東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
目次
飲酒運転で運転手に科せられる刑罰は、「酒気帯び運転」か「酒酔い運転」によって異なります。
酒気帯び運転とは、お酒を飲んだあとに体内でアルコールが分解されないうちに運転することです。
この判断基準は「血液1ミリリットルにつき0.3ミリグラム以上、または呼気1ミリリットルにつき0.5ミリグラム以上」のアルコールが検出されることです。
お酒に弱い人や強い人でも飲酒量によっては睡眠を十分にとった翌日でも酒気帯び運転に該当することがあります。
そして、酒気帯び運転には、次の刑事処分及び行政処分がなされます。
基準 (呼気1ミリリットルにつき) | 刑事処分 | 行政処分 |
---|---|---|
0.5ミリグラム以上 0.25ミリグラム未満 | 懲役3年以下 または 罰金50万円以下 | 違反点数13点 免許停止90日間 |
0.25ミリグラム以上 | 違反点数25点 免許取消し 欠格期間2年 |
行政処分の中の欠格期間とは、免許取消しになった日から2年間は新たに運転免許を取得できない期間のことを指します。
また、行政処分が軽い方の酒気帯び運転であっても、違反点数の累積があれば免許取消しになる可能性もあるので注意しましょう。
酒気帯び運転していることを知っていた同乗者は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金を科されます。
酒酔い運転とは、飲酒による「アルコールの影響で正常な運転ができないおそれがある状態」で運転することです。
酒気帯び運転のように、体内のアルコール残留濃度による明確な基準はありません。
歩行や視覚などの能力の低下、言動などの認知能力の低下などから判断されます。
一般的に「呼気1ミリリットルにつき0.5ミリグラム以上」の飲酒運転と同程度で該当するといわれています。
ただし、アルコールに耐性のない方や弱い方は、酒気帯び運転の基準以下の数値であっても酒酔い運転に該当することがあるので、注意が必要です。
また、酒酔い運転には、次の刑事処分及び行政処分がなされます。
刑事処分 | 行政処分 |
---|---|
懲役5年以下 または 罰金100万円以下 | 違反点数35点 免許取消し 欠格期間3年 |
飲酒運転していることを知っていた同乗者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。
平成19年の道路交通法の改正では、飲酒運転の撲滅を図るための政策から飲酒運転周辺罪が導入され、飲酒運転の同乗者に対して飲酒運転同乗罪を問えるようになりました。
飲酒運転同乗罪では、同乗者に対して次の刑事処分がなされます。
飲酒運転のケース | 刑事処分 |
---|---|
運転者が酒気帯び運転 | 懲役2年以下、または罰金30万円以下 |
運転者が酒酔い運転 | 懲役3年以下、または罰金50万円以下 |
さらに、同乗者が運転免許を所持していれば、次の行政処分も併せてなされます。
飲酒運転のケース | 行政処分 |
---|---|
運転者が酒気帯び運転 (呼気1ミリリットルにつき) 0.5ミリグラム以上、0.25ミリグラム未満 | 違反点数13点 免許停止90日間 |
運転者が酒気帯び運転 (呼気1ミリリットルにつき) 0.25ミリグラム以上 | 違反点数25点 免許取消し 欠格期間2年 |
運転者が酒酔い運転 | 違反点数35点 免許取消し 欠格期間3年 |
運転者が飲酒運転をして交通事故を起こした場合、飲酒運転を知っていた同乗者は、刑事処分や行政処分を受けるだけではありません。
被害者に対する損害賠償責任が発生し、損害賠償請求を支払わなければならない場合があります。
損害賠償金の支払いが確定した運転者の場合、加入する保険によって損害賠償金の支払いが補償されます。
しかし、同乗者について発生した損害賠償金については、運転者や同乗者がどのような保険に加入しているかにより、大きく影響を受けることとなります。
そのため、場合によっては同乗者が損害賠償金の支払義務を負った時に、その金額をすべて自己負担しなければならないことがあります。
飲酒運転同乗罪は、同乗者が次の2つの要件に該当すると罪に問われます。
「酒気を帯びていることを知っていた」とは、運転者がアルコールを摂取していたことを同乗者が明確に知っていたことを指しており、主に次のような状況であるときに「知っていた」と判断されます。
「運送することを要求、又は依頼して、同乗した」とは、同乗者が飲酒をしている運転者に対して積極的にはたらきかけて同乗したことを指しており、寝ていたところを車に乗せられたなどの同乗者の意思に反しているときには該当しません。
また、同乗者が積極的にはたらきかけていても、結果的に同乗していなければ飲酒運転同乗罪に問われません。
ただし、積極的に同乗をはたらきかけていなくても、運転者との会話ややり取りの様子によっては、積極的にはたらきかけていたとみなされる可能性もあります。
飲酒運転の車両に同乗することは、飲酒運転同乗罪という罪に問われます。
飲酒運転の車両に同乗した人は、自身でその車両を運転していなくても、また運転免許を所持していなくても、罪に問われます。
運転者が酒気帯び運転であった場合は、同乗者は2年以上の懲役または30万円以下の罰金となります。
また、運転者が飲酒運転であった場合、同乗者は3年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。
車両等提供罪とは、運転者が飲酒をしている状態であること・飲酒運転をする可能性があることを知りながら車両等を提供した者を対象として、車両の所有者・占有者などが使用を許可する、または車のカギを渡すなどの行為があれば該当します。
車両等提供罪では、車両等提供者に対して次の刑事処分がなされます。
飲酒運転のケース | 刑事処分 |
---|---|
運転者が酒気帯び運転 | 懲役3年以下、または罰金30万円以下 |
運転者が酒酔い運転 | 懲役5年以下、または罰金50万円以下 |
酒類提供罪とは、飲酒運転をするおそれがある者に対して、酒類を提供または飲酒を勧める行為が該当し、酒類提供者に対して次の刑事処分がなされます。
飲酒運転のケース | 刑事処分 |
---|---|
運転者が酒気帯び運転 | 懲役2年以下、または罰金30万円以下 |
運転者が酒酔い運転 | 懲役3年以下、または罰金50万円以下 |
ここでいう酒類の提供は、運転者が飲酒運転をすることを知らずに「単にお酌をする」などの行為は該当しません。
また飲酒を勧める行為とは、運転者が車を運転することを伝えているにもかかわらず、「1杯だけなら大丈夫」「近所だから」「捕まらなければいい」などと積極的に飲酒運転をさせることを指しています。
飲酒運転は、軽い気持ちであっても交通事故を起こしたときに悲惨な結果をもたらす行為であるため、重い刑事処分や行政処分が科されます。
また飲酒運転同乗罪に問われると、閉ざされた狭い空間である車内で「運転者の飲酒に気付かなかった」と罪の適用を否定することは、とても困難なことだともいわれます。
自分は運転しないから大丈夫だと高をくくり、飲酒者の車に安易に同乗する行為は、重大な結果を招いてしまう恐れがあります。
飲酒運転による悲惨な交通事故を撲滅するためにも、明日は我が身との意識を忘れずにいましょう。
飲酒している人の車に同乗してしまい、刑事処分や行政処分を受けるかもしれないと不安に感じている方は、弁護実績が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。