東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
目次
脳挫傷とは、交通事故の衝撃で脳が激しく揺さぶられ、頭部を強く打つなどすると発生する外傷性の脳損傷です。
脳挫傷になると脳の腫れや出血が起こるため、脳内にたまった血腫が原因となり、やがて「くも膜下出血」や「硬膜外出血」などを引き起こします。
脳挫傷の症状はすぐにあらわれないため、一時的な意識消失があった場合に「脳震とう」と自己判断し、病院に行かないケースがあるので、注意しなければなりません。
頭痛や吐き気、けいれんや麻痺が残れば脳挫傷の可能性が高く、適切な治療を受けなければ重い後遺障害が残ってしまう恐れもあります。
脳挫傷は以下のような後遺障害も引き起こすので、必ず病院の検査を受けておきましょう。
脳挫傷を原因とする後遺障害は以下の3種類に分類されます。
いずれも脳の損傷個所に関係なく発生する可能性があり、具体的な症状も以下のように分かれているので、該当する場合は適切な検査と治療が必要です。
被害者本人に自覚がなく、家族でさえ気付かない症状もあるので十分に注意しましょう。
脳挫傷によって脳の中枢神経がダメージを受けた場合、外傷性てんかんとして以下の症状があらわれるケースがあります。
けいれん発作の後に意識を失うこともありますが、脳の損傷が原因となって異常な電気活動(神経の命令伝達)が発生している状態です。
外傷性てんかんの多くは事故発生から2年以内に発症し、徐々に沈静化はするものの、完治する例はほとんどありません。
発作は抗てんかん薬の服用である程度抑えられますが、直近のてんかん発作から2年間は車の運転ができないため、仕事や日常生活に支障をきたすでしょう。
脳挫傷が高次脳機能障害を引き起こした場合、以下の症状が発生する可能性があります。
本人・家族ともに辛い状況ですが、「メモをとって都度見返す」の繰り返しで記憶障害を克服するリハビリ療法もあります。
本人の意識がなく、寝たきりのままになる状態を遷延性意識障害といいます。
重症頭部外傷と呼ばれる意識障害の一つですが、治療後の6ヶ月間が以下の状態であれば、遷延性意識障害と診断されます。
遷延性意識障害には有効な治療方法がなく、植物状態から回復するケースはほとんどありません。
人工呼吸器などで生命は維持できても、生涯にわたり要介護状態となるため、本人や家族が被る損害は計り知れないものとなります。
交通事故の後遺障害等級は14級~1級まであり、以下のステップを経て等級認定となります。
等級が1段階変わるだけで慰謝料は数十万~数百万円の差額になるため、脳挫傷の影響が正確に伝わる書類を揃えなければなりません。
では、具体的な手続きの流れや必要書類をみていきましょう。
症状固定とは、「治療を続けてもこれ以上の回復は見込めない」という状況です。
脳挫傷による後遺障害は段階的に発症することがあるため、症状固定の診断を受けた後に後遺障害等級認定の準備を始めましょう。
なお、後遺障害は症状に応じた治療期間の目安があるため、一定期間を経過すると加害者側の保険会社から治療打ち切りを打診されるケースがあります。
安易に応じると後遺障害の等級が下がる可能性があるので、症状固定と診断されるまでは必ず治療を続けてください。
医師から症状固定と診断されたら、次は後遺障害診断書の作成を依頼します。
ただし、医師の診断書は医学的見地から作成されるため、後遺障害の等級認定を見据えた内容になっていないケースがあります。
適正な後遺障害等級の認定には高精度な検査結果も必要なので、画像検査がレントゲンのみであれば、MRIやCT検査も受けるようにしてください。
等級の認定は提出書類だけで審査されるため、不安があるときは弁護士にチェックしてもらいましょう。
交通事故に強い弁護士は診断内容の不足を医師に助言してくれるので、より確実性の高い診断書を作成してもらえます。
被害者が加害者側の自賠責保険会社に対し、直接慰謝料請求することを被害者請求といいます。
自賠責保険会社に連絡すると請求に必要な書類が送付されるので、漏れがないように記入しておきましょう。
なお、以下の書類は被害者側で用意します。
すべて揃えば保険会社へ送付しますが、脳挫傷の影響で書類収集が困難なときは、任意保険会社への事前認定も検討しましょう。
事前認定の場合、保険会社から送付される書類のみで後遺障害等級を申請できます。
必要書類の提出後は損害保険料率算出機構によって審査が行われ、1~3ヶ月程度で結果通知が送付されます。
ただし、下位の等級に認定されると慰謝料が低くなり、非該当の場合は後遺障害なしという扱いになります。
妥当性を欠く結果であれば、以下の方法も検討してみましょう。
いずれも新たな証明資料(検査結果など)や専門知識が必要となるため、弁護士に相談しておくことをおすすめします。
加害者へ請求できる費用等を総称して示談金といい、慰謝料や治療費などが含まれています。
請求先は加害者が加入している保険会社となりますが、金額の算定基準が3つあるため、どの基準を用いるかで支払額が大きく変わります。
示談金の内訳は以下のとおりですが、まず各算定基準の違いを理解しておきましょう。
慰謝料等は以下の算定基準のいずれかで計算されますが、もっとも高額になるのは弁護士基準です。
自賠責基準は最低限の補償となり、重い後遺障害には十分に対応できないため、不足分を任意保険基準で算定することになりますが、金額に大きな違いはありません。
弁護士基準は過去の判例を参考にしているので、任意保険基準の2~3倍を獲得できる可能性があります。
