記事の要約
- 公正証書遺言の作成には、証人が2名必要
- 推定相続人やその家族など、身近な人は証人になれないことが多い
- 頼める人がいなくても、公証役場や専門家に手配を任せられる
遺産を巡るトラブルを防ぐうえで、有効な方法のひとつが「公正証書遺言」の作成です。
年によって増減はあるものの、公正証書遺言は毎年12万件前後作成されており、遺言を残す手段として広く利用されています。
ただ、いざ準備を始めると「証人が2名必要」というルールに戸惑う方は少なくありません。
「誰に頼めばいいのか」「家族ではだめなのか」「頼める人が思い当たらない」など、疑問や不安を抱くのは、ごく自然なことです。
この記事では、公正証書遺言の証人になれる人・なれない人の条件から、周りに頼める人がいないときの手配方法、費用の相場、当日の流れまで、順を追ってお伝えします。
なお、VSG相続税理士法人では、相続に関するご相談を無料で受け付けておりますので、相続でご不安なことがございましたら、お気軽にご連絡ください。
目次
公正証書遺言の証人とは?2名が必要な理由と役割
公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が作成する、非常に信頼性の高い公的な遺言書です。
原本は公証役場で厳重に保管されるため、改ざんや紛失の心配もほぼありません。
公正証書遺言の作成の場には、証人2人以上の立ち会いが必要とされていますが、なぜ証人を立ち会わせる必要があるのでしょうか。
まずは、証人が必要な理由と、証人が担う役割を整理しましょう。
公正証書遺言の作成には、証人2名以上の立ち会いが必須
公正証書遺言を作成するには、「証人2人以上の立ち会い」が義務づけられています(民法969条)。
証人が立ち会う最大の目的は、遺言の有効性を客観的に裏づけることにあります。
証人が2人以上立ち会うことで、遺言者の意思能力や、第三者からの不当な干渉がないかを、複数人の視点から確認・担保します。
証人が果たす役割とは
公正証書遺言の証人は、ただ席に座っているだけの立ち会い人ではありません。
公証人とともに、遺言が適法に作成されたかを第三者の視点から確認する役割を担います。
遺言書の作成当日、証人が確認する主なポイントは以下のとおりです。
- 遺言者が人違いでないか
- 遺言者に遺言の内容を理解できる、十分な判断能力があるか
- 遺言者は自らの意思で遺言内容を伝えているか
- 誰かに強制されていないか
- 公証人が筆記した内容が、遺言者の伝えた内容と一致しているか
証人には一定の判断能力と中立性が求められます。
なお、公正証書遺言のしくみについては、以下の関連記事をご参照ください。
公正証書遺言の証人になれない人(欠格事由)
公正証書遺言の証人は、誰でもなれるわけではありません。
遺言の内容に利害関係がある人などは、法律で証人になることを禁じられています(欠格事由)。
民法974条では、次の人を証人になれない人(欠格者)と定めています。
| 欠格者 | 証人になれない理由 |
|---|---|
| 未成年者 | 判断能力が十分ではないとみなされるため |
| 推定相続人・受遺者、およびその配偶者や直系血族 | 遺言の内容によって相続する財産が変わる立場にあり、遺言者との利害関係が深いため |
| 公証人の配偶者・四親等内の親族・書記・使用人 | 公証人と関係が近く、証人としての独立性・中立性を保てないため |
つまり、公正証書遺言の証人になれる人は「遺言の内容によって利益も不利益も受けない、中立な第三者」です。
もし、欠格者が証人として立ち会ってしまうと、その遺言全体が無効になるおそれがあるため、人選は慎重に行わなければなりません。
【ケース別】この人は証人になれる?迷いやすい具体例
ここでは、相談の多い具体例を取り上げ、「この人には証人を頼めるかどうか」および「その理由」をお伝えします。

(1)遺言者の配偶者・子・孫、両親は証人になれる?
通常、遺言者の配偶者や子は「推定相続人」にあたるため、証人になれません。
また、孫や両親も遺言者の直系血族であり、相続関係によっては推定相続人になる場合があるため、証人にするのは避けたほうが安全です。
「内容を知られても構わない相手だから」と身近な家族に証人を依頼したくなりますが、もっとも頼みやすい家族こそ欠格者にあたりやすい、という点に注意が必要です。
(2)遺言者の兄弟姉妹は証人になれる?
