東京弁護士会所属。
破産をお考えの方にとって、弁護士は、適切な手続きをするための強い味方になります。
特に、周りに相談できず悩まれていたり、負債がかさんでしまいそうで破産を考えていたりする方は、ぜひ検討してみてください。
住宅や財産を残しながら債務整理ができる方法として、個人再生を選択する人は多いでしょう。
しかし個人再生で失敗する可能性や、そもそも個人再生ができないケースも存在します。
個人再生には条件や注意しなければならないポイントがあり、すべての人に当てはまるわけではありません。
今回は、個人再生できないケースや失敗したときの対処法について、詳しく解説します。
個人再生は借金を大幅に減額できる画期的な制度ですが、誰でも利用できるわけではありません。
一定の条件を満たさなければ、手続きが途中で終わる、あるいは再生計画が認可されない可能性があります。
ここでは、個人再生ができないケースを9つ解説します。
Contents
個人再生は、サラリーマンやパート・アルバイトの他、自営業者も申し立てることができます。
ただし、毎月一定額を返済できる安定した収入が必要です。
個人再生は3年程度の再生計画に沿って、借金を完済する必要のある手続きです。
安定して返済できるだけの収入がない場合には返済能力が無いとみなされ、再生計画が認可されず、そもそも個人再生ができないということになります。
フリーランスや個人事業主など、収入が一定でない場合は、過去の収支を提示して返済能力を示す必要があります。
個人再生は、借金を大幅に減額できる制度ですが、所有する財産が高額である場合は注意が必要です。
一定以上の財産があるなら財産を処分して借金を返済できるのではとみなされ、手続きが認可されないことがあります。
さらに、個人再生では、「財産の総額以上を最低限返済しなければならない」という清算価値保障の原則があります。
そのため、財産が多いと弁済額が高額になり、減額効果が薄れ、せっかく個人再生をしても借金の減額のメリットがなくなります。
多額の財産がある場合は、売却して借金返済にあてる、もしくは他の債務整理の方法を選択することになるでしょう。
個人再生では、すべての債権者を平等に扱う必要があります。
一部の債権者だけを除外することや、特定の相手にだけ返済することは認められません。
住宅ローンは特例として、住宅資金特別条項を利用することで整理対象から外すことができます。
それ以外の債務は、すべて整理対象です。
除外したい債権者がいる場合は個人再生ではなく、任意整理など別の方法を検討しましょう。
個人再生には申請の回数制限はなく、何度でも申請することができます。
しかし、再申請には一定の条件があります。
たとえば、以前の手続きからあまり時間が経っていない場合や、過去の再生計画を守らなかった場合は、再申請が認められない可能性が高いです。
個人再生には給与所得者等再生と、小規模個人再生の2種類の手続きがあります。
1回目の申請が給与所得者等再生であった場合、2回目も給与所得者等再生の申請を行う場合は、1回目の申請から7年間経過していなければ再申請できないという決まりがあります。
ただし、小規模個人再生を利用する場合は、期間の制限はありません。
また、過去の再生計画に失敗している場合は、裁判所はより厳しくチェックするため、再申請は非常に難しいでしょう。
個人再生は、借金の総額が100万円以上~5000万円以下の場合に利用できる制度です。
この範囲を外れると、手続きを進めることができません。
100万円以下の場合は、わざわざ裁判所の手続きをする必要がないと判断されるため、対象外になります。
個人再生より、任意整理を検討するといいでしょう。
一方で5000万円を超えると、個人の生活再建という制度の目的を超えるとみなされ、利用が制限されます。
申立てを考える際は、借金の総額が範囲内であるかどうかを確認することが大切です。
個人再生は裁判所を通じた手続きのため、申立てには費用がかかります。
最低限必要な費用が、裁判所に支払う収入印紙代や予納金などの実費です。
通常2~3万円程度かかります。
もし裁判所で再生委員が選任されれば、報酬として20~30万円程度が必要です。
さらに、手続きは専門的な書類の作成や裁判所とのやり取りが必要になるため、多くの場合、弁護士や司法書士に依頼することになります。
専門家の費用は10万~30万円程度が相場です。
総額で10万~60万円程度の費用を準備できなければ、申立てそのものができないことになります。
費用面が不安な場合は、分割払いに対応している事務所や法テラスの利用なども検討してみましょう。
個人再生を行う場合、利用しやすい小規模個人再生を選択するケースが圧倒的に多いです。
しかし、小規模個人再生は債権者の過半数の同意が必要である、という条件があります。
もし同意が得られず不同意となれば、再生計画が認可されず、手続きが失敗に終わることがあります。
債権者の不同意により失敗する確率は、個人再生手続き全体の2%程度と非常に低いですが、認められない可能性があることは事実です。
この場合、給与所得者等再生は債権者の同意が不要であるため、給与所得者等再生で再申請することも検討しましょう。
どちらの方法が最適か判断し難い場合は、専門家と相談しながら進めるといいでしょう。
個人再生の手続きでは、債権者を平等に扱うことが原則です。
特定の債権者を優先して返済することを偏波(へんぱ)弁済と言い、法律で禁止されている行為です。
偏波弁済を行うと、裁判所から不誠実で不公平な行いとみなされ、認可が下りない場合や、手続きが却下される可能性があります。
家族や知人であれば、こっそり返済すればバレないと考える人もいますが、裁判所は様々な方法で詳細に調査を行うためいずれ発覚します。
