

東京弁護士会所属。新潟県出身。
破産してしまうかもしれないという不安から、心身の健康を損ねてしまう場合があります。
破産は一般的にネガティブなイメージですが、次のステップへのスタート準備とも言えます。
そのためには、法律上の知識や、過去の法人破産がどのように解決されてきたかという知識が必要です。
法人破産分野を取り扱ってきた弁護士は、こういった法律・判例や過去事例に詳しいため、強い説得力をもって納得のいく措置をとることができます。
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書籍:この1冊でわかる もめない遺産分割の進め方: 相続に精通した弁護士が徹底解説!

法テラスは、総合法律支援法に基づいて国が設立した法人で、正式名称を「日本司法支援センター」といいます。2006年(平成18年)4月10日に法人として設立され、同年10月2日に業務を開始しました。中核となる業務は、資力の乏しい人の弁護士費用を立て替える民事法律扶助です。
押さえておきたいのは、法テラスの職員がすべての事件を弁護士として担当するわけではないという点です。実際に事件を処理するのは、通常は法テラスと契約した一般の弁護士・司法書士(契約弁護士等)です。誰が担当するかは、申込みの方法によって変わります(「5-1. 法テラスの窓口または契約弁護士に相談を申し込む」「6-3. デメリット2|弁護士を自由に選べない場合がある」で解説します)。
法テラスは、経済的な事情などで弁護士に相談・依頼できない「司法アクセスの障害」を取り除くために設立されました。そのため、利用には資力の要件があり、誰でも使える割引サービスではありません。
総合法律支援法は、民事・刑事を問わず、全国どこでも、法による紛争の解決に必要な情報やサービスを受けられる社会の実現を基本理念に掲げています(総合法律支援法1条、2条)。
民事法律扶助の前身は、財団法人法律扶助協会が行っていた事業です。当時は、民事法律扶助法に基づき、法務大臣が指定した法人が扶助事業を担う仕組みでした(民事法律扶助法5条1項)。法テラスの設立に伴って民事法律扶助法は廃止され(総合法律支援法附則6条)、法律扶助協会の権利義務は法テラスに引き継がれました(同附則7条)。民間団体の事業から、国の制度として一元化されたということです。
この経緯からわかるとおり、民事法律扶助は「弁護士費用を払うお金がない人」を支える制度です。あなたが利用できるかどうかは、まず収入と資産の基準で判断されます(「3. 民事法律扶助を利用できるのはどのような人?」で解説します)。
法テラスの業務は、情報提供、民事法律扶助、国選弁護人等の確保、司法過疎対策、犯罪被害者支援などです。このうち、資力の基準によって利用が左右されるのが民事法律扶助です。
法テラスの業務は、総合法律支援法30条1項各号に定められています。主なものは、次のとおりです。
情報提供業務(コールセンターなど)は、資力を問わず誰でも無料で利用できます。ただし、適切な相談窓口や利用できる制度を案内するもので、あなたの事件について個別の法的判断や見通しを示すものではありません。
特定援助対象者法律相談援助(認知機能が十分でない方が対象)と、DV等の被害者に対する法律相談援助は、2016年(平成28年)の法改正で創設され、2018年(平成30年)1月24日に施行されました。いずれも資力の要件はありません。ただし、資力の要件がないことと無料であることは別です。特定援助対象者法律相談援助では、一定の資力がある場合、相談料として5,000円+税が必要とされています。
業務の内容は改正が続いているため、最新の情報は法テラスの公式サイトで確認してください。
法テラスで無料になるのは、法律相談援助だけです。弁護士に事件を依頼した場合の費用は法テラスが立て替え、あなたは原則として全額を分割で返していくことになります。
民事法律扶助は、費用を国が負担してくれる給付制ではなく、立替制です。代理援助や書類作成援助で法テラスが立て替えた費用は、原則として全額を償還(返済)します。
償還は無利息で、事件の進行中から始まります。事件が終わってから支払い始めるわけではありません。事件が終結した時点で残高があれば、3年以内に完済することが原則とされており、その時点で毎月の返済額が見直されることがあります(「4-4. 立て替えた費用の返済方法|原則として毎月の分割償還」で解説します)。生活保護を受給している場合などは、償還の猶予・免除が認められることもあります(「4-5. 生活保護を受けている場合|償還の猶予・免除」で解説します)。
「法テラスなら弁護士に無料で頼める」と思って申し込み、援助が始まってから毎月の返済額を知って驚くケースもあります。あなたの家計で毎月の償還を続けられるかどうかは、申込みの前に確認しておく必要があります。
一方で、この立替制そのものも見直しの議論が進んでいます。法務省は、2026年(令和8年)3月27日から「法テラスの在り方に関する有識者検討会」を開催しています。第7回で公表された中間整理では、次の2点が論点として挙げられています。
これらは中間整理の段階で示された意見であり、制度の変更が決まったものではありません。ただ、今後、利用条件や費用の基準が改定される可能性があります。実際に利用する際は、その時点の基準を法テラスの公式情報で確認してください。
参照:法テラスの在り方に関する有識者検討会 ~もっと利用しやすく、もっと身近な司法アクセスを目指して~|法務省
