東京弁護士会所属。
交通事故の程度によっては、入院が必要になったり、定期的な通院、精神的にも疾患を負ったり、PTSDとして現れることもあります。
こうした状況の中で、交渉ごとを被害者本人でまとめようとすることは非常に大変です。
弁護士に示談交渉を依頼することで、直接示談交渉をしたり、資料を準備したりする精神的負担が軽減できます。
つらい事故から一日でもはやく立ち直るためにも、示談交渉は弁護士に任せて、治療に専念してください。
警察庁交通局によると、子ども(小学生)の交通事故は10年間で1/2以下に減少しています。
しかし子どもは車社会の危険性を十分に理解していないため、ドライバーの注意力も問われるところですが、飛び出し事故の場合は親の過失となるケースもあるので、注意が必要です。
過失割合は事故発生時の状況や子どもの年齢などを考慮するため、不利な示談交渉にならないよう、修正要素を正しく理解しておくべきでしょう。
今回は子どもの飛び出し事故の過失割合や、過失割合に納得できないときの対処法をわかりやすく解説します。
参考:令和3年における交通事故の発生状況等について(警察庁交通局)
飛び出し事故が発生したとき、歩行者とドライバーの過失割合は基本的に20対80となります。
ただし、過失割合は事故の被害者に過失があるかどうかや現場の状況によって変わり、場合によっては被害者(歩行者)の過失割合が高くなる点に注意が必要です。
具体的には、車の進行方向や信号機の有無、横断歩道上の事故だったかどうかなど、さまざまな要素を考慮するため、以下のように過失割合が決まります。
横断歩道や信号機がない交差点で事故が発生した場合、交差する道路の幅員(道路の幅)や車の進行方向などから過失割合が決まります。
状況 | 過失割合(歩行者:車) |
---|---|
歩行者が幅の広い道路(幹線道路)を横断し、車は直進 | 20%:80% |
歩行者が優先関係のない道路を横断し、車が直進または右左折 | 15%:85% |
歩行者が幅の狭い道路を横断し、車が直進または右左折 | 10%:90% |
飛び出し事故があったとき、歩行者の過失割合は基本的に20%ですが、幅員が同一または狭い道路側であれば5~10%の減算となります。
信号機がない横断歩道上の事故であれば、歩行者0%、車100%が基本的な過失割合です。
この場合、車の進行方向は加味されませんが、歩行者がいきなり飛び出してきたケースや歩行者が左右を確認していれば回避できたケースであれば、歩行者側の過失割合が加算される可能性もあります。
横断歩道を通過する車両は、横断歩行者がいる場合には、横断歩道の手前で一時停止しなければなりません。
横断歩道を通行する歩行者は、車両との関係においては絶対的に保護されるべき存在とされています。
信号機がある横断歩道上で事故があった場合、信号機の表示等によって過失割合が決まります。
信号の状況 | 過失割合(歩行者:車) |
---|---|
歩行者が赤、車が青の表示 | 50%:50% |
歩行者が赤、車が黄の表示 | 30%:70% |
歩行者が赤、車が赤の表示 | 20%:80% |
歩行者が赤のまま横断して途中で青になるが、車側は赤 | 10%:90% |
歩行者側の信号が赤の場合、基本的には車側の信号によって過失割合が決まります。
なお、歩行者側の信号が青であり、横断途中で赤になった場合、車側の信号が赤のままであれば、直進や右左折に関係なく歩行者0%、車100%の過失割合になります。
信号機がある横断歩道上で事故があり、車が直進していた場合は、信号機の表示によって以下のように過失割合が決まります。
信号の状況 | 過失割合(歩行者:車) |
---|---|
歩行者、車ともに赤 | 20%:80% |
歩行者が赤、車が黄 | 50%:50% |
歩行者が赤、車が青 | 70%:30% |
歩行者が黄で横断して途中で赤になるが、車は青 | 30%:70% |
歩行者が赤で横断して途中で青になるが、車は赤 | 10%:90% |
前述のケース(車が右折または左折)と同様に、歩行者が赤で飛び出した場合、車側の信号が何色だったかによって過失割合が決まります。
また、横断中に青から赤へ信号が変わり、車側が赤のまま発進して事故となった場合も、歩行者の過失割合は0%となります。
歩道と車道の区別がない道路の場合、道路交通法では歩行者の右端通行を定めていますが、右端通行が危険な状況など、一定条件下では左端通行を可としています。
したがって、歩行者がどのように道路を通行していたかによって、過失割合が決まります。
状況 | 過失割合(歩行者:車) |
---|---|
歩行者が右端を通行していたとき | 0%:100% |
歩行者が幅員8m以上の道路の中央を通行していたとき | 20%:80% |
上記以外のとき | 10%:90% |
