記事の要約
- 診療中の傷病に関する死亡なら「死亡診断書」、不審死の場合は「死体検案書」が交付される
- 原本は手元に残らないため、5部程度のコピーを取っておくとよい
- 死亡診断書の発行費用は相続税の葬式費用として遺産総額から控除できる
家族が亡くなった直後から、相続の手続きは始まります。
一連の相続手続きにおいて、はじめに必要となる書類が、医師が作成する「死亡診断書」です。
死亡診断書は原本が1通しか交付されず、一体となっている「死亡届」とあわせて自治体へ提出すると手元には残りません。
そのため、提出前に必要な枚数のコピーを取っておくことが大切です。
この記事では、死亡診断書を受け取るまでの流れから発行費用、コピーが必要となる手続きの一覧、コピーを取り忘れたときの対応方法まで、詳しくお伝えします。
なお、VSG相続税理士法人では、相続に関するご相談を無料で受け付けておりますので、相続でご不安なことがございましたら、お気軽にご連絡ください。
目次
死亡診断書とは:死亡届と一体になったA3の用紙
死亡診断書とは、医師が人の死亡を医学的・法律的に証明する書類です。
死亡診断書は、亡くなった方(被相続人)が、「生前に診療を受けていた傷病」に関連して亡くなったと判断された場合に交付されます。
死亡診断書はA3サイズの用紙で作成され、「死亡届」と一対の様式になっています。
死亡診断書
引用元 法務省 の資料をもとに一部加工
なお、死亡診断書または後述の死体検案書が交付されない限り、火葬や埋葬の許可を申請することはできません。
用紙の左側が「死亡届」、右側が「死亡診断書」(または死体検案書)
A3の用紙は、左右で記載内容と役割が分かれています。
| 用紙の位置 | 書類名 | 記入する人 |
|---|---|---|
| 左半分 | 死亡届 | 遺族などの届出人 |
| 右半分 | 死亡診断書(死体検案書) | 医師 |
左半分の「死亡届」は、届出人(遺族など)が記入する欄です。
一方、右半分の「死亡診断書(死体検案書)」は、医師が記入して交付します。
用紙は各自治体のホームページからダウンロードすることも可能ですが、通常は病院に備え付けられています。
死体検案書と死亡診断書との違いは「亡くなった状況や経緯」
「死体検案書」も、死亡診断書と同様に、人の死亡を証明する公的な書類です。
死体検案書と死亡診断書は、対象者が亡くなった原因や状況によって、どちらが交付されるかが変わります。
厚生労働省の『死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル』では、以下のように
使い分けることとされています。
| 書類名 | 交付される場合 |
|---|---|
| 死亡診断書 | 診療を受けていた患者が、生前に診療していた傷病に関連して亡くなったと医師が認める場合 |
| 死体検案書 | 上記以外の場合(継続的な診療を受けていなかった、診療中の傷病とは無関係の原因で亡くなった、亡くなった状態で発見されて死因がわからないなど) |
「検案」とは、医師が遺体の外観等を観察し、死因を判断する行為のことです。
検案の結果、死亡に事件性や不審な点がなければ、担当した医師によって死体検案書が作成されます。
一方、事件性や不審死の疑われる場合は、警察官や検察官による「検視」が行われ、必要に応じて法医学的な検案や解剖へ進みます。
この場合、死体検案書は警察医や監察医が作成します。
死亡診断書と死体検案書は、書式そのものは同じです。
用紙の標題にある「死亡診断書(死体検案書)」のうち、該当しないほうを医師が二重線で消す形で発行されます。
なお、死体検案書は交付にいたるまでの手続きが多くなるため、交付までに時間がかかる傾向にあります。

死亡診断書はいつ・どこで交付される?
