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交通事故に精通している弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所 > 交通事故弁護士コラム > 怪我・後遺障害等級 > 交通事故によるむちうち治療に整形外科受診を進める理由

交通事故によるむちうち治療に整形外科受診を進める理由

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/tsuru/

交通事故に遭い、むちうちの症状を訴える方も多くいらっしゃいます。

実際、交通事故の負傷状況の調査結果を見ますと、頸部に何らかの症状が出た人の割合は30%以上にものぼり、他箇所に比べ、圧倒的に多い箇所です。

むちうちとは、首が捻挫のような痛みを抱える症状のことをいいますが、重くなると後遺障害として残る場合もあります。

むちうちは、後ろから衝突されたときなど、シートベルトで上半身が固定されている分、首や頭などがその衝撃で不自然に動いてしまい、首を痛めてしまうことにより発生します(交通事故の実験の映像で、人形の首がガクンと前に動いてしまうシーンを見たことがある方はイメージしやすいでしょうか)。

今回は、むちうちの症状が出てしまった場合の対処法について見ていきたいと思います。

交通事故におけるむちうちとは?

交通事故におけるむちうちとは、先程述べたとおり、後ろからされるなどして不意に首に無理な衝撃が抱えた場合に起こる首の捻挫のような症状のことを指します。

軽傷であれば1ヶ月で完治する場合もありますが、首は脳と脊椎を結んでおり、神経などが通っているため、首だけでなく脊椎などの神経が損傷してしまったり、脳機能にまで症状が出てしまったりすることがあります。

軽傷ですむか重傷となってしまうかについては、ケース・バイ・ケースにもよりますが、バックミラーなどで事前に衝突が予想できた場合などは、人間は本能的に身を固め、身体を守ろうとしますから比較的軽傷ですみ、相手方が予測不能な運転をしたなど不意に起こった事故の場合は、重傷となってしまうことが多いようです。

医学的見解からのむちうち症状

そもそも、むちうちとは正式な病名ではなく、医学的には、頚椎捻挫・頸部挫傷・外傷性頚部症候群・外傷性神経根症と呼ばれ、診断書などではそのように記載されます。

むちうちで治療を受ける方の多くは、交通事故に遭ってしばらくたってから痛みの症状に気づき、通院治療を開始する場合も少なくなくありません。

事故後、1・2日程度ならまだ構わないのですが、中には「最初は(交通事故とは関係ない)肩こりかと思っていた」とか「他の重い負傷箇所(骨折など)に気を取られ、気づかなかった」と、治療開始が遅れてしまうケースも少なくありません(このようなケースが、後の示談交渉の際に、交通事故との因果関係を疑われてしまう原因となってしまいます)。

また、本来ならばむちうちは、いわば「首の捻挫」のようなものですから、コルセットなどで首を完全固定しなければなりませんが、日常生活の不便さからコルセットを外してしまう方もいらっしゃいます。

外してしまうと、日常生活の中で、首に軽い負担をかけてしまい(たとえば交通事故に遭わなくても、車を運転すれば、赤信号でブレーキをかけた際首が多少動いてしまいます)、症状が完治しない、あるいは吐き気や頭痛、握力の低下の他、全身の痺れをはじめとする末梢神経障害など、様々な症状を引き起こしてしまい重症化してしまうケースも多いようです。

適切な治療を受けるために

頻繁に交通事故に遭っている方や、高齢者など元々首・肩に何らかの症状を抱えていた人の場合、医学的に見てもむちうちの症状が、交通事故が原因によるものかの判断ができにくいのも、のちの示談交渉の際に、交渉が難航化している原因の一つともされています。

詳しい診断は主治医と相談の上、進めることになりますが、むちうちの治療を受けている際に何らかの痛みや症状が出た場合には、その症状を全て伝えるようにしましょう。

「首の捻挫」といっても、首には脳と脊椎を結ぶ大事な神経が通っていますから、一見、握力低下などむちうちとは関係のない症状でも、むちうちが原因であることが少なくありません。

