東京弁護士会所属。
破産をお考えの方にとって、弁護士は、適切な手続きをするための強い味方になります。
特に、周りに相談できず悩まれていたり、負債がかさんでしまいそうで破産を考えていたりする方は、ぜひ検討してみてください。
債務整理は、返済に行き詰った借金問題を解決する、法的に認められた方法です。
債務整理の中でも任意整理と個人再生は、借金を減額し、返済期間を延ばして借金を返済していく手続きです。
この2つはどのように違うのでしょうか。
今回は債務整理の中でも任意整理と個人再生に焦点を当て、それぞれのメリット・デメリットと、選択する目安を解説します。
Contents
債務整理は年間で300~400万件行われており、そのうち200万件ほどが任意整理といわれています。
しかし非常にプライベートな問題であるため、あまり公になることはありません。
そのため債務整理がどういったものかよくわからない、と感じている人が多いでしょう。
任意整理と個人再生の違いを表にまとめると、以下のようになります。
費用 | 債務 | 整理対象の債務 | |
---|---|---|---|
任意整理 | 比較的安価でできる | 利息をカット | 選択可能 |
個人再生 | 裁判所費用が必要なため高額 | 大幅に減額 | すべての債務が対象 |
それぞれ詳しく解説していきます。
任意整理は債権者と直接交渉し、債務の返済方法を見直す手続きです。
将来の利息分をカットし、元金を3~5年(36~60回払い)で返済していくことになります。
任意整理で整理対象とする債務は、選択することができます。
たとえば3社から借金をしている場合、そのうち2社のみを整理対象とすることが可能です。
保証人がついている債務がある場合は、整理対象から外すと保証人への請求を避けることができます。
周りに迷惑をかけたくない、というときに有効な方法です。
過払い金請求も、任意整理の方法のひとつです。
返済した借金の利息分を、利息制限法に基づく利率で再計算し、払いすぎていた利息を取り戻すという方法です。
裁判所を通さない手続きのため、必要経費は専門家の報酬や実費のみで、比較的安く抑えられます。
個人再生は裁判所に申立てを行い、再生計画のもと債務を大幅に減額して返済していく手続きです。
債務を5分の1から最大で10分の1にまで減額し、原則3年間で返済していきます。
計画通り完済すれば、計画の中に含まれない債務は、支払いが免除されることになります。
任意整理と異なり、すべての債務が整理対象となるため、支払う債務を選択することができません。
そのため保証人がついている債務があれば、保証人に請求がいき、影響が出る可能性があります。
手続きには裁判所費用と専門家の報酬や実費が必要で、総額で50~100万円ほどかかります。
任意整理は個人再生より手続きのハードルが低いため、広く利用されています。
しかし自身に合った方法を選択するためにも、メリット・デメリットをしっかり理解しておきましょう。
任意整理のメリットは、以下のようなものです。
任意整理は当事者間の交渉による手続きのため、圧倒的に手続き費用を安く抑えられます。
専門家に依頼した場合、債権者1件あたり5~15万円が相場です。
債権者が少なければ数万円で手続きが可能になります。
また、現状の収入の範囲内で返済していくため、財産を処分する必要がありません。
家や車などの財産を手放さなくてよい、という点は大きなメリットと言えるでしょう。
任意整理の手続きは、相手方との交渉のみで完結します。
そのため職場や子どもの学校関係など、周囲に知られることはありません。
任意整理のデメリットは、以下のようなものです。
将来の利息をカットすることが基本のため、借金の元金自体を減らすことはできません。
そのため、あまりに多額の借金がある場合は、利息カットだけでは追い付かず、任意整理をしても意味がないでしょう。
裁判所を通さない直接交渉のため、中には交渉に応じない債権者がいることもあり得ます。
交渉に応じてもらえなければ債務整理ができず、地道に返済をしていくか、もしくは個人再生や自己破産など裁判所を通じた手続きに切り替える必要があります。
整理対象の選択次第では、保証人に影響が出る可能性もあるでしょう。
個人再生は裁判所を通す手続きのため、任意整理とは大きく異なります。
個人再生のメリット・デメリットも見ていきましょう。
個人再生のメリットは、以下のようなものです。
個人再生は裁判所に、借金返済が困難であることを認めてもらった上で再生計画を立て、3~5年で返済していく手続きです。
債務は5分の1から、最大で10分の1にまで減額が認められます。
元金を含めた総額が減るため、多額の借金がある場合でも完済を目指せることがメリットです。
また、手続きを専門家に依頼すると、取立てや催促を止めることができます。
取立てがなくなると精神的にとても楽になり、それだけでも大きなメリットと言えるでしょう。
一方で、個人再生のデメリットは以下のようなものです。
個人再生に限らず、債務整理を行うとブラックリストに載ります。
完済後5年程度は情報が載っているため、その間はローンやクレジットカードが利用できなくなり、生活に影響が出る可能性があるでしょう。
また、個人再生は裁判所を利用するため、手続きが非常に難しく時間も労力もかかります。
すべての債務を整理するため、保証人が付いている場合、一括請求により保証人にも影響が出ます。
個人再生の手続き中に注意しなければいけない点として、偏波弁済(へんぱべんさい)があります。
偏波弁済とは、特定の債権者を優先して返済を行うことです。
個人再生は任意整理と異なり、全ての債権者に対して平等に手続きを行うことが原則とされているため、偏った返済は認められません。
また、このほかにも手続き中にやってはいけないこととして、以下のようなものがあげれます。
このようなことをすると、個人再生ができなくなり、最終的には自己破産へつながる恐れがあります。
ここでは、任意整理と個人再生のどちらを選択すればよいか、ケースごとに解説します。
任意整理がおすすめのケースは、以下のような場合です。
債務整理を行うと官報に情報が掲載されますが、任意整理は官報には載らないため周囲に知られることはありません。
保証人が付いている債務以外に、ローン返済中のものがある場合でも、整理対象から外せば影響を限定できるでしょう。
債務額が200~300万円ほどで、定期収入によりコツコツ返済していくことができる場合は、任意整理が向いていると言えます。
個人再生がおすすめのケースは、以下の通りです。
借金が多額になると任意整理では追いつかないため、個人再生が向いていると言えるでしょう。
借金があまりに多い場合、債務整理のもう一つの方法である自己破産を選択する場合もあります。
しかし自己破産は、借金は免除になりますが、一緒に財産も失うことになります。
多額の借金と同時に、家や車など手放したくない財産がある場合は個人再生を選択するといいでしょう。
借金問題に困ったときの選択肢が債務整理です。
中でも任意整理と個人再生は、現状の生活を維持しながら借金問題を解決できる方法として利用できるメリットがあります。
任意整理と個人再生はそれぞれにメリット・デメリットがあり、どちらを選択するかは個別の状況で異なります。
手続きをするにも、直接交渉や裁判所対応は個人では難しいため、債務整理をする場合は早めに専門家に相談しましょう