車が歩行者の近くを通過する場合、ドライバーは一定間隔の確保や徐行に配慮をすべきであり、歩行者が右端通行していれば、基本的に過失責任は問われません。
歩道と車道が区別されている道路の場合、過失割合には事故の発生場所が影響します。
状況 | 過失割合(歩行者:車) |
---|---|
歩行者用道路に車が進入してきたとき | 0%:100% |
歩道に車が進入してきたとき | 0%:100% |
歩行者通行が認められた車道で事故が起こったとき | 10%:90% |
歩行者通行が認められていない車道の端を歩行者が通行していたとき | 20%:80% |
歩行者通行が認められていない車道の端以外を歩行者が通行していたとき | 30%:70% |
原則として歩行者の車道通行は認められていないため、車道に飛び出した場合は歩行者の過失も認められることになります。
子ども(幼児や児童)の飛び出し事故は事理弁識能力が問われるため、年齢によっては過失割合が加算されるケースもあります。
事理弁識能力とは、自らの行動に発生する責任を理解できる能力であり、6歳程度の子どもには事理弁識能力が備わっていると考えられています。
つまり、事故発生時の状況や子どもの事理弁識能力の有無が修正要素となり、以下のように過失割合が加算または減算されます。
6歳未満の幼児は事理弁識能力がないものとされており、飛び出し事故の責任を本人が負いませんが、監督責任者は過失を問われる可能性があります。
両親や祖父母などが監督責任者にあたり、幼児の飛び出し事故があったときは、過失相殺によって一定額を損害賠償額から差し引くことになります。
6歳以上13歳未満の児童には事理弁識能力があるものとされており、飛び出し事故が発生したときは一定の過失割合が認められることになります。
ただし、子どもの事理弁識能力には個人差があり、交通弱者として守られるべき対象であることから、大人の飛び出し事故よりも過失割合は5~20%程度低くなります。
道路交通法では歩行者にも一定の注意義務を課しているため、以下の状況で飛び出し事故が発生すると、歩行者の過失割合は加算される可能性があります。
夜間や濃霧の発生、トンネル内はドライバーの視界が悪く、十分な注意を払っていても歩行者の発見に遅れが生じるケースがあります。
横断禁止が明確にわかる標識がある場合や、ガードレール等により歩道と車道が明確に区別されている場合は、運転に最善の注意を払っていても飛び出しを予測しきれません。
幅員の広い幹線道路は車の交通量が多いため、横断の際には歩行者にも十分な注意が求められます。
以下のような状況ではドライバーの注意義務がポイントとなるため、歩行者の過失割合は減算されるケースがあります。
【集団登下校などの横断】
園児や生徒の集団登下校は容易に認識できるため、急な飛び出しがあった場合は、ドライバーの注意義務が問われることになります。
【歩行者の多いエリアや道路】
商店街やオフィス街、保育園や学校があるエリアは歩行者数が多く、運転には十分な注意力が求められるため、飛び出し事故の過失割合は歩行者側が減算されます。
【ドライバーの過失や重過失】
子どもの飛び出し事故が発生したとき、ドライバーに酒酔い運転や居眠り運転、無免許運転などの過失や重過失があれば、歩行者の過失割合は低くなります。
飛び出し事故は発生状況が重要となりますが、子どもよりも大人の証言が重要視されやすい傾向にあるので注意が必要です。
事実と異なる主張が通ると過失割合も加算されるため、納得できないときは以下のように対処してください。
保険会社を介して調査会社に調査を依頼すると、見落としがちな事故発生時の状況や、子どもの証言を裏付ける物的証拠を発見してくれる可能性があります。
過失割合にどうしても納得できないときは、第三機関となる調査会社に依頼してみましょう。
弁護士は適正な過失割合を算定してくれるため、不利な内容で示談交渉が進む可能性はほぼなくなります。
また、弁護士は被害者側の代理人として示談交渉できるので、加害者との交渉にストレスを感じている場合も相談する価値があります。
賠償金や慰謝料も弁護士基準となり、保険会社の提示額よりも高額になるケースがあるため、被害者となった子どもに十分な治療を受けさせられます。
子どもは興味の対象に集中すると周囲が見えなくなるため、車道側に転がったボールを取ろうとして車に衝突するなど、常に交通事故の脅威にさらされています。
少しずつ交通ルールを教えていくことも重要ですが、突発的な行動はなかなか制御できないため、保護者やドライバーは細心の注意を払わなければなりません。
不幸にして事故に遭遇した場合、子どもは身体的な苦痛を負うことになりますが、事実と異なる加害者の主張が通ってしまうと、精神面にも悪影響を及ぼすでしょう。
納得できない過失割合で示談交渉が進むときは、早めに弁護士へ相談することも重要です。
ただし弁護士にも専門分野があるため、必ず交通事故問題に強い弁護士に相談してください。