また、症状を伝えるだけでなく、後の示談交渉、特に後遺障害が残ってしまった場合に備え、首の可動領域の検査・レントゲンによる検査、モアレイテスト(※1)やスパーリングテスト(※2)、ハンマーなどを用いた反射を検査する神経の検査、首以外の運動機能や可動領域の検査などの検査を多角的に行っているかもポイントです。

これら様々な検査を早めに行っていれば、交通事故しばらくたってから症状が現れた(あるいは自覚するようになった)場合、交通事故のむちうちが原因であることの証明が簡易になります。

また、交通事故に遭わなくても、デスクワークなどで日常的に首や肩に痛みを抱えている方はおおぜいいらっしゃいます。

そのような方が交通事故に遭い、むちうちの症状を抱えた場合、むちうちの症状が交通事故が原因であることを証明するためにも、交通事故に遭う前はどのような症状があったか(あるいは何の痛みもなかったか)をきちんと聴取し、診断書に反映されているかもポイントです。

逆に、むちうち治療の際、首の固定や痛み止めなどをするだけで、具体的な検査を行わない医師は、あまり交通事故の治療を得意としていないかもしれません。

他病院の診断を受けるなども検討してみましょう(後に詳しく述べますが、整形外科ではなく整骨院へ通う場合も少なくありませんが、できるだけ整形外科への通院も継続しましょう)。

※1モアレイテスト:重要な神経が通っている箇所を軽く圧迫するなどして、その反応を検査し、神経の損傷や炎症を確かめる検査のこと
※2スパーリングテスト:頭を上から押さえて圧力をかけ、脊椎・椎間板の損傷が出ているかを確かめる検査のこと

むちうちで後遺障害が残ってしまったときの対処法

交通事故による負傷してしまい、完治せず後遺症が残ってしまう割合は全体の約5パーセント前後と言われており、その後遺障害のうち、半分前後が精神・神経症状によるものだといわれています。

むちうちももちろん、後遺障害が残り、なおかつ、首は神経など身体に重要な機能が通っているので、神経にも後遺障害が残ってしまうことがあります。

一般的に、むちうち症状の場合、一見軽症に見える場合でも、半年から一年以上治療を継続しても完治しない場合、後遺障害が残り、示談交渉では後遺障害に基づく慰謝料などを請求していくことになります。

むちうちと後遺障害

ところが、むちうちの場合、他症状と比べ、後遺障害が認定されにくいのも事実です。

まずは、むちうちにおける後遺障害の場合、次のいずれかに該当します。

12級13号局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号局部に神経症状を残すもの

いずれも首の損傷により神経が損傷してしまい、完治しなかったことが前提ですが、12級の場合は、他覚的症状、つまりレントゲン画像やその他診察結果などで、第三者が見ても症状が現れていることが分からなければなりません。

一方14級の場合は、必ずしも他覚症状は必須とはされておりません。

むちうちと労働能力喪失期間

後遺障害が残った場合、労働能力が低下したと判断され、その等級に応じて予め定められている割合を元に、逸失利益を請求することとされております。

年収×労働能力喪失率(※1)×就労可能年数(※2)に対応するライプニッツ係数

※1 12級の場合は14%、14級の場合は5%

※2 就労可能年齢とされる67歳から事故時の年齢を引いて算出された期間。

たとえば、35歳で交通事故に遭い、後遺障害が残った被害者の就労可能年数は67-35の32年

ところが、むちうちの場合の労働能力喪失期間は、就労可能年齢とされる67歳から事故時の年齢を引いて算出された期間ではなく、制限的に、多くの場合14級の場合は5年程度、12級の場合でも10年程度しか労働能力が損失しないと判断されることが、裁判上でも見受けられます(つまり35歳でむちうちの後遺障害が残ってしまった場合でも、労働能力喪失期間は32年ではなく、5~10年とされる)。

つまり、むちうちにおける後遺障害の場合は、他の後遺障害に比べ、最終的にもらえる逸失利益が限定的になってしまう可能性であることも忘れてはならず、適切な示談金をもらうためにも、正確な等級認定を受けることが必須です。

