東京弁護士会所属。
弁護士は敷居が高く感じられるかもしれませんが、話しやすい弁護士でありたいです。
お客様とのコミュニケーションを大切にし、難しい法律用語も分かりやすくご説明したいと思います。
お客様と弁護士とが密にコミュニケーションをとり協働することにより、より良い解決策を見出すことができると考えております。
会社を廃業する場合、借金の返済や債権回収などの「清算手続き」を行い、最終的に清算決了を登記して会社を消滅させる流れとなります。
土地や建物、機械装置などは売却して換金し、社員の退職金や債務整理などに充てますが、自動車の売却はタイミングに注意してください。
会社名義の自動車を売却(譲渡)する際には印鑑証明書が必要であり、実印や車検証なども準備して手続きを行います。
しかし会社の状態によっては印鑑証明書が発行されないため、売却による名義変更ができなくなってしまいます。
今回は印鑑証明書が発行されない状態、また発行されない場合の対応方法を解説しますので、会社を清算中の方や清算を検討している方はぜひ参考にしてください。
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会社を設立する際には代表者印を作成し、会社の実印として印影を法務局に届け出します。
その後印鑑カードを交付してもらい、交付申請書とともに提出すれば印鑑証明書が発行されます。
預金口座開設や不動産登記、取引先との契約など、法人が行う各種契約には実印を必要としますが、印鑑証明には正式な実印であることを証明する役割があります。
個人が実印を使用するシーンとあまり変わりませんが、法人の場合は会社の状態によって発行されないこともあるので、解散または清算中の場合は注意してください。
では次に、会社の印鑑証明が取れなくなるケースを解説します。
会社の解散を決定した場合は清算人を選任し、法務局へ清算人と解散を登記申請します。
その後は清算会社となり、最終的には清算決了の登記手続きを行うため、会社の状態や登記情報は都度変更されることになります。
印鑑証明の発行が必要な場合、会社がどのような状態にあるか確認しておきましょう。
会社が以下の状態であれば印鑑証明書は問題なく発行してもらえます。
清算手続きが完了している会社、解散手続きを放置した会社は印鑑証明書が発行されません。
清算決了登記の完了によって会社は消滅するため、印鑑証明書は発行できません。
また、解散後の清算手続きが10年間放置されていた場合、商業登記規則(81条1項)に従い国によって閉鎖されます。
株式会社の役員任期も最長10年であることから、12年間登記されていなければ実態のない会社として解散したものとみなされます。
このようなケースでは清算人の登記がないため、印鑑証明書の発行も不可となります。
では解散や清算はどのような手続きになるのか、必要書類とともに解説します。
会社を廃業する場合、解散・清算の状態に応じて次のような手続きや書類が必要となります。
株主総会の特別決議による解散の場合、解散日から2週間以内に法務局へ解散登記を申請します。
解散決定後は債権・債務を整理する清算人も選任して登記するため、法務局へ申請する際は以下の書類が必要となります。
解散登記後は清算手続きの開始となり、清算決了登記の完了によって会社は消滅します。
清算決了の登記を申請する場合は、管轄法務局に以下の書類を提出します。
会社を解散して清算会社になった場合、清算人は会社の資産を売却して株主分配などに充てます。
自動車の売却は株式の保有状況を基準に考えるとよいので、売却先や分配方法は次のように検討してください。
会社に複数の株主がいる場合、株式の保有数に応じて資産の売却益を分配するため、自動車は買取業者への売却をおすすめします。
売却せずに代表者が引き続き使用する場合は、株主総会または清算人会で承認してもらい、代表者が適正価格で買い取ることになります。
この段階では印鑑証明書も発行してもらえるので、売却手続き用に以下の書類等を揃えておきましょう。
代表者がすべての株式を保有している場合は、そのまま代表者が自動車を買い取って代表者名義にすることをおすすめします。
株主が他にいない場合は株主保護の必要がなく、利益相反取引きに当たらないとの判例もあるため、売却額も自由に設定できます。
代表者が買い取る場合は、一旦個人のお金を会社に入れた後に代表者へ分配する形になります。
なお、自動車の登録手続きについては株主名簿の添付が認められていないため、株主総会の議事録を添付書類にするとよいでしょう。
ただし、売却額がタダ同然の場合は税法上の問題があるため、税理士に相談しながら適正価格を設定してください。
あまり考えたくはないケースですが、法人の代表者が夜逃げした場合は、印鑑証明書など会社関係の書類が取得できなくなります。
当然、自動車の移転登録もできなくなりますが、このような事態になった場合は簡易裁判所へ申し立て、確定判決文(本紙)を発行してもらうよう手続きしてください。
確定判決文に「名義変更を可とする」旨の記載があれば売却できるので、新たな所有者は印鑑証明書や実印、車庫証明書等を揃えて自動車の名義を変更します。
会社の印鑑証明書は「会社が存続している間はいつでも発行してもらえる」と思われがちです。
しかし解散手続きを長期間放置した場合や、清算決了の登記をしてしまった場合は発行してもらえなくなるため、会社がどのような状態にあるのか把握しておかなければなりません。
特に事業用の車両は安定的な需要があるため、売却の機会を失うと株主への配分にも大きく影響してしまいます。
解散・清算の事務手続きに手間取ると資産売却に手が回らなくなるため、「売り忘れ」が生じてしまう可能性も十分にあるでしょう。
会社を解散する場合は債権回収や債務の整理、資産の売却に集中できるよう、税務や会計処理は専門家に任せてしまうことも重要です。