民事法律扶助は、資力の乏しい人に対し、無料の法律相談を行い、弁護士・司法書士の費用を立て替える制度です(総合法律支援法30条1項2号)。法律相談援助、代理援助、書類作成援助の3つの類型があります。
対象になるのは、民事・家事・行政の事件です。刑事事件や、会社などの法人の事件は援助の対象外です(「2-4. 民事法律扶助の対象にならない事件」で解説します)。
収入と資産が基準以下であれば、弁護士・司法書士による法律相談を無料で受けられます。相談時間は1回30分で、同じ問題について3回までです。
相談は、法テラスの地方事務所のほか、法テラスと契約している法律事務所でも受けられます。
注意したいのは、3回という回数制限が、どこの法テラスを利用しても通算されるという点です。たとえば、離婚について東京で2回、神奈川で1回相談すれば、その時点で3回に達します。「相談先を変えれば、また3回使える」わけではありません。
30分の相談は、事情を説明するだけで終わってしまうこともあります。回数に限りがある以上、1回目の相談から次のような資料をそろえて臨むと、相談の中身が大きく変わります。
相談だけで解決しない場合は、そのまま同じ弁護士に代理援助を申し込む流れになることがあります(「5. 法テラスを利用して弁護士に依頼するまでの流れとは?」で解説します)。
裁判や調停、破産・再生の申立て、その前提となる示談交渉などを弁護士・司法書士に依頼する場合に、着手金・実費・報酬金を法テラスが立て替える制度です。
代表的な利用場面は、自己破産などの債務整理や離婚です。
費用の額は、法テラスの基準に基づく審査で決まります。援助事件について、弁護士がこの基準を超える報酬をあなたから直接受け取ることは認められていません。費用の上限が明確になる点は、依頼する側にとって大きな安心材料です(「4-1. 法テラスの報酬基準の仕組み|着手金・実費・報酬金」で解説します)。
自己破産を司法書士に依頼する場合は、注意が必要です。司法書士の裁判所での代理権は、簡易裁判所の一定の手続に限られています(司法書士法3条1項6号)。しかも、この代理業務を行えるのは、法務大臣の認定を受けた認定司法書士だけです(同条2項)。
破産や個人再生は地方裁判所の手続です。そのため、司法書士に依頼する場合は代理援助ではなく、書類作成援助の対象になります。弁護士に代理援助で依頼するか、司法書士に書類作成援助で依頼するかによって、あなた自身が担う負担は大きく変わります。
あなた自身が裁判手続を進める(本人申立て・本人訴訟)ことを前提に、裁判所に提出する書類の作成費用を立て替える制度です。典型的な例は、司法書士に依頼する自己破産の申立書の作成です。
書類作成援助では、代理人がいません。裁判所とのやり取り、債権者からの問合せ、免責審尋などには、あなたが自分で対応します。管財事件になった場合や、裁判所から免責不許可事由を指摘された場合も、自分で説明しなければなりません。
見落とされやすいのが、予納金の差です。東京地裁の運用では、弁護士が代理人として申し立てる自己破産は、管財事件になった場合の予納金が最低20万円です。これに対し、本人が申し立てた事件が管財事件になると、負債総額に応じた基準額が適用され、個人でも負債5,000万円未満で50万円からとなります(2026年(令和8年)1月1日現在)。
参照:破産事件の手続費用一覧(令和8年1月1日現在)|東京地裁民事第20部
書類作成援助を選べば、依頼時の費用は代理援助より抑えられることがあります。しかし、本人申立てで管財事件になると、予納金は最低額同士で比べても30万円の差が生じます。その結果、依頼時に抑えた費用を予納金の差が上回り、費用の総額では代理援助より高くなることがあります。書類作成援助を選ぶ際は、安さだけで判断せず、管財事件になる可能性があるかどうかを確認しておくことが大切です。
なお、予納金の額は改定されることがあり、裁判所ごとに運用も異なります。最新の金額は、申立先の裁判所で確認してください。
刑事事件や、会社などの法人の事件は、民事法律扶助の対象になりません。個人の民事事件でも、勝訴の見込みがないものや、制度の趣旨に適さないものは援助されません。
対象外となる主な事件は、次のとおりです。
会社(法人)の破産では、法テラスの民事法律扶助を利用できません。
民事法律扶助は、資力の乏しい「国民等」の権利を守るための制度です(総合法律支援法30条1項2号)。この「国民等」は、日本国民と、我が国に住所を有し適法に在留する外国人を指します。在留資格のない外国人は、原則として対象外です。つまり、対象は自然人(個人)に限られ、株式会社や合同会社などの法人は含まれません。
そのため、あなたの会社が破産する場合、弁護士費用も予納金も、法テラスに立て替えてもらうことはできません。資金繰りに行き詰まった会社が「法テラスで費用を立て替えてもらってから破産しよう」と考えても、その方法はとれないということです。
会社の破産費用は、会社の財産から用意するのが基本です。実務では、弁護士が依頼を受けた後に、売掛金の回収や在庫・設備の換価によって予納金を準備することがあります。
一方、代表者であるあなた個人の破産は、収入や資産の基準を満たせば、民事法律扶助を利用できる可能性があります。ただし、会社の債務を連帯保証している場合は、会社と代表者の破産を同時に申し立てるのが実務の基本的な進め方です。代表者個人の手続だけを切り離して考えることは、現実的ではないことがあります(「7-3. 法テラスを使えない場合は事務所独自の支払方法を確認する」「8-5. 会社の破産や事業の借金に法テラスは使える?」で解説します)。
