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目の症状は、目それ自体の問題と、まぶたなどの目の周囲組織の問題、それ以外が原因の場合にわかれます。
目はまぶたによって守られており、眼から入った光は角膜・水晶体を通過して網膜に映り、それが視神経というわれる神経の通り道を伝わり脳に至ります。
そのいずれかが損傷することにより目の見えにくさやぼやけが起こったり、痛みがでたりします。
交通事故での受傷する原因としては主に、顔や目などを座席やエアバッグにぶつける鈍的外傷と、ガラス片などが入る鋭的外傷に分かれます。
まぶたの皮膚は非常にうすいため、軽い打撲でもすぐ腫れてしまうことがあります。
そのため目の見え方にあまり問題がなければ、それほど心配する必要はありません。
様子をみていれば、1~2週間程度で徐々に腫れがひいてきます。
青あざは通常皮膚の下に出血が広がることで起こります。
青あざといいますが、実際は紫色や黒ずむ感じになることが多いです。
多くの場合まぶたの腫れも伴い、目が開けられなくなるほどになることもよくあります。
通常は問題ないことが多いですが、まれに目の周りの骨や頭蓋骨が折れていることもありますので、念のため病院でCTをとってもらうことをお勧めします。
その後、あざは徐々に広がりながら腫れがひいていき、2~3週間ぐらいでよくなることが多いです。
まぶたは薄い組織ですが、目を保護する働きがあるため非常に重要な組織です。
他の皮膚はそれほど厳密ではありませんが、まぶたは皮膚側と目側の組織をそれぞれ縫合しないと、まばたきがうまくできなくなることや、瘢痕とよばれるひきつれの原因となることがあります。
またもし欠損してしまうと、常に目を閉じられない状態となり、重度な後遺障害の原因となります。
そのため切り傷ができた場合は、できるだけ早く眼科もしくは形成外科を受診するようにしてください。
角膜は目の一番表面にある組織で、痛みに対して敏感です。
目にゴミが入って痛くなったり、目が乾燥してゴロゴロしたりするのは、この角膜の感覚が原因です。
またひどくなると涙が止まらず、まぶたをなかなか開けることもできなくなります。
表面だけの軽い傷であれば、数日で痛みがとれて、1~2週間ほどで完治します。
しかし深い部分まで障害された場合は、目が見えづらいといった後遺症を残すこともあります。
必ず早めに眼科を受診するようにしましょう。
目に何かが突き刺さったり、貫通して目の中に物が入ってしまったりという状態です。
角膜損傷と同じように、目の強い痛みがあり、まぶたを開けることができなくなります。
また視力低下も起こしますが、受傷したばかりの時は痛みのため目が開けられずはっきりわからないことが多いです。
こちらもすぐ眼科を受診する必要があります。
外からみただけでは異物がわからないこともあるため、レントゲンやCTなどで異物が入っているかどうかを確認し、取り出します。
また異物が入ってしまうため細菌感染することもあり、目の組織が傷害された分だけ目の見えづらさが残りやすくなります。
いわゆる白目の部分を結膜といいますが、そこで出血をしている状態です。
角膜と違い、痛みを感じる組織がないため、痛みはありません。
目が見えづらいなどのその他の症状がなければ、そのまま様子をみれば1週間ぐらいで徐々に改善してきます。
打撲などにより目に強い力がかかった際に、網膜にむくみを生じることにより起こる状態です。
まぶしくみえたり、ぼやけて見えたりすることがあります。
数日から数週間程度で後遺症を残さずに治ることがほとんどです。
物が上下に二重に見えることを複視といいます。
外傷により、目のレンズである水晶体が元の位置からずれてしまった状態です。
両目ではそれほど見えにくさを自覚しないこともありますが片目でみると物が二重に見えます。
基本的には手術を必要とすることが多いため、痛みがなかったとしても必ず病院を受診してください。
その後、緑内障の原因となり目の見えにくさの原因になることがあります。
