東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!
個人が自己破産等の債務整理や離婚協議、調停などについて、弁護士へ相談・依頼したいと考えても、弁護士費用が高額そうで、二の足を踏んでしまうということはよくあります。
法律事務所のホームページを見ても報酬基準がよく分からない、相談するだけでもお金がかかるのではないかと躊躇してしまう方も多いでしょう。
しかし、国が設立した法テラス(日本司法支援センター)を利用すると、弁護士費用を抑えて、問題解決できるケースが非常に多くあります。
本記事では、法テラスの民事法律扶助の報酬基準や利用条件について解説します。
Contents
法テラスの正式名称は「日本司法支援センター」です。
経済的に余裕のない人が、法的トラブルに巻き込まれた場合に、弁護士や司法書士といった法律の専門家に相談や依頼できるように、国が設立した機関です。
法テラスのサービスとしては無料相談が有名ですが、同じ民事法律扶助業務で、費用や報酬の立替を行う「代理援助」、「書類作成援助」というサービスもあります。
また民事法律扶助以外にも、刑事事件の国選弁護、少年事件の援助、生活保護を受けたい人の援助、自然災害等の被害者援助など、様々な業務を行っています。
法テラスは、東京や大阪といった大都市はもちろん、全国に地方事務所を構えていますので、利用者は自分の住所に近い法テラスを利用できます。
法テラスの報酬は、一般の弁護士や司法書士の報酬額と違って、自由に設定できるものではありません。
依頼を受けた弁護士・司法書士は、報酬基準表に定められた金額で仕事をしなければならず、法テラスで定められた金額以外にお金を請求されるということはありません。
また弁護士等は法テラスで受けた仕事に対して、報酬基準表で定められた金額以外のお金を、お礼などとして依頼者から受け取ることは固く禁止されています。
法テラスは、報酬基準も一般の相場と比較してかなり低いものとなっていますので、弁護士費用を抑えることが可能です。
法テラスの民事法律扶助を利用して、弁護士へ依頼した場合の報酬基準について説明していきましょう。
法テラスの報酬基準は、依頼する事件の内容によって増減します。
また、費用の目安は法定テラスの地区事務所により多少異なりますので、依頼する際には必ず事前に確認してください。
ここでは、法テラス埼玉の債務整理事件に関する標準的な報酬基準をご紹介します。
債務整理には、「任意整理」と裁判所を通す「民事再生」「自己破産」という手続きがあります。
法テラスでは、それぞれの債務整理手続きに応じて報酬基準を定めているため、順に紹介していきます。
任意整理の場合、債権者の数によって、実費と着手金が設定されています。
債権者数 | 実費 | 着手金 | 合計額 |
---|---|---|---|
1社 | 10,000円 | 33,000円 | 43,000円 |
2社 | 15,000円 | 49,500円 | 64,500円 |
3社 | 20,000円 | 66,000円 | 86,000円 |
4社 | 20,000円 | 88,000円 | 108,000円 |
5社 | 25,000円 | 110,000円 | 135,000円 |
6~10社 | 25,000円 | 154,000円 | 179,000円 |
11~20社 | 30,000円 | 176,000円 | 206,000円 |
21社以上 | 35,000円 | 198,000円 | 233,000円 |
参考:法テラス
法テラスへ任意整理を依頼した場合、報酬金は発生しません。
これに対し、法テラス以外の法律事務所へ依頼した場合の相場は、着手金が1社につき2~4万円、さらに報酬金として基本額2万円+減額報酬金5~10%となります。
たとえば、債権者5社の場合、実費と合わせて125,000~225,000円となります。
更に減額報酬金も発生するため、100万円の減額ができた場合、報酬金は7~12万円必要となり、合計で195,000円~245,000円程度が相場になります。
ですから、法テラスの「130,000円報酬金なし」という条件は、かなり低い費用といえます。
ただし、法テラスの民事法律扶助を利用して任意整理した場合でも、過払金があるときは別途報酬金が必要になるため、ご注意ください。
個人民事再生とは住宅等の財産を維持したまま、手続きによって減額された借金を原則として3年という期間で分割返済していくものです。
民事再生計画の対象となった借金については、減額された借金を完済できれば法律上の返済義務が免除されます。
この個人民事再生事件も、債権者数に応じて着手金の基準が設定されています。
また減額報酬等の報酬金は、法テラス・一般の法律事務所どちらに依頼しても基本的にかかりません。
ただし、民事再生事件で過払金がある場合は、基本的に法テラス・一般法律事務所ともに別途で報酬金が発生します。
債権者数 | 実費 | 着手金 | 合計額 |
---|---|---|---|
1~10社 | 35,000円 | 165,000円 | 200,000円 |
11~20社 | 35,000円 | 187,000円 | 222,000円 |
