東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
交通事故が原因で関節や靭帯、神経などに痛みや痺れの症状が出ることがあります。
そしてそれが改善されないために、整骨院で施術を受けることを検討している被害者も多くいるといわれています。
この記事では、交通事故の被害者が整骨院へ通っても慰謝料請求できるのか否か、通院することの注意点、また被害者の治療から慰謝料請求までの流れを併せて解説します。
目次
整骨院は、柔道整復師という国家資格保持者が柔道整体術などを用いて、骨・関節・筋肉などの運動機能の障害の改善のために施術を行っている場所です。
交通事故の被害者が整骨院へ通うことは、いくつかの要件を満たしていれば治療費が慰謝料として認められます。
ただし、整骨院は病院と異なり、検査・診断・投薬・施術などの医療行為を行うことはできません。
あくまでも診断を行うのは整形外科の医師であって、整骨院では病院の補助的な治療を行うことになります。
交通事故後の治療で整骨院に通院することは可能ですが、いくつか注意点があります。
人身事故の被害者は、事故直後に病院ではなく整骨院を受診してしまうと、前述したように詳細な検査を受けることはできません。
そのため、事故とケガの因果関係を否定されて治療費や慰謝料が受け取れない、治療が遅れて症状が悪化して予後が不良となるおそれもあります。
なお、整形外科は、骨・関節・筋肉などの傷害・疾病について外科的な医療行為を行う専門科になりますので、スタッフや機材が充実している総合病院などの整形外科を受診することをおすすめします。
整骨院へ通院するには、必ず整形外科医の診断を受けた後で、事前に整骨院へ通うことの承諾を得てください。
そして、加害者側の保険会社へ医師から承諾を得て整骨院へ通うことを事前に伝えることを忘れないようにしましょう。
整骨院へ通院していても、病院を月1回以上受診して整骨院での治療の継続が必要であるか否かを判断してもらってください。
そして、治療が終了する完治または症状固定がなされるまでの間は、病院と整骨院の両方への通院を継続することが重要になります。
交通事故後に整骨院に通院すると、慰謝料や治療費をめぐって加害者の保険会社ともめることがあります。
交通事故にあった場合、まずは病院に入院したり通院したりするのが一般的です。
この時に発生する治療費の支払いは、加害者が加入する保険会社から病院に対して直接支払われる「任意一括対応」となるケースが多くあります。
ただ、この治療費はいつまでも払ってもらえるわけではなく、一定期間を経過すると治療費は打ち切られてしまいます。
そして、整骨院に通院している人は、治療費の打ち切りがより行われやすいといわれます。
これは、整骨院での治療の必要性や効果に疑問を持たれやすいことが背景にあります。
交通事故で負傷し、後遺症が発生した場合、後遺障害等級認定を受けられます。
後遺症の認定を受けることで、その後に後遺障害慰謝料や逸失利益といった請求を行えるようになります。
しかし、交通事故の治療を整骨院だけで行っている人の場合、後遺障害等級認定を受けられないケースがあります。
これは、整骨院のみに通院している人は医師の治療を受けておらず、その結果、治療の状況を医師に把握してもらえないためです。
後遺障害診断書を作成してもらうためだけに病院に行っても、それまでの治療の過程や症状がわからないため、結果的に不利になってしまうこととなります。
交通事故の被害者が治療費としての慰謝料を請求する場合、医師の診断がいの部位に対する治療については、慰謝料請求をすることはできません。
医師の診断や治療方針と合致するものだけが、慰謝料請求の対象になります。
整骨院とよく似た治療施設として、整体院やカイロプラクティックがあります。
この整体院やカイロプラクティックは、国家資格のない整体師が、症状を緩和するためにマッサージを行うものです。
したがって、これらの施設は民間療法ということになります。
民間療法による施設に通って交通事故の症状を緩和しようとしても、そのことがれっきとした治療行為といえるのか、疑問を持たれます。
そのため、整体院やカイロプラクティックでの治療費については、一切慰謝料請求の対象にならないと考えられます。
交通事故にあった後、医師の許可をもらって整骨院に通院した場合、どのように慰謝料の金額を計算するのでしょうか。
交通事故でけがをして整骨院などに通った場合、「入通院慰謝料」を請求することができます。
この入通院慰謝料とは、交通事故で負ったけがを治療するために入院したり通院したりした時の、精神的な苦痛に対する賠償金です。
精神的苦痛に対する補償という位置づけのため、その金額の計算方法は基準によって異なります。
まず、弁護士基準あるいは裁判基準と呼ばれる計算基準があります。
これは、過去の裁判における慰謝料の金額を基に、弁護士や裁判所が慰謝料の額を算定する際に用いる基準です。
次に、任意保険基準と呼ばれる計算基準があります。
こちらは、任意保険会社が各社独自に定める慰謝料の計算基準であり、弁護士基準や裁判基準より低額になります。