死亡診断書は、故人が亡くなった場所や状況によって、交付元や手順が異なります。
主なパターンは以下のとおりです。
(1)病院で亡くなった場合
故人が入院中に亡くなった場合は、臨終に立ち会った医師、または主治医が死亡診断書を交付します。
診療中の傷病に起因する死亡と認められれば交付対象となり、多くの場合は当日または翌日までに受け取ることができます。
(2)自宅で亡くなった場合
自宅で亡くなった場合は、生前にかかりつけ医の診療を受けていたかどうかで対応が分かれます。
①かかりつけ医がいる場合
まずはかかりつけ医に連絡し、死因を確認してもらいます。
「生前に診療していた傷病に関連する死亡」だと医師が判断できれば、死亡診断書が交付されます。
なお、「診察から24時間を過ぎていると死亡診断書はもらえない(24時間ルール)」と解釈されることがありますが、 これは正確ではありません。
24時間という基準は、死亡診断書がもらえるかどうかを決めるものではなく、「医師が改めて診察をする必要があるかどうか」を示す区分です。
| 状況 | 医師の対応 |
|---|---|
| 最終診療から24時間以内に亡くなった場合 | 改めて診察をしなくても、死亡診断書を交付できる |
| 最終診療から24時間を経過して亡くなった場合 | 改めて死後の診察を行い、生前に診療していた傷病に関連する死亡と確認できれば、死亡診断書を交付できる |
したがって、24時間を経過している場合であっても、改めて診察を受けることで死亡診断書の交付は可能です。
一方、医師が改めて診察をしても、生前の傷病との関連性が確認できない場合は、検案を行うことになり、死体検案書が交付されます。
②かかりつけ医がいない場合
かかりつけ医がいない場合など、医師が生前の診療状況を把握しておらず、診療していた傷病に関連する死亡と判断できないときは、死体検案書が交付されます。
なお、死体に異状が認められる場合は警察への届出が必要ですが、死体検案書を作成するからといって必ず警察への届出が必要になるわけではありません。
不審死が疑われる場合は、さらに検案や解剖などの手続きに進みます。
(3)介護施設・老人ホームで亡くなった場合
介護施設や高齢者施設で亡くなった場合は、施設の嘱託医、または提携している医療機関の医師が死亡を確認したうえで、死亡診断書が交付されます。
ただし、施設内での不慮の事故や容態の急変による死亡など、原因が判然としない場合は警察へ連絡のうえ、死体検案書の手続きとなる場合があります。
(4)事故や突然死の場合
事故で亡くなった場合は、状況によって以下のように分かれます。
| 状況 | 交付書類 | 記入・作成者 |
|---|---|---|
| 搬送先の病院で亡くなった場合 | 死亡診断書 | 臨終に立ち会った医師 |
| 即死、または搬送途中に亡くなった場合 | 死体検案書 | 警察医・監察医(警察の検視後) |
| 死因が特定できない・不審点がある場合 | 死体検案書 | 警察医・監察医(検案・解剖後) |
死亡診断書・死体検案書は休日や夜間に受け取れる?
死亡診断書は、一般的な医療機関では当日から翌日にかけて交付されます。
ただし、夜間の場合は翌朝対応になるケースもあります。
また、死体検案書となる場合は警察の手続きを挟むため、交付までに数日かかることもあります。
特に、警察が介在する場合は手続きに日数を要するため、葬儀の日程や交付の見通しを確認してから決めるほうが安心です。
死亡診断書・死体検案書を受け取れる人は誰?
死亡診断書や死体検案書を受け取れる人は、一般的に親族、同居者、家主といった届出義務者・関係者です。
死亡診断書・死体検案書の発行費用
死亡診断書の発行は、健康保険の適用対象外(自由診療)であるため、費用は各医療機関が独自に設定しています。
(1)死亡診断書の費用相場
明確な料金は決まっていませんが、一般的な目安は以下のとおりです。
- 公的医療機関・大学病院
- 3,000円〜1万円程度
- 私立病院・民間クリニック
- 1万円〜2万円前後
自由診療のため、同じ地域内であっても金額に差が生じることがあります。
(2)死体検案書の費用相場と、高くなる理由
死体検案書の発行費用は、一般的に3万円〜10万円程度であり、死亡診断書に比べると高額になる傾向があります。
高額になる理由は、書類作成料だけでなく、遺体の搬送費や保管料、死因を特定するための検案手続き費用などが含まれるためです。
なお、厚生労働省の手引きでは、検案料について実費を考慮した適正な金額を設定するよう医師側に求めています。
費用に不明点がある場合は、内訳の確認を申し出ても差し支えありません。
また、遺族から求めがあった場合、医師は死亡診断書等の記載内容について丁寧な説明に努めることとされています。
なお、死亡診断書や死体検案書の作成費用は、相続税を計算するときに「葬式費用」として遺産総額から差し引く(控除)ことができます。
控除の適用を受けるには、支払いを証明できる領収書が必要ですので、紛失しないよう大切に保管しましょう。