以下は示談金の内訳となりますが、算定基準ごとの違いにも注目しておきましょう。
入通院慰謝料は、各算定基準で以下のような相場になっています。
通院期間 | 自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|---|---|
軽度 | 重度 | |||
1ヶ月 | 12万9,000円 | 12万6,000円 | 19万円 | 28万円 |
2ヶ月 | 25万8,000円 | 25万2,000円 | 36万円 | 52万円 |
3ヶ月 | 38万7,000円 | 37万8,000円 | 53万円 | 73万円 |
4ヶ月 | 51万6,000円 | 47万9,000円 | 67万円 | 90万円 |
5ヶ月 | 64万5,000円 | 56万7,000円 | 79万円 | 105万円 |
6ヶ月 | 77万4,000円 | 64万3,000円 | 89万円 | 116万円 |
自賠責基準は「日額4,300円×対象日数」で計算しますが、対象日数は「治療期間」または「入院日数+(実通院日数×2)」のどちらか短い方となります。
後遺障害慰謝料には等級別の相場があります。
等級 | 自賠責基準 | 任意保険基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
1級 | 1,150万円 | 1,300万円 | 2,800万円 |
2級 | 998万円 | 1,120万円 | 2,370万円 |
3級 | 861万円 | 950万円 | 1,990万円 |
4級 | 737万円 | 800万円 | 1,670万円 |
5級 | 618万円 | 700万円 | 1,400万円 |
6級 | 512万円 | 600万円 | 1,180万円 |
7級 | 419万円 | 500万円 | 1,000万円 |
8級 | 331万円 | 400万円 | 830万円 |
9級 | 249万円 | 300万円 | 690万円 |
10級 | 190万円 | 200万円 | 550万円 |
11級 | 136万円 | 150万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | 100万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 60万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 40万円 | 110万円 |
なお、被害者救済目的の自賠責保険はほぼ確実に支払われますが、任意保険は交渉次第となります。
脳挫傷の影響で仕事を休んだ場合、以下の休業損害(休業補償)を請求できます。
休業補償は労災保険から支払われるため、補償の対象は会社員やパート社員、アルバイトになりますが、休業損害補償は自営業者や家事従事者も請求可能です。
補償額は1日当たりの基礎収入を基準としますが、家事従事者となる専業主婦(主夫)の場合は厚生労働省が公表する賃金センサスを参考にします。
逸失利益とは、交通事故の被害がなければ得られたはずの利益です。
計算方法は以下のようになっており、労働能力の喪失率や喪失期間が考慮されています。
逸失利益は将来的な収入の先払いとなるため、ライプニッツ係数を使って利息分(増額分)を控除し、現在の価値へ換算します。
診察料やリハビリ費用、車いすなどの購入費は治療費として請求できます。
入院中に必要な日用品の購入費は入院雑費として請求できるので、領収書は必ずもらっておきましょう。
なお、入院雑費には以下の基準があります。
脳挫傷の場合は入院期間が長くなりやすいので、弁護士基準による算定をおすすめします。
電車やバス料金、ガソリン代など、通院のための交通費も加害者側に請求できます。
ただし、タクシー料金は保険会社が認めないケースもあるので、利用する場合はあらかじめ加害者に連絡しておきましょう。
脳挫傷になると退職や休業を余儀なくされるケースがあるため、被害者には計り知れない損害が発生します。
慰謝料の増額には以下のような方法があるので、保険会社の提示額に納得できないときは検討してみましょう。
交通事故に強い弁護士にサポートしてもらうと、後遺障害の等級が上がりやすくなります。
後遺障害等級は書類審査のみで決定されるため、診断書の内容が不十分であれば等級が下がる、あるいは非該当になる可能性があります。
弁護士に書類チェックを依頼すれば適正な等級に認定されやすくなるので、後遺障害に悩まされている方は弁護士への相談も検討してください。
保険会社との示談交渉では不利な条件を提示されることが多いため、納得できないときは弁護士に交渉を依頼してみましょう。
保険会社によっては強引に示談交渉をまとめようとするケースもありますが、弁護士が対応すれば有利な展開に持ち込める可能性が高くなります。
示談金も弁護士基準で算定してくれるため、慰謝料の増額も期待できるでしょう。
脳挫傷が軽度であれば社会復帰も可能ですが、重度の場合は今までどおりの生活ができないため、退職・廃業によって収入が断たれてしまう可能性があります。
治療期間や入院期間も長くなりやすいので、病院への支払いも高額になるでしょう。
交通事故の後遺障害には十分な補償が必要となるため、適正な等級の認定がポイントとなります。
担当医が後遺障害の認定に詳しくないときや、認定結果に納得できないときは、できるだけ早めに弁護士に相談されることをおすすめします。