なお、法人破産ができない場合に代表者に起きることや、費用が払えないときの対処法については、関連記事『法人破産できないとどうなる?代表者に起きることや費用が払えないときの対処法』で詳しく解説しています。
民事法律扶助を利用するには、次の要件をすべて満たす必要があります。
(1)収入と資産が基準以下であること
(2)勝訴の見込みがないとはいえないこと
(3)民事法律扶助の趣旨に適すること
収入と資産は、原則として、あなたと配偶者の分を合算して判断されます。ただし、離婚事件のように配偶者が相手方になる場合は合算しません。
要件を満たすかどうかは、申込書類と、それを裏づける資料(疎明資料)で判断されます。書類に不備があると、審査が長引いたり、援助が認められなかったりすることがあります(「5-2. 援助を申し込み、必要書類を提出する」で解説します)。
賞与を含めた手取りの平均月収と、現金・預貯金などの資産の額が、いずれも基準以下であることが必要です。基準は、住んでいる地域、家族の人数、家賃・住宅ローンの有無によって異なります。
収入と資産の基準は、次のとおりです。
| 家族の人数 | 収入(手取りの平均月収) | 資産 |
|---|---|---|
| 1人 | 200,200円以下 | 180万円以下 |
| 2人 | 276,100円以下 | 250万円以下 |
| 3人 | 299,200円以下 | 270万円以下 |
| 4人 | 328,900円以下 | 300万円以下 |
| 家族の人数 | 収入(手取りの平均月収) | 資産 |
|---|---|---|
| 1人 | 182,000円以下 | 180万円以下 |
| 2人 | 251,000円以下 | 250万円以下 |
| 3人 | 272,000円以下 | 270万円以下 |
| 4人 | 299,000円以下 | 300万円以下 |
※収入基準は、5人目以降、家族が1人増えるごとに33,000円(東京都特別区・大阪市などの地域)または30,000円(それ以外の地域)が加算されます。資産基準は、4人以上は一律300万円です。たとえば、東京都特別区の5人家族であれば、収入361,900円以下、資産300万円以下となります。
参照:弁護士・司法書士費用等の立替制度のご利用の条件|法テラス
「東京都特別区・大阪市など」に当たるのは、生活保護の基準でいう「一級地」の地域です。あなたの市区町村が該当するかどうかは、「生活保護の基準に定める一級地」で確認できます。
収入は、賞与も含めた手取りの平均月収で判断されます。毎月の給与明細の額だけを見て「基準内だ」と判断するのは避けてください。
家賃や住宅ローンを支払っている場合は、一定の限度額まで収入から差し引いて判断されます。医療費や教育費など、やむを得ない支出がある場合も、考慮されることがあります。
家賃・住宅ローンの控除の限度額は、次のとおりです。
| 家族の人数 | 東京都特別区 | 東京都特別区以外 |
|---|---|---|
| 1人 | 53,000円 | 41,000円 |
| 2人 | 68,000円 | 53,000円 |
| 3人 | 85,000円 | 66,000円 |
| 4人 | 92,000円 | 71,000円 |
ここで注意したいのは、収入基準の高い区分(東京都特別区・大阪市など)と、家賃控除の限度額が高くなる地域(東京都特別区のみ)とが一致しないという点です。たとえば大阪市に住んでいる場合、収入基準は高い区分が適用されますが、家賃控除の限度額は東京都特別区以外の欄を使います。
具体例で見てみましょう。東京都特別区で1人暮らしをしていて、手取りの月収が230,000円、家賃が60,000円だとします。家賃のうち控除の限度額53,000円を差し引くと、177,000円で判断されます。これは基準額200,200円を下回るため、収入の基準を満たすことになります。
自己破産を考えている場合、資産の扱いには特に注意が必要です。一定額を超える現金・預貯金や不動産があると、管財事件となり、予納金が必要になることがあります。この予納金は、生活保護を受給している方を除き、立替えの対象になりません(「4-2. 事件の種類別にみる費用の目安|自己破産・離婚・債務整理など」で解説します)。
だからといって、基準内に収めるために次のような行動をとるのは危険です。
こうした行動は、財産の隠匿や偏頗弁済として免責不許可事由に当たったり(破産法252条1項1号・3号)、破産管財人による否認の対象になったりするおそれがあります(同法160条、162条)。法テラスを利用するために財産を動かした結果、免責そのものが危うくなっては本末転倒です。
保険の解約返戻金、自動車、退職金の見込額などをどう評価するかは、判断が分かれやすい部分です。基準に近い場合は、財産を動かす前に、申込み先の契約弁護士に状況を伝えて確認してください。
勝てる見込みが高いことまでは求められません。「勝訴の見込みがないとはいえない」程度で足ります。
ここでいう「勝訴の見込み」には、判決で勝つことだけでなく、和解・調停・示談によって解決できる見込みも含まれます。自己破産であれば、免責を受けられる見込みがあるかどうかが問われます。
ギャンブルや浪費で借金が増えた場合、その事情は免責不許可事由に当たります(破産法252条1項4号)。しかし、それだけで援助の対象外になるわけではありません。破産手続では、裁判所が一切の事情を考慮して免責を認める裁量免責の制度があり(同条2項)、その見込みがあれば援助の対象になり得ます。