死亡診断書を受け取ったら確認すること
死亡診断書を受け取った際は、病院を離れる前に以下の記載内容を確認しましょう。
後からの訂正には所定の手続きが必要となります。
(1)氏名・生年月日・死亡日時に誤りがないか
亡くなった方の氏名、生年月日、死亡日時に誤りがないか確認します。
死亡診断書は死亡届と一体で市区町村へ提出され、死亡届に基づいて死亡の事実などが戸籍に記載されます。
死亡診断書の記載内容がすべて戸籍に転記されるわけではありませんが、誤りがあると死亡届の手続きに支障が生じる可能性があります。
特に、氏名の漢字や生年月日などに誤りがないか確認しておきましょう。
(2)医師の押印はなくてもよい(署名のみで有効)
死亡診断書に医師の押印がない場合でも、不備ではありません。
令和2年の省令改正によって、死亡診断書への「記名押印または署名」は「署名」に一本化されました。
現在は、医師の署名(電子署名を含む)があれば押印は不要です。
(3)記載内容に誤りがあった場合の訂正手続き
自治体役場への提出前に、死亡診断書(死体検案書)の不備や誤りに気づいた場合は、交付を受けた医療機関へ連絡し、作成者である医師に訂正を依頼します。
一方、役場に提出した後に誤りに気づいた場合は、作成した医師が自ら提出先の自治体窓口に出向くか、または必要な手続きを行うことで、公的な訂正(または書き直し)が行われます。
【参考】死因欄に「老衰」と記載されている場合
厚生労働省の記入マニュアルでは、「老衰」は高齢者で他に直接的な死因となる傷病が存在しない、いわゆる自然死の場合に用いると定められています。
つまり、「他に起因する病気が存在しない自然な経過による死亡である」と医師が医学的に判断した結果として記載されるものです。
また、死亡診断書には病気の発症から死亡にいたるまでの期間を記載する欄がありますが、ここが「不詳」や「不明」とされることがあります。
加齢に伴う衰弱である老衰は、明確な発症時期を特定することが困難であるため、「不詳」と記載するのが規定に沿った正常な運用となります。
なお、老衰と誤嚥性肺炎と併記されているケースは、直接の死因は肺炎であるものの、その根本的な原因は老衰にある」ことを示しています。
死亡診断書のコピーの必要枚数と手続き一覧
通常は、死亡届と一体になった原本1通を受け取る
医師から交付される死亡診断書は1通です。
左半分の死亡届とともに自治体へ提出するため、提出後は手元に戻りません。
死亡診断書(死体検案書)のコピーは、生命保険の請求や各種名義変更などの相続手続きで利用できます。
したがって、提出前にコピーを取っておくとよいでしょう。
なお、コピーは用紙全体(A3サイズ全域)が収まる形で取ります。
手続き別:原本・コピーの要否一覧
死亡診断書(またはそのコピー)を必要とする手続きと、他の書類で代用可能な手続きの区分は以下のとおりです。
| 手続き | 提出書類 | 備考 |
|---|---|---|
| 死亡届の提出(市区町村役場) | 原本1通 | 提出後は返却不可 |
| 生命保険の死亡保険金請求 | 原則コピー(一部原本) | 保険会社や請求金額の条件による |
| 遺族年金の受給申請 | コピー | 「記載事項証明書」を求められる場合あり |
| 金融機関の口座手続き | コピー | 除籍謄本等で代用可能な場合あり |
| 相続税の申告 | 原則不要 | 戸籍謄本または法定相続情報一覧図にて証明 ※死亡診断書の費用控除には領収書が必要 |
| 相続登記(不動産名義変更) | 不要 | 戸籍謄本一式にて証明 |
| 自動車の移転登録 | 不要 | 戸籍謄本または法定相続情報一覧図にて証明 |
| 携帯電話の解約 | どちらでも可 | 訃報の案内状や会葬御礼等で代用可能な場合あり |
| NHKの解約指示 | 死亡確認書類 | 解約手続き時に問い合わせ |
不動産登記や車両の名義変更においては、死亡診断書ではなく「出生から死亡までの戸籍謄本一式」が証明書類となります。
また、携帯電話等の解約手続きにおいては、葬儀の案内状等で柔軟に対応されるケースがあります。
保険会社によっては原本が必要になることもある
死亡保険金の請求では、多くの場合コピーで対応可能ですが、条件により原本を求められる場合があります。
| 保険会社名 | 取り扱い例 |
|---|---|
| 東京海上日動あんしん生命 | コピー可 |
| アクサ生命 | コピー可(ただし契約後2年以内の死亡かつ死亡保険金額20万円を超える場合は原本が必要) |
| かんぽ生命 | コピー可 |
- ※
- 上記は各社公表資料に基づく例示です。実際の申請時は事前に該当機関へご確認ください。
なお、死亡診断書自体に法律上の有効期限はありませんが、提出先機関が「発行後◯カ月以内」といった独自の期限を設定している場合があります。
コピーは5部程度取っておくとよい
実際に死亡診断書のコピーが必須となる手続きは少ないものの、事前の準備としては5部程度のコピーを用意しておくとよいでしょう。
