東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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法人・会社の事業を進めていくうえで、支払が重くのしかかる、支払そのものが厳しいという場合があります。
そのようなときにどうすればこの苦しい状況を打開できるのか、検討することでしょう。
事業再生とは広義にはこのような支払が厳しいときに色々な対応策を考えて実行し、法人の事業を再び軌道に乗せるようにすることを指します。
それでは、具体的な方法にはどのようなものがあるのでしょうか?
リスケ、事業再生、ADR、民事再生、会社更生、そして破産があります。
事業再生の観点から見ると破産は、会社の解散事由になり企業再生とは言いにくいのですが、究極の選択肢という観点から紹介いたします。
では、それぞれの特徴について見ていきましょう。
事業再生と企業再生は違いが分かりづらいため、「どういう意味なの?」と疑問を持つかもしれません。
まず事業再生とは、会社の事業に着目して、どうやって再生させるかを考えることです。
例えばある企業が不動産事業・飲食事業・人材派遣業と3つ事業の行っており、「不動産と飲食はやめて、人材派遣業に集中して、売上を復活させよう」と改革する場合は、事業再生になります。
会社の存続が危ないときに、可能性や将来性の高い事業について、スケジュールや改善をすることで、会社としての売上を復活させる行為ですね。
次に企業再生とは、法人格(会社)に着目して、再生させる行為です。
実質的に破綻状態であったり、借金まみれである会社を「資金・債権」の面から立て直します。
債務超過・赤字収支などの具体的な理由に対して、改善を行います。
ただし大きな違いはなく、同じような意味合いで使われることも多いです。
下記では事業再生のメリットについて紹介します。
会社の経営状況が悪くなり、資金繰りも危なくなってくれば、「破産する」という選択肢も浮かぶでしょう。
破産をすれば借金や支払いが消滅し、日々の支払いに困らなります。
ただし会社は完全に消滅し、従業員の雇用・取引先との契約がすべてなくなります。
法人破産をしても新しい法人設立は可能ですが、まったく同じような会社を作るのは難しいでしょう。
ビジネスは信用が大切なので、一度破産して契約解消になった会社と再度取引してくれる会社は多くありません。
そこで破産を選ばずに、事業再生をすれば、会社を潰すことなく従業員の雇用・取引先との契約も継続できます。
自分で立ち上げた会社だと愛着もあるはずなので、すぐに破産を考えず、事業再生できないか弁護士への相談してみましょう。
事業再生が成功すると、従業員を解雇せず、会社の立て直しができます。
例えば破産手続きを選んでしまうと、必ず従業員を全員解雇して、会社を消滅させなくてはいけません。
破産の中で「従業員をすべて解雇する」という手続きが決められています。
会社の人材は貴重な資源なので、一度手放してしまうと、同じような人材を揃えるのは難しいでしょう。
事業再生を選択すれば、従業員を守った状態で、手続きを進められます。
経営者が会社の連帯保証人になっているケースもあります。
法人破産するときに、連帯保証人は会社の借金を返済しなければいけません。
しかも個人で連帯保証人になっている場合は、個人資産を持ち出すことになります。
破産すると同時に、連帯保証人である経営者が借金を返済できなくなって、個人破産するケースも多いです。
ただ事業再生であれば、自分が連帯保証人であっても個人資産を持ち出す必要はありません。
自分が連帯保証人になっていて「なるべく個人資産を手放したくない」というなら、事業再生を選びましょう。
下記では、その他の事業再生方法について詳しく紹介します。
法人の支払が厳しいときに、銀行等の金融機関に交渉を行うようなことを言います。
半年程度であれば、金融機関も比較的了承してくれますが、その期間が長くなるほど交渉は難航していきます。
税理士等の専門家からアドバイスを受けて、自社の経営状況を数値化したものを交渉の材料にして進めていきましょう。
他方、商工ローン等の金融機関は、交渉が難しいものと思われます。
ADRとは裁判外紛争処理手続のことを言います。
この中で事業再生ADRは、一般社団法人事業再生実務家協会(JATP)が唯一の認証機関となっています。
これは、協会が間に入り、法人と銀行間で債務の減免等を取り決めていく制度です。
