東京弁護士会所属。
破産をお考えの方にとって、弁護士は、適切な手続きをするための強い味方になります。
特に、周りに相談できず悩まれていたり、負債がかさんでしまいそうで破産を考えていたりする方は、ぜひ検討してみてください。
「国が認めた借金救済制度」、このようなキャッチフレーズを頻繁に耳にするようになりました。
「借金救済制度とは一体何なのか?なんだか怪しさを感じる」と思っている人も少なくないでしょう。
本当に借金に困ったときに、利用して問題ない制度なのでしょうか。
今回は、国が認めた借金救済制度のメリット・デメリットをふまえた概要と、利用方法や相談先について解説します。
Contents
国が認めた借金救済制度とは、どのようなものを言うのでしょうか。
怪しいと言われるその内容を解説します。
借金救済制度という言葉に、何か新しい取り組みが始まったようなイメージを抱く人もいるでしょう。
しかし実際は、債務整理のことを借金救済制度という新しい言葉に言い換えて表現しているということです。
債務整理は借金問題で返済に行き詰まったときに、債権者との交渉や裁判所に申し立てることによって、借金の減額や免除をする手続きです。
債務整理には自己破産、個人再生、任意整理など、いくつか手続きの種類があります。
個人再生や自己破産など裁判所を通じて行う手続きは、令和4年に年間で約136万件利用されています。
任意整理や過払い金請求のように、裁判所を通さない当事者間の手続きを合わせると、債務整理は年間300~400万件ほど利用されています。
なぜ債務整理のことを、借金救済制度と表現するようになったのでしょうか。
前述のとおり、「債務整理自体は広く利用されているものの、実際はどんな制度なのかよくわからない」という人も少なくないでしょう。
周囲の人が債務整理をしているかを知る機会がないため、あまり身近なものとして感じられず、借金返済に行き詰まっても、利用するにはハードルが高く感じます。
債務整理という言葉自体にも馴染みがない人も多いでしょう。
そこで借金救済制度と言い換えることで、借金で困っている人が利用できる制度であることがわかりやすく、利用への抵抗を感じにくくしている側面があります。
債務整理は法律で認められた制度で、怪しいものではありません。
そのため、借金救済制度も利用して問題ありません。
ただし、中には借金救済制度という言葉を隠れ蓑に、違法な金利で貸付けをしてくる闇金などが潜んでいる可能性もあるため、利用には十分注意しましょう。
借金救済制度で利用できる手続きには、いくつか種類があります。
ここでは、なぜ借金が減らせるのか、そのからくりと手続きごとの詳細を解説します。
借金救済制度と称される債務整理には、借金の減額、免除を行う方法として、いくつか種類があります。
手続きの種類ごとに、くわしく解説していきます。
任意整理は債権者に直接交渉を行い、将来分の利息をカットし、元金を原則3~5年(36~60分割)で支払う方法です。
直接交渉が難しい場合は、弁護士など専門家に依頼することもできます。
過払い金請求も同時に行うことができ、取り戻した利息は元金返済に充てることも可能です。
その場合、元金も減額できるため、さらに返済期間を短くすることができます。
個人再生は裁判所に申立てを行い、専門家の指導のもと原則3年で債務を返済する手続きです。
裁判所に認められれば、債務を5分の1から最大で10分の1にまで減額できることがメリットです。
財産を処分する必要はなく、現状の生活を維持しながら返済できます。
完済できれば、減額された残りの債務は免除されます。
自己破産はほとんどの財産と引き換えに、債務の支払いが免除される手続きです。
裁判所に申立てを行うと、破産管財人と呼ばれる専門家によって、必要最低限の財産以外すべてが換金され、債権者へ分配されます。
借金の完済を目指すものではないため、生活保護を受けている場合や、定期収入がない場合でも手続きを行うことができます。
過払い金請求とは、返済した借金について、払いすぎていた利息を取り戻せる方法です。
過去に出資法と利息制限法の上限金利間の、いわゆるグレーゾーン金利で借り入れをしていた場合に有効な手段です。
現在の利息制限法により制定された上限利息を使って利息を再計算することで、過払い金を算出します。
債権者に交渉する必要もなく、請求するだけのため、手続きは簡単に行うことができます。
