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鼻の症状は、眼や耳の症状と同じように鼻自体が原因の場合と、それ以外が原因の場合に分かれます。
外側に飛び出た鼻はいわゆる外鼻といいます。
匂いは、そこを通って鼻腔の中の粘膜にある嗅細胞という匂いを感じる細胞により受け取られ電気信号になり、そこから嗅神経という神経の通り道を通って脳に伝わり匂いとして認識されます。
鼻に衝撃が加わった際に鼻の中の血管が傷ついて出血した状態です。
特に鼻の入り口から1~1.5cmはキーゼルバッハ部位といわれ、この部分は血管の表面がほとんど保護されていません。
そのためわずかな傷で出血してしまいます。
基本的には、ほとんどの場合は止血することが可能です。
昔はあごを上にあげて鼻を押さえ、首筋をとんとんとたたくという方法が勧められていましたが、そうすると鼻血が喉の方にたれこんできてしまうので危険です。
またティッシュペーパーを詰めて何度も取り替えたりするのも控えてください。
ティッシュペーパーを抜くときにまた血管を傷つけて出血をしやすくなることがあります。
正しい治療方法としては、あごは引いたまま、鼻の柔らかい部分を指で最低10-15分程度強く押さえることで、ほとんどの場合が止血されます。
ただもし鼻の奥の方で出血をした場合は、これでは出血が止まらずのどの方に大量にたれこんでくることがあります。
本当にひどい場合は、のどがつまり呼吸困難になることもあるため、鼻を押さえていても喉にたれこんでくるのが続く場合は病院を受診した方がよいでしょう。
通常病院では止血剤をつけたガーゼをつめて数日置いておくといった処置をすることが多いですが、それで止まらない場合は耳鼻科の病院を受診して、出血している血管を焼いて止めるなどの処置が必要になることもあります。
鼻水は風邪をひいたときなどによく経験していると思います。
ただ交通事故の直後に鼻水がでてくるようであれば注意が必要です。
通常、脳は水にみたされており、その水を脳脊髄液といいます。
鼻を骨折した際に鼻と頭蓋骨をつなぐ頭蓋底という骨が骨折することがあり、この骨が損傷することにより脳脊髄液が鼻から漏れ出すのです。
またもし鼻水から逆に細菌が脳の方まで入ってしまうと、髄膜炎という脳の感染症を引き起こしてしまう可能性があります。
このような症状がでることがあれば、できるだけ早めに病院を受診してください。
1週間程度の安静で改善してくることが多いですが、手術が必要になることもあります。
鼻をぶつけることにより、鼻の骨がおれてしまうことがあります。
鼻は顔の中でも飛び出しているためぶつけやすいうえ、鼻骨はとても薄いためちょっとした力が加わるだけでも折れるのです。
横から顔をぶつけた場合は斜鼻型(しゃび)という鼻がくの字に曲がった形になることや、正面から鼻をぶつけた場合は鞍鼻型(あんび)というつぶれた形になります。
また鼻血を伴うことも多いです。
最初の数日は腫れがひどく変形でわからないことも多いです。
病院でレントゲンを撮ってもはっきりわからないことが多いため、心配な場合は顔のCT検査をお願いするようにしてください。
受診するのは耳鼻科でも大丈夫ですが、もし手術が必要になる場合は形成外科で行います。
治療としては、もとに戻す処置を行います。
ただ腫れがひどい時期に無理に戻そうとすると腫れが悪化することもあったり正確な位置がわからないといった問題もあるため、受傷した直後の数日は安静にして氷嚢などで冷やしたりして腫れがひいてくるのを待ちます。
そして腫れがひいたところで、局部麻酔で正しい位置に戻す処置を行います。
子供などで安静が保てない場合や、ずれがひどくプレートという金属の板を使った手術が必要になる場合は全身麻酔が必要になることもあります。
