東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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裁判所に法人破産の手続きを開始してもらうためには、申立書の他にも破産する正当性を証明する書類を提出しなければなりません。
法律の定めにより、法人破産を申し立てるときには原則として決算書を添付する必要があり、特に貸借対照表と損益計算書は添付が必須です。
しかしながら、決算前に破産状態に陥った法人や事業を停止してから数年経過した法人など、申立時に決算書がない事態も考えられます。
このように決算書がない場合でも、自分で作成する方法や税理士に依頼して作成してもらう方法などで対応が可能です。
また、現金化して債権者に配当できる資産もない状態なら、弁護士と共同で簡易な決算報告書を作成して、正式な決算書に替える方法もあります。
以下では、法人破産手続きには決算書の添付が必要であることや必要な決算書の種類、また、決算書がない場合の対処法について紹介します。
Contents
法人破産の手続きを開始してもらうには、法人の住所地を管轄する地方裁判所に、破産手続開始の申立書を提出しなければなりません。
この申立書には必要書類を添付することも求められています。
添付すべき書類としては、登記簿謄本、債権者一覧表、財産目録などの他、法人の事業内容や破産に至った経緯、負債状況を示すものなどがあります。
申立を受けた裁判所は、負債状況などに応じて基本的には管財事件あるいは同時廃止事件として分類し、手続きを進めることになります。
管財事件に分類されると、裁判所が選任した破産管財人を通じて処理が行われることになるため、かなり高額な費用や手続きの期間を要します。
一方、現金化して債権者に配分できるような財産がないことが明らかな場合は、破産管財人は選任されず、破産手続の開始を決定すると同時に、破産手続の廃止が決定されます。
こうしたことから、裁判所の判断材料として破産時の負債状況を証明する書類の提出が重要な意味を持っていることがお分かりいただけるでしょう。
申立の際は、負債状況を示す証拠として、原則、決算書の添付が必要です。
申立に関する基本的な規定は破産法第14条に定められている他、詳細な事項は最高裁判所の破産規則で定められています。
この破産規則を見ると、その第14条第3項において「貸借対照表」と「損益計算書」を添付することが明記されています。
これらの書類は法人の決算時に作成されるもので、決算書類のなかでも特に重要なものです。
なお、これらの書類は、破産手続開始を申し立てる日の直近に、法令の規定に基づいて作成されていることが要求されることにも注意が必要です。
破産手続開始の申立には、貸借対照表と損益計算書を添付すべきことが規定されていますが、それだけでよいのでしょうか。
貸借対照表と損益計算書があれば、その法人が債務超過や支払い不能状態に陥っているかどうかはある程度判別できます。
しかしながら、貸借対照表や損益計算書からは、法人にどのような資産や負債が存在するのかまでは知ることができません。
法人の具体的な資産や負債を知るためには、決算時に作成する固定資産台帳、勘定科目明細書などがないと確認できないのです。
決算時には、経営や財務の状態などを明らかにするために、勘定科目明細書、固定資産台帳、総勘定元帳、決算報告書などを作成します。
固定資産台帳は事業用の減価償却資産を整理した書類で、勘定科目明細書は主な勘定科目ごとに収支の詳細を記載した書類です。
総勘定元帳は科目ごとに経理処理が記録された書類で、経費や領収書などは日付順に領収書綴りとして保存します。
決算報告書は、貸借対照表や損益計算書の他、キャッシュフロー計算書、株主資本変動計算書などを作成することになります。
また、法人税申告書、消費税申告書、地方税申告書、さらには、事業内容や従業員数、取引状況、経理状況などを記載した法人事情概況説明書も作成します。
破産規則第14条には、貸借対照表と損益計算書を添付することが明記されていますが、実は裁判所はそれ以外にも必要書類があれば提出を要求できるのです。
同じ破産規則の第15条には、申立書や添付すべき書類のほかにも、裁判所が必要とする資料の提出を求めることができることが規定されています。
具体的には、破産手続の開始が決定された場合の債権や財産の状況に関する資料、破産手続の円滑な進行に必要な資料が該当します。
つまり、一般的には決算時に作成することになる一連の書類の提出を求められると考えておく必要があると言えます。
したがって、貸借対照表や損益計算書以外については提出義務が明示されていないものの、債務状況を確認できる資料を添付することが望ましいのです。
また、先に触れたように、貸借対照表や損益計算書は、申立日の直近で法令の規定に基づいて作成されているものであることも求められています。
このように、破産手続の開始を申立てる際は、申立日の直近時点での貸借対照表や損益計算書を含めた決算書類を作成しておけば、スムーズな処理が期待できます。
法人破産の手続き開始を申し立てる際は、原則として決算書が必要になることは確認してきたとおりです。
