東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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自己破産とは、借金の自力返済が困難になった人が、裁判所を通じて返済を免除してもらう手続きです。
自己破産では、審尋という手続きで裁判官と面接を行い、免責不許可事由に該当していないかなどを確認されます。
通常、面接の場では緊張しますし、質問に対してとっさに答えられないときもあるでしょう。
裁判官からの質問は定型的なものが多いため、事前の準備が大切です。
ここでは、審尋の概要や質問される内容、対策を詳しく解説します。
Contents
審尋(しんじん)とは、裁判官が訴訟の当事者や証人などに質問し、意見陳述の機会を与えることです。
自己破産における手続きでは、申立人が本当に免責を受けるのにふさわしいか確認するために審尋で質問を受けます。
まずは、審尋の種類や方法について確認していきましょう。
審尋は「破産審尋」と「免責審尋」の2種類があります。
それぞれ目的や実施されるタイミングは、下表のように異なっています。
破産審尋 | 免責審尋 | |
---|---|---|
目的 | 破産手続き開始決定の判断 | 免責決定の最終判断 |
タイミング | 破産の申立て後~破産手続開始決定前 | 破産手続きの終了後~免責の決定前 |
破産審尋は、破産手続きを開始するために基本的な事項を確認するために行います。
免責審尋は、申立人を免責するかどうか最終判断を行うための場です。
申立人は期日に裁判所へ出頭し、審尋を受けます。
なお、審尋では債権者や申立人の財産を管理する破産管財人も立ち合い、意見を述べる場合があります。
審尋には、次の2つの方法があります。
集団審尋は、裁判所の一部屋に5人~10人ほどの申立人を集め、集団で審尋が行う方法です。
「令和3年度 司法統計年報速報版」によると、2021年の自己破産件数は73,457件あり、日々沢山の破産申立てがされています。
全員を個別に審尋していると裁判所の人手が足りなくなるため、破産手続きを行うにあたって特に大きな問題のなさそうな申立人が集団審尋の対象になります。
集団審尋の場合、裁判官からの質問内容は簡単で、人数が多いときは順番が回ることなく終わるケースもあるようです。
個別審尋は、裁判官が1人の申立人と個別に行う審尋です。
裁判官から見て、ギャンブルの浪費など免責不許可事由が疑われるため、個別に確認をしたい場合に行われます。
そのため、質問もより深い内容を聞かれるケースがあり、的確に答えなければなりません。
審尋の有無は、裁判所によって運用が異なっています。
裁判所によっては審尋を省略するケースもあり、その場合は審尋がないまま破産手続き開始決定や免責決定がされます。
破産審尋と免責審尋で、それぞれ質問される内容について説明します。
破産審尋では、主に次の質問があります。
破産手続きを開始するための基本事項が主な内容です。
免責審尋では、主に次の質問があります
免責許可を出すかどうか判断する場であり、質問内容も免責後の生活再建を考慮したものです。
また、免責不許可事由が疑われる場合はその詳細について説明が求められます。
もし申立ての内容と矛盾がある場合は、免責が許可されない可能性があるため注意しなければなりません。
自己破産は、主に次の流れで手続きが進みます。
破産審尋は破産手続き開始の申立て後に行われ、無事終了すると破産手続きの開始決定へ進みます。
免責審尋は最後の免責決定の前に開催され、問題がないと判断されると免責が得られます。
裁判所への申立てから免責決定がされるまで、おおよそ3カ月~6カ月程度かかるケースが多いようです。
審尋に関して、よくある質問と回答についてご紹介します。
回答1:虚偽の回答をしない、不明瞭な答え方をしないように注意して下さい
たとえば他に弁済すべき債権者がいるのに「他に債権者はいません」と答えると、後で債権者が見つかったときに大きな問題となる可能性があります。
記憶が曖昧な場合、その場でごまかすことや憶測で解答するのも避けましょう。
記憶が曖昧な場合には正直によく覚えていないことや、「このように記憶していますが正確ではないかもしれない」と答えるなど、誠意ある態度を見せることが大切です。
回答2:服装に規定などはありませんが、華美な装飾やだらしない服装は避けましょう
自己破産は自力返済が難しいことを理由に返済を免除してもらう手続きなので、華美な装飾はふさわしくありません。
免責後に生活を再建できそうな印象を与えるために、だらしない服装なども避けるべきでしょう。
回答3:免責を得られない可能性があります
審尋は、裁判官が申立人を本当に免責してよいかどうか判断するための場です。
出席の有無は裁判官の心証にも関わるため、誠実な対応を心がけましょう。
自己破産は、借金の免除という重要な効果を生じさせる手続きです。
審尋は、裁判官が申立人を免責してよいか判断する場であるとともに、今後は経済的に破綻しないよう注意を促す場でもあります。
たとえ上手に話せなかったとしても、よほど問題があると判断されない限り審尋が原因で免責を得られないことはありません。
審尋では誠実な対応をとり、免責後に生活を再建できるという印象を与えられるよう心がけるとよいでしょう。
もし不安があるときは、審尋の質問事項や回答方法について事前に弁護士へ相談しておくと安心です。