東京弁護士会所属。
破産をお考えの方にとって、弁護士は、適切な手続きをするための強い味方になります。
特に、周りに相談できず悩まれていたり、負債がかさんでしまいそうで破産を考えていたりする方は、ぜひ検討してみてください。
大学に進学するために奨学金を利用している、あるいは利用した方は多くいることでしょう。
奨学金の返済は大学卒業後すぐに始まり、その返済期間は長く続くため、返済できなくなってしまうこともあります。
そのような場合には、債務整理を行って返済を楽にすることができますが、どのような方法でも効果があるわけではありません。
ここでは、奨学金の債務整理として有効な方法、そして奨学金が返済できなくなった時の支援制度について解説していきます。
債務整理とは、借金やローンなどの債務を何らかの方法で減額し、返済を楽にするための手続きです。
債務整理として一般的に利用されているものには、3つあります。
ここでは債務整理の方法の他、奨学金に対して効果的かどうかという観点からも解説します。
任意整理は、貸金業者などの債権者と直接交渉して、借金の返済額を減額してもらう手続きです。
また、トータルの返済額が少なくなるだけでなく、返済スケジュールを変更してもらい、月々の返済額が少なくなるように調整してもらうこともできます。
任意整理のメリットは、債権者と直接交渉するものであるため、対象となる債務を選択できることです。
また、手続き後3~5年程度で対象となった債務が完済できるようなスケジュールとなり、返済までの見通しがたちます。
一方、任意整理を行うと、その事実は信用情報に登録されます。
信用情報とはいわゆる「ブラックリスト」のことを指し、任意整理すると新たな借金やクレジットカードの利用ができなくなります。
また、任意整理で減額できるのは、基本的に利息部分です。
そのため、任意整理後も月々の返済は発生し、返済は楽になるものの、ゼロになるわけではありません。
任意整理による債務整理は、基本的に利息や遅延損害金の減額をするものであって、元金については大きく減額するわけではありません。
しかも、奨学金はもともと大きな利息が発生しないため、任意整理を行っても利息の減額はごくわずかしかできません。
そのため、奨学金の債務整理を行うのに、任意整理を利用してもその効果は極めて限定的です。
個人再生は、裁判所に申立てを行い、借金の金額を5分の1~10分の1まで減額してもらう手続きです。
借金の総額により、返済しなければならない最低金額が定められ、その差額が個人再生による借金の減少額となります。
個人再生を行うと、借金の金額自体が大幅に減少するため、任意再生よりその後の返済が楽になります。
また、住宅ローンを返済中の場合、自宅を手放す必要はなく、車も処分されないため、その後の生活に大きな支障はありません。
一方で任意整理と同様、ブラックリストに登録された状態となるため、その後のクレジットカードの利用などは制限されます。
また、官報に個人再生したことが掲載されるため、第三者に個人再生を行ったことが知られる可能性があります。
個人再生を行うと、奨学金の金額も大幅に減額することができます。
ただ、返済がゼロになるわけではないことから、個人再生を行った後も、どのように生活を立て直すのか考えておく必要はあります。
自己破産は、裁判所に申立てを行い、すべての借金をなかったものとしてもらう手続きです。
自己破産を行い、その免責が認められると、その後の返済はゼロとなります。
自己破産を行うと、すべての債務が消滅するため、借金の返済に苦しむ人にとっては大きなメリットがあります。
一刻も早く生活を立て直したいという人にとっては、自己破産は唯一の選択肢とも言えます。
一方、自己破産を行うと、ブラックリストに登録され、その後の借金やクレジットカードの利用には制限がかかります。
官報に自己破産したことが掲載されることも、個人再生と同じくデメリットとなります。
さらに、自己破産の場合はすべての財産を手放さなければなりません。
自宅や車、ほとんどの預貯金も債権者への弁済にあてられ、手元にはわずかな財産しか残りません。
そのため、文字通りゼロからのスタートとなります。
奨学金の返済が難しくなった時に自己破産すると、奨学金の金額もすべて消滅します。