では、破産状態であっても決算書がなければ、手続き開始の申立ができないのでしょうか。
たとえば、事業を開始から決算までの間に破産状態に至った法人のケースでは、決算前のため決算書が作成されていないことがあります。
また、数年前に事業を停止している法人のケースでも、決算書が作成されていない状態が考えられます。
しかし、安心してください。
このように決算書が作成されていない場合でも、破産手続き開始を申し立てることは可能です。
以下では、決算書がない場合の主な対処法について紹介します。
法人であるなら、規模の大小を問わず法人と個人の資金を区別して帳簿付けしなければなりません。
記帳は、その義務が会社法で定められているとともに、法人税を計算するためにも必要不可欠です。
法人の決算書は、税理士に依頼しなければならないといった法律はありませんから、経営者自ら作成することも問題ありません。
一連の決算書すべてがあるに越したことはありませんが、破産規則の規定に沿うよう、最低でも貸借対照表と損益計算書を作成します。
最低限の簿記知識があれば、最近特に進化している会計ソフトを利用することによって、決算書は自分で作成することも可能です。
ただし、自分で決算書を作成する場合は、最低限必要となる簿記知識の他に、法令に適合するかどうかの税務の知識も必要です。
自分で決算書を作成する場合、裁判所への申立までに時間が限られているなかで、このような手間と時間がかかる作業を行ことができるかどうかが大きな問題になるでしょう。
また、決算書は裁判所の判断材料となるため、内容の正確さや信ぴょう性が問われることになります。
会計ソフトで決算書が印刷まではできたとしても、簿記や税務の扱いについての勘違いや間違いがないかどうかも大きな問題です。
簿記や税務についての知識が不十分な場合は、税理士に作成を依頼する方法が確実でしょう。
数年前から事業を停止している場合、決算書を作成していないこともあります。
このように事業停止後に決算書が作成されていない場合でも、破産の申立は可能です。
ただし、申立の際は破産規則に従って、最終事業年度の決算報告書と清算貸借対照表の添付が必要です。
しかしながら、このようなケースでは、法人としての事業用財産がないか、あるとしても現金化して債権者に配当できる可能性はないことが一般的です。
換価できる財産がなく、同時廃止事件に該当するような状態の場合は、コストをかけて税理士に決算書の作成を依頼する必要性が高いとは言えません。
このような場合には、依頼している弁護士と共同で、現時点での簡易な決算報告書を作成する方法があります。
法人破産時に、決算書以外で必要な書類を紹介します。
破産の申立では、記入して提出する記入書類・自分で集めたりコピーを取って渡す収集書類の2つがあります。
ちなみに決算書は、収集書類のひとつになります。
必要な記入書類は、下記の通りです。
弁護士などに依頼しておけば、記入書類を作成してくれます。
自分は署名や捺印をするぐらいなので、かなり楽です。
自分だけで破産手続きを行う場合は、これらをすべて自分で準備します。
必要な収集書類は、下記の通りです。
自分で集めるものや、弁護士に依頼して作成してもらうものもあります。
破産申立を検討していて、書類の準備に不安があるなら、弁護士への相談がオススメです。
なぜなら弁護士に依頼することで、書類の不備がないかチェックしてくれたり、書類の準備なども任せられるからです。
法人破産は裁判所の手続きが必要になるため、専門的な知識がないと手続きに時間がかかります。
書類に不備があったり、必要な書類が準備できてなかったりすると、破産申立を受理してくれないかもしれません。
また法人破産には3ヶ月〜1年程度かかるといわれており、そもそも時間がかかるため、最初から弁護士に依頼した方がスムーズです。
破産をするときには、裁判所への申立以外にも、事業停止・従業員への説明など、やることはたくさんあります。
専門的な知識が必要な手続きに関しては弁護士に依頼して、自分は会社のことに専念した方がいいでしょう。
弁護士に依頼するときに気になるのが費用だと思います。
「弁護士に依頼したいけど、依頼するほどお金の余裕がない」という人もいるでしょう。
そこでおすすめなのが、初回の無料相談を利用することです。
多くの弁護士事務所では、初回の相談を無料で受け付けているため、まずは気軽に相談してみましょう。
無料の範囲内であれば、依頼費用も発生しません。
法人破産手続き開始を申し立てる際は、決算書の添付が必要であり、特に貸借対照表と損益計算書は必ず作成しなければなりません。
会計ソフトの普及に伴い、領収書や請求書など日々の帳簿入力を適切に行っていれば、通常なら自分でも最低限の簿記や税務の知識で決算書を作成できます。
しかし、破産を申し立てなければならないような状態では、冷静な判断や時間の確保が難しいかもしれません。
決算書一式がそろえられていない場合は、税理士や弁護士など専門家に相談することをおすすめします。
無駄な労力や費用をかけることなく、不安や混乱に苛まれないように効果的なアドバイスやサポートを受けることが期待できます。