事故で顔面をぶつけ、その後からこのような症状が出ている場合、吹き抜け骨折といわれる顔面の骨折の場合があります。
眼球は顔面の骨により保護されておりますが、眼球の底の骨が折れることにより眼を動かす筋肉が骨と骨の間に入り込み、眼の運動が障害されることにより起こります。
特にひどくなると、目が上を向いたままで下を向けなくなることや、目の飛びだし方が左右で違ってみえる(折れた方の目がへこんで見える)ということもあります。
その際、眼のあたりの痛みはありますが、眼の周囲が腫れたり、へこんだりといった症状がないこともあるため注意が必要です。
このような症状が出た場合は、できるだけ早く眼科を受診しCT検査をうけるようにしましょう。
その際、脳だけのCTでわからないことも多いため顔の部分CTまで撮影してもらうようにお願いしましょう。
大人では、症状の程度により手術を行うかどうか決定しますが、ずっと放置しておくと骨がその形でくっつくことがあるため、手術を行う場合は1~2週間以内に行います。
ただ子供では、激しい吐き気がでたり、めまいがでたりすることがあり、緊急手術になる場合があります。
目の中は房水という水が循環するような構造になっています。
その出口を隅角といいますが、それが傷ついて穴がとじてしまったり、血が詰まったりして目の中の圧があがった状態を緑内障といいます。
事故の直後になく、しばらくしてから悪くなることが1割程度ありますが、10年以上経過した後に症状がでることもあります。
典型的には視野の中に見えない部分がでたり、見える範囲が狭くなったりしてきます。
あまり症状がなくても悪化してくることもあるため、激しい事故の1か月後には眼科を受診して、一度眼圧をはかっておくことをお勧めします。
最終的には目が見えなくなることもあります。
眼に映った情報を脳まで運ぶ神経を視神経といいますが、その視神経が通る道を視神経管といいます。
その骨が折れることによって、視神経を傷つけることがあります。
もし完全に視神経が切れてしてしまった場合は、手術をしたとしても改善は困難でほぼ失明をしてしまいます。
視神経が完全に切れず、折れた骨に圧迫されているときは折れた骨と手術でとってあげることによって、神経の回復ものぞめます。
ただかなり視力が低下することが多いようです。
また骨折はしなくても、神経が出血によって圧迫された場合も視力の低下を認めることがあります。
また脳出血や脳挫傷で、脳の中の目を司る細胞が傷害されることにより、目が見えなくなることがあります。
治療としては脳の浮腫を予防するような点滴をして、出血がひどければ手術で血を抜くこともありますが、一度傷害されてしまうと改善はあまり見込めません。
鼻の上、眼との間に鼻篩骨という骨があるのですが、顔をダッシュボードにぶつけるなど強い力がかかるとその骨が折れることがあります。
名前としては鼻の骨ですが、眼の内側の空間を構成しており、涙を鼻に流している穴があります。
そのため、この骨が折れると、涙が止まらなくなったりします。
眼科を受診する方が多いと思いますが、もし眼科で問題ないといわれても形成外科の受診をお勧めします。
CT検査をして診断することとなり、治療には手術が必要です。
通常は2週間以内の手術が望ましいため、おかしいと思う場合は様子を見ずに必ず受診するようにしてください。
イニシャル:D.K
診療科目:脳神経外科
現在Ohio州ClevelandでNeurological SurgeryのClinical Research Fellow
平成5年 大阪大学医学部附属病院整形外科 勤務
現在 大阪市住吉区長居の北脇クリニックにて院長を務める
日本整形外科学会・専門医/脊椎脊髄病院/麻酔科標榜医
日本ペインクリニック学会所属
骨折・むちうち・捻挫・脱臼などの症状から背中や首の痛み・手足のしびれ・肩こり・腰痛・関節痛などの慢性的な症状まで、整形外科に関するあらゆる症状に精通する。
地域のかかりつけ医として常に患者の立場に立った診察には定評があり、治療内容や医薬の分かりやすい説明をモットーとしている。