

東京弁護士会所属。
破産をお考えの方にとって、弁護士は、適切な手続きをするための強い味方になります。
特に、周りに相談できず悩まれていたり、負債がかさんでしまいそうで破産を考えていたりする方は、ぜひ検討してみてください。

景気の変動や収入の減少、突然の出費など、生活環境の変化によって借金問題が深刻化するケースが増えています。
そうした中で、「個人再生」と「任意整理」のどちらが適しているか悩んでいる方も少なくありません。
手続きの内容や費用、家族・保証人への影響など、正しい知識がなければ自分に適した方法を見極めるのは難しいものです。
本記事では、個人再生と任意整理の主な違いを軸に、それぞれの特徴や向いているケースについてわかりやすく解説します。
Contents
個人再生と任意整理は、どちらも借金問題を解決するための債務整理手続きですが、その内容には多くの違いがあります。
それぞれの違いを詳しく整理していきましょう。
任意整理は、安定した収入と返済意思があれば特別な条件はなく、債権者と直接交渉して利息の減免などを目指す手続きです。
一方で、個人再生は裁判所を通じて返済困難な状況であることを申し立て、再生計画案の認可を受ける必要があります。
両手続きとも安定した収入が求められますが、個人再生には住宅ローン以外の借金総額が5,000万円以下などの上限も定められています。
任意整理は、主に将来発生する利息や遅延損害金の免除を交渉の中心とし、元本自体の減額に応じてもらえるケースは少ないのが実情です。
そのため、他の手続きに比べて債務の圧縮効果は限定的となる傾向があります。
個人再生の場合は、元本も含めた借金総額が法定基準に従い5分の1から10分の1にまで減額されることが多いです。
ただし、借金総額が100万円未満のケースでは全額返済となる点に注意が必要です。
任意整理の場合、債権者との協議から和解成立までの手続き期間はおよそ半年程度となることが一般的です。
返済期間に特別なルールはなく、債権者との交渉で決定します。
個人再生の場合は、裁判所を介するため、申立てから手続き完了まで1年以上かかる点が特徴です。
返済期間は原則3年、特別な事情がある場合は最長5年まで認められる可能性があります。
任意整理では、債権者1件につきおおよそ5万から15万円程度が目安とされています。
個人再生の場合は弁護士費用が50万から60万円程度必要となり、手続きによっては裁判所に納める費用がさらに加算されることもあります。
任意整理では、通常は財産を処分する必要はありません。
現在返済中の車や家のローンがある場合も、その債務を手続きの対象から外すことで財産を手元に残せます。
一方、個人再生でも財産の処分自体は基本的に求められませんが、所有する財産の価値に相当する金額(清算価値分)については返済しなければなりません。
こうした違いが、手続き選択時の検討ポイントとなります。
任意整理では、保証人付きの借金を対象に含めて手続きした場合、減額分について保証人に対し一括で返済を求められることがあります。
ただし、交渉する債務を選択できるため、保証人付きの債務を整理の対象から外すことも可能です。
個人再生の場合はすべての債務が申立ての対象となります。
そのため、保証人付きの債務が減額された場合、その分を保証人に一括で請求される可能性があります。
任意整理の場合、信用情報機関には残債を完済した時点から約5年間、事故情報が記録されることになります。
個人再生を利用した際には、手続き開始時または完済後、5~7年程度ブラックリストに登録されるのが一般的です。
任意整理の場合、手続きは裁判所を介さないため、氏名や住所などが官報に掲載されることはありません。
一方で、個人再生を選択すると、裁判所での手続き開始後に官報へ氏名や住所が掲載されることになります。
とはいえ、一般の人が日常的に官報を閲覧する機会は多くありません。
債務整理を検討する際には、任意整理や個人再生の特徴を理解することが重要です。
任意整理と個人再生の主なメリット・デメリットは以下の通りです。
| 任意整理のメリット | 対象債務を選択して整理できる 費用負担を抑えられる |
| 任意整理のデメリット | 債権者との交渉が難航しやすい 元金は減額できない可能性が高い |
| 個人再生のメリット | 利息だけでなく元金も圧縮できる 任意整理がまとまらない債務も整理できる |
| 個人再生のデメリット | 対象債務を任意に選択できない 手続きに時間と手間がかかる |
ここからは、それぞれ詳しく見ていきましょう。
任意整理の大きなメリットは、手続きの対象とする債務を選べる点にあります。
保証人が付いている借金を除外できるため、関係者への影響を最小限に抑えやすいことも特徴です。
また、裁判所を介さないため、手続きの流れが比較的シンプルなことも大きな特徴となります。
弁護士などの専門家に依頼すると、本人が煩雑な書類準備や出頭を求められることもほとんどありません。
費用も1件ごとに定額で済むケースが多く、経済的な負担を抑えやすい傾向があります。
手間やコストを抑えつつ、柔軟に債務整理を行いたい方にとって、任意整理は有効な選択肢といえるでしょう。
任意整理のデメリットとして、債権者との話し合いが長引き、希望通りの条件でまとまらない場合があることが挙げられます。
また、業者によっては返済期間を短く設定され、整理前よりも毎月の返済負担が大きくなる可能性も生じます。
加えて、任意整理では主に将来の利息カットが中心となるため、元金そのものの減額は基本的に期待できません。
返済計画の柔軟性や負担軽減を目指す場合には、これらの特徴をよく理解したうえで手続を検討することが重要です。
個人再生の利点は、借金の総額自体を大きく減らし、元金も圧縮できる点にあります。
この手続を利用すれば、返済負担の大幅な軽減が可能となり、生活再建への道が開けます。
また、任意整理に応じない債権者に対しても、裁判所の決定に基づき債務の整理が行える点は大きなメリットといえるでしょう。
加えて、住宅ローン特則を活用すれば持ち家を残しながら返済計画を立てることも可能です。
個人再生を選択するにあたっては、住宅ローン特則を利用する場合を除き、債務全体を整理の対象としなければなりません。
このため、すべての借入先に対して一括して返済計画を立てる必要があります。
また、個人再生は手続きが複雑なため、必要な書類の準備や審査への対応など、多くの時間と手間がかかる点がデメリットです。
手続きにかかる費用も任意整理と比べて高額になる傾向があり、経済的な負担も無視できません。

