東京弁護士会所属。
メーカー2社で法務部員を務めた後、ロースクールに通って弁護士資格を取得しました。
前職の経験を生かし、実情にあった対応を心がけてまいります。 お気軽に相談いただければ幸いです。
目次
交通事故などで負傷して完治せずに障害が残ってしまった場合は、後遺障害として認定されれば慰謝料を請求することができますが、それだけでなく、障害年金という年金を受け取れる可能性があります。
もっとも、後遺障害が認定されても必ず障害年金の対象になるわけではありません。障害年金にはいくつかの等級があり、それに該当することで年金の支給対象になります。
また、障害年金には種類があり、どれに該当するかによって支給の対象となる等級が異なります。等級によって受け取れる年金額も異なります。
今回は、障害年金の制度の仕組みや障害等級についてご紹介します。
障害年金とは、負傷や疾病によって障害の状態になった方に対して支給される公的年金です。障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があります。
障害基礎年金は、国民年金に加入している方が障害の状態になった場合に受け取れる障害年金です。
国民年金に加入していない場合でも、国民年金に加入できない20歳未満の方や、60歳以上65歳未満の間に障害が生じてその状態が続いている方も支給の対象になります。
障害基礎年金が支給されるかどうかは、障害について医師または歯科医師の診療を初めて受けた日(初診日)が基準になります。
初診日に年金に全く加入していなかった場合は、後に国民年金に加入したとしても原則として支給の対象になりません。
障害厚生年金は、厚生年金に加入している方が障害の状態になった場合に支給される障害年金です。
厚生年金は国民年金の上乗せとして支給される年金制度なので、障害厚生年金も障害基礎年金に上乗せして支給されるのが特徴です。
つまり、厚生年金に加入している場合は、障害基礎年金の分に加えて障害厚生年金も支給されることになります。
障害厚生年金の支給対象になるかは、障害について医師または歯科医師の診療を初めて受けた日(初診日)が基準になります。
初診日に厚生年金に加入していた場合は、後に国民年金に変わったとしても障害厚生年金の支給対象になります。
逆に、初診日に厚生年金に加入していなかった場合は、後に加入したとしても原則として障害厚生年金の支給対象にはなりません。
障害年金は障害の程度によって受け取れる年金の金額が異なるのが特徴です。障害の程度が重いほど受け取れる年金の額は高くなり、障害の程度を等級で表したものを障害等級といいます。
障害の程度を示す障害等級は1級、2級、3級の3種類あります。1級は障害の程度が最も重く、3級が最も軽くなります。
障害等級は一度決まれば固定するわけではなく、症状が軽減した場合に等級が下がったり、悪化した場合に等級が上がったりすることもあります。
障害等級1級は、障害によって日常生活を送ることができない程度のものです。他人の補助を受けなければ自分の身の回りのことを処理できない状態を意味します。労働はできません。
障害等級2級は、障害によって日常生活が著しく制限される程度のものです。必ずしも他人の手を借りる必要はありませんが、日常生活が極めて困難な状態を意味します。労働によって収入を得ることができない状態です。
障害等級3級は、障害によって労働が著しい制限を受ける程度のものです。
詳しく知りたい方は、「部位・障害・障害の程度によって違ってくる後遺障害等級」を参照してください。
障害等級は1級から3級までありますが、障害年金の支給対象になる等級は年金の種類によって異なります。
障害基礎年金については、障害等級1級と障害等級2級が支給の対象になります。障害等級3級は支給の対象外なので注意が必要です。
障害厚生年金については、障害等級1級と障害等級2級だけでなく、障害等級3級も年金の支給対象になります。
障害手当金とは、障害の程度が障害等級3級より軽い場合であっても、一定の症状については障害が治ったときに一時金が支給される制度です。
障害手当金における治ったとは、医学的に治癒が完了した日か、治療を続けても改善が望めない症状固定になった日を意味します。
注意点として、障害手当金が支給されるのは障害厚生年金のみです。障害基礎年金については障害手当金の制度はありません。
障害年金等級表とは、障害等級1級、2級、3級、障害手当金のそれぞれに該当する障害の状態を具体的に定めたものです。
障害等級1級に該当する症状は、1号から11号までの11種類に分かれています。症状の例としては、両眼の視力の和が0.04以下、両上肢の機能に著しい障害を有する、両下肢の機能に著しい障害を有するなどです。
障害等級2級に該当する症状は、1号から17号までの17種類に分かれています。症状の例としては、両眼の視力の和が0.05以上0.08以下、音声又は言語機能に著しい障害を有する、体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有するなどがあります。
障害等級3級に該当する症状は、1号から22号までの22種類に分かれています。症状の例としては、両眼の視力が0.1以下、脊柱の機能に著しい障害を残す、言語の機能に相当程度の障害を残すなどです。
障害手当金に該当する症状は、1号から14号までの14種類に分かれています。症状の例としては、両眼の視力が0.6以下、両眼のまぶたに著しい欠損を残す、脊柱の機能に障害を残すなどがあります。
障害年金の請求方法は2種類で、障害認定日による請求と事後重症による請求があります。
障害認定日による請求とは、障害が認定された日を基準として請求する方法です。障害認定日の翌月分から年金が支給されます。
原則として障害認定日から3ヶ月以内の症状について書かれた医師の診断書が必要になります。
事後重症による請求とは、障害認定日には障害に該当しなかったものの、その後に症状が悪化して障害に該当した場合の請求です。
請求日の翌月分から年金の受給開始になります。請求日以前の3ヶ月以内の症状についての診断書が必要です。
障害年金の申請手続を行う窓口は、障害年金の種類によって異なります。障害基礎年金は住所地の市区町村または年金事務所が窓口になります。障害厚生年金は年金事務所が窓口です。
障害などで申請者本人が窓口に行けない場合は、家族などの代理人が申請手続を行うこともできます。
障害年金を申請するためには、障害の原因となった怪我や疾患について医師または歯科医師の診療を初めて受けた日(初診日)がカルテなどで特定できる、初診日の前日の時点において初診日の前々月までの保険料を一定以上納付している、一定の障害の状態にある、などの条件を満たす必要があります。
申請については日本年金機構が等級や支給の有無を審査します。審査期間の目安は3ヶ月程度です。
障害年金とは、交通事故などで一定の障害の状態になった場合に支給される公的年金です。
障害年金は障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があり、障害基礎年金は国民年金に加入している方、障害厚生年金は厚生年金に加入している方が支給の対象になります。
障害年金が支給される障害は1級から3級に分かれていて、最も症状が重いのは1級です。障害基礎年金が支給されるのは1級と2級で、障害厚生年金は1級から3級までが支給の対象です。
障害厚生年金については、障害の程度が3級より軽い場合でも、一定の症状については一時金の障害手当金の対象になる場合があります。