東京弁護士会所属。
交通事故の被害者にとって、弁護士は、妥当な慰謝料をもらうための強い味方になります。
特に、加害者の保険会社との示談交渉がうまくいかず悩まれていたり、後遺症が残ってしまい後遺障害慰謝料請求を考えていたりする方は、 ぜひ検討してみてください。
交通事故の中でも比較的軽い事故のケースでは、むちうちの怪我を負う場合が多くみられます。
「むちうちくらいで大袈裟な!」などと言われた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか?
客観的な外傷が見られないため、他人から見ればその痛みは分かりません。
ですが、当の本人はどうでしょうか?
痺れや痛み、場合によっては目眩や吐き気など日常生活に支障をきたしてしまうことがあります。
交通事故後、すぐに病院で適切な治療を受けることが大前提ですが、主治医の指示のもと治療を継続しても改善が見られない場合は「後遺障害等級認定」の申請をしましょう。
ここでは、「後遺障害等級認定」についてみていきたいと思います。
どのように申請し、いくら慰謝料を受け取ることができるのでしょうか?
被害者の方にとって少しでもお役に立てれば幸いです。
目次
むちうちの場合に後遺障害等級が認定される基準とは、どのようなものなのでしょうか。
自動車損害賠償保障法施行令別表(等級表)の一部抜粋をみていきましょう。
第1級〜14級まで症状別に詳細に分類されています。
一般的に、むちうちの場合は12級13号、14級9号に当てはまることが多いです。
12級
- 1 一眼の眼球に著しい調整機能障害または運動障害を残すもの
- 2 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
- 3 七歯以上に歯科補綴を加えたもの
- 4 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
- 5 鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの
- 6 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
- 7 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
- 8 長管骨に変形を残すもの
- 9 一手の小指を失ったもの
- 10 一手の人差し指、中指、又は薬指の用を廃したもの
- 11 一足の第二の足指を失ったもの、第二の足指を含み二の足指を失ったもの、又は第三の足指以下の三の足指を失ったもの
- 12 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
- 13 局部に頑固な神経症状を残すもの
- 14 外貌に醜状を残すもの
14級
- 1 一眼のまぶたの一部に欠損を残しまたはまつげはげを残すもの
- 2 三歯以上に歯科補綴を加えたもの
- 3 一耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
- 4 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
- 5 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
- 6 一手の親指以外の手指の指骨の一部を失ったもの
- 7 一手の親指以外の手指の末関節を屈伸することができなくなったもの
- 8 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
- 9 局部に神経症状を残すもの
これまでは、裁判で認められ難かった「高次脳機能障害」について、ご参考までにご紹介します。
むちうち症が脳に負担をかけ、これが原因となり軽度外傷性脳損傷を引き起こし、更には高次脳機能障害を引き起こしてしまうといった報告が近年では多数あります。
認定要件を満たせば、等級が上がる可能性があります。
高次脳機能障害は、脳の損傷により“記憶障害や注意障害など”が特徴的で日常生活に支障をきたします。
社会的にも認識されるようになり、医療の現場や裁判例でもさまざまな前向きな変化がみられます。
周囲に理解されず大変辛い障害ですので、周囲のサポートが不可欠です。
せっかく後遺障害等級認定の申請をしても「非該当」となることがあります。
いったいどのような理由で非該当となるのでしょうか?
被害者本人からしてみれば「痛みが残っていて日々辛いのになぜ?」と思われるでしょう。
原因を知ることで、これから申請を検討している被害者の方は不利益を回避することができますのでご参考になさってください。
通院回数が少ないと「通院(治療)しなくてもよい程度の怪我なのだな」と評価されてしまうためです。
これは、被害者本人が感じている自覚症状が「診断書」などに記載されていないためです。
日頃から、主治医とコミュニケーションを取り、自覚症状や日常生活に支障をきたしている点などを伝えておくことが大変重要です。
医師にうまく伝えられない時は“メモ“などを渡すことも有効です。
むちうちは、痛みや痺れなど本人にとっては大変辛い症状ですが、他人からは分からないものです。
外部から見ても症状が分からないケースの怪我は、検査により症状の有無や程度
を客観的に証明することが必要です。
たとば、CTやMRI、握力テスト、深部腱反射テスト、ジャクソンテスト、スパーリングテストなどが挙げられます。
晴れて「後遺障害等級認定」が認められた場合は、入通院慰謝料にプラスして「後遺障害慰謝料」を受け取ることができます。
いったいどのくらい受け取ることができるのでしょうか?
