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自己破産しても賃貸に住める?新たに借りられる?審査通過のコツとは

弁護士 川﨑公司

この記事の執筆者 弁護士 川﨑公司

東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!

この記事でわかること

  • 自己破産をした場合の賃貸住宅への影響
  • 賃貸契約の入居審査で何を確認されるか
  • 自己破産後に賃貸契約の入居審査に通過するコツ

生活していくためには、住まいは欠かせません。
借金の返済義務から逃れるために自己破産を検討している方の中には、賃貸住宅への影響を気にして二の足を踏んでいる方も多いのではないでしょうか。
自己破産をしたとしても生活は続いていくため、あらかじめ住まいへの影響を理解しておくことが大切です。

この記事では、自己破産をした際の賃貸住宅への影響や新しく賃貸契約を結ぶ際の注意点、審査に通過するコツについて解説します。
「自己破産をしても今の賃貸住宅に住めるのか」「新たに賃貸契約を結ぶ場合には何に気をつけたらいいのか」と悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。

【原則】自己破産しても今の賃貸住宅を追い出されることはない

自己破産をした時点で賃貸住宅に住んでいる場合、今の賃貸住宅に住み続けることはできるのでしょうか。
結論として、自己破産したことを理由に賃貸契約を解除されることはなく、すでに住んでいる賃貸住宅から追い出されることはありません

たとえ賃貸借契約書に「自己破産をしたら直ちに契約を解除できる」旨の記載があっても、自己破産を理由にした解除はできません。
こうした特約は賃貸住宅を借りている人(賃借人)にとって相当な不都合なものであるため、無効とされています(最高裁判所第一小法廷判決昭和43年11月21日)。

2004年には破産法が改正され、それに伴って、賃借人が破産した場合に契約の解除を認める民法上の規定が削除されました。
このため、自己破産をしたらすぐに住まいを失ってしまうのではないかと過度に心配する必要はありません。

例外的に今の賃貸住宅を追い出されるケース

自己破産をしても賃貸契約を解除できないのが原則ですが、これはあくまでも「自己破産を理由にした」場合に限られます。
自己破産以外の理由があれば、賃貸住宅を追い出されてしまう可能性があることには注意が必要です。

例外的に今の賃貸住宅を追い出されるケースは次の3つです。

  • 家賃を滞納しているケース
  • 家賃が収入に見合わないケース
  • 保証会社に更新を断られるケース

ここでは、それぞれのケースについて詳しく解説します。

家賃を滞納しているケース

賃借人が家賃を滞納している場合、今の賃貸住宅に住み続けられない可能性があります。

そもそも賃貸契約とは、賃貸人が住まいを提供する代わりに、賃借人に家賃の支払いを義務付けるものです。
しかし、自己破産をするほど経済的に困窮していれば、家賃の支払いが滞っていることもあるでしょう。

自己破産の申立て時にすでに家賃を滞納してれば、その滞納分も債務(=借金)として扱われます。
自己破産後は原則として借金返済が免除されるため、滞納家賃の支払い義務もなくなります。
つまり、賃貸人は家賃の回収ができないことになります。

住まいを貸しているのにも関わらず、その対価を支払わないのは契約違反です。
このため、すでに家賃を滞納している賃借人が自己破産を申し立てた場合、「債務不履行」を理由にして立ち退きを命じられる可能性があります。

なお、賃貸住宅を追い出されたくないからと自己破産前に家賃の滞納分を支払うのは避けましょう
特定の債権者に偏って弁済をすること(=偏頗弁済)は免責不許可事由にあたり、自己破産手続きをしても免責を得られない恐れがあるためです。

家賃が収入に見合わないケース

家賃が収入に見合わない場合、例外的に賃貸契約を解除されることがあります。

賃貸契約の継続が可能かどうかを判断する要素の一つが賃借人の収入状況です。
現在の収入では家賃の支払いが難しいと判断されれば、今住んでいる賃貸住宅から追い出される可能性があります。
一般的に、適切な家賃の目安は、収入の3分の1以下とされています。