裁量免責の見込みがあるかどうかは、借入れの経緯、反省の状況、現在の生活状況などによって変わります。不利に思える事情も含めて、相談の段階から正確に伝えておくことが大切です。
報復的な感情を満たすだけのものや、宣伝を目的とするもの、権利の濫用に当たるような訴訟などは、援助を受けられません。
民事法律扶助は、資力の乏しい人の権利を守るための制度です。この趣旨から外れる事件は、援助の対象になりません。また、請求額が極端に少ない場合や、勝っても回収できる見込みがない場合も、費用対効果の観点から援助を受けられないことがあります。
あなたが事業を営んでいる場合、事業上の紛争が援助の対象になるかどうかは、注意が必要な点の一つです。営利を目的とする色合いが強い事件は、制度の趣旨との関係で慎重に判断されることがあります。
一方、個人事業主の借金の整理は、個人の生活の再建という側面があるため、援助の対象となる場合があります。ただし、どの範囲まで認められるかは事件ごとの判断になります。あなたが事業をしている場合は、申込みの前に、利用できるかどうかを法テラスまたは契約弁護士に確認しておくと確実です。
法テラスでは、事件の種類ごとに着手金・実費・報酬金の目安が定められています。一般的な弁護士費用より低い水準ですが、実際の額は審査で決まり、事件の難しさによって増減することがあります。
ここで紹介する金額は、法テラスの公式サイトで公表されている目安です。金額は改定されることがあるため、利用する際は最新の基準を確認してください。
法テラスが立て替える費用は、着手金、実費、報酬金の3つです。着手金と実費は援助開始の時点で決まり、報酬金は事件が終わった時点で、得られた結果をもとに決まります。
それぞれの費用の内容は、次のとおりです。
自己破産で免責を受けても、相手方から金銭を得るわけではありません。そのため、報酬金は原則として生じません。一方、過払い金を回収できた場合や、離婚で財産分与・慰謝料などを得た場合は、その額に応じて報酬金が生じます(「5-5. 事件が終わると報酬金が決まる」で解説します)。
援助事件では、弁護士が基準を超える費用をあなたに直接請求することは認められていません。「後から追加で費用を請求されるのではないか」と心配する必要がない点は、法テラスを利用する大きな利点です。
自己破産は、債権者の数に応じて、着手金と実費の合計が155,000円~210,000円です。任意整理は、債権者が1社なら43,000円からですが、債権者の数が増えると自己破産より高くなることがあります。
| 債権者の数 | 着手金 | 実費 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 1~10社 | 132,000円 | 23,000円 | 155,000円 |
| 11~20社 | 154,000円 | 23,000円 | 177,000円 |
| 21社以上 | 187,000円 | 23,000円 | 210,000円 |
※実際の費用は、事件の内容などにより審査によって決まります。必ずこの金額になるとは限らず、事件の困難度などに応じて着手金が増減する場合があります。
参照:自己破産 費用の目安|法テラス
自己破産の報酬金は原則として生じませんが、過払い金を回収できた場合は生じます。
ここで特に注意が必要なのが、予納金です。法テラスの公式の説明では、生活保護を受給している方を除き、自己破産事件の予納金は立替えの対象になりません。管財事件になった場合、たとえば東京地裁で弁護士が代理人として申し立てると、予納金は最低20万円です。この予納金は、あなた自身が別に用意する必要があります。
予納金を納めなければ、裁判所は破産手続開始の決定をしません(破産法30条1項1号)。「法テラスを使えば破産の費用はすべて立て替えてもらえる」と考えて予納金の準備をしていないと、申立てをしても手続を進められないおそれがあります。
なお、個人再生を検討している場合は、さらに注意が必要です。民事再生事件の予納金は、生活保護を受給しているかどうかにかかわらず、立替えの対象になりません。
任意整理も債権者の数によって費用が決まります。債権者が1社なら、着手金33,000円・実費10,000円で合計43,000円です。そこから債権者の数に応じて段階的に上がり、11~20社で合計206,000円、21社以上で合計233,000円となります。報酬金は原則として生じず、過払い金を回収できた場合にだけ生じます。
参照:任意整理 費用の目安|法テラス
債権者が6社以上になると、任意整理の費用の目安は、同じ債権者数の自己破産を上回ります(6~10社で任意整理179,000円、自己破産155,000円)。ただし、手続は費用だけで選ぶものではありません。任意整理は、一般に借金の元本を3~5年程度で返していく手続です。あなたの収入で返済を続けられるかどうかも含めて、手続を選ぶ必要があります。
離婚の費用は、どの段階から弁護士に依頼するかによって決まります。示談交渉、調停、訴訟と手続が進むほど、着手金と実費の合計は高くなります。
注意したいのは、途中で手続が次の段階に移ると、費用が追加される点です。たとえば、調停から依頼して話合いがまとまらず訴訟に移る場合は、調停の費用に加えて200,000円がかかります。あなたの事案で相手方が話合いに応じそうかどうかによって、最終的な費用の見通しは変わります。
| 手続 | 着手金・実費の合計 |