デメリットもありますが、債務の減額という点では非常に大きな効果があります。
奨学金の返済が難しくなった時に債務整理を行うことは、メリットがありますがデメリットも大きくなってしまいます。
そのため、安易に債務整理を行うのはおすすめできません。
そこで、奨学金の返済が難しくなった場合には、様々な救済制度を利用することも検討してみましょう。
以下の4つの制度は、すべて日本学生支援機構が設けている救済制度となります。
減額返還制度は、災害や傷病、あるいは経済的な理由により奨学金の返済が困難になった場合、その返済額を減額する制度です。
月々の返済額が2分の1から3分の1となり、様々な事情で返済が難しかった人も、返済を継続できるようになります。
減額返還制度を利用するには、「願い出」と呼ばれる申請を行う必要があります。
この申請を行う際には、所得金額を証明する公的な書類や、減収・休業・失業などがあったことを証明する書類が必要です。
その上で、申請の内容について認められれば、月々の返済額を減額してもらうことができます。
1回の申請で、12か月の返済が減額されます。
また、申請は何度も行うことができ、最長180か月の延長が認められます。
返済期限猶予制度は、返済が難しくなった事情が発生した場合に、その返済を先延ばしにしてもらう制度です。
減額返還制度との一番の違いは、一時的に返済しなくてもいい期間が設けられることです。
減額返還制度は月々の返済額が減額されますが、返済がゼロになるわけではないということに大きな違いがあります。
返還期限猶予制度を利用する際も、申請を行わなければなりません。
返還を猶予してもらえる人には、所得金額などの基準があり、その判断するための書類を提出しなければなりません。
返還期限猶予制度の利用が認められると、返還しなかった期間についても滞納したものではないと扱われます。
そのため、延滞利息などが後から発生することはありません。
一方で、奨学金の元金や利息については減額されることはありません。
返還できない状態となった問題を解決し、猶予期間が経過した後に返還できるようにするための制度となっています。
猶予年限特例は、一定の基準に該当し、選考に通った人だけが利用できる制度です。
無利子で奨学金を受けた「第一種奨学金」を利用している人で、所得基準に該当する人がこの制度を利用することができます。
学ぶ意欲と能力があるものの、経済的な理由で学業を断念せざるを得ない人がいます。
このような人も安心して学べるよう、この猶予年限特例が設けられています。
この制度の特徴は、卒業後に一定の収入を得られるようになるまでの間、猶予期間の制限がないことです。
つまり、卒業後に働き始めて一定の収入を得られるようになるまでの間、返還の猶予を受けられます。
基準に合致する場合、日本学生支援機構から猶予年限特例の適用の通知が送られてきます。
適用された場合、追加の手続きは不要とされています。
なお、猶予年限特例と呼ばれるのは平成29年度以降に奨学金の採用者となった人です。
平成24~28年度採用者については、所得連動返還型無利子奨学金と呼ばれ、同様の制度が設けられていました。
返還免除制度は、返済が終わっていない奨学金の一部または全部の返済が免除される制度です。
奨学金を借りた本人が死亡した場合、健康上の理由で働けなくなった場合のみ、適用を受けることができます。
返還免除制度を利用するためには、まず日本学生支援機構に貸与奨学金返還免除願の交付を受けます。
この書類に、死亡した事実や返還できなくなったことを証明する書類を添付して提出します。
なお、健康上の理由で働けなくなった場合、障害の程度や収入の程度がどの程度であればいいかは公表されていません。
貸与奨学金返還願の書類を交付される際に、相談する必要があるでしょう。
奨学金の返済に行き詰まった場合、債務整理を検討する必要があります。
ただ、債務整理にも種類があり、奨学金の返済を楽にするのに向いているものと、そうでないものがあることに注意しましょう。
また、債務整理を行う前に、日本学生支援機構が定める返還支援制度を利用するのも選択肢となります。
条件に合致すれば、債務整理より簡単に、そしてデメリットなく返還を楽にすることができるので、ぜひ検討してみましょう。