特定調停は、裁判所が当事者間の話し合いを仲介してくれる制度です。
自分で裁判所に申し立てられるため、費用を抑えながら債権者への交渉を進めることができます。
ただし特定調停を利用すると、相手方(債権者)の所在地を管轄する簡易裁判所で手続きをすることになります。
最低でも2回、平日に出頭する必要があり、手続きの書類作成の手間や裁判所までの交通費、移動時間などを考慮すると、非常に時間と労力を必要とする手続きです。
過払い金は考慮されない、返済が滞るといきなり差押えになる可能性がある、といったデメリットがあり、現在ではほとんど使われていません。
借金救済制度の利用には、様々なメリットがあります。
借金問題解決になかなか一歩が踏み出せない、という場合の参考にしてください。
取立てや催促に追い詰められている人も少なくないでしょう。
そこで借金救済制度である債務整理を行うと、取立てや催促を止めることができます。
債務整理の手続きを専門家に依頼すると、受任した専門家は債権者に受任通知を発送します。
貸金業法において、受任通知を受け取った債権者は以降、直接取立てや催促をすることを禁止すると条文で規定されているためです。
そのため、取立てや催促を止めることができます。
取立てや催促が止まるだけでも、精神的に非常に楽になることが大きなメリットと言えるでしょう。
借金救済制度の一番大きなメリットは、借金の総額が減る・免除されることです。
債務が膨れ上がると返済の道筋が見えなくなり、返しても返しても減らない借金に疲弊している人も少なくないでしょう。
借金自体が減り、支払いを免除されれば、借金完済と生活再建の明るい未来が見えてくるでしょう。
一方で、借金救済制度を利用することのデメリットも存在します。
「制度を利用しない方がよかった」ということにならないよう、しっかり理解しておきましょう。
基本的に、どの手続きを選んでもブラックリストに載ります。
ブラックリストとは、信用情報機関に債務の状況が事故情報として掲載されるものです。
完済後5年程度、事故情報は削除されません。
ブラックリストに載っている間は新たにローンを組むことができず、クレジットカードも利用できなくなります。
もし家族がいる場合、教育ローンや住宅ローンも組めないため、影響が出る可能性があるでしょう。
任意整理は、保証人付きの債務を整理対象から外すことができます。
それ以外の方法では、基本的に整理対象を選ぶことはできません。
保証人付きの債務を整理すると、債権者は少しでも債権を回収するために、保証人に請求する可能性が高いです。
保証人に対しては、一括支払い請求が原則です。
支払えなければ保証人も債務整理をすることになり、デメリットと言えるでしょう。
借金救済制度の中でどの方法を選択するかは、債務の総額や債務者個人の状況により異なります。
合っていない方法を選択した場合、思うように減額できないこともあり得ます。
たとえば複数社から総額500万円を借り入れているが、毎月安定した収入が見込めない場合を考えてみましょう。
この場合、任意整理をして利息分をカットしたところで、返済の総額はそこまで変わりません。
収入が安定していなければ月々の返済もままならず、任意整理を選択することが適切とは言えません。
また、個人再生など裁判所を通す手続きでも、返済能力がないことを認められなければ減額されません。
再生計画を立てる際に、収入に対して不適切な支出が多いために返済に困っているという状況では、返済能力がないとはみなされない可能性があります。
そうすると裁判所で手続きをしても思ったように減額できず、手続きの費用だけが余分にかかることになるでしょう。
借金救済制度の利用には、ある程度の費用がかかります。
手続きごとの目安は以下の通りです。
手続きの種類 | 専門家の報酬、実費など | 裁判所費用 |
---|---|---|
任意整理 | 1社あたり5~15万円ほど | - |
個人再生 | 40~50万円ほど | 20~30万円 |
自己破産(管財事件) | 50~80万円ほど | ~50万円ほど |
過払い金請求 | 10万円ほど | - |
特定調停 | - | 1社あたり500~1000円ほど |
それぞれくわしく解説します。
任意整理は債権者との直接交渉のため、裁判所費用はかかりません。
任意整理の専門家費用の相場は、債権者1社あたり5~15万円ほどです。