|---|---|
| 示談交渉 | 86,000円~130,000円 |
| 調停 | 108,000円~152,000円 |
| 訴訟から依頼する場合 | 266,000円 |
| 調停が不調になり訴訟に移る場合 | 調停の費用に加えて200,000円 |
※実際の費用は、事件の内容などにより審査によって決まります。必ずこの金額になるとは限らず、事件の困難度などに応じて着手金が増減する場合があります。
参照:離婚等請求事件 費用の目安|法テラス
婚姻費用分担請求(調停・審判)は、着手金・実費の合計が108,000円~152,000円です。離婚とは別の援助になる場合があり、同時に申し込むと着手金が調整されることがあります。
離婚などで金銭を得た場合の報酬金は、得た金額の10%+税が目安です。婚姻費用と養育費は、2年分が上限になります。たとえば、慰謝料100万円を得た場合は110,000円、養育費が月額5万円の場合は132,000円です。金銭の支払いがない場合でも、66,000円~132,000円程度の報酬金が生じることがあります。
報酬金は、相手方から得た金銭の中から一括で償還を求められるのが原則です(「6-4. デメリット3|相手から回収したお金から一括返済を求められることがある」で解説します)。過払い金や慰謝料などを受け取る見込みがある場合は、依頼時の費用だけでなく、報酬金を含めた総額で考えておく必要があります。
法テラスの基準は、一般的な弁護士費用より低い水準に設定されています。ただし、予納金の有無や支払方法まで含めて比べると、費用の差が縮まることもあります。
通常の依頼の弁護士費用は、事務所ごとに自由に定められています。同じ事件でも、事務所によって金額に差があります。自己破産であれば、同時廃止になるか管財事件になるかによっても費用が変わり、法テラスの基準を上回ることは珍しくありません。これに対して法テラスでは、事件の種類ごとに基準が決まっているため、費用の見通しを立てやすいという特徴があります。
一方、報酬の水準が低いことから、法テラスの案件を扱っていない事務所や、受任する件数を制限している事務所もあります。「1-3. 法テラスの費用は『無料』ではなく『立替え』が基本」で紹介した有識者検討会でも、報酬水準の見直しが論点になっています。そのため、法テラスに対応している弁護士を探すのに時間がかかることがあります。
また、通常の依頼でも、分割払いに対応している事務所はあります。自己破産であれば、弁護士が受任通知を送って返済を止め、それまで返済に充てていたお金を費用に回して積み立てる方法がとられることもあります。
「法テラスは安い、通常の依頼は高い」と単純には言い切れません。比べるべきなのは、着手金の額だけでなく、次のような点です(「7-1. 着手金だけでなく費用の総額で比較する」で解説します)。
立て替えてもらった費用は、無利息で、毎月分割して返していきます。返済は事件の進行中から始まり、毎月の額は審査の際に、収入や生活状況を踏まえて決められます。
償還は、原則として口座引落しで行います。引落日は、ゆうちょ銀行が15日または25日、それ以外の金融機関が27日です。引落手数料(ゆうちょ銀行33円、それ以外40円)がかかるため、口座には返済額に手数料を加えた額以上の残高を入れておく必要があります。
毎月の返済額は、実務上、5,000円から10,000円程度になることも珍しくありません。具体的な額は、援助開始が決定する際に示されます。
事件が終結した時点の残高については、3年以内に完済することが原則とされています。その時点で毎月の返済額が見直され、月額が変わることがあります。援助が始まった時の月額が、最後まで続くとは限らないということです。
自己破産の場合は、弁護士が債権者に受任通知を送ります。受任通知を受けた貸金業者が、正当な理由なく、電話や訪問などであなたに直接返済を求め続けることは禁止されています(貸金業法21条1項9号)。それまで返済に充てていたお金を償還に回せるため、無理のない返済計画を立てやすくなります。
ただし、この規制の対象は貸金業者などに限られます。個人からの借入れや、事業の取引先への支払いなどには及びません。受任通知を送れば、あらゆる請求がすぐに止まるわけではない点に注意してください。
収入が減るなどして返済が難しくなった場合の対応は、「8-4. 立替金の返済が苦しくなったらどうなる?」で解説します。
生活保護を受給している場合は、申請によって、事件の進行中の償還が猶予され、事件の終結時に償還が免除される場合があります。ただし、申請したすべての人が猶予・免除を受けられるわけではありません。
償還の免除には、次のような類型があります。
いずれも審査があり、要件を満たすかどうかは個別に判断されます。
相手方から金銭を得た場合(財産分与、過払い金など)は、猶予・免除の対象外です。得た金銭の中から償還を求められます(「6-4. デメリット3|相手から回収したお金から一括返済を求められることがある」で解説します)。
自己破産の予納金は、生活保護を受給している方に限って、立替えの対象になります。生活保護を受給していない場合は、予納金を自分で用意する必要がある点に変わりはありません。
また、法テラスは2026年(令和8年)4月1日から、インターネットで償還免除を申請できるサービスを全国で始めています。ただし、対象は生活保護を受給中の方に限られ、準生保免除やひとり親免除の申請には利用できません。
参照:生活保護受給中の方を対象としたインターネットによる償還免除申請サービスについて|法テラス