慰謝料の算出基準は3つありますので、3つの基準での相場をご紹介します。
【後遺障害慰謝料】※()内の数値は要介護のケース
等級 | 自賠責保険基準 | 任意保険基準(推定値) | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
1級 | 1,150万円(1,650万円) | 1,600万円 | 2,800万円 |
2級 | 998万円(1,203万円) | 1,300万円 | 2,370万円 |
3級 | 861万円 | 1,100万円 | 1,990万円 |
4級 | 737万円 | 900万円 | 1,670万円 |
5級 | 618万円 | 750万円 | 1,400万円 |
6級 | 512万円 | 600万円 | 1,180万円 |
7級 | 419万円 | 500万円 | 1,000万円 |
8級 | 331万円 | 400万円 | 830万円 |
9級 | 249万円 | 300万円 | 690万円 |
10級 | 190万円 | 200万円 | 550万円 |
11級 | 136万円 | 150万円 | 420万円 |
12級 | 94万円 | 100万円 | 290万円 |
13級 | 57万円 | 60万円 | 180万円 |
14級 | 32万円 | 40万円 | 110万円 |
参考元:自賠責保険基準、弁護士基準は日弁連「赤い本」
※任意保険基準に関してはあくまでも推定値となります。
太字で示した部分が、むちうちのケースで該当する等級の慰謝料相場です。
基準の違いにより、驚くほど金額が異なることがお分かりいただけたのではないでしょうか?
自賠責保険基準と弁護士基準を比較する、と3倍以上の差が生じています。
3つの基準について後述(下記参照)していますのでご参考になさってください。
むちうちで6ヶ月間通院(60日間通院)・入院無しのケースでの慰謝料相場をみていきましょう。
通院期間 | 自賠責保険 | 任意保険基準 | 弁護士基準(裁判基準) |
---|---|---|---|
3か月 | 25.8万円 | およそ37.8万円 | 53万円 |
6か月 | 51.6万円 | およそ64.2万円 | 89万円 |
8か月 | 68.8万円 | およそ76.8万円 | 103万円 |
※月間の通院日数を10日間・日額4300円として計算しています。
例:6か月(総日数180日間:通院日数60日間×2=120日間)120日間×4300円=516,000円
【自賠責基準計算方法】
自賠責基準は、任意保険基準・弁護士基準と計算方法が異なり日額4,300円を元に計算します。
上記いずれか少ない方に、日額4,300円をかけていきます。
任意保険基準と弁護士基準は計算式ではなく、算定表のようなものを参考にします。
前述のとおり、算出基準は非公開のため、一般的な推定値を元にした下記のような算定表を参考にします。
(単位:万円)【入通院慰謝料】
入院 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | 8ヶ月 | 9ヶ月 | 10ヶ月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通院 | 25.2 | 50.4 | 75.6 | 95.8 | 113.4 | 113.4 | 128.6 | 141.2 | 152.4 | 162.6 | |
1ヶ月 | 12.6 | 37.8 | 63.0 | 85.6 | 104.7 | 120.9 | 134.9 | 147.4 | 157.6 | 167.6 | 173.9 |
2ヶ月 | 25.2 | 50.4 | 73.0 | 94.6 | 112.2 | 127.2 | 141.2 | 152.5 | 162.6 | 171.4 | 176.4 |
3ヶ月 | 37.8 | 60.4 | 82.0 | 102.0 | 118.5 | 133.5 | 146.3 | 157.6 | 166.4 | 173.9 | 178.9 |
4か月 | 47.8 | 69.4 | 89.4 | 108.4 | 124.8 | 138.6 | 151.3 | 161.3 | 168.9 | 176.4 | 181.4 |
5ヶ月 | 56.8 | 76.8 | 95.8 | 114.6 | 129.9 | 143.6 | 155.1 | 163.8 | 171.4 | 178.9 | 183.9 |
6ヶ月 | 64.2 | 83.2 | 102.0 | 119.8 | 134.9 | 147.4 | 157.6 | 166.3 | 173.9 | 181.4 | 185.4 |
7ヶ月 | 70.6 | 89.4 | 107.2 | 124.3 | 136.7 | 149.9 | 160.1 | 168.8 | 176.4 | 183.9 | 188.9 |
8ヶ月 | 76.8 | 94.6 | 112.2 | 128.6 | 141.2 | 152.4 | 162.6 | 171.3 | 178.9 | 186.4 | 191.4 |
9ヶ月 | 82.0 | 99.6 | 116.0 | 131.1 | 143.7 | 154.9 | 165.1 | 173.8 | 181.4 | 188.9 | 193.9 |
10ヶ月 | 87.0 | 103.4 | 118.5 | 133.6 | 146.2 | 157.4 | 167.6 | 176.3 | 183.9 | 191.4 | 196.4 |
