東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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自分の収入を超える債務を背負ってしまった時、返済から逃れるための手段として自己破産があります。
しかし、返済を免除できる一方、もともと持っていた資産を失うデメリットがあることにも注意が必要です。
自己破産を検討する際、やはり気になるのは今後の住まいです。
特に持ち家や住宅ローンを抱えている場合、今の家に住み続けられるかどうか不安に思っている方も多いでしょう。
ここでは、自己破産と住宅ローンの関係についてわかりやすく説明します。
今の家に住み続ける方法や、自己破産後に住宅ローンを組む際の注意点についても解説します。
Contents
自己破産は裁判所の決定により、借金の返済義務をゼロにする手続きです。
債務をゼロにする代わりに、今ある資産を債権者に按分します。
ここで、住宅ローンと持ち家について考えてみましょう。
住宅ローンはすでに借りているお金を毎月返済していく仕組みのため、借金にあたります。
裁判所から免責許可決定がおりれば、返済自体はなくなります。
一方、持ち家は不動産で資産にあたります。
自己破産の際、資産は債権者に分配されるため、換価処分(お金に換える手続き)の対象となります。
したがって、原則として自己破産者の住宅ローンはゼロになりますが、持ち家は手放さなければなりません。
ただし、住宅ローンの組み方や返済の有無によって、取扱いが変わる場合があるため、あらかじめ自己破産の影響の範囲を把握しておくことが重要です。
ここでは、自己破産と住宅ローン・持ち家の関係についてパターン別に解説します。
住宅ローンの返済中に自己破産した場合、原則としてローン返済は免除されますが、持ち家は競売にかけるなどしてお金に換え、債権者に配分します。
持ち家を売却した資金は債権者の支払いに充てるため、自己破産者の手元に資金が残ることはありません。
自己破産者の資産の処分は、裁判所が選任した破産管財人が行うのが一般的ですが、持ち家の場合は事情が異なります。
通常、住宅ローン返済中の持ち家には抵当権が設定されています。
抵当権とは、住宅ローンを組む際に、金融機関が主に土地や建物(持ち家含む)に設定する担保です。
債務者が住宅ローンの返済をできなくなったときに、金融機関が抵当権を行使して競売にかけるなどして、債務の返済を受けられます。
このため、持ち家の換価処分は金融機関が担当することが多くなっています。
処分が決まった場合には、金融機関の定めた日までに自己破産者は退去しなければなりません。
なお、住宅ローンの組み方にはいくつか種類があります。
では、ローンの組み方別に自己破産時の取り扱いを解説します。
自己破産者が単独でローンを組んでいる場合、住宅ローンや持ち家の取り扱いは原則と同じです。
配偶者の有無に関わらず、法律上はひとりの個人として扱われるためです。
持ち家は差し押さえられますが、配偶者の資産状況に影響はありません。
ペアローンとは、夫婦または親子のそれぞれが契約者となり、お互いを連帯債務者としてローンを組む方法です。
持ち家1軒に対し、合計2本のローンを組むことになります。
ペアローンを夫婦で組み、夫が自己破産した場合、夫はローンの返済を免れます。
しかし、妻は夫の連帯保証人となっているため、金融機関から夫の分のローン返済を請求されてしまいます。
妻が2人分のローン返済を肩代わりできなければ、最終的に妻の側も自己破産に追い込まれる可能性があります。
ペアローンであってもお互いに同じだけの債務を負っているため、2人とも支払いができない場合、持ち家は差押えされる結果となります。
連帯債務型ローンとは、夫婦や親子のどちらか一方が主債務者、もう一方が連帯債務者となってローンを組む方法です。
主債務者が自己破産をした場合、ペアローンと同様、もう一方がローン返済の請求を受けます。
結果として、連帯債務者の方も自己破産を検討せざるを得なくなり、持ち家は差し押さえられることが多いでしょう。
住宅ローンの返済がない、あるいは完済している持ち家の場合を考えてみましょう。
ここでは、自己破産者の単独名義のパターンと、夫または妻との共同名義(共有名義)のパターンに分けて解説します。
住宅ローンの返済が終わっていれば、持ち家はすでに自己破産者の資産です。
裁判所から免責許可決定を受けたとしても、返済免除の対象とはなりません。
とはいえ、自己破産をするからには、住宅ローン以外の債務を抱えているはずです。
その他債務の返済のため、持ち家も売却の上、債権者に配分されることになります。
持ち家が夫婦の共同名義である場合、夫と妻のそれぞれが持分を有していることになります。
