生したら、相続税の金額から一定の金額を差し引くことができる制度が「相次相続控除」です。
相次相続控除の条件
次の条件すべてに該当する相続人が控除対象となります。
(1)被相続人の相続人
なお、相続の放棄をした人は数次相続控除の対象外となります。
(2)相続開始前10年以内に開始した相続で、被相続人が遺産を取得
(3)(2)の遺産相続で被相続人に相続税が課税された
相次相続控除を計算してみる
一次相続で課税された相続税額のうち、1年につき10%の割合で逓減した後の金額を、二次相続に関する相続税額から控除します。
計算式は前述した2つの控除制度よりも、やや複雑になります。
「A×C/B-A(上限100%)×D/C×10-E/10」
- A:二次相続の被相続人の一次相続時の相続税額
- B:二次相続の被相続人の一次相続時の遺産取得額
- C:二次相続の遺産合計額
- D:本控除を受ける相続人の二次相続時の遺産取得額
- E:一次相続~二次相続までの期間
具体例をあげて計算してみましょう。
(例)相続人:子供2人
- 配偶者の相続税:一次相続1億円 →A
- 配偶者:一次相続10億円遺産取得 →B
- 子供2人相続分:5億4,000万円 →C
- 子供1人相続分:各2億7,000万円 →D
- 配偶者:4年後死亡 →E
それぞれを計算式にあてはめます。
1億円×5億4,000万円/(10億円-1億円)×2億7,000円/5億4,000万円×(10-4)/10=2,000万円
子供2人は各2,000万円の控除を受けられます。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、被相続人が生前に生活していた自宅などの宅地に対する評価額を減額できる特例措置です。
特例が適用されるためには一定の要件を満たす必要がありますが、適用されれば最大で80%の評価額を減額できます。
小規模宅地等の特例に該当するのは、被相続人の自宅をはじめとする宅地(330㎡まで)で、更地は対象外になっています。
また、被相続人の自宅の土地を相続する人にも満たすべき条件があります。たとえば、配偶者には条件はありません。
しかし同居する親族、生計を一にする親族に該当する相続人は、相続開始前から相続税の申告期限までの期間に居住していなければなりません。
小規模宅地等の特例を申請するメリットは、相続した土地の評価額を最大80%まで減額できるため、相続税を最小限に抑えられることです。
一方で、上述したように土地の広さや種類、相続人に求められる適用条件などをクリアしなければならないことはデメリットとして挙げられます。
生命保険
生命保険をうまく活用した節税対策も有効です。
被相続人が保険契約を行い死亡保険へ加入した場合、被相続人の死亡後に受取人へ死亡保険金が下ります。実はこの死亡保険金に「非課税枠」が適用されます。
この非課税枠は「500万円×法定相続人の数」で計算するルールです。
たとえば、2,500万円の死亡保険金が下りた時、法定相続人が4人いれば、500万円×4人=2,000万円です。死亡保険金2,500万円から非課税枠2,000万円を差し引けば、以下の金額となります。
2,500万円-2,000万円=500万円
残りの500万円は他の遺産に加えて計算し、基礎控除からさらに差し引かれます。
つまり、預貯金にかなり余裕があれば、死亡保険に加入して保険金として備えるのも、相続税対策となります。
生前贈与
生前贈与とは、被相続人が生きている間に、特定の人物へと自身が所有する財産を譲渡することです。たとえば、親が存命中に子へ自身の財産の一部を譲渡すれば、生前贈与に該当します。
生前贈与を行った場合、贈与した財産に対し贈与税が発生します。
生前贈与を受ける受贈者は、生前贈与の際に「暦年課税」と「相続時精算課税」のいずれかを選ばなければなりません。
暦年課税とは、1月1日から12月31日までの1年間で贈与を受けた財産の合計が110万円を超えた場合に贈与税が課される制度です。
生前贈与を利用するメリットは、上述の制度の利用によって贈与税の節税が可能なことです。暦年課税を選んだ場合、年間110万円以内の生前贈与であれば贈与税はかかりません。