怪我の程度(軽症or重症)により、参考にする表が異なります。
ここでは、比較的軽症と言われている「むち打ち症」や「打撲」などの(他覚的初見がない)ケースの一覧表をみていきましょう。
(単位:万円)
入院 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 5ヶ月 | 6ヶ月 | 7ヶ月 | 8ヶ月 | 9ヶ月 | 10ヶ月 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
通院 | 35 | 66 | 92 | 116 | 135 | 152 | 165 | 176 | 186 | 195 | |
1ヶ月 | 19 | 52 | 83 | 106 | 128 | 145 | 160 | 171 | 182 | 190 | 199 |
2ヶ月 | 36 | 69 | 97 | 118 | 138 | 153 | 166 | 177 | 186 | 194 | 201 |
3ヶ月 | 53 | 83 | 109 | 128 | 146 | 159 | 172 | 181 | 190 | 196 | 202 |
4ヶ月 | 67 | 955 | 119 | 136 | 152 | 165 | 176 | 185 | 192 | 197 | 203 |
5ヶ月 | 79 | 105 | 127 | 142 | 158 | 169 | 180 | 187 | 193 | 198 | 204 |
6ヶ月 | 89 | 113 | 133 | 148 | 162 | 173 | 182 | 188 | 194 | 199 | 205 |
7ヶ月 | 97 | 119 | 139 | 152 | 166 | 175 | 183 | 189 | 195 | 200 | 206 |
8ヶ月 | 103 | 125 | 143 | 156 | 168 | 176 | 184 | 190 | 196 | 201 | 207 |
9ヶ月 | 109 | 129 | 147 | 158 | 169 | 177 | 185 | 191 | 197 | 202 | 208 |
10ヶ月 | 113 | 133 | 149 | 159 | 170 | 178 | 186 | 192 | 198 | 203 | 209 |
参考元:日弁連 赤い本
自賠責保険基準 | 最低限の補償を目的としており、車両所有者に加入が強制されている保険 |
---|---|
任意保険基準 | 保険会社が、各社独自の基準を定めるため(非公開基準)金額が異なる |
弁護士基準(裁判基準) | 過去の裁判例をもとにして、裁判所や弁護士が交通事故の損害賠償金の算出のために用いる基準 |
(最も低い基準)自賠責保険基準<任意保険基準<弁護士基準(最も高い基準)
これまで見てきた表からもお分かりいただけるように、弁護士基準を用いて算出した慰謝料が最も高額となります。
最終的な判断を委ねる裁判所でも使われる弁護士基準(裁判基準)は、「正当な金額」と言えます。
保険会社が提示してくる金額は、自賠責保険基準に少し加算した程度の金額であることが多く、正当な金額とは言えません。
3倍程度の差が生じてしまいますので、弁護士に依頼することもご検討されてみてはいかがでしょうか。
後遺障害等級認定が「非該当」や認定された等級に不服がある場合はどのように対応すればよいのでしょうか?
納得いかない結果であれば、諦めずに「適正な等級」を得るために再申請をするべきです。
等級が上がれば、慰謝料がアップしますので「異議申立」を行いましょう。
回数制限はありませんし、費用もかかりません。
しかしながら、異議申立を行うからには、前回よりも“症状を証明するための対策”を取る必要があります。
初回の申請と同じ内容で申立を行っても意味がありませんので、有効な診断書を作成する必要があります。
弁護士に依頼することで、別のアプローチから証明するなど、法律のプロとしてテクニックを用いて、よりよい結果を導き出すことが期待できます。
弁護士へ依頼した場合のメリットをあげてみました。
ご参考になさってください。
交通事故の治療に関しては、経験の浅い医師だと“後遺障害診断書作成”の際に、必要なことが書かれていないことが多々見受けられます。
このように必要なことが書かれていなければ、審査の際に「差し戻し」対象となることもあります。
追加資料提出を求められたり、差し戻し対象などがあると、時間と手間がかかります。
場合によっては、医師と面談をするなど申請手続きがスムーズに進むように、弁護士がサポートをするケースもあります。
交通事故に精通していない弁護士であれば、なかなか手続きが進まず、希望通りの等級を得ることが出来ないことも考えられます。
一方で、交通事故問題に精通した弁護士であれば、懇意にしている医師(交通事故治療経験豊富)を紹介してもらうことも期待できます。
後遺障害は一生涯背負っていかなければならず、被害者の方にとっては大変辛いものです。
事故以前と同じような生活が送れるとも限りません。
以前と同じ仕事ができずに異動し、収入が下がることもあるかもしれません。
自力で示談交渉するには肉体的・精神的に相当なストレスとなります。
弁護士に依頼することで慰謝料アップが期待できますので、今後の生活の一助となるのではないでしょうか。
「弁護士費用特約」がご自身の保険に付帯されていれば“弁護士費用0ゼロ“で解決することができます。
保険等級が下がることもなく、翌年の保険料も上がりません。
躊躇せずに是非ご活用ください。