この他に相談料、郵送料などの実費、専門家の日当などが必要なこともあります。
また、任意整理により債務が減額できた場合、成功報酬として減額分の一部を請求されることもあります。
特定調停の裁判所費用は、1社500~1000円程度と非常に安価です。
債務者本人が手続きを行うことができるため、専門家の報酬は必要ありません。
裁判所までの交通費、書類作成や郵送などの実費がかかる他、平日に裁判所対応のため仕事を休む必要が出てくる可能性もあるでしょう。
個人再生は裁判所を利用するため、専門家費用に加えて裁判所費用がかかります。
裁判所費用は、再生計画の取り決めについて、裁判所が任命する再生委員が付くかどうかによって費用は変動します。
再生委員が就任する場合、報酬として20~30万円程度が必要です。
そのため、専門家費用と合わせて総額40~80万円程度の費用がかかります。
自己破産は最も手続きが煩雑なため、専門家の報酬も裁判所費用も高額になります。
裁判所費用は、裁判所が任命する破産管財人の報酬に充てられます。
報酬は債務の額により変動しますが、個人の自己破産では50万円程度が相場です。
専門家費用と合わせ、全体で100万円前後は必要でしょう。
債務や財産の額により、少額管財事件や同時廃止事件となる場合もあります。
その場合、裁判所の手続きが簡略化されるため、総額で50万円程度に抑えられることもあります。
過払い金請求は、1社ずつ利息の再計算と請求をしていく手続きです。
個人では難しく、専門家に依頼するのがよいでしょう。
手続きの報酬は1社あたり2~4万円が相場です。
加えて成功報酬として、手元に戻ってきた額の20~25%を請求される場合もあります。
借入先が複数社あれば、報酬にある程度の金額が必要になるでしょう。
借金救済制度を利用する場合、手続きに精通した専門家に依頼することが成功のカギと言えます。
ここでは、借金救済制度の利用を考えたときに、相談できる相手を専門家ごとに解説します。
借金救済制度を利用するには、裁判所手続きや交渉に慣れた弁護士がおすすめです。
貸金業法などの法律に精通しているため、手続きや対応がスムーズに行えます。
任意整理などの交渉から、多額の借金による自己破産など複雑な手続きが必要な場合まで、すべて安心して任せられることがメリットです。
司法書士も、家庭裁判所の手続きに長けた専門家です。
1社あたりの借入れが140万を超えていると依頼できないため、多額の借り入れがある場合は弁護士に依頼する必要があります。
債務額が少なく任意整理を行う場合は、日本司法書士会連合会により報酬は1件5万円が上限、と決められているため、弁護士より手続き費用を安価に抑えられます。
法テラスは国が運営している司法相談支援センターです。
専門家費用の立て替えや無料相談を行っていて、月々5000円程度から利用できます。
借金返済が困難で、借金救済制度を利用するだけの資金がない場合などは、一度相談してみるとよいでしょう。
借金救済制度の相談先はいくつかありますが、選ぶ時のポイントを知っておきましょう。
借金救済制度を利用する場合、債務整理の実績が豊富な相談先を選びましょう。
債務整理は個々の状況や事情によって、選択するべき方法が異なります。
相談先に実績豊富で様々な案件をこなした経験があれば、より適切な方法や手続きを提案してもらえます。
債務整理の手続きは、数カ月から長い場合だと1年ほどかかります。
手続きに慣れた専門家に依頼することで、スムーズに進められるでしょう。
借金について第三者に相談するということは、心理的にハードルが高いと言えます。
相談しにくいことを依頼するため、担当者との相性は非常に大事です。
相談に行った時の対応や話しやすさなど、もし違和感があれば他の事務所を検討してもよいでしょう。
費用も含め、複数社を比較検討するのがおすすめです。
国が認めた借金救済制度とは、つまり債務整理のことです。
唐突に広まってきた言葉であるため、怪しいと感じるのも無理はないでしょう。
債務整理は法律で制定された制度で、決して怪しいものではありません。
しかし利用するには手続きごとのメリット・デメリットを理解し、ご自身の現状と照らし合わせて適切な方法を選択する必要があります。
手続きは債務整理に精通した専門家に相談することから始めましょう。
まずはお気軽にご相談ください。