法的整理は裁判所が入るのですが、この制度は裁判所が入りません。
法律に則った厳格な法的整理とは違い、柔軟な運用が期待されますが、全員一致が原則ですので、債権者に大きな負担を求めるような内容であれば手続は難航します。
事業再生ADRは裁判所が介在しない、私的整理の一種でしたが、こちらは裁判所が介入する制度となります。
現経営陣の元で再生計画を策定してこれを実行することで法人を再建していく制度です。
具体的には再生計画案を裁判所に提出し、債権者の決議を経て認可を受けます。
その認可を受けた案を遂行していくことになります。
これは法的整理になりますので、一般的に言う「倒産」の評価を受けがちです。
この手続に入ると銀行は融資に応じてくれなくなりますので、新たなスポンサーを開拓する必要があります。
民事再生と似た制度に会社更生があります。
手続の流れは更正計画を策定して裁判所に提出、集会で決議を経て認可を受け、その案に沿って計画を実行に移していくという点で上記の民事再生と似ていますが、両者の決定的な違いは経営陣が代わる点です。
すなわち、会社更生の申立があると裁判所は通常、弁護士を保全管理人に選任し、現経営陣は退任します。
また、株主はその権利を行使できなくなります。
この点が民事再生との大きな違いです。
これまでは、支払えるのが前提の手続でした。
破産は債務の支払を引き延ばしても支払ができない、債務も超過状態の時に選択する制度です。
裁判所に破産申し立てを行い、破産管財人が手続を進めていきます。
債務に対する責任は無くなりますが、法人は解散し、その法人では営業活動ができなくなります。
事業再生の手続きは下記の通りです。
では詳しく説明しましょう。
まずは会社の現状について、確認と把握をします。
破産状態に陥った原因を分析したり、事業の問題点を洗い出したりします。
社内の資金・銀行からの借入金額も整理して、再生方法の選択に進みます。
会社の実態が把握できれば、次は再生方法の選択です。
この再生方法から、自分の会社に最適なものを選びましょう。
「この再生方法がいいかわからない」という場合は、弁護士に相談して、適切なアドバイスをもらってください。
再生方法が決まったら、そのあとの事業計画を作成しましょう。
事業計画書は金融機関・スポンサー企業との交渉でも必要なので、しっかり作成してください。
ポイントは財政面のことを中心に、3年間での具体的なプランが説明できることです。
作成した事業計画書を持って、新しい融資による資金確保をしましょう。
ただ民事再生などを行う予定だと、金融機関からの融資が難しくなります。
資金提供してくれるスポンサー企業を探すのがおすすめです。
最後は実際に再生手続きをします。
再生の方法にとって、必要な手続きが変わるので注意しましょう。
法的な手段を選ぶ場合は、裁判所への申し立ても必要なので、しっかりと準備をしてください。
上記では事業再生の方法について説明してきました。
実際に事業再生をする前に「本当に再生すべきなのか?」を考えましょう。
そこで下記では、事業再生の前に考えるべき2つのことを紹介します。
大前提ですが、自分の行っている事業に再生するほどの価値があるのか?を考えてください。
たとえば民事再生手続きを行う場合は、事業が市場においてどれだけ価値を持っているのか?を重視されます。
自分が会社を作って、事業を始めたなら、思い入れがあり再生もさせたいと思うかもしれません。
ただ市場に需要があるのか?今後も続けていくと価値が生まれるのか?は冷静に判断しましょう。
事業を再生するうえで、現在の負債額が少なくなったり、返済のスケジュールが前倒しになったとして、「今後に資金繰りに問題はないか?」を考えてください。
もし返済のしつつ事業が運営できるようになったとしても、事業の収益が低い場合は、そもそもの運用資金を確保できません。
事業再生で止まってしまった事業を再開させることはできても、そのあとも運営できるような長期的なスケジュールが必要になります。
ここからは事業再生を成功させるコツを紹介します。
事業再生を成功させるには、現状を客観的に分析しなければいけません。
事業が失敗してしまった理由が分かれば、解決するための制度を使ったり、支援策などを考えたりできます。
間違っても自分の勝手な判断や思い込みだけで、事業の分析をしないようにしましょう。
自社事業で、利益を出している部門・利益を出してない部門を明確にしてください。