たとえば、夫が自己破産をしたら、換価処分の対象になるのは夫の持分のみです。
資産を管理・処分する破産管財人は、妻に持ち家全体の買い取りを打診することが考えられます。
しかし、実際は妻が買い取ることは難しい場合が多く、破産管財人は任意売却の方法で買い手を探すことになります。
買い手がつくと、夫の持分のみが第三者の手に渡ることになり、持ち家は妻と第三者の共有状態となります。
夫の持分を買い取った第三者は共有状態を解消するため、共有物分割請求訴訟を起こすことが多いです。
家を半分に切ることはできないため、裁判所は持ち家そのものを売却し、代金を按分するよう言い渡すのが一般的です。
最終的に妻の持分も売却されることになり、持ち家を手放すことになるでしょう。
基本的に、自己破産後には持ち家を手放すことになります。
どうしても現在の家に住み続けたい場合は、次の方法を検討しましょう。
リースバックとは、売却した持ち家の買い手と賃貸借契約を結び、そのまま住み続ける方法です。
持ち家ではなく賃貸となるため、家賃を支払う必要がありますが、住み慣れた家を離れずにすみます。
ただし、自己破産者の単独ではリースバックできず、協力してくれる買い手を見つけなければなりません。
自己破産の代わりに、任意整理を選択する方法もあります。
任意整理とは、今後の利息や毎月の返済額について金融機関と交渉し、借金返済の負担を減らしてもらう手続きです。
自己破産と違い、返済の義務は残りますが、持ち家を含む財産を処分されることはなくなります。
住宅ローンが残っている場合でも、住宅ローンを任意整理の対象から外せば、問題なく住み続けられるでしょう。
ただし、任意整理は債権者との交渉が必須事項です。
債権者によっては交渉に応じないこともあるため、専門的な知識と実績のある弁護士に頼ることをおすすめします。
債務整理には自己破産と任意整理の他、個人再生という手段もあります。
個人再生とは、借金の一部を原則3年間で完済することを条件に、他の借金を免除してもらう手続きです。
住宅ローンを組んでいる場合、住宅ローン特則付きの個人再生を選択すると、持ち家を残したまま借金を大幅に減らせます。
ただし、住宅ローン特則を利用するには複数の条件があるため、あらかじめ弁護士に相談しておくとよいでしょう。
自己破産で持ち家を失ってしまったら、その後新しく住宅ローンを組めるのか気になる方も多いでしょう。
結論として、自己破産後、最低でも5〜10年間は住宅ローンを組むのが難しくなります。
自己破産をすると事故情報が信用情報機関に登録され、一定期間は残り続けます。
住宅ローンを組む際には信用情報の照会が行われるため、新たな借り入れを拒否されることがほとんどです。
ただし、事故情報が登録されるのは自己破産をした本人のみで、自己破産者以外の家族には影響がないため、家族が住宅ローンを組むことは可能です。
自己破産後に住宅ローン審査を受けるときは、次の点に注意しましょう。
事故情報が残っていると、住宅ローンは通りません。
自己破産後、相当期間が経過していたとしても、事故情報が残っていることがあります。
また、自己破産の事故情報が消えていたとしても、その後にクレジットカードやキャッシングの返済を滞ると信用情報に記録が残ります。
あらかじめ信用情報機関に問い合わせて、登録情報を確認しておくと安心でしょう。
住宅ローンを組むとき、金融機関は債務者がきちんと返済してくれるかどうかを見ています。
返済能力の証明として、クレジットカードの支払い期日を守り、利用履歴を作っておくのも有効です。
住宅ローン申し込み時に、頭金を多めに用意すると審査に通りやすくなります。
最初に支払う頭金が多ければ、借入金額が減り、返済金額が少なくできるためです。
金融機関では、信用情報機関の登録情報以外に、独自の信用情報を持っていることがあります。
たとえ信用情報機関の登録情報がなくなっていたとしても、過去に支払いが滞った顧客には貸してくれない可能性が高いでしょう。
ただ、自己破産時に利用していた金融機関に断られてしまったとしても、別の金融機関に申し込むと審査が通る可能性があります。
自己破産をすると、住宅ローンを返済する義務はなくなりますが、持ち家を失ってしまうことがほとんどです。
現在の家に住み続けたい場合には、自己破産以外の方法を検討する必要があります。
ただし、任意整理や個人再生などの債務整理には専門知識が不可欠となるため、あらかじめ弁護士に相談するとよいでしょう。
また、自己破産後は最低でも5年間、新たに住宅ローンを組めなくなります。
一定期間が経過したのち、再度住宅ローンを組む際には、事前に信用情報機関に問い合わせて事故情報が消えているかを確認しましょう。
自己破産前後の住宅ローンの取り扱いに不安がある場合、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。