一方で、不動産の贈与を受ける際にやり方を間違えると税額が増える可能性があるため、生前贈与を受けるデメリットと言えます。
相続時精算課税
生前贈与時の選択肢の一つに「相続時精算課税」があります。
相続時精算課税とは、60歳以上の祖父母や父母といった贈与者から、18歳以上の子や孫などの受贈者に対して生前贈与される場合に選べる制度です。
贈与を受けた財産の合計が2,500万円を超えた場合に贈与税が課されます。
例えば、60歳以上の祖父から20歳以上の孫へ2,000万円の生前贈与を行った場合、受贈者の孫は2,000万円の贈与を受けても贈与税は発生しないため、一定の節税効果があると言えます。
仮に、2,500万円を超えた生前贈与を受けた場合でも、2,500万円を超過した分の財産にのみ一律で20%の贈与税が発生するため、2,500万円分の財産に対する贈与税の節税が可能です。
ただし、相続時精算課税を利用した場合、暦年課税との併用・変更には不可能です。
一度利用すると以降もずっと暦年課税への変更が認められないため、相続時精算課税を利用する際は慎重に検討することが大切です。
子供が相続人となる場合の注意点
多額の資産を持っている人の中には、相続発生に備えたいという方も少なくないのではないでしょうか。
自分の配偶者や子が相続税に悩まされるか不安を感じたり、養子縁組を活用した節税対策を考えたりしている人も、いるかもしれません。
たしかに養子縁組をすれば、血縁ではない子供でも実子と同様に法定相続人となります。養子縁組で法定相続人が増えることで、基礎控除額が大きくなって相続税負担を軽減できる可能性があるのです。
実態はどのようなものか、この章で詳しく解説します。
法定相続人と養子の数
法定相続人の増加を念頭において養子縁組をする場合、法定相続人としてカウントできる養子の数は制限されていることに注意が必要です。
被相続人に子供(実子)がいるなら1人まで、子供(実子)がいなければ2人まで、法定相続人の数に含まれる養子の数が定められています。
養子の数だけ法定相続人がカウントされるということはありません。
こちらの注意点は相続対策を考える際に、留意しておきましょう。
基礎控除額を超える遺産額分は相続税の申告が必要
基礎控除分を超えると、相続税の申告が必要です。相続人たちはそれぞれ、相続や遺贈(遺言による贈与)で取得した価額の範囲内で、お互いに協力し合いながら手続きを行います。
申告しないと税務署から指摘を受けるだけでなく、追徴課税を課される恐れもあるため、注意しましょう。
なお、前述した「配偶者の税額軽減」のような制度で相続税が非課税になっても、相続税の申告書の提出自体は必要です。
相続税の申告はどうする
相続人は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10カ月以内で、被相続人の住所地を管轄する税務署が手続きの場所です。
被相続人の住所地と異なる相続人たちが、それぞれ自分達の住所地で手続きを行えるわけではありません。
なお、納税時は原則として現金で一括納付しなければいけません。提出に必要な書類は相続税申告書のほか、次の通りです。
共通して提出する書類
以下の書類は市区町村役場で取得します。
1.被相続人
- 出生から亡くなるまでの戸籍謄本(改製原戸籍謄本・除籍謄本)
- 住民票の除票
- 死亡診断書(写し)
2.相続人
- 戸籍謄本(家族全員の記載あり):本籍地の市区町村役場で取得。
- 住民票(家族全員の記載あり)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポート等)の写し
3.遺言書または遺産分割協議書(どちらか必要)
なお、遺産分割協議書の提出の際は、相続人の印鑑証明書が必要です。
金融資産(預貯金等の場合)
被相続人の預金に関する証明は、口座のある金融機関から取得します。
- 預金残高証明書(死亡日の残高が明記されている)
- 既経過利息計算書(定期預金がある時)
- 被相続人の過去の通帳(写し)
- 家族全員の過去の通帳(写し)
不動産資産(土地・家屋の場合)
各行政機関から書類を取得します。
- 登記簿謄本(全部事項証明書):法務局で取得
- 地積測量図または公図の写し:法務局で取得