このとき、契約解除を決めるのは賃貸人ではなく、裁判所が選任する破産管財人です。
破産管財人は自己破産手続きにおいて、債務者の財産や債務を管理する役割を任されています。
家賃が収入に見合わず生活の立て直しを妨げる恐れがある場合、破産管財人は破産法53条に基づいて契約解除が可能です。

保証会社に更新を断られるケース

自己破産によって、賃貸契約の更新時に保証会社から保証を断られる可能性があります。

一般的に賃貸契約は2年契約となっており、住み続けるには2年ごとに更新をする必要があります。
契約時に保証会社を利用していれば、更新にあたって再度審査を受けなければなりません。

一部の保証会社では、信用情報機関の照会をして賃借人の信用性を審査することがあります。
自己破産をすると信用情報機関に事故情報が登録されるため、保証会社から更新を断られることが考えられます。

保証会社から保証が得られない場合、契約の更新ができず、賃貸住宅を追い出される恐れがあります。
他の保証会社や連帯保証人などの代替手段を利用できるかどうか、賃貸人と相談しましょう。

自己破産後も賃貸住宅を借りられる

自己破産によって持ち家を没収された場合や賃貸住宅から追い出された場合など、新たに賃貸住宅を借りなければならないこともあるでしょう。
そこで気になるのが、自己破産後でも賃貸住宅を借りられるかどうかです。

原則として、自己破産後も賃貸住宅を借りることは可能です
自己破産は過去の経済的な困難を示すものではありますが、それだけで賃貸住宅を借りる権利が奪われるわけではありません。

賃貸人は賃借人の状況を総合的に判断し、安定した支払いが可能かどうかを評価します。
自己破産後に収入が安定し、信用が改善すれば賃貸借契約を結ぶことはできるでしょう。

賃貸住宅を借りる際は物件選びに注意

自己破産後も賃貸住宅を借りることは可能ですが、事前に賃貸人の審査を通過する必要があります。
ただし、自己破産や家賃滞納の履歴がある場合、一部の物件の審査には通りにくくなってしまいます。

特に注目すべきは保証会社の利用有無や審査の特徴です。
保証会社の中には、賃借人の信用情報や家賃滞納履歴をチェックして、信用度を評価するところがあります。

たとえば、信販系(クレジットカード関連)保証会社では信用情報の照会を行うため、事故情報が残り続ける5〜7年は審査通過の難易度が高まると言えます。
LICC(全国賃貸保証業協会)に加盟している保証会社では、家賃滞納履歴を共有しているため、過去に家賃を滞納している場合には審査に通りにくいでしょう。

審査に通りにくい物件審査に通りやすい物件
信販系保証会社の利用がある物件
例)オリコフォレントインシュア、ジャックス、エポスカードなど
LICC加盟保証会社の利用がある物件
例)アーク、ホームネット、ランドインシュアなど
・独自の審査基準を設けている保証会社を利用している物件
保証会社の利用がない物件
例)UR、公営住宅など

原則として、利用する保証会社は賃貸人が指定します。
物件を選ぶ際にはあらかじめ、保証会社の指定があるか、信用情報や家賃滞納履歴の照会があるかを確認しておくようにしましょう。

賃貸契約の入居審査で確認される内容

賃貸契約を結ぶ際には、賃貸人や保証会社による入居審査が行われます。
入居審査には、大家や管理会社(賃貸人)による審査と、保証会社による審査の2種類があります。
それぞれ重要視するポイントは次の通りです。

  • 賃貸人の審査・・・支払能力、保証人の信頼性、本人の人柄
  • 保証会社の審査・・・支払能力(過去の信用情報や家賃滞納履歴含む)