主な理由は以下のとおりです。
- 1.戸籍に死亡が反映されるまで時間がかかるため
- 除籍謄本が発行可能になるまでには1〜2週間ほどかかります。その間の確認書類として死亡診断書のコピーが必要です。
- 2.再発行には手間がかかるため
- 死亡診断書の再発行には、3,000円〜1万円程度の費用がかかります。

死亡診断書受け取り後は「死亡届」を提出する
死亡診断書を受け取ったら、左半分にある「死亡届」に必要事項を記入し、自治体窓口へ提出します。
提出先は、「故人の死亡地・本籍地」または「届出人の所在地」の市区町村役場です。
なお、「所在地」は住所登録地に限らず、一時滞在地も含みます。
死亡届の提出期限は、「死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡した場合は、その事実を知った日から3カ月以内)」と定められています。
死亡届の提出後、火葬許可証が交付されます。
なお、死亡届の提出手続きは葬儀社が代行してくれるケースが一般的です。
なお、死亡届と死亡診断書については、一部の自治体でオンライン提出ができるよう検討が進められており、今後、手続きが変わっていく可能性もあります。
死亡診断書のコピーを取り忘れた・紛失したときの対応
コピーを取り忘れたまま原本を提出してしまった場合、以下の対応手段があります。
(1)病院へ再発行を依頼する
死亡診断書は、交付を受けた病院(死体検案書の場合は警察または指定医療機関)に再発行を依頼できます。
- 必要書類
- 申請者の本人確認書類、間柄を証明する戸籍謄本等(代理人の場合は委任状)
- 費用
- 3,000円〜10,000円程度
- 所要日数
- 医療機関の運用により異なります
(2)死亡届の「届書等情報内容証明書」を請求する
死亡届を提出した後でも、一定の条件を満たす場合は、死亡届や死亡診断書の内容を証明する書類を市区町村に請求できます。
2024年3月1日以降に提出された死亡届については、電子化された届書の情報を証明する「届書等情報内容証明書」を、死亡届を提出した市区町村または本籍地の市区町村に請求できます。
ただし、本証明書は誰でも自由に取得できるわけではなく、利害関係人であり、かつ遺族年金の請求など「特別の事由」がある場合に限り発行されます。
手数料は1通350円です。
(3)「戸籍謄本・除籍謄本等」を取得する
死亡の事実のみを証明する手続きでは、故人の死亡事項が記載された戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)または除籍謄本(除籍全部事項証明書)が使えます。
故人の死亡の事実(除籍)が戸籍に反映されるまでには、死亡届の提出から1〜2週間程度かかります。
急がない手続きであれば、再発行を依頼せずに、戸籍謄本・除籍謄本等を取得してもよいでしょう。
死亡診断書の作成費用と相続税控除
死亡診断書の作成費用は、相続税の計算において遺産総額から差し引く(控除する)ことができます。
死亡診断書の作成費用は相続税で控除できる
死亡診断書の発行手数料については、死亡届や火葬などに伴って必要となる費用として「葬式費用」に含めることができます。
一方、死体検案や解剖などに伴う費用は、内容によって税務上の取り扱いが異なるため注意が必要です。
所得税の「医療費控除」には含められない
一方、死亡診断書の作成費用は、所得税の医療費控除の対象にはなりません。
医療費控除の対象は、治療や療養のためにかかった費用です。
死亡診断書の発行は文書の作成であって、治療にあたらないためです。
領収書は大切に保管しておくこと
相続財産から控除するためには、領収書や請求書など、死亡診断書の費用支払いを確認できる資料は大切に保管しておきましょう。
死亡診断書に関するよくある質問
Q1:死亡診断書に有効期限はある?
Q2:海外で亡くなった場合も死亡診断書は発行される?
Q3:検視は拒否できる?
Q4:担当医以外の医師でも、死亡診断書は書くことはできる?
まとめ:死亡診断書は相続手続きのスタートとなる書類
この記事では死亡診断書の交付手続きや、コピーが必要となる各種手続き、税務上の費用控除の扱いまで解説しました。
- 原本は1通のみ交付され、死亡届として役所へ提出すると返却されない
- 提出前に5部程度をコピーしておくと、ほかの相続手続きで活用できて便利
- 発行費用は相続税の「葬式費用」として遺産総額から控除できる
死亡届の提出後は、金融機関の口座手続きや生命保険の請求、不動産の名義変更(相続登記)、さらには相続税の申告といった本格的な相続実務へと進んでいきます。
手続きの順序や必要書類、税務上の判断についてご不安な点がございましたら、専門家への相談も視野に入れながら一つひとつ着実に進めていただくことをおすすめいたします。
私たちVSG相続税理士法人は、これまでに19,000件を超える相続税申告を行ってまいりました。
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