- 固定資産税評価証明書:市区町村役場で取得
- 実測図
なお、上述した以外の被相続人の財産、負債がある場合は、その財産(負債)に関する証明書類も必要です。
未成年が相続税の申告をする場合
遺産を受け取り申告・納税する必要があるなら、相続人が未成年であっても行わなければいけません。未成年のように、民法上で意思能力はないとされる人が行う法律行為ならば無効となるため、相続税の申告書提出などは親権者が全て代理して行います。
ただし、未成年者の親権者も法定相続人である場合、特別代理人として各種手続きや遺産分割協議などに参加することはできません。
特別代理人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。
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ここからは税理士に依頼するメリットを紹介します。
相続税対策ができる
税務のプロである税理士に依頼することで、しっかりと相続税対策ができます。
相続の案件に慣れている税理士であれば、相続財産・相続人などを考えたうえで、そのケースに合った効果的な方法を教えてくれます。
なかでも、各種特例の使用時には、特例ごとの条件や自分たちの相続状況などを考えて、どの特例を使うか決めなければいけません。
税務の知識がない人が相続手続きを進めてしまうと、せっかく使える特例を見逃してしまう可能性があります。
プロである税理士に依頼することで、確実な相続税対策ができるでしょう。
相続トラブルを未然に防げる
税理士に依頼することで、相続トラブルを未然に防げるようになります。
なぜなら相続したときに、トラブルになりそうなことを、先回りして対策ができるからです。
たとえば、相続時にトラブルを起こしそうな相続人がいたら、生前の段階で税理士を入れて話をつけたり、遺言書を作成したりして対策ができます。
親族だけで話をすると、感情的になってしまいがちで、トラブルになる可能性が高くなります。
そこで第三者の税理士が入ることで、話し合いをスムーズに進め、トラブルを防げるようになるでしょう。
スムーズな手続きができる
相続が発生すると、被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告をしなければいけません。
しかしながら、被相続人が亡くなったら、葬儀の手配などで忙しくなりがちです。各種手続きと平行しながら、他の相続人と話し合い財産の分配を決めるなどをしなければいけません。もし申告を間違ってしまうと、再度修正する必要もあります。
そこで相続案件に慣れている税理士に依頼すれば、必要書類の手配・作成・手続きなどを任せられます。
相続手続きについて不安がある人は、プロである税理士へ依頼するのがいいでしょう。
子供が遺産相続する場合などに悩んだら税理士に相談しよう
子供が唯一の相続人ならば、遺産相続時に被相続人の親や兄弟姉妹より、高い順位となります。
ただし、仮に子供1人だけが法定相続人かつ遺産総額が高額な場合、基礎控除額の低さから相続税負担が大きくなるリスクもあります。
そのため、被相続人は生前に不動産資産を現金化して金融資産としたり、死亡保険への加入したりなどの対策が必要です。
相続人が手続きの煩雑さに悩まされることなく、相続税の負担軽減もできるようにあらかじめ準備を進めておきましょう。
ベンチャーサポート相続税理士法人では、親身でわかりやすい説明を心がけ、無料相談を実施しています。また、税理士だけでなく弁護士や司法書士も在籍しているためワンストップで相談することが可能です。初めて相続税の申告を行う方もお気軽にご相談ください。
相続専門税理士の無料相談をご利用ください
ご家族の相続は突然起こり、何から手をつけていいか分からない方がほとんどです。相続税についてはとくに複雑で、どう進めればいいのか? 税務署に目をつけられてしまうのか? 疑問や不安が山ほど出てくると思います。
我々ベンチャーサポート相続税理士法人は、相続人の皆さまのお悩みについて平日夜21時まで、土日祝も休まず無料相談を受け付けております。
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