なお、生活保護を受給しながら借金の返済を続けることは、保護費の目的との関係で問題になることがあります。生活保護を受給していて借金がある場合は、早めに債務整理の方法を検討することをおすすめします。
法テラスを利用して弁護士に依頼するまでには、次の段階があります。
(1)法律相談
(2)援助の申込みと書類の提出
(3)審査と援助開始決定
(4)三者契約の締結
(5)事件の処理
(6)終結決定と報酬金の決定
申込みの窓口は2つあります。法テラスの窓口から申し込む方法と、法テラスと契約している弁護士に直接相談して申し込む方法(持込み方式)です。どちらを選ぶかで、着手までの期間と、弁護士を自分で選べるかどうかが変わります(「6-2. デメリット1|審査に時間がかかり、着手が遅れることがある」「6-3. デメリット2|弁護士を自由に選べない場合がある」で解説します)。
法テラスのコールセンターや地方事務所に予約する方法と、法テラスと契約している弁護士の事務所に直接予約する方法があります。
法テラスの窓口を経由する場合は、相談日まで待つ期間が生じることがあります。契約弁護士の事務所に直接予約すれば、比較的早く面談でき、そのまま援助の申込みまで進められることがあります。
相談の段階で資力の確認を受けるため、収入と資産のおおまかな資料(給与明細、預金通帳など)を手元に用意しておくと手続が進めやすくなります。
援助申込書とあわせて、住民票、収入を証明する資料、事件に関する資料などを提出します。書類に不足や不整合があると、審査が長引く原因になります。
主な必要書類は、次のとおりです。
自己破産の場合は、債権者の一覧、家計の収支、資産の資料など、破産の申立てに必要な資料と重なる部分があります。持込み方式で契約弁護士が申込みを代行する場合は、申立ての準備と並行して書類を整えることができます。
法テラスが資力、勝訴の見込み、制度の趣旨に適するかを審査し、援助を開始するかどうかを決定します。着手金・実費の額と、償還の方法もこの時に決まります。
審査にかかる期間は、事件の内容や地域によって異なり、一律の基準はありません。数週間から1カ月程度かかることもあります。
注意したいのは、審査の結果が出るまでの間は、援助を前提とした事件の処理を本格的に進められないことがあるという点です。取立てを止めたい、差押えを避けたい、時効の期限が迫っているといった事情がある場合には、この期間がそのままリスクになります(「6-2. デメリット1|審査に時間がかかり、着手が遅れることがある」「7-2. 期限が迫っている事件では審査を待つ間の不利益を考える」で解説します)。
援助をしない(不開始)と決定された場合でも、不服を申し立てる手続が設けられています。
援助開始が決定すると、法テラス、あなた(被援助者)、弁護士の三者で契約を結びます。法テラスは、この契約に基づいて、弁護士に着手金と実費を立て替えて支払います。
一般の委任契約とは異なり、費用の額、支払方法、償還の条件が契約書で明確に定められます。弁護士は援助事件について基準外の報酬を受け取れないため、費用をめぐるトラブルは起きにくい仕組みです。
事件が終わると、弁護士が終結の報告をし、法テラスが報酬金の額と最終的な償還額を決定します。
相手方から金銭を得た場合は、その中から、立替金の残額と報酬金を一括で償還するよう求められるのが原則です(「6-4. デメリット3|相手から回収したお金から一括返済を求められることがある」で解説します)。
自己破産では、免責許可決定の確定などで事件が終結します。通常は報酬金が生じないため、残っている立替金を分割で償還していくことになります。
費用を抑えて分割で返済できることが、法テラスを利用する最大のメリットです。一方で、着手までに時間がかかる、弁護士を自由に選べない場合がある、回収したお金から一括返済を求められるといったデメリットもあります。
メリットとデメリットの重みは、事件の種類や緊急性によって変わります。あなたのケースに当てはめて判断することが大切です。
着手金が一般的な弁護士費用より低く、無利息の分割で返済できるため、手元にまとまった資金がなくても弁護士に依頼できます。
主なメリットは、次のとおりです。
自己破産を弁護士に依頼すると、弁護士が債権者に受任通知を送ります。受任通知を受けた貸金業者が、正当な理由なく、電話や訪問などであなたに直接返済を求め続けることは禁止されています(貸金業法21条1項9号)。督促の電話や郵便への対応を弁護士に任せられることは、費用面と並ぶ大きな効果です。
ただし、この規制の対象は貸金業者などに限られます。個人からの借入れや、税金・社会保険料などの請求には及びません。また、法テラスを利用する場合、受任通知をいつ送れるかは、申込みの方法や進め方によって異なります。窓口を経由して担当弁護士が決まるまでの間は、取立てが続くことがある点に注意してください(「6-2. デメリット1|審査に時間がかかり、着手が遅れることがある」で解説します)。
法テラスを利用すると、相談の予約、審査、契約の締結と段階を踏むため、弁護士が着手するまでに時間がかかることがあります。法テラスの窓口を経由する場合は、1カ月以上かかることもあります。その間も、債権者からの取立てや裁判の手続は止まりません。
裁判所から訴状が届いているのに、何も対応しないまま期日を欠席すると、相手方の主張を認めたものとみなされることがあります(民事訴訟法159条3項)。その結果、判決が出て、給与の差押えに進むおそれがあります。
