東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
交通事故に遭った際に必ず取得しておきたいのが、医師による診断書です。
診断書は警察への提出や、保険金・賠償金の請求のために必要な重要書類になります。
しかし事故から初診までに時間が空いてしまった場合など、様々な理由から医師が診断書を出したがらないケースがあります。
今回は医師から診断書を貰えないケースと、その際の対処法を紹介していきます。
診断書をもらえず困っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
交通事故に遭った場合、仮に外傷がみられなくても当日または2~3日以内に整形外科での受診が推奨されています。
整形外科は、骨や軟骨、筋、靭帯、神経などの外傷・疾病の専門科になります。
ただ、まれに診断書を依頼したときに、医師に応じてもらえないことがあり得ます。
整形外科で治療を受けたのに診断書を貰えない場合、次のような理由が考えられます。
では、1つずつ詳しく解説していきます。
医師が診断書を発行するためには、診断書を必要とする正当な理由が必要です。
診断書を発行できるほどに充分に診断できていないと医師が考えている場合、診断書を発行しないケースがあります。
たとえば事故直後の初診の際にはケガの症状が見られず、後から痛み始めた場合などです。
このような場合、ケガの様子を継続して観察しつつ、症状が現れれば診断書が発行できるようになるでしょう。
また途中で担当医が変わった場合なども、新たな担当医が充分に診察できていなければ、すぐには診断書を貰えないケースがあります。
必要な診断書が後遺障害診断書である場合、治療終了後の症状固定がされてから発行されるようになります。
症状固定とは、これ以上治療を続けても回復が望めずに症状が固まった状態を言います。
そのため、治療中の段階では後遺障害診断書は発行できません。
診察の結果ケガがあったとしても、交通事故によるものと断定できない場合には、診断書が発行されない場合があります。
よくあるケースとしては、以下のようなものがあります。
このような場合、ケガは時間の経過とともに原因が分かりにくくなるため、医師としても事故によるケガと判別できずに診断書発行をためらうケースがあります。
また、整骨院・接骨院は医療機関ではないため、診断書発行はできません。
弱かった痛みが整骨院の施術によって顕在化したような場合にも、医師としてはケガの原因を判断しにくくなるでしょう。
事故後は、当日か2~3日以内には整形外科での診察を受け、医師から経過をわかるようにしておくことが大切です。
整形外科で判断できる外傷や神経症状が見られないものの、たとえば記憶障害のような症状がみられる場合には、整形外科から診断書が発行されないケースがあります。
医師であっても、専門外の分野についてはにわかに判断できないためです。
こうした場合には疑わしい病状についての専門医に治療が引き継がれるなどして、その後の治療結果により診断書が発行されるでしょう。
特定の症状については、整形外科医ではなく他の専門の医師による診察が必要な場合があります。
医師は医療のプロですが、法律の知識については必ずしも詳しいとは限りません。
交通事故における診断書の発行基準や後遺障害認定についての経験が浅く、現時点では診断書を発行できないと勘違いしているケースもあります。
一部の医療機関では、団体の方針として診断書発行の基準を厳格にしている場合があります。
診断書は、保険金や賠償金を算定するための資料になる他、裁判の証拠になる場合もある重要な書類です。
もし保険金の不正受給などに悪用されると、医療機関としてイメージダウンになる可能性もあるため、発行に慎重になるケースがあります。
また事故の被害者と加害者で裁判になると、医療機関に対して裁判所から追加の診断書やカルテの提出を求められる場合があるでしょう。
これに対しては報酬が発生せず、作業が増えて他の患者の診察にも影響が出る可能性があります。
このような理由から、医師個人または法人の方針として診断書発行の基準を慎重にしているケースがあります。
診断書発行の流れは、医療機関によって異なります。