そのために、むちうちで後遺障害が残ってしまう可能性を考え、事故直後から適切な治療を受けることがとても大事なのです。

交通事故によるむちうち治療に整形外科受診をすすめる理由

では、どのように治療をすることが、適切な治療を受けることになるのでしょうか。

答えは、整形外科受診を継続して行うことです。

後遺障害を認めてもらうためには、病院・医師が作成した診断書が必要不可欠になります。

整形外科から整骨院へ切り替える方も少なくありませんが、整骨院で施術を行う柔道整復師では、後遺障害を認めてもらうための診断書を作成することはできません。

12級と14級に分けて見ていきましょう。

12級の場合

むちうちが原因による後遺障害で、12級だと認めてもらうためには、他覚的症状がなければなりません。

他覚的症状は、診断書以外にもレントゲン画像やMRI検査などの診察結果なども参考にしながら、第三者である調査機関でも障害が発生していることが分かることが求められていますから、整形外科による治療は必須となります。

整骨院ではレントゲンなどの具体的な医療行為・検査をすることができません。

14級の場合

14級の場合、12級とは異なり、必ずしも他覚的症状が必須とはいえません。

とはいえ、後遺障害が残ったとして認めてもらうためには、医師が作成した診断書が必須です。

後遺障害として認めてもらうためには、ただ治療内容が記載していればよいという訳ではなく、

  • ・交通事故の状況とそれによって被害者に与えた身体の影響や衝撃
  • ・病状の経過や、治療方法など。

その他、治療開始時から症状固定時までの経緯

などが、より具体的に記載されていなければなりません。

14級の場合、レントゲン画像やその他の検査結果で、誰が見ても後遺障害が残っているかを確認することが困難ですから、より正確な診断書が必要になります。

整骨院が行っているのは完治を目的とした治療ではなく、自然治癒を助けるため・症状を一時的に和らげるための行為にすぎず、マッサージやリハビリなどの施術行為となり、後遺障害が認めてもらうための、より具体的な診察や診断書の作成をすることができません(整骨院が作成するのは、施術証明書となり、後遺障害の認定に必要な診断書とは記載要件が異なります)。

正しい等級の後遺障害が認めてもらうためには、後遺障害が認められないと判断されてから慌てて治療を受けるのでは遅く、できるだけ早い時期から病院(主に整形外科)での治療を受け、そして継続し、自分の症状を明確に伝えることが大事になります。

整形外科と整骨院の使い分け

もちろん、整骨院へ通うことが一概的にダメという訳ではありません。

整骨院で要した費用も、相手方に請求することができますし、整骨院でマッサージや治療を受けることにより症状が和らぐ可能性は十分にあります。

とはいえ、仮にむちうちで後遺障害が残ってしまった場合の診断書には、「治療開始時から症状固定時までの経緯」がより具体的に記載していなければなりませんから、仮に整骨院で施術を受ける場合でも、整形外科への通院も継続的に行い、症状の経緯を診断してもらう必要があります。

したがって、整形外科と整骨院への通院を上手く並行して行い、くれぐれも整形外科での治療を中断する、あるいは整骨院での施術に完全に切り替えることだけはやめましょう。

まとめ

むちうちでも後遺障害が残ってしまう場合があります。

むちうちによる後遺障害が認めてもらうためには、継続して整形外科などへ通院し、様々な検査を行い、治療や症状固定までの経緯を記載した診断書が必須となります。

整骨院による施術だけでは、後遺障害は認めてもらえないため、整形外科の通院・治療を継続する、整骨院と並行して行うことが重要です。

保険会社とのやり取りを私たちが代行し、最後まで妥協することなく示談交渉していきます。事故直後にできる対策もありますのでお早めにお電話ください。 保険会社とのやり取りを私たちが代行し、最後まで妥協することなく示談交渉していきます。事故直後にできる対策もありますのでお早めにお電話ください。

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