利益を出してない部門があれば、撤退するのか?もっと経費をかけてチャレンジするのか?を決めましょう。
さらに利益を出している部門があれば、もっと伸ばすのか・他の部門にお金を回して、利益の柱を増やすのかを考えます。
事業再生したあとの会社経営にも関わってくるため、事業の損益を整理して、方針を決めておきましょう。
事業再生は、負債がなくなったとしても、成功とは言えません。
事業再生できたあとも、長期的に運営ができて、会社が存続できるような経営をするべきです。
そのためには、事業再生ができたあとのことも考えて、長期的なスケジュールを作りましょう。
事業再生のあとも、問題なく資金繰りはできているのか?収益はどれぐらい出せるのか?をしっかり計算しておく必要があります。
事業再生は経営者が進めることですが、なるべく社内の従業員にも共有しておきましょう。
なぜなら従業員の繋がりで、事業再生の資金を提供してくれるスポンサーが見つかる可能性もあるからです。
また事業を運営しているのは、経営者だけではなく、現場で働いている従業員も含まれています。
事業再生を成功させるためには、スポンサーの確保も欠かせません。
なぜなら複数のスポンサーを獲得すると、自社の資金だけで再建を目指すよりも、難易度が下がるからです。
例えば2社からスポンサードしてもらい、合計1,000万の資金補助があったとすれば、早期での黒字化が目指せます。
スポンサーがまったくいない状態で、自社の事業を縮小したり負債を整理したりするよりも、ドカンと資金援助があった方が再生も簡単になります。
またスポンサーから当面の運転資金をもらうことで、取引先の企業への損害もなくせます。
取引先への支払いが滞ったまま破産してしまうと、取引先の収支が悪くなり、連鎖倒産するかもしれません。
スポンサーの獲得は、事業再建の成功率をあげて、取引先への負担を軽減させます。
事業再生には、債権者の協力が欠かせません。
なぜなら再生計画を作るときに、債権者の同意がないと前に進まないからです。
自社の方で再生計画を作成して「こういう頻度で借金を返済していきます」と宣言しても、お金を貸している側の債権者が受け入れてくれないと、そもそも計画倒れになります。
どうすれば債権者から同意を得られるのか?を考えて対策しておきましょう。
不安な方は弁護士に相談して、間に入ってもらうのがおすすめです。
事業再生は通常2年程度の期間がかかります。
事業再生の手続きを終わるまで時間がかかるため、経営者自身が事業再生に前向きでなければいけません。
時間や手間がかかり、事業再生手続きの中で、会社の事業を止めたり売却したりする可能性もあります。
シビアな判断と、長期間の手続きを乗り越えるだけの体力・資金面の余裕なども必要です。
経営者自身が「この会社を立て直したい!」という強い思いがないと、事業再生手続きも大変でしょう。
「自社を事業再生した方がいいのか?」と悩んだら、早めに弁護士へ相談しましょう。
なぜなら自分だけで判断したり、「どうすればいいのか?」と悩んで時間が経ってしまうと、会社の状況がどんどん悪くなるからです。
事業再生・破産の案件に精通している弁護士なら、会社の状況を見て「どんな手段を選ぶべきなのか?」と適切なアドバイスをくれるでしょう。
事業再生の方法はたくさんあるため、自分だけで判断すると適切な手段を選べないかもしれません。
プロのアドバイスに従うことで、一番損害の少ない方法が選べるでしょう。
事業再生ではなく破産手続きに踏み切った場合も、弁護士であれば破産手続きが法的に認めれているため、そのまま依頼できます。
「弁護士に依頼したいけど、そもそも費用がない」という場合もあるでしょう。
依頼費用がなければ、無料相談の利用がおすすめです。
多くの弁護士事務所では、初回の相談を無料で行っているため、気軽に弁護士相談ができます。
相談をしてみて「この人に依頼したい」と思った段階で、実際に依頼すれば問題ありません。
弁護士報酬の支払いに関しても、分割払いなど対応してくれるかもしれません。
「お金がないから弁護士依頼できない・・・」と悩むのではなく、気軽に相談してみましょう。
以上、企業再生の具体的な方法について見てきました。
客観的にいま法人が抱えている債務がどれだけあり、それに対してどれ位のスパンで支払えるのかを割り出すと、自ずと選ぶ選択肢が決まってくることでしょう。
企業再生にはいろいろな選択肢がありますが、それぞれに一長一短なポイントがあります。
それらの特徴を検討したうえで、具体的な方策を選んで下さい。