東京弁護士会所属。
破産をお考えの方にとって、弁護士は、適切な手続きをするための強い味方になります。
特に、周りに相談できず悩まれていたり、負債がかさんでしまいそうで破産を考えていたりする方は、ぜひ検討してみてください。
債務整理とは、自力返済が困難になった債務者が借金の減額や免除などを求めるための方法です。
借金問題の解決につながる一方で、信用情報機関に返済が滞った状況が事故情報として登録されます。
事故情報が登録されると、原則として一定期間はクレジットカードの作成ができません。
破産者名義のカードだけでなく、付随しているETCカードや家族カードなども使用できなくなります。
生活費の支払いなどでクレジットカードを利用されている方は、支払い方法の切り替えが必要です。
日常生活に不便が生じるかもしれませんが、ここで紹介するデビットカードなどの代替方法で対処しましょう。
ここでは、債務整理とクレジットカードの取り扱いについて解説します。
Contents
債務整理には次の4つの方法があり、債務者の負債総額や収支状況に応じて方法を選択します。
種類 | メリット | デメリット |
---|---|---|
任意整理 | 裁判外で債権者と交渉し、簡易迅速な手続きができる | 効果が利息カットや返済期間の猶予に留まる |
自己破産 | 裁判上の手続きで原則としてすべての借金を免除できる | 制限される権利が多く、換金価値のある財産は基本的に処分される |
個人再生 | 裁判上の手続きで借金の元本を大きく減額できる | 再生計画に基づいた返済の継続が必要 |
特定調停 | 調停委員の仲介で返済方法を話し合い、当事者の合意で決定できる | 調停が成立しないケースもある |
クレジットカードを使用すると、翌月以降にカード会社への支払いが発生します。
カード会社への支払いを債務整理する場合、任意整理や特定調停の交渉は主に利息カットや返済期間の猶予などです。
個人再生や自己破産は、裁判所を通じて借金の元本の一部や全額が免除される手続きです。
債務整理後にクレジットカードが使えるのかを見ていきましょう。
債務整理の手続きをすると、信用情報機関に事故情報(いわゆるブラックリスト)として記録され、原則としてクレジットカードは作れません。
弁護士や司法書士に債務整理を依頼した場合、債権者宛てに受任通知が送付されます。
次に債権者から以下の3つの信用情報機関へ報告され、利用者の事故情報が登録されます。
加盟している金融機関やクレジットカード会社などは、上記の機関に事故情報の有無を照会しています。
事故情報の登録される期間は、原則5年です。
ただし、KSCの場合は個人再生や自己破産の情報が10年間登録されるため、10年経過しなければ住宅ローンは組めません。
なお、事故情報が登録されるのは債務整理したときだけではなく、以下のようなケースでも登録されます。
信用情報機関に事故情報が登録されると、クレジットカードは即日で使用できなくなります。
また、ほとんどのカード会社では会員規約に基づいて資格が取り消されるため解約扱いになります。
クレジットカードの利用には、大きくわけてショッピングとキャッシングがありますが、基本的に債務整理を行うとどちらも利用できません。
クレジットカードに付随してETCカードを作っている場合、そのETCカードが使用できなくなります。
さらに、契約者の家族名義の家族カードを作っている場合、その家族カードも使用できません。
このように、債務整理の対象となるクレジットカードに付随するカードはすべて使えなくなります。
付随するカードで生活費などを支払っている場合、支払い方法を変更しましょう。
債務整理する前に以下のポイントを押さえましょう。
それぞれのポイントを解説します。
クレジットカードにはポイント機能も付いていますが、貯めていたポイントも失効します。
もしポイントが相当額貯まっているような場合は、債務整理の前に使用しましょう。
支払いをクレジットカード払いにしている場合、債務整理をするとカードが解約となり、利用停止されてしまう恐れがあります。
スマートフォンが利用できなくなると、生活や仕事に支障が出る可能性があります。
スマートフォンやその他の支払いがクレジットカード払いの場合は、債務整理を始める前のタイミングで口座引き落としに変更しておきましょう。
信用情報機関の事故情報の掲載期間は約5年~10年です。
期限が過ぎれば、新規でクレジットカードの発行を申請できます。
信用情報機関のブラックリスト掲載期間は、債務整理の手続き方法によって異なります。
それぞれの手続きによるブラックリスト掲載期間の目安は以下の通りです。
CIC | JICC | KSC | |
---|---|---|---|
任意整理 | 5年 | 5年 | 5年 |
自己破産 | 5年 | 5年 | 10年 |
個人再生 | 5年 | 5年 | 10年 |
特定調停 | 5年 | 5年 | 5年 |
なお、JICCの事故情報は完済から5年で削除されますが、任意整理と個人再生は以下のように定められています。
ブラックリスト掲載期間の状況によっては延長されるケースがあります。
債務整理後は、所持していたクレジットカードは使えなくなり、ブラックリストに載っている間は新しくカードを申し込めません。
しかし、クレジットカードは生活に不可欠となる場合も多く、使えないと困る方もいるでしょう。
ここからは、任意整理後にクレジットカードを利用したいときの3つの代替案を紹介します。
任意整理をしても、家族の信用情報に影響はありません。