兄弟姉妹は、遺言者の直系血族(親・子・孫)ではないため、原則は証人になることができます。
ただし、以下のケースに当てはまる場合は、兄弟姉妹であっても証人にはなることはできません。
- (1)遺言者に子どもがおらず、両親・祖父母などの直系尊属も亡くなっている場合
- 兄弟姉妹は「推定相続人」になるため。
- (2)兄弟姉妹が遺言によって財産を譲り受ける場合
- 兄弟姉妹は「受遺者」になるため。
なお、おじ・おば・いとこなども直系血族ではないため、法律上は証人になれますが、そもそも親族は、相続関係によっては欠格者に該当する可能性があります。
後々のトラブルを防ぐためにも、親族に依頼するのはできるだけ避けたほうが無難です。
(3)友人・知人は証人になれる?
欠格事由に該当しなければ、信頼できる友人や知人に、証人を頼むことができます。
ただし、証人は遺言の内容をすべて知る立場になります。
本人に悪気がなくても、なにかの拍子に遺言内容が周囲に伝わってしまうと、相続が始まる前に親族間でもめごとが起きるおそれがあります。
プライバシーや秘密をしっかり守りたい場合は、友人・知人への依頼は慎重に考えたほうがよいでしょう。
(4)FPや税理士などの専門家は証人になれる?
欠格事由に該当しない第三者であれば、FP(ファイナンシャル・プランナー)や税理士などの専門家に頼むこともできます。
実務の現場では、遺言書の作成をサポートする弁護士・司法書士・行政書士が、そのまま証人を務めるケースが一般的です。
公正証書遺言の証人になるのに特別な資格は不要ですが、弁護士・司法書士・行政書士・税理士などの専門家には、職務上の守秘義務があります。
また、FPに依頼する場合は、守秘義務の有無や業務範囲を事前に確認しておくと安心です。
遺言内容を周囲に知られたくない方も、安心して任せられるでしょう。
証人が見つからない・頼める人がいないときの手配方法
身近なご家族の多くが欠格者であり、「頼める人が周囲にいない」という状況は決して珍しいことではありません。
また、友人や知人に依頼するにしても、遺言の内容を知られることや、当日のスケジュールを合わせてもらう負担を考えると、ためらう方もいらっしゃるでしょう。
証人を依頼できる人が周囲にいない場合は、以下のルートのいずれかを検討しましょう。
(1)公証役場で紹介してもらう
頼める人が見つからない場合は、公証役場に証人を紹介してもらうことができます。
多くの公証役場では、提携している実務経験者などを手配してくれます。
知人に内容を知られたくない方や、身近に頼める人がいない方に適した方法です。
(2)専門家(弁護士・司法書士・行政書士)に依頼する
遺言書の作成を専門家に依頼している場合は、その事務所のスタッフや資格者が証人を務めるのが一般的です。
守秘義務が徹底されているうえ、遺言内容の不備や欠格者のチェックもまとめて任せられるため、もっとも安心できる選択肢といえます。
公正証書遺言の証人にかかる費用・謝礼の相場
証人に支払う費用の目安は、誰に依頼するかによって異なります。
依頼先ごとの相場を確認しましょう。
(1)知人・友人に依頼する場合
法律上の決まった料金はありませんが、お礼の気持ちとして5,000円〜1万円程度の謝礼を包むのが一般的です。
(2)公証役場で紹介してもらう場合
証人1人あたり5,000円〜1万円程度が相場です。
2人の紹介を受ける場合は、合計で1万円〜2万円ほどを見ておくとよいでしょう。
なお、公正証書遺言は、病院や自宅へ出張するかたちで作成することも可能ですが、その場合は別途費用がかかることがあります。
(3)専門家に依頼する場合
証人としての立ち会いだけを依頼する場合は、1人あたり1万〜3万円程度が目安です。
実際には「遺言書案の作成」とセットで依頼することが多いでしょう。
その場合は、内容や事務所によって異なりますが、おおむね5万〜30万円程度が全体の相場です。
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【注意】「証人への費用」と「公証人手数料」の違い
証人への謝礼と混同しやすい費用に、公証役場へ支払う「公証人手数料」があります。
公証人手数料は、「遺言で渡す財産の価額」によって決まる、政令で定められた費用であり、証人にかかる費用とはまったく異なります。
財産が高額なほど、公証人手数料も高くなります。
「証人の費用=公正証書遺言の費用のすべて」ではない点に、ご注意ください。
公証人手数料の詳しい金額は、日本公証人連合会のWebサイトから確認できます。
証人の準備と公正証書遺言作成当日の流れ
証人を依頼する相手が決まったら、当日の準備と流れも確認しておきましょう。
なお、証人自身が用意するものは、それほど多くありません。
証人が当日に用意するもの
証人が公証役場に持参するのは、おもに次の2点です。
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 認印(朱肉を使うもの。シャチハタは不可)