21社以上 | 35,000円 | 220,000円 | 255,000円 |
参考:法テラス
一般の法律事務所へ依頼した場合の相場は、実費と着手金を合わせて、合計35~55万円程度です。
法テラスの民事法律扶助を利用した場合と比較して、弁護士への報酬金額だけで15~30万円程の差があります。
民事再生では、自己破産と違って借金がゼロになるわけではありませんが、財産を手元に残すことは可能です。
借金の分割返済を考慮すると、少しでも弁護士費用を安く抑えられるということは法テラスを利用するメリットであるといえます。
自己破産の手続きも、債権者数によって着手金が異なります。
しかし法テラスでは、同時廃止事件・管財事件のどちらとも債権者数で実費は変わりません。
債権者数 | 実費 | 着手金 | 合計額 |
---|---|---|---|
1~10社 | 23,000円 | 132,000円 | 155,000円 |
11~20社 | 23,000円 | 154,000円 | 177,000円 |
21社以上 | 23,000円 | 187,000円 | 210,000円 |
参考:法テラス
これに対し、法テラス以外の法律事務所へ依頼した場合は、同時廃止となるか管財事件となるかによって、着手金額が異なることが一般的です。
法テラスの場合、同時廃止事件は23~33万円程度、管財事件は33~53万円程度の費用が必要になります。
法テラスの民事法律扶助制度の主旨は、収入や資産が少ない人でも、法律的な救済を受けられるようにするというものです。
そのため、法テラスで援助を受けるにはいくつかの条件があります。
ただし、前提として対象者となるのは、日本国民と適法に在留資格を有する外国人に限られ、法人や組合等の団体は含まれませんので、ご注意ください。
民事法律扶助には、「無料法律相談」と「弁護士・司法書士費用等の立替制度」があります。
「無料法律相談」を利用するためには、下記条件の(1)と(3)の2つ、「立替制度」を利用する場合は、(1)(2)(3)全ての条件を満たさなければなりません。
上記、利用条件の(1)資力要件として、下記の収入基準と資産基準の両方を満たす必要があります。
申込者及び配偶者の月収額(手取り金額・賞与を含む)が、下記の表の基準を満たしている必要があります。
なお、この月収額には申込者等(申込者及び配偶者)と同居している家族に収入がある場合、家計への貢献範囲で申込者等の月収額に加算します。
また、離婚事件等で、配偶者が相手方となっている場合は、月収額に配偶者の収入を合算する必要はありません。
同居人数 | 手取り月収額 | 家賃・ローン負担時の加算額 |
---|---|---|
1人 | 182,000円以下(200,200円以下) | 41,000円以下(53,000円以下) |
2人 | 251,000円以下(276,100円以下) | 53,000円以下(68,000円以下) |
3人 | 272,000円以下(299,200円以下) | 66,000円以下(85,000円以下) |
4人 | 299,000円以下(328,900円以下) | 71,000円以下(92,000円以下) |
参考:法テラス
注1:単身世帯の場合、同居人数は1人となります。
注2:( )内の金額は、東京、大阪など生活保護一級地の場合の基準金額です。
注3:人数4人まで表示していますが、5人以降は同居家族が1名増えるごとに月収額の基準に30,000円(33,000円)を加算できます。
注4:家賃・ローン負担時の加算額とは、申込者等が家賃または住宅ローンを負担している場合、記載された金額を手取り月収額の基準額に加算することができます。
例として、同居人数1人の単身世帯で、東京在住、家賃を支払っている方の場合で計算してみましょう。
手取り月収額の基準が200,200円以下、家賃負担時の加算額が53,000円以下となり、合算して253,200円以下が収入基準となります。
申込者及び配偶者が、不動産、有価証券等の資産を所有している場合、その時価評価額と現金・預貯金との合計額が下表の資産合計額の基準以下である必要があります。
なお、不動産は、自宅や係争物件である場合は除きます。
また、離婚事件等で配偶者が相手側となる場合は、配偶者の資産は合算しません。
同居人数 | 資産合計額 |
---|---|
1人 | 180万円以下 |
2人 | 250万円以下 |
3人 | 270万円以下 |
4人 | 300万円以下 |
参考:法テラス
注1:将来負担しなければならない医療費や教育費などがある場合は、相当額が控除されます。
この資産基準は、民事法律扶助の「立替制度」を利用する際の基準です。
「無料法律相談」のみを利用する場合は、申込者及び配偶者が所有する現金・預貯金の合計額のみで判断されます。
法テラスの民事法律扶助(弁護士・司法書士費用等の立替制度)には、報酬基準が設定されており、それ以上の請求を受けることはないため、弁護士・司法書士等の費用を低く抑えることが可能です。
ただし、法テラスを利用するためには収入や資産についての要件があるので、事前によく確認しておくことが大切です。
また、立替制度を利用する場合は、利用要件に関する審査のために、2週間から1ヶ月程度かかるので注意しましょう。