給与は、4分の3に相当する部分の差押えが禁止されています(民事執行法152条1項2号)。この4分の3は、実務では税金や社会保険料を差し引いた手取り額をもとに計算されます。裏を返せば、手取り額の4分の1までは差し押さえられるということです。たとえば手取りが20万円であれば、毎月5万円が差し押さえられることになります。差押命令は勤務先にも届くため、借金の問題を職場に知られることにもなります。
また、手取りが44万円を超える場合は、4分の1を超える額が差し押さえられます(民事執行法施行令2条1項1号)。養育費などの請求による差押えでは、2分の1まで差し押さえられます(民事執行法152条3項)。
あなたが相手方に請求する側の場合も、審査を待つ間に期限が進みます。たとえば、不法行為による損害賠償の請求権は、損害と加害者を知った時から3年で時効にかかります(民法724条1号)。裁判上の請求などの手続をとることで、時効の完成が猶予されます(民法147条1項)。
また、相手方が財産を処分してしまうおそれがある事件では、着手が遅れるほど、勝訴しても回収できる財産が残っていない事態になりかねません。
緊急性が高い場合は、法テラスと契約している弁護士に直接相談して期間を短縮する方法や、通常の依頼として依頼する方法も検討の対象になります(「7-2. 期限が迫っている事件では審査を待つ間の不利益を考える」で解説します)。
法テラスの窓口を経由すると、担当の弁護士は法テラス側で決まり、あなたが選べないことがあります。
自分で選んだ弁護士に法テラスを使って依頼したい場合は、その弁護士が法テラスと契約しているかを確認したうえで、直接相談する方法(持込み方式)があります。ただし、報酬水準の低さから、法テラスの案件を扱っていない事務所や、受任件数を制限している事務所もあります。依頼したい弁護士が法テラスに対応しているかどうかは、事前に確認しておく必要があります。
破産や債務整理は、事務所によって取扱いの経験に差がある分野です。同時廃止になるか管財事件になるかの見通しや、申立先の裁判所の運用に通じているかどうかも、弁護士を選ぶ際の判断材料になります。
過払い金、財産分与、慰謝料、損害賠償など、相手方から金銭を得た場合は、その中から立替金の残額と報酬金を一括で償還するのが原則です。
「毎月少しずつ返せばよい」と考えていると、実際に手元に残る金額が想定より少なくなることがあります。生活保護を受給している場合の償還免除も、相手方から金銭を得た場合は対象外です。
回収できる金額が大きい事件では、法テラスの報酬基準と、通常の依頼の報酬体系とで、総額にどれだけ差が出るかを比べておくとよいでしょう(「7-1. 着手金だけでなく費用の総額で比較する」で解説します)。
資力の基準を満たし、急ぎの事情もないのであれば、法テラスを利用するのが合理的な選択であることが少なくありません。一方、費用の総額、期限の迫り具合、法テラスを利用できるかどうかによっては、通常の依頼のほうが適している場合もあります。
使い分けを考える際の観点は、主に次の3つです。
法テラスと通常の依頼を比べるときは、着手金の額だけでなく、予納金、報酬金、回収金からの一括償還、毎月の返済額まで含めた総額で比べる必要があります。
あなたが自分で比べる際は、次の点を確認してください。
自己破産で管財事件の見込みがある場合は、予納金が自己負担になることを踏まえると、通常の依頼の分割払いと総額に大きな差が出ないこともあります。同時廃止になるか管財事件になるかは、資産の状況や免責不許可事由の有無によって変わります。比較の前提として、まずその見通しを相談の段階で確認しておくと、判断を誤りにくくなります。
法テラスの審査を待つ間も、裁判の期限や時効の期限は進んでいきます。すでに書類が届いている事件では、審査を待つ時間が、そのまま不利益につながることがあります。
特に注意が必要なのは、次のような場面です。
たとえば、支払督促を受け取ってから2週間以内に督促異議を申し立てないと、債権者の申立てにより仮執行宣言が付されます(民事訴訟法391条1項)。仮執行宣言が付されると、債権者は、それに基づいて差押えを申し立てることができるようになります。
こうした期限は、法テラスの審査の状況とは関係なく進みます。期限が迫っている場合は、審査の結果を待つのではなく、手元の書類と期限を示したうえで、まず相談先に対応を確認することが大切です。そのうえで、契約弁護士への直接相談で期間を短縮できるか、通常の依頼として早く着手したほうがよいかを判断することになります。
会社の破産のように法テラスを利用できない事件や、資力の基準をわずかに超える場合でも、事務所独自の分割払いや積立方式によって依頼できることがあります。
「2-4. 民事法律扶助の対象にならない事件」で解説したとおり、民事法律扶助は自然人を対象とした制度です。会社の破産では、弁護士費用も予納金も法テラスで立て替えてもらうことはできません。そのため、会社を整理する場合は、通常の依頼として弁護士に依頼することが前提になります。
会社の破産費用は、会社の財産から用意するのが基本です。実務では、弁護士が依頼を受けた後に、次のような方法で費用を準備することがあります。
もっとも、資産の売却をあなたの判断で先に進めると、安値での売却や一部の債権者への返済として、後の破産手続で問題になるおそれがあります。費用の捻出は、弁護士の関与のもとで進めることが大切です。