最後に紹介するのが、自賠責基準です。
こちらは自賠責保険会社が用いる基準であり、最低限の補償額を定めたものとなっています。
弁護士基準や裁判基準より低額になるほか、任意保険基準よりもやや低くなることが多くなっています。
ここからは、交通事故で人身に傷害を負った被害者の治療から慰謝料請求までの流れを説明します。
交通事故に遭って身体に傷害を負った可能性があれば、事故直後に必ず病院を受診しましょう。
また、事故直後に目立った外傷や痛みなどの症状がなく、後になってから症状があらわれたときでも、事故から数日から1週間以内に病院を必ず受診してください。
病院ではまず問診が行われるので、事故当時の状況と身体に受けた些細な衝撃・接触・打撲であっても医師へ伝えてください。
医師は、問診と患者の状態を見て必要な検査を行いますが、レントゲンやMRIなどの画像診断がなければ、希望して検査をしてもらいましょう。
そして、検査の結果から診断されて治療が始まりますが、診断書を作成してもらうことを忘れないようにしましょう。
また、入院や通院治療は、医師が指示する期間・回数で継続して受けなければなりません。
決して怠らないように注意してください。
通院治療は、事故による受傷部が完治したか、これ以上治療を続けても症状が良くも悪くもならない「症状固定」の診断がなされると終了することになります。
症状固定がなされたときに、事故による傷害が原因で後遺症が残っていると、後遺障害等級の認定の申請が可能になります。
後遺障害の認定を受けると、治療費や通院慰謝料などの人身事故の一般的な損害賠償に加えて、その症状に応じた後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益の請求をすることができます。
人身事故による被害者の損害は次の時期に確定するので、それぞれに応じた損害の賠償を加害者に対して請求していくことになります。
時期 | 損害の内容 |
---|---|
・治療の終了 ・症状固定 (後遺障害の認定なし) | ・治療に関する費用 ・休業損害 ・入通院慰謝料 |
・症状固定 (後遺障害の認定あり) | ・後遺障害逸失利益 ・後遺障害慰謝料 |
示談交渉は、被害者の全ての損害が確定してから(治療の終了、症状固定)開始することが一般的です。
しかし加害者側の任意保険会社の中には、治療の終了や症状固定を促して、実際には被害者の治療が必要であっても示談を成立させようとすることがあります。
加害者側にとっては、被害者の入通院期間が短縮すれば治療費や慰謝料などの支払いが減額できるため、早い時期に示談成立を目指しているに過ぎず、決して被害者の救済を早くしたいと考えているわけではありません。
また、一度示談が成立してしまうと、後になって被害者に新たな治療が必要になったとしても、示談内容に特別に定めているときを除いて、追加で治療費の請求をすることができません。
示談交渉では、加害者が任意保険に加入しているのであれば、その保険会社が交渉を代行します。
しかし、被害者が加入している任意保険の交渉代行サービスや弁護士に依頼するのでなければ、被害者本人が話し合うことになります。
賠償金は、法定された自賠責基準、示談交渉で保険会社が根拠とする任意保険基準、裁判や弁護士が介入したときに根拠とする裁判基準(弁護士基準)によって、次のとおり確定させて請求します。
具体的な賠償金は、加害者が強制的に加入させられている自賠責保険から治療費や休業損害、慰謝料などが支払われますが、これは法定された被害者救済の最低限の基準(自賠責基準)によって算出されます。
被害者の損害が自賠責保険から支払われた額で賠償されないときは、その差額を加害者が加入している任意保険会社へ、未加入であれば加害者本人へ請求していくことになります。
この場合、任意保険会社は、非公開である各社が独自に定めている基準(任意保険基準)を根拠にして、被害者との示談交渉をすすめてきます。
ただし、この基準をもとに算出された賠償金は、自賠責保険と同等、または少し上回るぐらいの額といわれていて、被害者の損害を十分に賠償できないことがあります。
安易に示談に応じてしまわないように注意が必要です。
被害者が弁護士に依頼したときには、裁判手続きや示談交渉において、過去の裁判例にあてはめられるように類型化された裁判基準(弁護士基準)によって、賠償金が最も高額となるように請求していくことになります。
交通事故後の治療で整骨院に通って慰謝料は請求するためにはいくつかの要件を満たしていなければなりません。
整骨院に通う場合は、必ず事前に整形外科医の診断を受け、整骨院へ通うことの承諾を得ましょう。
また、医師が完治または症状固定と診断するまでは、病院での治療も継続することが大切です。
病院や接骨院で治療をしても後遺症が残ってしまった場合、適切な金額の慰謝料を請求するには後遺障害等級認定の申請や加害者側との示談交渉を行う必要があります。
示談交渉をスムーズに進め、納得できる慰謝料を受け取りたい方は、弁護士などの専門家に事故後の対応を依頼するといいでしょう。