書面で作成する場合、証人は本人確認書類と認印を持参するのが一般的です。
印鑑は実印である必要はありません。
電子公正証書やウェブ会議方式(リモート方式)を利用して手続きをする場合は、本人確認方法や電子署名の準備が必要になることがあります。
公証役場によっては、住所確認のために住民票の提出を求められることもあるため、併せて事前に確認しておくとよいでしょう。
遺言者本人が準備する書類(戸籍謄本や財産に関する書類など)については、作成の流れとあわせて、関連記事で紹介しています。
公正証書遺言作成当日の流れ
遺言者と公証人は事前に打ち合わせを済ませているため、当日はすでに遺言書の原案ができあがっている状態からスタートします。
当日の所要時間は、全体で30分〜1時間程度です。
- 遺言者が、遺言の内容を口頭で伝える(あらかじめ公証人と相談済み)
- 公証人が、作成した遺言書の原案を読み上げる
- 遺言者と証人が、内容に間違いがないか確認する
- 遺言者と証人が、原本にそれぞれ署名・押印する
- 公証人が、原本に署名・職印を押す
- 完成(遺言書は公証役場で保管され、遺言者には正本・謄本が交付される)
証人は「公証人が読み上げる内容が、遺言者本人の真意と間違いないか」をその場で一緒に確認し、最後に署名・押印をすることになります。
書面で作成する場合は、遺言者と証人が原本に署名・押印します。
一方、電子公正証書として作成する場合や、ウェブ会議方式を利用する場合は、電子署名など、公証役場の案内に沿って手続きを進めます。
完成後、公正証書遺言の原本は公証役場で保管され、遺言者には従来の正本・謄本に相当する電子データまたは書面が交付されます。
証人を頼まれた人が知っておきたいリスクと責任
ここまでは遺言を残す人の視点でお伝えしてきましたが、反対に「証人を頼まれた側」が知っておくべきリスクや責任についても確認しましょう。

(1)遺言の内容に関する守秘義務
証人は、遺言者の依頼に基づいて立ち会うため、遺言の内容を外部に漏らさない義務を負うと考えられます。
内容を漏らしたり、証人の発言や行動によって親族間にトラブルが起きたりした結果、関係者が損害を受けた場合には、損害賠償を求められるおそれもあります。
(2)遺言が無効になる・出頭を求められるリスク
もっとも避けたいのは、「資格不備」の状態で証人になってしまうことです。
たとえば「実は証人の1人が、財産をもらう人の配偶者だった」といった事実が後から判明すると、遺言そのものが無効になってしまいます。
公正証書遺言が無効になった場合、「部分的な修正」などは認められません。
さらに、将来的に遺言の有効性を巡って裁判が起きた場合、当時の証人として裁判所への出頭や証言を求められることもあります。
「誰が証人になれるのか」を事前にしっかり確認し、不安があれば専門家にチェックを依頼しましょう。
(3)証人の住所や氏名は、遺言書に記載される
公正証書遺言には、証人の「氏名・住所・職業・生年月日」などが記されるのが通例です。
そのため、遺言者が亡くなった後、相続人が遺言書の写し(謄本)を取得した際に、証人の個人情報も目にする可能性があります。
もし「知人に証人を頼みたいけれど、知人の個人情報まで遺言書に残ってしまうのは気後れする」という場合は、専門家に依頼するのがおすすめです。
専門家であれば事務所のスタッフや資格者が証人を務めるため、身近な知人や友人にプライバシー面での負担をかけずに済みます。
公正証書遺言の証人に関するよくある質問
Q1:遺言書の作成後に証人が亡くなったら、遺言はどうなるの?
Q2:証人と「遺言執行者」は兼任できる?
Q3:公正証書遺言のデジタル化で、証人は不要になるの?
Q4:遺言書を書き直すときも、証人は必要?
まとめ:証人選びに迷ったら専門家へご相談ください
公正証書遺言において、証人は単なる立会人ではなく、遺言の法的な効力を支える重要な存在です。
- 公正証書遺言には2名以上の証人の立ち会いが法律で義務づけられている
- 身近な家族や親族の多くは、法律上の「欠格事由」に該当して証人になれない
- 周りに頼める人がいなくても、公証役場の紹介や専門家への依頼で手配は可能
しかし、公正証書遺言の作成においては、親族の多くが証人の欠格事由に該当します。
そのため、身近な知人や友人に頼む心理的ハードルが高い場合は、公証役場での紹介や司法書士・行政書士などの専門家への依頼を活用するのが一般的です。
VSG相続税理士法人には、相続専門の税理士のほか、グループ内の司法書士・行政書士などと連携し、遺言書案の作成から証人の手配、節税の対策まで一貫してサポートしています。
証人選びや遺言の内容に少しでも不安がある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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