もし先に返済をした場合は、手続きを進める前に専門家に相談しましょう。
個人再生では、保有している財産を正確に申告することが義務付けられています。
もし資産を隠していたことが発覚すると、裁判所からの信頼を失い、手続きが却下される可能性があります。
たとえば、タンス預金で現金を隠し持っている場合や、不動産や車の名義を不正に家族などに変更することなどです。
個人再生は生活再建のため、誠実に手続きを行うことが重要です。
万が一、申告漏れがあった場合は、気づいた時点で早めに相談し修正しましょう。
個人再生は、確実に成功するとは限りません。
様々な要因で申請が通らないことや、手続きに失敗することもあり得ます。
ここでは個人再生に失敗するとどうなるか、考えられるリスクについて解説します。
個人再生に失敗すると、当然ながら借金は減額されず元のまま残り、返済義務も変わりません。
返済が滞っていれば遅延損害金が加算され、借金がさらに増えるリスクもあります。
また、失敗しても裁判所や専門家に支払った費用は、ほとんど戻ってくることはありません。
認可が下りなければ、借金の負担がより大きくなる可能性があります。
申立て前には、認可の可能性やリスクを見極め、申請が通るように手続きを行うことが大切です。
個人再生の申立て中、専門家が代理人として就任している間は、借金の取り立てや催促を止めることができます。
差押えに関しても、個人再生の手続き中は停止するという決まりになっています。
しかし手続きに失敗した場合、債権者からの取り立てが再開され、差押えも執行されます。
給与や口座の差押え、催促の電話や郵便など、精神的な負担が大きくなるでしょう。
状況によっては生活が立ち行かなくなる恐れもあるため、手続きの準備段階から慎重に進める必要があります。
個人再生の申立てを行うと、結果にかかわらず信用情報機関に事故情報として登録されます。
いわゆるブラックリストに載る状態となり、たとえ手続きに失敗して再生計画が立てられなかったとしても、事故情報を取り消すことはできません。
信用情報は一般的に5~7年ほどたたないと消えないため、今後の生活設計に大きく関わるでしょう。
個人再生に失敗しても、諦める必要はありません。
ここでは個人再生ができない場合に考えられる、対処法について解説します。
個人再生は申請回数に制限がなく、何度でも申請できます。
もし失敗した場合は再申請を検討しましょう。
再申請のために、まずはなぜ失敗したのか原因を突き止めます。
もし債権者の不同意により失敗した場合は、給与所得者等再生に切り替えて申請する方法が考えられます。
給与所得者等再生に債権者の同意は不要です。
収入が安定していない場合は、転職や副業によって収入を増やし、返済計画が履行できることを証明すると認められる可能性があります。
書類の不備や、期限までに必要書類を提出していなかった場合などは、裁判所や専門家の求めに誠実に応えることで、申請を通すことができるかもしれません。
債務整理には個人再生以外に、任意整理や自己破産などの手続きがあります。
個人再生に失敗した場合は検討するとよいでしょう。
たとえば任意整理は比較的、借入額が少なく、ある程度の収入があれば利用できます。
裁判所を利用しないため、手続き費用を抑えられるメリットがあります。
整理対象の債権者を選択できるため、車や家を残したい場合に有効です。
収入が安定しない場合や、借入額が多く返済そのものが難しい場合は、自己破産を選択することもできます。
自己破産は、すべての借金返済を免除できる制度です。
ただし、ほとんどの財産を失うというデメリットがあります。
どの方法が適切かという判断が難しい場合は、弁護士など専門家に相談してみましょう。
個人再生が認可されて返済が始まっても、途中で計画通りに返せなくなることがあります。
ここでは、返済計画の途中で返済できなくなった場合の対処法を解説します。
収入の減少や支出の増加で、当初の返済計画どおりに支払えなくなった場合は、再生計画の変更を申し立てることができます。
ただし、変更が認められるのはやむを得ない事情がある場合に限られるため、しっかりとした理由や証拠が必要です。
原則3年の返済期間を最長で5年まで延長し、月々の返済額を減らすなどの方法があります。
変更申立てには裁判所の許可が必要なため、弁護士などに相談しながら手続きを進めると安心です。
やむを得ない事情で返済ができなくなった場合、ハードシップ免責という制度を利用できる可能性があります。
再生計画の途中で返済が困難な状況になったとき、残りの返済を免除してもらえる制度です。
ただし、以下のような条件があり、すべて満たす必要があります。
条件に合えば、残りの借金が免除される大きなメリットがあります。
再生計画の変更もできず、ハードシップ免責の条件も満たせない場合、最終的な手段として自己破産を選択することになります。
自己破産は、原則としてすべての借金が免除され、返済義務がなくなります。
ただし、必要最低限以外の財産を失うことになります。
また、再生手続き中に虚偽の申告をしていた場合などは、免責が認められないこともあるため注意が必要です。
個人再生は、借金を大幅に減らしながら生活を立て直せる制度です。
ただし、すべての人が利用できるわけではなく、一定の条件を満たしている必要があります。
まずは個人再生が利用できるかどうか、確認することから始めましょう。
もし制度が使えない場合や失敗した場合でも、原因を突き止めて状況を見直すことで、再チャレンジも可能です。
手続きは専門的で非常に難しいものであるため、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。