注意点としては、1~2週間以上経過すると骨がくっついてきて局所麻酔でもとに戻すことが難しくなることもあるため、1週間以内には耳鼻科を受診するようにしてください。
また後遺症としては、特に目立つ部位でもあるため鼻の変形(顔面の醜状)が問題となることが多いです。
またそれ以外にも変形が強くなると痛みが残ったり、鼻腔が閉塞したりすることにより匂いを感じづらくなったり鼻での呼吸がしづらいなどの症状が残ることがあります。
なお、鼻骨骨折の特殊なものとして、鼻篩骨という鼻の奥の骨がおれることがあります。
これは鼻の症状ではなく、涙が止まらなくなり目の形が変わるなど目の症状がでます。
詳しくは、【医師が説明する】交通事故による目の症状と治療についてをご参照ください。
打撲した直後から鼻の痛みがあり、徐々に鼻づまりが悪化してきた場合に、この状態を疑います。
鼻腔の軟骨膜の下に血の塊が形成されている状態であり、放置しておくと軟骨への血液の流れが遮断され軟骨が破壊されてしまうことがあります。
そのため鼻づまりが悪化してきた場合は、早めに耳鼻科を受診するようにしましょう。
単なる鼻骨骨折とは違い、軟骨が壊れるのを防ぐためできるだけ早期に血種をとるような処置が必要です。
通常は後遺症がでることは少ないですが、軟骨が破壊されると、鼻がつぶれたような変形を残すことがあります。
また血種に細菌が感染することもあるため、熱がでたり、頭痛がでたりといった症状には注意が必要です。
頭蓋骨の骨折を起こし嗅神経が骨によって圧迫され、脳に振動が加わった際に頭蓋骨を通る穴のところで神経が引き延ばされて損傷されることにより、匂いを感じづらくなった状態です。
頭部や顔面などの打撲の程度と関わらずに症状が出ることがあるため、それほどひどくない事故だったとしても、おかしいなと感じたらすぐ耳鼻科を受診することが望ましいです。
基本的には漢方薬や亜鉛製剤、吸入ステロイドなどの薬物療法で経過観察となりますが、症状の改善率はそれほど高くはありません。
ただ嗅素とよばれる匂いの元となる物質を使ったリハビリテーション(嗅覚刺激療法)で効果があったという報告もあり、ハーブなどを使ったアロマテラピーなどを行う病院もあります。
鼻の粘膜や神経自体は問題なくても、脳の中の匂いを司る細胞が傷害されることにより、匂いを感じなくなる状態です。
副鼻腔炎や風邪の後の後遺症などと比較すると匂いの感じづらさは重度であることが多く、半数以上の方が高度から完全な嗅覚障害であるといわれています。
外傷で脳の障害がある場合は、半数以上に匂いの感じにくさがでると言われていますが、その中の4割の患者さんは自覚がなかったという報告もあるため、もし脳の障害を指摘された場合は検査をお願いした方がよいでしょう。
また自発性異臭症といって、匂いが感じないところでも匂いを感じるといった症状が出る方もいて、日常生活での不便さを自覚する方も少なくありません。
治療としては薬物療法がとられますが、よくなる例はあまり多くなく、2~3割程度とされています。
ただ2年程度は改善の見込みがあるとされているため、ゆっくり経過をみることが必要です。
イニシャル O.M
診療科 整形外科
医師経験年数 10年
平成5年 大阪大学医学部附属病院整形外科 勤務
現在 大阪市住吉区長居の北脇クリニックにて院長を務める
日本整形外科学会・専門医/脊椎脊髄病院/麻酔科標榜医
日本ペインクリニック学会所属
骨折・むちうち・捻挫・脱臼などの症状から背中や首の痛み・手足のしびれ・肩こり・腰痛・関節痛などの慢性的な症状まで、整形外科に関するあらゆる症状に精通する。
地域のかかりつけ医として常に患者の立場に立った診察には定評があり、治療内容や医薬の分かりやすい説明をモットーとしている。