ここでは、特に賃貸人の審査に着目して解説します。
賃貸人は審査をすることによって貸し倒れのリスクを抑え、安定した家賃収入を得られる可能性が高い賃借人を選びます。

支払能力

最も重視されるのが支払能力、つまり「家賃を滞納せず支払ってくれるか」です。

賃貸人に安定した収入があるか、収入と家賃が見合っているかどうかを確認します。
支払能力については、勤務先・勤続年数・雇用形態を考慮して判断します。
賃貸人が大企業の正社員や公務員である場合、審査に通りやすい傾向があります。
一方、勤続年数が短く、雇用形態が不安定な場合には、契約が難しいこともあるでしょう。

自己破産をしていたとしても、現在の収入が安定しており、無理なく家賃を支払える状況にある場合には、支払能力ありと判断される可能性が高まります。
まずは、収入の3分の1以下を基準に入居物件を選ぶようにしましょう。

保証人の信頼性

一般的に、賃貸契約を結ぶ際には保証人または保証会社のいずれかを選ぶことになります。

保証人を選択した場合には、賃借人本人とあわせて保証人の収入状況を審査します。
賃借人が家賃を支払えなくなったとしても、保証人から家賃を回収できれば、賃貸人にとっては問題がないと言えるからです。
このため、賃借人本人の支払能力に不安があっても、保証人をつけることで審査に通る可能性があります。

ただし、保証人が高齢の場合や、収入に不安があると、審査に通りにくくなります。
この場合は保証会社を選択することになりますが、前述したように保証会社の種類には注意が必要です。

本人の人柄

賃貸人にとって、賃借人本人の人柄も重要な審査項目です。
賃貸契約は人と人の契約であるため、最終的には信用に足る人物かどうかで判断します。

十分な支払能力があっても、賃借人本人の態度が悪く、過去にトラブルを起こした経験がある場合には、審査に通りにくくなります。
大家や不動産管理会社と連絡を取る場合には、誠実な対応を心がけましょう。

自己破産後に賃貸契約の入居審査に通過するコツ

自己破産後に賃貸契約を結ぶ際は、まず安定した収入を得られる仕事に就き、支払能力があることを証明する必要があります。
その上で、できるだけ入居審査に通りやすい物件を選ぶようにしましょう。

ここでは、自己破産後に賃貸契約の入居審査に通過するコツを解説します。

保証人をつける

自己破産をするほど経済的に追い詰められていた場合、経済状況が回復するまでに時間がかかることが予想されます。
賃借人本人の信用度が低くても、保証人をつけることで家賃滞納リスクを補完することができます。

協力してくれそうな家族や親族がいれば、保証人を検討してみましょう。
ただし、賃借人が支払いを怠った場合には保証人がその責任を負うことになるため、あらかじめ保証人になる人とよく相談しておく必要があります。

家族名義で契約する

自己破産によって信用情報の影響を受けるのは、破産手続きをした本人のみです。
家族には影響がないため、安定した収入のある家族名義で賃貸契約を行えば、審査に通る可能性があります。

ただし、契約者となる家族が同居しない場合、事前に契約者以外の人が入居する旨を賃貸人に伝えておく必要があります。
契約者以外が無断で入居すると、契約違反となる恐れがあるため、注意しましょう。

保証を要しない物件を選ぶ

保証を要しない物件は比較的入居審査に通りやすいと言えます。
たとえば、公営住宅やUR住宅などが挙げられます。

公営住宅は地方公共団体が管理する低所得者向けの賃貸住宅です。
所得制限がありますが、相場と比べて家賃が安価なため、自己破産後でも入居しやすいでしょう。

UR住宅はUR都市機構が提供する保証不要の賃貸住宅です。
礼金や仲介手数料が必要なく、初期手数料を抑えられることが特徴です。
ただし、相場よりも家賃が高い可能性があるため、入居時にはよく確認するようにしましょう。

まとめ

自己破産をしても、原則として今住んでいる賃貸住宅には影響がなく、新たに賃貸契約を結ぶことも可能です。

ただし、自己破産時にすでに滞納しているなど特別の事情がある場合には、賃貸契約を解除される恐れがあります。
新規契約時にも、利用できる保証会社や審査が通りやすい物件には限りがあることに注意しましょう。

自己破産をしても賃貸住宅に住み続けたい方は、あらかじめ弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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