借金問題の解決方法を選ぶ際、個人再生と任意整理のどちらが自分に合っているのか判断に迷う方は少なくありません。
ここでは、状況ごとにどちらの手続きが適しているか、選び方のポイントを分かりやすく解説していきます。
任意整理は、家族に知られずに借金問題を解決したい場合や、手続きにかかる時間や手間をできるだけ抑えたい方に向いています。
また、保証人付き債務や友人からの借金など、特定の債務を整理の対象から除外したいケースでも柔軟に対応できるのが特徴です。
さらに、借金の総額が5,000万円を超えている場合は、法律上、個人再生の申立てができません。
このようなケースでは任意整理を活用することが現実的な選択肢となります。
必要書類や手続きの負担が比較的軽いため、生活や仕事への影響を最小限に抑えて債務整理を行いたい場合におすすめです。
個人再生は、任意整理に応じない金融業者がいる場合に有効な選択肢となります。
借入金の元本も含めて債務を大幅に減額したいと考える方にも適しています。
また、給与や財産の差押さえを受けている場合など、裁判所を通じて手続きを進めることで差押さえの停止が可能です。
複数の返済先があり通常の返済では立ち行かない場合など、根本的な生活再建を目指す際に検討するとよい手続きといえるでしょう。
個人再生と任意整理は、借金の総額や収入状況、返済計画によって向き不向きが異なる制度です。
借金の返済に悩んでいる方は、安易に自己判断せず、まずは専門家へ相談してみることをおすすめします。
家計や将来設計に無理のない解決策を選ぶことが、再スタートへの確かな一歩となるでしょう。