そのため配偶者名義のクレジットカードは、使用だけでなく新規申込もできます。
配偶者名義のクレジットカードに付随する家族カードを作成した場合、破産者本人も使用できるため代替案として有効でしょう。
高速道路等で使用できるETCカードは、債務整理後は使えなくなります。
ただ、高速道路をよく利用する方は、ETCカードがないと不便です。
債務整理後は、高速道路会社のネクスコが発行しているETCパーソナルカードの利用をおすすめします。
ETCパーソナルカードとは、最低4万円の保証金を預託し、通行料金を口座引き落としにするカードです。
一般のクレジットカードと異なり、保証金を預託するために信用調査を必要とせず、任意整理を行った方でも申し込めます。
デビットカードとは、使用と同時に指定口座から金額が引き落とされるカードです。
口座の残高内で使用するため、申込時の審査はありません。
そのため、債務整理をした直後でも単独でデビットカードを申し込めます。
多くの店舗ではクレジットカード払いだけでなく、電子マネー・スマホ決済に対応しています。
電子マネーやスマホ決済は事前に現金でチャージできます。
クレジットカードが必要なインターネットでの買い物も、電子マネー・スマホ決済に対応しているケースも少なくありません。
債務整理後にクレジットカードを作るときは、審査を通過するために以下の注意点があります。
それぞれの注意点の詳しい内容を解説します。
債務整理を行ったカード会社は、信用情報機関の記録が消えた後も自社で過去の債務整理の記録を保管しているケースが想定されます。
信用情報機関の登録期間に関係なく審査に通らない場合があるため、債務整理したカード会社への申し込みは避けましょう。
債務整理後にクレジットカードを申し込む際、審査に落ちると懸念して、複数のカードに申し込む方がいます。
各カード会社ではカード申し込み状況を把握しているため、複数のカードを同時申し込むと、怪しまれる可能性があります。
まずは1社に絞ってクレジットカードを申し込みましょう。
債務整理後、信用情報機関のブラックリスト掲載期間が過ぎると、事故記録とともに過去のクレジットカード利用履歴も削除されてしまいます。
数年単位でカードの利用履歴などが全くない「スーパーホワイト」と呼ばれる状態になります。
スーパーホワイトの状態でカードの再申請をすると、過去に債務整理したと疑われて審査に落ちるケースが少なくありません。
スーパーホワイトの状態で審査に通るためには、信用情報機関に分割払いの履歴などのクレジットヒストリーを残してください。
審査に通りやすい流通系や貸金業系で限度額が少額のクレジットカードを作ると、クレジットヒストリーを残しやすいでしょう。
もし審査に落ちたら、半年以上は期間を空けて次の申し込みをしましょう。
何度も申し込みを行っては審査に落ちるのを繰り返すと、より審査に通りにくくなってしまいます。
また、審査に落ちた理由が信用情報機関の登録が抹消されていないためであれば、すぐに申し込んでも審査に通りません。
クレジットカードの限度額が低いほど審査は緩くなり、逆に限度額が高いほど審査は厳しくなるといわれています。
最初に申し込むクレジットカードは限度額をできるだけ低くして、審査の通過を優先しましょう。
限度額を低くして返済を確実に行えば、将来的に高い限度額のクレジットカードを作れるようになります。
債務整理とクレジットカードに関するよくある質問は、以下の通りです。
それぞれの質問に回答します。
債務整理の対象からクレジットカードを外せるかは、利用する方法によります。
個人再生や自己破産は、債権者平等の原則がありすべての債権債務が対象となるため、クレジットカードだけを対象外にはできません。
一方、任意整理の方法は交渉する対象を選べるため、クレジットカードの債務を対象外にできます。
この場合、任意整理後も一時的にはクレジットカードの利用を継続できますが、やがて解約となります。
任意整理の場合も信用情報機関に事故情報として登録され、利用中にカード会社が審査をしたタイミングで解約となるためです。
電気・ガス・水道といった公共料金の滞納も、原則として債務整理の対象となります。
ただし、いくつかの例外があります。
任意整理は裁判外の交渉であるため、原則として電力会社・ガス会社・水道局には受け付けてもらえません。
個人再生の場合、裁判所への申立てはできますが手続き開始前の6カ月分の滞納金は減額されません。
自己破産は、大部分の公共料金を対象にできますが下水道料金は非免責債権とされているため支払いが必要です。
免責の対象は自己破産の開始決定前に発生した料金であり、開始決定後に発生した料金は支払い義務がある点にも注意しましょう。
借金問題を解決したいが、クレジットカードが使えなくなると生活上困るため迷っている方もいるかもしれません。
原則としてクレジットカードは解約となり、一定期間は本人名義のカードも作れなくなります。
代替手段としてデビットカードや電子マネーなどの利用は可能なため、事故情報が抹消されるまでの期間は利用を検討しましょう。
債務整理を行うには専門的な知見が必要であり、交渉や裁判上の手続きも必要となるため弁護士への依頼がおすすめです。
ただし、債務整理をした場合に借金を減らせる額や裁判所に主張が認められるかは弁護士の力量に大きく左右される場合があります。
弁護士に依頼する際は、債務整理を得意としているか、経験や実績があるかなどを考慮して依頼しましょう。
以下の関連記事で弁護士の選定基準を解説しています。
参考にして下さい。