会社の借入れを代表者が連帯保証している場合は、会社と代表者個人の破産を同時に申し立てるのが基本的な進め方です。同じ破産管財人が両方の手続を担当することが通常で、予納金や手間を抑えられる場合があります。事務所によっては、会社と代表者の破産を同時に依頼することで、費用面で配慮されることもあります。
個人の自己破産などで資力の基準をわずかに超える場合も、通常の依頼として、分割払いで依頼できることがあります。自己破産では、受任通知によって返済が止まった期間に費用を積み立て、予納金にも充てる方法がとられることがあります。
分割払いの可否や条件は、事務所ごとに異なります。依頼する前に、費用の総額、毎月の支払額、支払いの期間を確認しておくとよいでしょう。
基準をわずかに超えていても、家賃・住宅ローンの控除などによって、基準内と判断されることがあります。
家賃や住宅ローンを支払っている場合は、一定の限度額まで収入から差し引いて判断されます。医療費や教育費など、やむを得ない支出がある場合も考慮されることがあります(「3-1. 収入や資産が一定額以下であること(資力基準)」で解説しました)。
収入は、賞与も含めた手取りの平均月収で判断されます。毎月の給与明細の額だけで「基準を超えている」「基準内だ」と判断しないでください。
離婚事件など、配偶者が相手方になる場合は、配偶者の収入を合算しません。
それでも基準を超える場合は、通常の依頼で分割払いに対応している事務所を検討する方法があります(「7-3. 法テラスを使えない場合は事務所独自の支払方法を確認する」で解説しました)。
弁護士の職務上の義務は、法テラス経由でも通常の依頼でも同じです。法テラス経由だからといって、弁護活動の質を落とすことは許されません。
弁護士は、誠実に職務を行う義務を負っています(弁護士法1条2項)。日本弁護士連合会の弁護士職務基本規程でも、信義に従い誠実かつ公正に職務を行うこと(5条)、依頼者の権利と正当な利益の実現に努めること(21条)が定められています。これらの義務は、法テラス経由か通常の依頼か、報酬の額がいくらかによって変わるものではありません。
一方で、運用上の違いはあります。報酬水準の低さから法テラスの案件を扱う事務所が限られることや、審査のために着手まで時間がかかることなどです。
援助事件では基準外の費用を請求できないため、費用の面であなたが不利になることはありません。
あなたの希望だけで、自由に担当の弁護士を変更することは、原則としてできません。
弁護士との信頼関係が失われた場合などは、弁護士の辞任や解任を経て、法テラスの審査のうえで後任の弁護士が選ばれることがあります。ただし、後任を選ぶのが難しい場合は、援助が終了となることもあります。
変更を考える前に、まずは担当の弁護士に、疑問に思っている点や不安な点を具体的に伝えることが現実的な対応です。
収入が減ったり病気になったりして返済が難しくなった場合は、法テラスに申し出ることで、毎月の返済額の見直しや、返済の猶予・免除の申請ができます。
法テラスは、収入の増減があった場合には毎月の返済額を見直すとしています。返済中の場合は、返済の猶予や免除を申請することもできます。申請先は、利用している法テラスの地方事務所です。
ただし、申請したすべての人が猶予・免除を受けられるわけではありません。生活保護を受けるようになった場合などは、免除の対象になり得ます(「4-5. 生活保護を受けている場合|償還の猶予・免除」で解説しました)。
連絡をしないまま滞納を続けると、督促を受け、状況によっては法的な措置をとられるおそれがあります。返済が苦しくなった時点で、早めに法テラスの地方事務所か担当の弁護士に相談することが、有効な対応の一つです。
会社(法人)の破産には、法テラスを利用できません。代表者個人の破産や、個人事業主の借金の整理は、要件を満たせば利用できる可能性があります。
民事法律扶助は自然人を対象とした制度のため、株式会社や合同会社などの法人は利用できません(「2-4. 民事法律扶助の対象にならない事件」で解説しました)。会社の破産の弁護士費用と予納金は、会社の財産などから用意する必要があります。
代表者や個人事業主のケースを整理すると、次のとおりです。
過去の立替金を完済していれば、要件を満たす限り、再び利用できます。返済の途中であっても、返済の状況や事件の内容によっては、援助が認められることがあります。
返済中に新たな援助を申し込んだ場合は、それまでの返済の状況も踏まえて、審査で個別に判断されます。
なお、法テラスを利用できるかどうかとは別に、自己破産を考えている場合は、破産法上の制限にも注意が必要です。過去に免責を受け、その免責許可決定の確定日から7年以内に再び免責を申し立てることは、免責不許可事由に当たります(破産法252条1項10号)。ただし、この場合も裁量免責の余地はあります(同条2項)。
法テラスの援助を受けられたとしても、破産手続の中で免責を受けられるかどうかは、別に判断されるということです。過去に免責を受けたことがある場合は、手続の見通しもあわせて確認しておきましょう。
法テラスの民事法律扶助について押さえておきたいポイントは、次のとおりです。
法テラスを利用するか、通常の依頼にするかは、費用の総額、期限の迫り具合、制度を利用できるかどうかによって判断が分かれます。資力の基準を満たし、急ぎの事情がない場合には、法テラスは有力な選択肢です。
法テラスの利用条件や費用の基準は、改定されることがあります。法務省の有識者検討会では、給付制への移行や報酬水準の見直しも議論されています。実際に利用する際は、最新の基準を法テラスの公式サイトで確認してください。