担当医が少ない場合や曜日ごとのローテーション制である場合などは、来院患者の診療を優先し、営業時間終了後にまとめて診断書作成を行うようなケースもあります。
即日発行されずに後日郵送等のパターンもありますので、各医療機関の手続きを確認しましょう。
交通事故で診断書が出ないと、その後の治療費や賠償金の請求等に差し支えます。
前提として交通事故は警察への報告が法律で義務付けられており、報告を受けた警察官は現場に駆け付けて事故の記録を作成します。
現場でケガが確認できずに物損事故として取り扱われた場合でも、診断書があれば人身事故への切り替えが可能です。
反対に、診断書が発行されなければ、ケガがあっても事故証明書が『物損』のまま作成されてしまいます。
こうなると人身事故である証明が難しくなり、その後の治療費や賠償金の請求が難しくなるでしょう。
診断書が影響する賠償金の種類には、次のようなものがあります。
整形外科で診断書がもらえない場合、次のような対処法があります。
これらの方法について、詳しく解説します。
診断書が発行されない場合、まずは医師に相談・交渉する方法があります。
診察の不十分さなどが不発行の理由である場合は、医師の指示に従い診察を続けると、診断書を得られる可能性があるでしょう。
初診時に症状を伝えきれなかった場合や新たに現れた症状がある場合には、同じ医師に診察を依頼して再評価を求めます。
医師と相談・交渉する際は、診断書発行の条件をしっかりと確認しつつ治療を続けるといいでしょう。
診断書を得るために、セカンドオピニオンを求めて医療機関を変えるのもよいでしょう。
他の医療機関の選択は、以下の2つの方法があります。
最初にかかった整形外科医がなかなか診断書を発行してくれない、あるいは信頼性に欠ける場合などは、他の整形外科で診断を受けると診断書が発行される場合があります。
ケガの症状が特定の部位に集中している場合や、他の分野の症状(脳障害・記憶障害など)がみられる場合には、その専門分野の意思による受診を検討しましょう。
それぞれの専門医によって適切な診断が行われると、診断書が発行される場合があります。
診断書を得るには、交通事故に精通した弁護士に相談するのも有効な方法です。
医師は法律の専門家ではないため、交通事故賠償に必要な診断書の知識が浅い場合や、発行基準を勘違いしている場合があります。
このような場合には、患者からの交渉では診断書を得られなくても、弁護士からお願いすると誤解が解けて診断書を書いてくれるケースがあるでしょう。
または医療機関のポリシーにより発行基準を厳格にしているケースでも、弁護士からの交渉で診断書を得られる場合があります。
診断書がない場合、保険会社に連絡するのも有効な方法です。
まず自己が契約する任意保険会社に相談すると、手続や交渉の方法についてよい回答を得られる可能性があります。
その際は、弁護士費用特約への加入の有無も確認しましょう。
本特約への加入があれば自己負担なしでの弁護士への依頼も可能です。
また相手方保険会社に交渉すると、診断書がなくても治療費や賠償金を得られる場合があります。
診断書は人身事故である事実を証明する書類ですが、相手方もしくは保険会社が認めさえすれば損害賠償等や慰謝料請求は可能なためです。
保険会社との交渉を考える際には、先に弁護士に相談して交渉を代理してもらうなど慎重に交渉すると、適正な額の賠償金を得られる可能性が高くなります。
整形外科で診断書を出してもらう場合、3,000円~5,000円ほどが相場になります。
ただし診断書発行費用は健康保険の対象外であり、費用は各医療機関の基準によって違います。
詳しい料金は各医療機関にてご確認ください。
今回は、交通事故で医師が診断書を発行してくれない理由とその対処法を解説しました。
診断書は交通事故で適切な賠償を得るために非常に重要な書類です。
病院からもらえない場合、弁護士であれば本人に代わって相手方保険会社や医師との交渉が可能であり、各種申請の代理も可能です。
また賠償金については過去の裁判例に基づく適正基準で請求するため、本人交渉より増額になるケースが多くなります。
交通事故の診断書についてお困りの際は、まずはベンチャーサポートへご相談ください。